シマノ用のフリーボディはスプライン形状の山が低く、カンパニョーロに比べると食い込みやすい形状をしている。
アルミフリーボディを採用する社外ホイールの場合、スプロケを外そうとした時ガッツリ噛み込んでしまっていることも多い。
こうなると、カセットスプロケットを取り外すためにプラハンで叩いたり、変形したスプラインをヤスリで削って整える必要がある。
フリーボディの素材
シマノ規格のスプロケの食い込みやすさは、フリーの素材でほぼ決まる。各社のハブ素材はこんな感じ。
一言で結論を言うと「シマノ用アルミフリーは絶対食い込む」。
スプラインの山が高い10速専用フリーが普及していればこんなことにはならなかったのだけど…
シマノ
流石にシマノは丈夫に作ってあり、同社の鉄製フリーボディには食い込みトラブルがほぼ無いと言って良い。
軽量化が重視されるデュラエースハブはチタン製のフリーボディが採用されている。これも食い込まない。
カンパニョーロ
カンパニョーロ・フルクラム製ホイールのシマノフリーは、現行品は硬度を高める特殊加工(PEO処理:プラズマ電解処理プロセス)が施されたアルミ製。
だが、強化されているとはいえ、やっぱり食い込む。
2015年頃までは鉄製フリーボディで丈夫だったのだけれど…
余談だがカンパフリーはアルミフリーのため、この頃のカンパ製ホイールはシマノ仕様のほうが数10g重かった
マヴィック
MAVICのシマノ用フリーもかつては丈夫な鉄製だったが、現在はアルミフリーになってしまった。
表面に高硬度のコーティングがされているが、やはり母材が柔らかいアルミなので、スプロケが徐々に食い込んでくる。
その他、噛み込み対策されたアルミフリーボディ
Novatecのフリーボディなど、鉄製のインサートを埋め込んでいるものもある。まぁこれも、対岸が食い込むんだけど。
ただのアルミフリーボディ
これは、どうやっても食い込む。少しでも負担を減らすため、スプライン部の駆動方向のガタを取ってからロックリングを締めたりもしてみたが、絶対に食い込む。
スプロケを抜く時には、プラハンで叩いて噛み込みを解いた後、鉄工ヤスリでフリーボディの盛り上がった部分を削りながら外す必要がある。
安いもので良いので、組ヤスリを持っておくと便利。スプロケ脱着でこんなものに頼りたくはないが…
自作アンチバイトガード
アルミフリーの食い込みに業を煮やして改造に踏み切った。
スプラインの一部を削り、ステンレスプレートを埋め込み、2液エポキシで接着。これを3箇所に施した。
これは効果てきめんで、写真のように大きな損傷は無し。カセットスプロケットも抵抗なく取り外せた。
ただ、現物合わせしつつヤスリで追い込む、かなり面倒な工作だったので、できればもうやりたくない…
アルテグラ以上のスプロケで食い込み対策
歯数の多いギヤほどフリーに大トルクが加わる、つまりスプラインにかかる力が大きいので、ロー側のほうが食い込みやすい。
ところが、ロー側のギヤは数枚まとめてスパイダーに結合されているので、スパイダーの幅に力が分散され、フリーへの負担はむしろ少ない。
そのため、単体で組まれているスプロケットのうち一番歯数が大きいものが最も食い込みやすいということになる。
アルテグラの11速カセットスプロケット
アルテグラの11sカセットスプロケットは、ロー側3枚、その次の2枚がセットになってスパイダーで結合されている。
つまり、ロー側5枚のギヤはスパイダーの幅で受けるので、アルミフリーに対しても噛み込みが発生しない。
デュラエースも同じ構造だが、こちらはロー側5枚がチタン製で減りやすい。べらぼうに軽いものの値段も相応に高いので、噛み込み対策という意味ではアルテグラで十分。
一番食い込みやすいローから6枚目は、16~18Tあたり。
105の11速カセットスプロケット
105の場合、コストダウンのためスパイダーで結合されているのはロー側3枚のみ。
4枚目以降は1枚ずつ単独のスプロケになっていて、比較的歯数が多く、フリーに掛かるトルクが大きい4枚目あたりが食い込みやすい。
安いし洗いやすいんだけど、アルミフリーとの相性は悪い。
一番食い込みやすい4枚目の歯数は19~21Tと、アルテに比べて3Tほど大きい。そのぶん大トルクがかかるため、より強く食い込もうとする。
シマノ製カセットに限定しないのであれば、SRAM RED22のクロモリ削り出しカセット XG-1190はロー側のスプラインでトルクを受ける構造になっていて、食い込みにくそう…ただしめちゃくちゃ高価で、定価は5万円近い。
アルミフリーと食い込み事情
現状をまとめると
- 軽量化のため(?)各社フリーボディはアルミ製が多い
- シマノ製フリーボディは鉄(またはチタン)製で噛み込まない
- アルテグラのカセットスプロケットを使うと、アルミフリーへの噛み込みは多少緩和される
といったところ。
フリーボディは内部にベアリングが入っており、消耗品という扱い。
ベアリングの寿命に対して十分であれば、スプラインが痛んでも仕方ない、という思想なんだろうか。
ところが、フリーボディ自体はそこまで安価なわけでもない。たとえば、カンパニョーロのシマノ用ボディ(FH-BO015X1)は1万円ほど。
フリーをいたわるのであれば、105より多少高くてもアルテグラのカセットを使うというのは有効ではないかと思う。
マイクロスプラインに期待
シマノMTBの12sコンポではフリーボディ形状がようやく変更され、マイクロスプラインという形状になった。
溝の数が増えたことで嵌合部に加わる力が分散され、アルミ製ボディながら食い込みにくくなっている。
ロードもこの形状に変われば、アルミフリー食い込み問題は一応の解決を見る…のかもしれない。
それにしても、シマノの新技術はMTBからだ。ディレイラーのシングルテンション化も最初はMTBに採用された。
ロードから先に実用化されたのは電動変速のDi2くらいじゃなかろうか。