【レビュー】Bryton Rider S810/S510 ~ナビゲーション機能が充実、ポストGarminを狙う低価格・高機能サイクルコンピュータ~

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Bryton Rider S810 S510

手頃な価格帯ながら高機能を備えたサイクルコンピュータ。
使いやすいナビ機能やバッテリーライフの長さなど、倍以上の価格の大手ハイエンド機種を凌駕する部分もある。

本稿でレビューする製品はBryton社からの提供品です

長所 -Pros-

  • 瞬時に目的地設定が行えるナビ機能
  • 長時間のバッテリーライフ

短所 -Cons-

  • オートスタートやナビ案内(右左折)のレスポンスが悪い
  • 走行中はビープ音が聞き取りづらい

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対象商品:Bryton Rider S510 / S810
有効期間:2025年10月16日~2025年11月16日

目次

台湾発のサイクルコンピュータブランド Bryton社

Bryton(ブライトン) は、2009年に台湾で設立され、GPSを搭載した電子製品を開発生産している企業だ。
創業時のメンバーはカーナビなどを手掛ける大手GPS関連企業の元社員で、サイクルコンピューターだけでなく、GPSウォッチ等の開発生産も行っている。

同社は、シンプルな操作性と高いコストパフォーマンスのGPSサイクルコンピュータを強みにしている。
「必要十分な機能を手頃な価格で」 という戦略で事業を展開し、エントリーユーザーはもちろん、高機能路線によって価格が高騰したGarminやWahooといった大手ブランドのサイクルコンピュータの代替として、ホビーライダーを中心に一定のポジションを築きつつある。

とはいえ最近は、本稿でレビューするRider Sシリーズのように、タッチパネル搭載カラー液晶や地図機能を備えた、大手ハイエンド機と比べても遜色ない機種も展開している。
また近年は後方レーダー「Gardia R300L」など安全性を高める周辺機器にも展開を広げており、ブランドの守備範囲を拡大している。

GPSサイクルコンピュータ Rider S810, S510

Rider S810とS510は、BrytonのGPSサイクルコンピュータの中で最上位に位置するモデルだ。
大画面のタッチパネル搭載カラー液晶をはじめ、ナビ機能つき地図表示、パワートレーニング対応など、GarminやWahooといった大手ハイエンド機に対抗する機能を備えている。

項目Rider S810Rider S510
ディスプレイ3.5インチ カラー TFT タッチスクリーン
282×470ピクセル
2.5Dガラス
2.8インチ カラー TFT タッチスクリーン
240×320ピクセル
サイズ102.5 × 57.6 × 15.8 mm87.2 × 56.8 × 14.9 mm
重量約 116 g約 96 g
バッテリー持続時間最大 50 時間最大 30 時間
データフィールド数最大 12 項目/ページ最大 10 項目/ページ
価格帯Rider S810E(本体のみ)¥46,200(税込)
Rider S810T(スピード・ケイデンス・心拍センサー付属)¥56,100(税込)
Rider S510E(本体のみ)¥35,750(税込)
Rider S510T(スピード・ケイデンス・心拍センサー付属)¥45,650(税込)

Rider S810とS510の価格差はおよそ1万円だ。より高額なS810は大画面のディスプレイを備え、バッテリー持続時間も長い。さらに、縁がラウンド加工されたガラスを採用しており、高級感のある仕上がりになっている。

一方で機能面はほぼ同等で、S810に搭載されている機能はS510でもすべて利用可能だ。唯一の違いは画面サイズに由来する表示データ項目数で、最大12項目を同時表示できるS810に対して、S510は最大10項目となる。
12項目フルで使うことは稀だが、複数エリアを使用するグラフ表示や、マップ表示を行う場合はS810の+2項目が役立つ。

どちらもカラー液晶ディスプレイを搭載するが、コントラストが高く、直射日光下でも視認性は良好だ。
環境光センサーを備えており、周囲の明るさに応じてバックライトの輝度は自動調整される。

操作はボタンとタッチパネルを併用して行う。S810とS510の左右側面には2個ずつ、合計4つの物理ボタンが備わっており、電源やスタート・ストップ、ラップといった主要操作が割り当てられている。
その他の細かな操作は静電式タッチパネルで行う仕様だ。

マウント形状はGarminに似ているが独自規格のため、互換性はない。ただし、マウントの爪部分は交換可能で、オプションの変換キットを利用すればGarmin規格のマウントに装着できるようになる。

近年のエアロロードに採用されるステム一体型ハンドルでは、専用マウントが用意されるケースが多いが、その多くはGarminやWahooといった主要ブランド規格のみ対応している。事実上のデファクトスタンダードであるGarmin規格に合わせられるメリットは大きく、この変換キットは必須アクセサリーと言える。

なお、S810、S510それぞれについて、本体単品に加え、差額1万円弱でスピード・ケイデンス・心拍センサーが付属するモデルが用意される。

基本操作

電源操作とホーム画面

本体左上の電源ボタンを長押しすると電源が入る。ボタンに触れてからホーム画面が表示されるまでの起動時間はS810が約7秒、S510が約10秒で、ボディやディスプレイのサイズだけでなく、処理性能にも差があることが分かる。

起動後はホーム画面が表示され、以下のメニューにワンタッチでアクセスできる。

  • ライドプロフィール(3種類)
  • ナビゲーション・コース
  • 設定
  • ライド履歴
  • ユーザープロフィール

UIは直感的に整理されており、目的の機能に迷わず到達できる。Garminを10年以上使ってきた私も、すぐに馴染むことができた。(逆に言えば、GarminのUI設計はあまりに不親切だと感じる。)

ライドプロフィールと設定

デフォルトでは以下の3種類のライドプロフィールが用意されている。

  • ロードバイク
  • インドア
  • MTB

各ライドプロフィールについて、トレーニングページの表示項目や各種機能はホーム画面の「設定」からカスタマイズできる。これらの設定はスマートフォンアプリ「Bryton Active」でも可能で、特に購入直後の初期セットアップ時にはアプリ経由の方が圧倒的に快適だ。

サイクリングモードと記録モード

起動直後のRiderは「サイクリングモード」となっており、この状態ではログは保存されない。ただし速度やケイデンスなどがリアルタイム表示され、距離計も積算される。移動を検知すると、記録開始を促すアラートが一定間隔で表示される(デフォルト設定の場合)。

右上の記録ボタンを押すと「記録モード」へ切り替わり、サイクリングモードで積算された距離計がリセットされる。この状態から、位置情報や速度、パワー、ケイデンスといったデータが記録される。現在のモードは画面左上の小さなアイコンで確認可能だ。

操作系と補助機能

トレーニングページの移動は本体右下のメニューボタン、または画面の左右スワイプで行える。
誤操作を防ぎたいときは、本体左上の電源ボタンを短押しすると、タッチパネルがロックされる。

ラップを記録したいときは、走行中に本体左下のラップボタンを押す。
注意点として、ラップボタンは走行中にしか機能しない。信号待ちなど、一時停止状態では反応しない点は少々不便に感じた。

ビープ音はやや単調で、例えば一時停止と再開の音が同一のため、画面を見なければ状態が分かりにくい。また、一時停止から再開までのレスポンスが若干遅いように感じられた。

この動作ラグが測定精度に影響を与えていないか気になったが、Garmin Forerunner970とRider S810の走行ログを比較すると、走行距離や走行時間に大差は無いようだ。

2025年9月22日 ロードトレーニングのログ比較

機種Rider S810Forerunner 970
時間1h11m13s1h11m26s
距離30.7km31.0km
平均速度25.9km/h26.1km/h
獲得標高421m534m
最高速度62.3km/h62.8km/h
平均ケイデンス73rpm72rpm

獲得標高は異なるが、これは計算方法の違いに起因するものだ。
実際、同じログデータを複数のクラウドサービスにアップロードし、標高マップを基に再計算すると、サービスごとに獲得標高の値は大きく異なる。

  • Garmin Connect:574m
  • Strava:455m
  • Trainingpeaks:363m

クイックステータスとホーム画面への復帰

トレーニングページで画面をタップすると「クイックステータス」が表示される。
ここでは、バックライト輝度の調整や、センサーの接続状況のチェック、ラップタイムの表示などが可能だ。
表示項目は自由に設定でき、よく使う機能をまとめておける。

また、トレーニングページで画面を下から上へスワイプするとホーム画面に戻るが、この間もログ記録は継続される。

ライド終了とログ保存

ライド終了時は右上の記録ボタンを押してログを停止する。
このとき、自動的に保存画面に切り替わり、「保存する」か「削除(ゴミ箱アイコン)」を選択できる。

保存したログはスマートフォン経由でクラウドサービス「Bryton Active」に自動アップロードされる。
これはGarmin Connectに相当するサービスで、ライドした位置情報やグラフなど、走行ログの確認が行える。動作は軽快で、スマートフォンアプリとWebブラウザの双方からアクセスできる点も便利だ。

ただし、トレーニング解析機能は備わっておらず、練習量の管理やパワートレーニングには不向きだ。
その代わり、Strava、TrainingPeaks、Selfloopsといった外部サービスに自動同期できるため、あらかじめ連携しておけばほぼリアルタイムでログを転送できる。

充実した機能

登坂を可視化する Climb Challenge 2.0

目玉機能のひとつがClimb Challenge 2.0だ。
Bryton Rider S810/S510は現在走っている道路を認識しており、進路上に登りを検知すると、アラートとともにヒルクライム向けの画面に切り替わる
ここでは、ピークまでの距離と標高差、コースプロフィールが表示されて、ヒルクライムをサポートする。

とはいえ、いつもの練習コースでは余計なお節介だと感じることもある。
そんなときは、大きな登りの時だけ通知するように設定したり、あるいは機能自体を無効化することも可能だ。

タイムアタックのモチベーションを高める Strava ライブセグメント

Stravaの有料会員向け機能ではあるが、星をつけたお気に入りセグメントが近づくと通知してくれる機能も備わっている。
専用ページではKOMや自己ベスト(PR)との差がリアルタイムで表示され、ライバルと競っているような感覚を味わえる。
目標まであとどれくらいか可視化されることで、タイムアタックに挑戦するモチベーションを高めてくれる。

一瞬で目的地検索できる ナビゲーション機能

Bryton Rider S810/S510で最も優れていると感じたのが目的地までのナビゲーション機能だ。

とはいえ、経路案内そのものは特に優秀というわけではない。
ルート計算は大雑把で無駄な右左折も多い。さらにルートを外れた場合も「元の経路に戻る」ことを最優先するため、柔軟なリルートは苦手だ。

付け加えるなら、曲がり角の指示タイミングも遅めだ。スピードを出していると行き過ぎてしまうこともある。

では、ナビ機能の何がすごいのか?それは「目的地の検索と入力の快適さ」だ。

Bryton Rider S810/S510のナビゲーションでは、通常のサイクルコンピュータのように、小さな画面で目的地を入力する必要はない。
スマートフォンアプリ Bryton Active で目的地を検索し、ルートを計算。あとは本体へ転送するだけで即座に案内が始まる。操作感はスマホの地図アプリとほとんど変わらず、あっという間に走り出せる。

さらに便利なのが 音声入力機能だ。Rider本体の「ナビ」メニューを開き、マイクアイコンをタップしてから目的地を口頭で伝えると、スマホ経由で音声認識され、候補が一覧表示される。
ライド中でもスマホを取り出す必要がなく、最小限の操作で目的地設定が行えるというわけだ。

最初に言った通り、ルート計算と案内は贔屓目に見ても「並」だ。
したがって、前もってライドを計画するなら、StravaやRidewithgpsでコースを作り、ルート機能を使うほうが良い。
連携設定しておけば、これらサービスで作ったルートはBryton Activeの「マイルート」に同期されるので、ルート選択も簡単に行える。

このナビ機能が真価を発揮するシチュエーションは 「近場の移動」 だ。

  • 補給のために最寄りのコンビニへ立ち寄りたい
  • ツーリング先で気になった定食屋まで案内してほしい

といった、数km移動するシチュエーションでは、ストレスなく目的地まで導いてくれる。

接近車両を検知 リヤビューレーダー対応

S810/S510は各社のリヤビューレーダーにも対応している。
例えばBryton純正のレーダーライト Gardia とペアリングすれば、音や気配で気づくよりずっと早く、最大190mの後方から接近する車両を検知して音と画面表示で通知してくれる。

接近車両までの距離は画面端にアイコンで表示される。車に追い越される前に前もって身構えることができ、特に郊外や交通量の多い幹線道路での安全性が大きく向上する。

また、サイコン上からライトの発光パターンを切り替えることも可能だ。

その他

現在地をWebで共有できるライブトラッキング機能や、トレーニングメニューをこなすためのワークアウト機能なども搭載し、サイクリングから本格的トレーニングまでこなせる。

ロングバッテリーライフ

大画面のディスプレイを搭載し、機能も充実しているRider S810/S510だが、駆動時間の長さも強みだ。
Rider S810で50時間、S510でも30時間のロングバッテリーライフを謳っている。

開封時に満充電後、継ぎ足し充電無しでRider S810を3週間テストしたが、走行時間の合計が17時間(バックライトON)、停車時間や操作時間を含めると25時間ほどの使用で、バッテリー残量は51%となっていた。本体の設定や使い方にも左右されるだろうが、概ね公称通りの駆動時間が期待できそうだ。

これだけのスタミナがあれば、長距離ライドはもちろん、泊りがけのツーリングにも対応するし、そういう長距離走をしない人にとってもメリットはある。
私はほぼ毎日自転車に乗るが、月間走行時間は40時間ほど。これは停止時間を含んでいないが、Rider S810であれば月に1~2度の充電で賄える計算だ。
リチウムイオン電池の寿命は数100サイクルだが、充電頻度が少ないとバッテリーの劣化も抑えられる。

まとめ

低価格でシェアを獲得してきたBrytonのGPSサイクルコンピュータ。
実は、同社の製品に触れるのは今回が初めてではなく、2018年頃、エントリーモデルのRider 330を使っていた時期がある。
当時はバッテリー持続時間の長さや軽量さ、そして価格の手頃さに魅力を感じて導入したのだが、実際には操作性や計測時の挙動に不満が多く、すぐに手放してしまった経緯がある。
そのため、Brytonには長らく「大手ブランドの安価な代替品」という先入観を抱いており、正直なところ今回の「Rider S810/S510」にも大きな期待はしていなかった。

しかし実際に使ってみると、印象は大きく変わった。カラー液晶は炎天下でも夜間でも見やすいし、メニュー構造も洗練され、直感的で扱いやすかった。
特にナビゲーション機能の使いやすさは突出しており、同価格帯はもちろん、競合他社を含めてもトップクラスといえる。バッテリー駆動時間でも大手ブランド製品を凌ぎ、数年の間にここまで完成度が高まっていることに驚かされた。
確かに、GPS測位の速さやボタンの押し心地、操作音の音質(屋外では聞き取りづらい)など、細部に改善の余地は残されている。しかし、総合的な品質や性能では遠からず大手ブランドに追いつき、追い抜いていくだろう。

確かに、大手ブランドには「築き上げたブランド価値」や「品質への一貫した信頼感」といった強みがある。長年同じメーカーを使い続けることで得られる互換性やデータの一貫性も、ユーザーにとって大きなメリットだ。
だが、アクションカメラ市場を切り開いてシェアを独占したGoProも、今や後発ブランドに画質や操作性で追い抜かれ、企業の存続すら危ぶまれる状況にある。
GPSサイクルコンピュータの分野においても同じことが起こり得る。Brytonの急速な成長は、大手にとって決して「対岸の火事」ではないはずだ。

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