チェーンが少し伸びてきていたので交換しようと思ったが、11速コンポのチェーン長の決め方は何パターンかあるので、覚書ついでに紹介する。
シマノの整備マニュアル
コンポーネントの取り付け方法や調整方法は、シマノのディーラーマニュアルに記載されている。
ディーラーマニュアル(DM)は、本来はプロショップのメカニックのためのものだが、正しく取り付けて調整する方法が丁寧に説明されている。
以前は箱入りのコンポーネントを買うと紙のマニュアルが付属したのだが、ある時期からウェブ上のPDFマニュアルを見る形になってしまった。
11速チェーンの長さの決め方
さて、チェーンの最適な長さは、フレームのチェーンステー長、ディレイラーの種類、チェーンリング・スプロケットの大きさで異なるため、バイクに合わせて適切に設定しなければならない。
シマノのディーラーマニュアルには、トラブルを防ぐとともに変速性能を発揮するためのチェーン長が記載されているが、
最低限、以下の2点をクリアしていればとりあえず変速する。
- 最もチェーンが張るアウターローで長さに余裕があること
- 最もチェーンがたるむインナートップでたるまないこと
なお、インナートップは多少たるんでもチェーンが外れやすくなる程度だが、チェーン長が足りないとディレイラーを壊したりチェーンが切れたりスプロケを割ったりするので、迷ったら長さに余裕を持たせるほうがいい。
11速のリアディレイラーには大きく分けて、昔のコンポで使われていたダブルテンションと、MTBに採用され、現在はロードも同形状となったシングルテンションの2種類存在し、それぞれチェーン長の決め方が異なるので、作業は以下を参考に。
チェーンの長さの数え方
チェーンを構成するプレート1枚分を1リンクと数える。
チェーンは、アウターリンクとインナーリンクが交互に組み合わされており、アウターリンクとインナーリンクをあわせた最小単位を1コマと呼ぶ。
チェーンのリンク数は通常偶数になるが、BMXやピストバイクでは微妙な長さ調整のために「半コマチェーン」というものを使うこともある。僕は「半コマ=1リンク」と覚えている。
なおチェーンは105グレードのCN-HG601をよく使う。上位モデルほどコーティングにコストがかかっており、耐久性も伸びるが、距離あたりの価格ではこれが一番安いので。
①ダブルテンションのディレイラーの場合
シマノの11速ディレイラーは9000デュラの世代がダブルテンション、R9100デュラの世代がシングルテンションという構造になっており、それぞれの場合でチェーン長の決め方が若干異なる。
旧世代のロードコンポであるRD-9000,RD-6800,RD-5800など、ディレイラー取り付けボルトの軸(B軸)とケージの軸(P軸)両方にバネが仕込まれているダブルテンションのディレイラーを採用している場合は次の方法でチェーン長を決める。
スプロケットの最大ギヤが27T以下
ローギヤが27T以下の場合は、アウタートップに入れて、ガイドプーリーとテンションプーリーが垂直に並ぶようにチェーン長を決める。
スプロケットの最大ギヤが28T以上
28T以上のワイドレシオなカセットを使う場合は、最もチェーンが張るアウターローでディレイラーが伸び切らないようにチェーン長を決める。
ディレイラーを通さずにアウターチェーンリングと最大スプロケットにチェーンを掛け、繋ぐことのできる最短の長さに2リンク足したチェーン長にする。
チェーンが長すぎるとインナーローでたるみやすくなったりチェーン落ちのリスクが増すほか、僅かだが重量増にもなる。
複数のスプロケを使う場合は、ディレイラーで対応できる最大スプロケットに合わせてチェーン長を決めておくと良いと思う。
なお11速のダブルテンションリアディレイラーでは、ショートケージ(SS)の最大スプロケットは28T、ワイドカセットに対応したロングケージ(GS)の最大スプロケットは32Tとなっている。
ディレイラー | 最大スプロケット歯数 | トータルキャパシティ |
デュラエース RD-9000-SS デュラエースDi2 RD-9070-SS アルテグラ RD-6800-SS アルテグラDi2 RD-6870-SS 105 RD-5800-SS | 23-28T | 33T |
アルテグラ RD-6800-GS アルテグラDi2 RD-6870-GS 105 RD-5800-GS | 28-32T | 37T |
余談だが、ロングケージのリアディレイラーは単にケージを伸ばすだけでなく、歯数差の大きいカセットに沿ってディレイラーが動くようにスラント角(ハブ軸に対するパンタグラフの角度)も変更されている。
そのためショートケージで大きすぎるカセットを使う場合、インナートップでチェーンのたるみを取り切れないだけでなく、ロー付近でプーリーとスプロケが寄りすぎたり、逆にトップで離れすぎるなどの問題が起きうる。
シクロクロスではRD-6870-SSをフロント42×11-32Tで運用しているけど…
ロードでは11-25Tと12-25T、あと11-28Tのカセットを使っているが、こういう場合、最もチェーン長が必要になる11-28Tを基準にチェーン長を合わせている。
②シングルテンションのディレイラーの場合
R9100デュラエース世代のロードコンポ(RD-R9100,RD-R8000,RD-R7000)とMTBコンポは、ケージ部分だけでチェーンのたるみを取るシングルテンションのディレイラーを採用している。
チェーン長の決め方はダブルテンションの28T以上の場合と同様に、最もチェーンが張るアウターローでディレイラーが伸び切らないようにする。
ディレイラーを通さずにアウターチェーンリングと最大スプロケットにチェーンを掛け、つなげる最短の長さに2~4リンク足したチェーン長にする。
注意点として、フルサスペンションのMTBの場合、リヤサスペンションのストロークに従ってBBとリアエンド間の距離が変化する。
そのため、フルサスMTBは最も長くなる場所でチェーン長を決めないと、実走でサスが沈んだときにディレイラーが破損する可能性がある。
また、上の写真のバイクのように、スライダーエンドを採用していてチェーンステー長を変えられる場合も、伸ばしきった状態でチェーン長を決めておくべきだが、そうすると今度はエンドを縮めたときにチェーンがたるんでしまう。
伸ばしきって使うことは無いしこれ以上大きいスプロケを入れるつもりも無いので、写真の位置でチェーン長を合わせている。
ロードのシャドーディレイラーの最大スプロケ歯数とトータルキャパシティは下表の通り。
スプロケットのワイドレシオ化に伴い、前世代のダブルテンションRDに比べて最大スプロケット歯数が2Tずつ増やされた。
また、9000系世代の11sロードコンポには存在した11-23Tカセットには(公式には)非対応となった。
ディレイラー | 最大スプロケット歯数 | トータルキャパシティ |
デュラエース RD-R9100-SS デュラエースDi2 RD-R9150-SS アルテグラ RD-R8000-SS アルテグラDi2 RD-R8050-SS 105 RD-R7000-SS | 25-30T | 35T |
アルテグラ RD-R8000-GS アルテグラDi2 RD-R8050-GS 105 RD-R7000-GS | 28-34T | 39T |
なお、最大の11-34Tカセット(CS-HG800-11)はMTB共用のギヤ比で、
11-13-15-17-19-21-23-25-27-30-34T
と、トップ付近も2T飛びになっているのでロードライドでは非常に使いにくい。
ただ、11-34TのCS-HG800-11は8-9-10sカセットにポン付けできる(11sフリーに取り付ける場合は1.85mm厚の11sスペーサーを使用)ので、古いホイールの再利用ができる。
チェーンの切り方・つなぎ方
チェーンの長さが決まったら、余分なリンクをチェーンカッターで切って取り除く。
ミッシングリンクを使う場合は両端がインナーリンクになるよう切ればいい。
アウターリンクはチェーンリング側に
チェーンピンでつなぐ場合、チェーン両端がアウターリンク・インナーリンクとなるように切る。
このときは、下図のディーラーマニュアルのように、チェーンリング側にアウターリンクが来る(図のA)ようカットするほうが強度が高くなる。
…試しに逆につないで使ってみて、まったく問題はなかったけど。
チェーンの向きに注意
シマノ11sチェーンは変速性能を高めるため、裏表でプレート形状が異なる。バイクの外側から刻印が見える向きにすること。
アウターリンクの方向なんかより、こちらのほうがずっと大事。
定期的なチェーン交換を
使用状況にもよるが、僕の場合11sチェーンの寿命はロードで4000~5000kmほど。
ところが、泥や砂がかかる環境で高トルクのペダリングを行うシクロクロスやMTBでは、寿命は半減する。
スプロケの寿命はおよそチェーン3回分だが、伸びたチェーンを使い続けると、チェーンリングやスプロケの摩耗も早め、チェーン交換時に歯飛びするようになる。こうなってしまうと駆動系まるごと交換になり、費用がかさんでしまう。
また、シクロクロスのように、複数のバイクで複数のホイールを使い回す状況では、チェーンとスプロケの組み合わせによって不調になると、非常に面倒なことになる。
チェーンの洗浄・注油を行って良い潤滑状態を保つとともに、定期的にチェーンの伸びをチェックして早めの交換を心がけたい。