リニューアルした「シマノ自転車博物館」を訪問

日本で唯一の登録自転車専門博物館「自転車博物館サイクルセンター」(堺市)が移転し、2022年3月25日(金)「シマノ自転車博物館」としてリニューアルオープンした。

開館翌日の土曜は雨。自転車にも乗れないので早速訪問し、自転車の歴史・文化をじっくり味わってきた。

自転車博物館がリニューアルオープン

堺市の大仙公園にあった「自転車博物館サイクルセンター」が、南海電鉄堺東駅からほど近い、堺区南向陽町に移転した。

シマノ自転車博物館

リニューアルオープンに伴って名前は「シマノ自転車博物館」に改められた。
展示スペースも3.5倍に拡充され、自転車の歴史や文化にじっくり触れられるようになっている。

入館料金

入館料金は一般500円。

料金個人団体(20名以上)
一般500円400円
高校生200円150円
大学生200円150円
入館料金(2022/3/25現在)

開館時間

開館時間10:00~16:00
休館日月曜日、 祝日の翌日(土日の場合は開館)、 年末年始
開館時間(2022/3/25現在)

アクセス

シマノ自転車博物館は、南海電鉄堺東駅から徒歩5分ほど。

駐車場は無いため、クルマで行く場合は、近隣のコインパーキングを利用する。
駐車料金の相場は40分200円 最大料金600円(24時間)ほどだった。

また、博物館の前にはサイクルラックが設置されている。

収容台数は少ない(10台程度)が、屋内駐輪場も用意されていた。

オープン翌日に訪問

オープンした翌日の3/25(土)に早速訪問した。

天気は朝から雨。自転車には乗れないし、絶好の博物館日和だ。

チケットのQRコードで入館

博物館の1階は無料の展示に加え、イベントスペース等がある。

チケットのQRコードをゲートにかざして、いざ有料エリアへ。

ゲートに入ってすぐ奥のシアターでは、自転車の歴史についての映像が上映されている。時間はたっぷりあるので最後まで観て、2階へ。

自転車の歴史をたどる

階段を上がった2階が、シマノ博物館のメイン展示エリア。

ここは大きく3つのゾーンに分かれており、自転車の「はじまり」「ひろがり」「これから」がテーマとなっている。

自転車発展の歴史

Aゾーンのテーマは「自転車のはじまり」。

円弧状の展示スペースに沿って 自転車の歴史を追う

自転車の原型「ドライジーネ」を始め、19世紀に登場した自転車(の祖先)が円弧状の展示スペースに並べられている。

ペダルの発明とペニーファージング、そして空気入りタイヤ、安全型自転車が登場し現在見慣れたスタイルに至るまでの発展を追うことができる。

ドライス男爵(ドイツ)が発明した自転車の原型「ドライジーネ」 車重24kg

ドライジーネは車体の殆どが木材で作られている。

シートは革製、後輪にはブレーキが装備され、シート高はネジで調整できるようになっている。後部には荷台も備える。

前輪はステアリング軸と、摺動する弓状の部品の2箇所で荷重を支える構造となっている。

今の感覚ではドライジーネは原始的だが、玩具ではなく、実用する移動用具として作られていたことが伺える。

弓状の部品を摺動させて前輪の荷重を支える

展示物の詳しい情報はタッチパネル端末で読むことができる。

備え付けのタッチパネル端末

19世紀の自転車の発展の歴史は、工業技術の発展の歴史でもある。

例えばホイールを取り上げると、初期は木製だったリム・ハブ・スポークはやがて金属製となり、19世紀後半にはスポークテンションで金属製リムを支え、車軸にボールベアリングを採用した現代的な構造が完成する。

こういった技術は、自動車や飛行機の発明・発展にも大きな影響を与えた。かのライト兄弟も自転車屋だった。

前輪で操舵し チェーンで後輪を駆動する「安全型自転車」

このエリアでは、20分ごとに自転車の発明と発展を追う映像コンテンツ(10分程度)が上映され、展示エリアが暗くなる。

しかし、展示品を見ていると10分間なんて一瞬。すぐに次の上映が始まり、照明が落とされてしまう…

結局、Aゾーンの展示品を見るのに3ターンくらいを要した

自転車ギャラリー

上映中は、裏手にある自転車ギャラリーへ。

ここでは、博物館が収蔵するバイク(の一部)を間近で見ることができる。

自転車ギャラリー

写真手前に映っている黒い物体は、1980年に時速91.19kmの速度記録を樹立したHPV(ヒューマン・パワード・ビークル)。

なお、2022年現在の速度記録は時速144.17km(2016年樹立)。クルマなら一発免停だ。

自転車ギャラリー内は、展示というより収納庫といった雰囲気。一部を除き解説文も無いが、マニアなら唸るバイクが吊るされている。

DH向けの空気圧変速システム「シマノ エアラインズ」のデモバイク

このエリアは吹き抜けになっており、通常立ち入れない3階と5階のガラス窓越しに非公開のバイクが見える。

2階から吹き抜けを撮影 3階と5階は非公開の収蔵庫 4階は特別展示スペース

圧巻のヒストリックバイク

入館から1時間半ほどを要して、近代から現代の自転車を展示するBゾーンに移動。

自転車の部品をネジ1本まで分解して並べた展示が目を引く。

パワーメーターの部品までバラバラに(ひずみゲージはクランク裏に隠れていて確認できず)

展示車も凄い。

三菱重工がゼロ戦に使用されるジュラルミン(超々ジュラルミン?)で作ったという「十字号」。

プレス成形された左右フレームを接合するリベット

元祖エアロコンポーネント「デュラエースAX」のデモバイク。

ヘッドチューブのフィンが「古き良きエアロ」っぽい

フネまで一体の 調整しにくそうなブレーキ
スタックハイト0mmを実現したDDペダル

世界初のマウンテンバイク「ブリーザー」。

ビーチクルーザーを改造して山下りを楽しむ「リパック」の流行より数年。ジョー・ブリーズの手によって1977年、「マウンテンバイク」という車種が誕生した。

Breezer(1977) 車重14.7kg

古いバイクだけでなく、現代のバイクも展示されている。

こちらは、2020東京五輪ロードレースに出場した増田選手のバイク。

タイヤはPanaracer AGILEST

Cゾーン「自転車とこれから」は、健康と環境に優しい自転車、みたいな内容の展示だったが、

私は(度を越した)サイクリングは健康にも環境にも悪いことを知っている。ここはサッと流して4階へ…

時間泥棒のライブラリー

4階は、回廊に沿って歴代のシマノコンポーネントが展示されている。

内側には非公開の収蔵庫があるようだ。

歴代のシマノコンポーネント

ライブラリーでは所蔵の書籍を読むこともできる。

ここが大変な時間泥棒。

バイシクルクラブ、サイクルスポーツのバックナンバーをはじめ、自転車に関する雑誌・書籍が大量に揃っている。

末期自転車オタクなら1日楽しめる

リニューアルしたシマノ自転車博物館。展示物だけなら、じっくり見ても2時間くらいだろうか。今回はライブラリに吸い込まれ、滞在時間は合計3時間少々だった。

…もっと資料を読み漁りたかったが、空腹には勝てなかった。

博物館の開館時間は10:00~16:00。当日中は再入館可能なので、午前中に展示を見て、昼食後、午後はライブラリに籠もるという楽しみ方ができる。ガッツのあるオタクはぜひ、1日がかりで楽しんでほしい。

余談:シマノ自転車博物館の立地

ところで、シマノ自転車博物館の住所は「堺市堺区南向陽町2-2-1」

この住所、昔はマエダ工業株式会社、すなわち、「サンツアー」の工場があった場所だという。

かつてのライバルの工場跡地に建つシマノ自転車博物館。

悪趣味という見方もあるかもしれないが、ここはかつての自転車産業の中心地。自転車博物館にふさわしい場所だと思った。

参考:シマノ自転車博物館とサンツアー -堺市より愛をこめて-

聖典「銀輪讃歌」(マエダ工業六十周年記念誌)