SOLESTAR KONTROL 2
ドイツで設計・製造されるサイクリングに特化したインソール。グラスファイバー製のコアで足裏を支えることで、ペダリングの安定感を高めると同時に痛みを軽減する。
高価な製品でありながら、個人にあわせたカスタム不要を謳っている点が特徴。重量もあるが世界中のプロレーサーの間で使用されている。
価格 16720円
長所 -Pros-
- カスタム不要。シューズに入れるだけで使える
- 足を軽くひねり、踏み込み時の安定感を高める
短所 -Cons-
- カスタムフィット不可なのに高価
- 一般的なインソールの倍以上の重量
- 厚みがありスタックハイトが増える
プロも使用する「カスタム不要の」インソール
サイクリングでは、足はペダルに固定されて同じ軌道を動き続ける。
ざっと計算すると、100kmもライドすればざっと数万回はクランクを回す計算になる。
ペダリングでは、踏み込んだ力がブレなくペダルに伝わることが求められる。
そのため、サイクリングシューズはソールが硬く、たわみにくい構造になっているのだが、ある意味シューズより重要と言えるのがインソールだ
サイクリングシューズのインソールはスニーカーの「中敷き」のような単なるクッションではなく、足裏とシューズの隙間を埋めるため立体的な形状をしている。
仮にインソールが無ければ、踏み込むたびにシューズの中で足はズレるし、足裏のアーチは崩れ、安定してペダルに力を伝えられなくなる。
また、脚の動きがブレたり、足裏に局所的に荷重が加わることで、膝や足裏の痛みを引き起こすこともある。
インソールは、シューズよりも重要と言っても過言ではない。
さて、どんなシューズを買ってもインソールは付属するが、品質は基本的にシューズの価格に比例する。
それなりのグレードのシューズには、フィット感や機能性に優れたインソールが入っているため、最上位モデルしか履いたことのない人は不満を感じたことがないかもしれない。
ただ、足に合わない場合や、さらなるフィット感を求める場合は、社外品のインソールに交換するという選択肢がある。
別売のインソールは、大きく分けて以下の3種類に分類でき、この順で価格も高くなっていく。
- 既製品
- セミカスタム
- オーダーメイド
既製品は、文字通り買ってシューズに入れるだけという製品だ。足の形、具体的には土踏まずの高さに合わせて数種類の形状を選択できたり、パッドを入れ替えられる構造のものもある。
セミカスタムは、大抵が熱成形、つまり熱で柔らかくなる素材でできており、オーブンで加熱し、柔らかくなった状態で足裏の形状に合わせることで、よりフィット感を高められる。
最後に、オーダーメイドインソールは、専門的な技術を持った技士が足の形状を測定し製作するものだ。時間も手間もかかるため高額になる。
他の用品と異なり、外から全く見えない部分だが、競技レベルの高い選手、長距離・長時間走るサイクリストほどインソールにこだわっている傾向がある(もちろん無頓着な人もいる…)。
さて、ソールスターはそんなインソールブランドのひとつで、ドイツで設計・製造が行われている。
プロ選手の使用率も高く、ファビアン・カンチェラーラをはじめ、アンドレ・グライペル、ワウト・ファンアールト、新城幸也といった、名だたる選手が愛用しているという。
最大の特徴は「カスタマイズの必要がない」こと。つまり上の分類では「既製品」に相当する。
ソールスターいわく、「足の形は人それぞれ違うが、サイクリングで最適なポジションは一つだけ」
同社インソールは、「スタビリゼーションデルタ」という考え方に基づき、足が一定のポジションに収まる形状になっている。
ドイツ体育大学で行われた研究では、ソールスターのインソールを使用すると平均出力が6.9%向上したという。
比較対象のインソールがどんなものだったかわからないけど…
ソールスター 「スタビリゼーションーデルタ」
① かかと関節のサポート : ソールスターコントロールはかかと関節に強力なサポートを提供します。足が直線になるため、圧力がかかる時に、足が曲がったり、内部で回転してしまうことを防ぎます。
② 前足部のサポート : 前足部の両端が持ち上がることで、足のグリップがなくなってしまうことを防ぎます。動力の伝達において理想的な足の位置は、シューズの中で固定されます。③ 足の親指関節を下げる : 親指の中足指節関節は、ソールスターインソールにより、通常よりも低い位置になります。
つまり、足がペダルに、より近づきます。結果として、足が継続的に本来あるべきポジションにクランプ(締め金)で押さえつけているように収まります。このセットアップをソールスター 『スタビリゼーション-デルタ』と呼んでいます。
https://www.rgtenterprises.com/brand-list-1/solestar-1/why-solestar/
ソールスターのインソールは非常に高価で、1.4~2.3万円ほどする。カスタム出来ない既製品なのに、一部のオーダーメイドインソールにも手が届く価格だ。
ただ、スティーブ・ジョブズ的な「俺が一番良いと考えるものが万人にとって一番良い」という、若干傲慢にも取れるスタンスが気になったので思い切って購入してみた。
最近ロードシューズを履き替えて、足裏の痛みに悩んでいたし…
コントロール2
ソールスターのサイクリング向けインソールは3種類。競技志向が高い順に
- BLK 2(ブラック2) 23100円
- KONTROL 2(コントロール2) 16720円
- TOUR(ツアー) 14300円
となっている。TOURはMTBやCX、ツーリングなど、降車して歩くことも想定しているようで、ロードバイクでの利用ならBLKかKONTROLが適している。
BLKとKONTROLの違いは、足裏アーチ部を支える「コア」の素材。
BLKは高剛性のカーボンファイバー、KONTROLはグラスファイバーを使用している。
カーボンは硬すぎるため、敢えてKONTROLを使うプロ選手もいるらしいので、今回はとりあえずKONTROLを購入した。
ソールスターは、シューズに合わせたサイズを購入して、切らずに使うことになっている。
ただ、今回はシューズ付属インソールの長さを測り、42サイズのシューズ(TREK RSL Road)に対して43サイズのインソールを購入した。ちなみにインソールの全長は273mm程度(43サイズ)だった。
箱を開けると重量感のある立体的なインソールが出てくる。インソール自体は硬く、容易には曲がらない。
下の写真の角度で見るとわかりやすいが、土踏まずというより、踵内側が大きく盛り上がった形状になっている。
インソール中央付近にはグラスファイバー製のコアが配置されている。
このコアが土踏まずを支え、ペダリングで踏み込む足を安定させるが、同時に僅かに変形するようになっている。
BLKはここがカーボン製でガチガチに硬く、より高出力な踏み込みに対しても変形を抑えられるらしい。
よく見ると多層構造になっており、母指球と小指球の間に膨らみがあったり、踵が凹んでいたりと複雑な形状だ。高いだけはある。
重量を測ってみると、ご覧の通り。かなりの重量級だ。
手元にあったスペシャのBGインソールと比べると、なんと80g差。ヒルクライマーが卒倒しそうだ。
ちなみにスペシャのインソールが特別軽いわけではない。ハイエンドシューズのインソールは40~50g程度だ。
このインソール、重量差を正当化出来るほど良いのかどうかが評価のポイントになる。
使用感
シューズを履いて走り出すと、最初は土踏まずが圧迫される感覚があった。失敗したかと思ったが、しばらく走ると違和感はなくなった。
ソックスの厚みや体調で変化するのか、ちょっと痛い日もあれば、逆に全く気にならない日もあった。いずれにせよ、私の場合は馴染む範囲らしい。
ただ、足のアーチが低い、扁平足気味の人は痛くなるんじゃないかと思う。
何日か乗り込むと、このインソールの特徴「スタビリゼーションデルタ」がどういうコンセプトかわかってきた。
下図の①には硬い芯があり、③は②よりわずかに低くなっている。
したがって、踵内側は持ち上げられ、小指球を支え、母指球は少し低くなることで足をねじるような力がかかり、足首から下がガッチリ固定されるのだ。
足裏とシューズの隙間を埋める通常のインソールとは異なり、ソールスターはこの3点で骨の位置を固定する。
足首から下の動きが制限された結果、足が左右にブレず、まっすぐ踏み込めるようになる。
ヒルクライムやダンシングといった高トルクが掛かる場面や、ペダリングが乱れるスプリント時には特に安定感を感じた。
かなり硬いインソールなので長距離で足裏が痛くならないか心配だったが、アワイチ160kmくらいでは問題は起こらなかった。
まとめ:足首から下をガッチリ固定
「スタビリゼーションデルタ」で足をねじり、踏み込み時の安定感を高めるというコンセプトのソールスター。
土踏まずのアーチを支えつつ足裏とシューズの隙間を埋める通常のインソールとは異なるコンセプトだが、その効果は、特に高負荷のペダリングではっきり感じられた。トッププロに支持されているというのも頷ける。
一方で欠点は、インソール自体の重量が重いことと、厚みがありスタックハイトが高くなってしまうことだ。
また、既製品ゆえ、足の形によっては合わない人もいるだろう。
確かに価格は高い。両足それぞれで50ユーロ紙幣を踏んでいるようなもので、試すのには勇気がいる。
ただ、限られた力をより効率よくバイクに伝え、より速く走りたいのなら、値打ちのある投資だと思う。