【レビュー】タケスポ センターロック ディスクブレーキローター位置調整用シム「タケスポシム」 ~シクロクロスでの複数ホイール運用が快適に キャリパー位置調整を不要にする専用シムリング~

TAKESPO Disk Brake Rotor Shim SS-01006

センターロックディスクブレーキのローター位置を調整するためのシム。
ホイールによって個体差のあるローター位置を揃えることで、ホイール交換時のキャリパー位置調整が不要になる。

シムは錆びにくいステンレス製で厚みは0.1mm。6枚入。

本稿でレビューする商品はタケスポ様からの提供品です

価格 2530円(6枚入)

長所 -Pros-

  • ホイール交換時のキャリパー位置調整から解放される
  • センターロックディスク専用のサイズ

短所 -Cons-

  • 厚み0.1mmはやや薄い
  • 手持ちホイールが多い場合はコストが気になる

ディスクブレーキユーザーの悩み

MTBやシクロクロスに続き、ロードバイクの世界でもすっかりディスクブレーキが主流になった。

ディスクブレーキ最大のメリットはコントロール性だ。
(油圧ディスクブレーキは)ブレーキタッチがリニアで、意図した制動力を引き出しやすい。また、水分や温度の影響を受けづらく、制動力が安定することもメリットだ。
重量増やメンテナンスの難しさ、高価格化など、ディスクブレーキを敬遠するユーザーも多いが、ブレーキシステムとしてはずっと優れていると言える。

そんなディスクブレーキだが、ブレーキレバーからの入力を「強く短い」動きに変換するため、パッドの移動量はごく僅かだ。ブレーキローターとパッドの隙間は0.5mm足らずだ。
一方、ホイールによってブレーキローター位置は微妙に異なるので、ホイールを交換するとローターがパッドに擦ってしまうことがよくある。
そのため実際の運用では、ホイールを交換するたびにブレーキキャリパー位置を微調整する必要がある。

ホイール交換のたびにブレーキキャリパーの微調整が必要

この作業、たまに気分転換でホイール交換するくらいなら大した手間に感じないが、頻繁にホイールを交換する場合は地味に面倒だ。
私が取り組んでいるシクロクロスレースでは、コースコンディションにあわせて使用するタイヤを変えるので、ホイールを何セットも用意するのだが、コンディションが変わるたびに何度もキャリパー位置を微調整するのは大変だ。
また、レース中パンクしてホイールを交換した場合は、悠長にキャリパー位置を調整する余裕はない。結果、ローターを擦りながら走ることを強いられる。

手持ちホイールのハブを統一するという方法もあるが、あまり現実的ではない…やっている人がいないわけではない。

専用シムでローター位置を補正

ホイールごとに異なるブレーキローター位置の誤差を吸収し、キャリーパーの調整作業をなくすアイテムが、山形市のサイクルショップ「タケスポ」が販売する「センターロック ディスクブレーキローター位置調整用シム:タケスポシム」だ。

自転車のディスクブレーキには、

  • 6本のボルトで締める「6ボルト」
  • ロックリングで締め付ける「センターロック」

の2種類があるが、タケスポシムは現在主流のセンターロックタイプに対応している。

シムは錆びにくいステンレス製で、厚みは0.1mm。これをブレーキローターとホイールの台座の間に挟んで使用する。
1パックに6枚入りなので、複数重ねてオフセット量を調整できる。

これは工業的には「シムリング」と呼ばれる部品だ。
小さいものは数mmから、大きいものは数10mmまで、様々な直径、厚さのシムが市販されている。
ただ、センターロックディスクブレーキに合うサイズは展開されていない。

タケスポシムはつまるところ、サイズオーダーしたシムリングだ。
シマノ製センターロックブレーキローターの台座に寸法を合わせてあるが、もちろん他社のブレーキローターでも使用可能だ。

タケスポシムの価格は6枚で2530円。高く感じるかもしれない。
しかし、そもそも近いサイズのステンレス製シムリングは1枚200~300円ほどする。
こういう部品はレーザーカットや放電加工で製造し、場合よっては研磨で仕上げることもある。小さくて薄いから安い、というわけではないのだ。

なお、個人で数個~10数個の特注シムをオーダーするくらいなら、タケスポシムを買うほうがずっと安い。

取り付けと調整

タケスポシムの取り付け作業自体は簡単で、いくつかコツはあるものの、ブレーキローターとホイールの台座の間に挟むだけだ。
しかし、位置を揃えるのは(難しくはないが)面倒だ。
一度やってしまえば今後のキャリパー調整が不要になると思って、腰を据えてやろう。

まず、手持ちのホイールの中で、ディスクブレーキローターが最も左寄り(外側)になっているものを探す。
バイクに取り付けて確かめるのが手っ取り早い。そして、そのホイールでパッドの隙間が左右均一になるようにキャリパー位置を調整する。

注意点として、ある程度の期間使い続けたディスクブレーキはパッドが偏摩耗していたり、ピストンが不均等に出ていたり、ローターが薄く減っていることもある。
できればパッドとローターが新品の状態でこの作業を行うことが望ましい

基準ホイールでキャリパー位置を合わせる

基準となるホイールでキャリパー位置をあわせたら、他のホイールを順次取り付け、ローターが右側パッドに擦るものについてはシムを追加し、キャリパーの中心に来るように合わせていく。
このときも、摩耗していないブレーキローターを使うのが望ましい。ホイールによってローターの厚みが異なると、ピストン戻しの作業が必要になるからだ。

シムの取付は、ホイールを水平にした状態で行う。立てた状態ではシムの中心が偏ってしまうためだ。

シムの偏りに注意

タケスポシムの寸法はシマノ製センターロックブレーキローターに合わせてあるため、薄くグリスをつけ、ローター側にシムを貼り付けると作業しやすい。
シムは薄いため、手を切らないように、また、曲げないように注意して扱うこと。

センターロックのロックリングの締め付けトルクは40-50Nm
取り付け後、ローターをパーツクリーナーで脱脂して作業完了だ。

実際にローター位置を調整してみると、0.1mmのシムはやや薄すぎると感じた。2枚(合計0.2mm)以上で使うことが多かったので、1枚あたりの厚みが0.15~0.2mmくらいあればベターだと思う。
しかし、気になった点はそこぐらい。センターロックブレーキ専用のサイズだけあって、外径がローター基部と揃っているので目立たない

シムを2枚挟んだ状態

まとめ:頻繁にホイール交換するならば

ディスクブレーキバイクで複数ホイールを運用する上で問題となる「ローター位置のズレ」を補正する本製品。
ホイール交換でキャリパー位置を調整したことがある人なら、タケスポシムがどれだけ便利か想像できると思う。

とはいえ、6個で2500円だ。
ものづくりの業界の隅っこにいる者として、相応の金額であることは納得できる。
むしろ、タケスポが大量にオーダーして小売してくれることで、個人で特注するよりずっと安く手に入るのだが、それでも正直、割高に感じるのも事実だ。

導入の可否を検討するにあたってポイントになるのは、ホイール交換頻度だと思う。

ホイール交換時のキャリパー調整に5分かかるとしても、これが年に2~3回、自宅で行うくらいならさして手間には感じないだろう。
だが、この作業が頻繁にあり、それも屋外で時間に追われる状況となるとどうだろうか。

冒頭に書いたように、シクロクロスでは路面コンディションに合わせたセッティングやレース中のパンク対応でホイールを交換することが多い。
しかも、レースはほぼ毎週ある。

こういう人にとっては、タケスポシムの効果は絶大だ。
ホイール交換時にキャリパー位置を触らなくて良いのは想像以上に快適で、時間が限られたシクロクロスの試走時でも、気軽にホイール交換していろんなタイヤを試せるし、レース中にホイール交換してもローターを擦ることはない。

一度買ってしまえば、変形させない限りは長期間使える本品複数ホイールを運用するシクロクロッサーなら、導入して絶対に損はないと感じた。

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