【レビュー】パナレーサー アジリスト ブロンプトン用 16×1.35(35-349) ~ロード譲りの高性能を16インチに ブロンプトンユーザー必見の国産タイヤ~

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Panaracer AGILEST 16×1.35(35-349) F16135-AG-B / F16135-AG-AX

パナレーサー「アジリスト」に、ブロンプトン用の16インチサイズが新たに追加された。ロードバイクで高い評価を得たグリップ力や転がりの軽さ、乗り心地といった性能はそのままに、ブロンプトン向けに最適化されている。
丹波市にあるパナレーサー本社工場で生産され、高品質ながら海外製品に比べて価格も手頃なのも魅力。ブロンプトンの新たな定番となりうるタイヤだ。

価格 6380円

パナレーサー PRパートナーとしてプロモーション活動を行っています。
本品はパナレーサー株式会社様より提供いただいた製品です。

長所 -Pros-

  • グリップ・転がり・乗り心地の両立
  • ハイエンドタイヤの中では手頃な価格

短所 -Cons-

  • 競合製品に比べてやや重い
  • グラベルやキャンプツーリング的な用途には向かない
目次

都市生活者向けの折りたたみ自転車 ブロンプトン

アンドリュー・リッチーが約40年前に考案した折りたたみ自転車「ブロンプトン」は、ロンドンの慢性的な渋滞や満員電車、狭くて家賃の高い住宅事情、さらに盗難の多さや雨の多さといった都市環境に合わせて設計された。
折りたたみ自転車ならば輪行も容易だし、狭い集合住宅でも保管スペースをとらない。

イギリス国内生産ゆえ高価なバイクではあるが、ロンドンと同様に都市部で暮らす人が多い日本の環境とも親和性が高く、通勤・通学や街乗り用自転車として愛用するユーザーも多い。

そんなブロンプトン最大の特徴は、40年前の初期モデル(Mark1)から大きく変わっていない、完成度の高い折りたたみ機構だ。
折りたたんだ状態ではコンパクトな箱型のシェイプになるうえ、シートポストがスイングアームをロックするため車体がバラけない。もっと軽い折りたたみ自転車は世の中にたくさんあるが、この小ささと取り回しの良さは唯一無二と言って良い。

Brompton Mark.1(1980年頃)

16インチ(349)タイヤの選択肢

ブロンプトンが採用しているホイールは16インチWO(ETRTO 349)というやや特殊なサイズだ。
多くの折りたたみ自転車に採用される20インチHE(ETRTO 406)より一回り小さく、キッズ用バイクに使われる16インチHE(ETRTO 305)よりも大きい。
この絶妙なサイズのホイール径が、走行性能とコンパクトさを両立するポイントになっている。

ほぼブロンプトン専用と言って良いサイズのタイヤだが、選択肢は意外に多い。
25mmの極細軽量タイヤから世界一周に使えるような高耐久タイヤ、中には凍結路用のスパイクタイヤまで存在する。

これらを網羅するとそれだけでひとつの読み物になってしまうため、ここでは2025年1月現在、ブロンプトンが純正で採用している4種類のタイヤを紹介する。

※20インチホイールを採用するブロンプトン G Lineは本記事では除外する

シュワルベ マラソンレーサー 16×1-1/3(35-349)

スタンダードなブロンプトン C LineのExploreモデル(Mハンドル 6速)が純正採用しているタイヤ。
普段から使える頑丈さと走りの軽さを両立したオールラウンドな性能で、街乗りから泊りがけのツーリングまで、たいていどこでも走れる定番タイヤと言える。

280g 6050円(ケブラービード)

シュワルベ コジャック 16×1-1/4(32-349)

C Lineの中でもスポーティーなUrbanモデル(Sハンドル 2速)が純正採用する。
幅1-1/4インチ(32mm)と細いスリックタイヤで、スピードを重視している。

見ての通りレース用タイヤという印象で、軽量ゆえ素早く加速でき、転がりも軽い。
過去2度出場したブロンプトン世界選手権ではコジャックを使用した。
一方で耐久性は低く、ハードに使うと内部でケーシングが切れてタイヤが膨れてくる。

なお、シュワルベから販売されている市販コジャックはワイヤービードだが、ブロンプトンのオプションパーツとして購入できるものはケブラービードで、サイドに反射材が施されている。

230g 4950円(ワイヤービード)
184g 8800円(ケブラービード)

コンチネンタル コンタクトアーバン 16×1.35(35-349)

チタン製のフォークとスイングアームを採用した軽量ブロンプトン P Lineに純正採用されるタイヤ。
2020発売の比較的新しいタイヤで、独特のトレッドデザインが新鮮だ。

使用したことは無いので評価は控えるが、ワイヤービードのほうは価格も手頃で、タイヤ交換時の定番となっているようだ。

265g 5000円(ワイヤービード)
205g 6600円(ケブラービード)

シュワルベ ワン 16×1.35(35-349)

チタンフレームの最上位モデル T Lineに採用されるハイエンドなタイヤ

2019年頃発売のタイヤだが、とにかく軽量で、よく転がるらしい。
高いので使ったことはないが、走行性能が高い一方で耐パンク性に劣るらしい。

170g 9900円(ケブラービード)

待望の国産ブロンプトン用タイヤ パナレーサー アジリスト

このように、走行性能に優れたハイエンド帯のタイヤとなると、今までは以下の2製品という状況だった。

  • コンチネンタル コンタクトアーバン 16×1.35(35-349)205g 6600円(ケブラービード)
  • シュワルベ ワン 16×1.35(35-349)170g 9900円(ケブラービード)

そこに新たに加わるのが、初の国産ブロンプトンタイヤ、パナレーサー アジリストというわけだ。
(以前からラインナップされているパナレーサー クロスタウンは海外生産)

実は以前から「ブロンプトン用アジリストを作るべきだ」と要望を出していた。
ラインナップ状況をまとめた資料まで作ったのだが、いつのまにか話が進んでいたようで、念願かなってのリリースとなった。

今回の製品は、従来の700cアジリストのブロンプトン用サイズ、という位置づけになっている。
そのため、コンパウンドやケーシングは基本的に同一。アジリストの美点である、低い転がり抵抗、高いグリップ、そして振動吸収性の高さをブロンプトンで味わえる。
ただし、トレッドやケーシングの厚みに関しては小径車の特性にあわせて調整が加えられている。

ただし、トレッド部のみ耐パンクベルトが入るロード用アジリストに対して、ブロンプトン用アジリストではケーシング全体を覆う耐パンクレイヤーが採用されている。

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トレッドデザインも異なる。スリックの700c版に対して、ブロンプトンサイズではショルダー部に杉目のパターンが刻まれる。ちょうど、アジリスト チューブラーと同じようなパターンだ。

公称重量は225g。実測重量は2本計測して218g, 216gだった。

タイヤ幅はブロンプトンで標準的な16×1.35(35-349)。
アンバーサイドとブラックサイド、2色で展開される。

サイズ16×1.35(35-349)
規格チューブド
ビードフォールディング
品番F16135-AG-B (ブラック×ブラックサイド)
F16135-AG-AX (ブラック×アンバーサイド)
重量225g
価格6,380円(税込)

使用感

事前に先行生産品を送ってもらったので、シュワルベ マラソンレーサー 16×1-1/3(35-349)から交換して実走テストを行った。
バイクはブロンプトンのスーパーライトモデル(P6L-Xをフラットバーに交換し、外装3段変速にカスタムしたもの)。

クリンチャータイヤということで、タイヤ交換に特に難しいところは無し。最近はチューブレスタイヤばかり扱っていたので、リムにビードをはめ込むのが楽に感じられる。

ホイールを車体に取り付けたら空気を入れる。(先に空気を入れるとブレーキシューが干渉するので注意)
ブロンプトン社の推奨空気圧は65~115PSI(4.5~7.5 BAR)となっている。
35mm幅とはいえエアボリュームが小さいので、いつも通り5bar程度に設定して走り出す。

コンパウンドはモチモチ系。一皮剥けてから改めて感触を確かめると、ロードノイズが静かでよく転がるし、タイヤ自体がしなやかで乗り心地も良い
走行性能の面では、加速が良くなったうえに、速度の維持がしやすくなった
タイヤ交換によって、ブロンプトンの走行性能が一段上がった印象だ。

モッチリしたコンパウンドから予想される通り、グリップも良好。
流石に峠のダウンヒルを攻めたりはしていないが、ハンドリングに不安は無かった。

小径車の走行性能の足を引っ張っているのは、700cに比べて直径が小さいタイヤとホイールだ。
小径タイヤは転がり抵抗が大きく、振動吸収性にも劣るだけに、タイヤの性能差がより顕著に現れると感じた。

他に気になる点といえば耐久性だろうか。
小径タイヤは想像以上に速く減る。ブロンプトンのタイヤ周長はロードの6割強。タイヤの寿命はざっくり半分と考えて良い。
ただし、今回は合計100km程度しか走っていないため、耐パンク性と耐摩耗性については評価外とする。

あとは細かい点だが、杉目の部分に砂粒が挟まりやすい点は少々気になった。

まとめ:ブロンプトン用ハイエンドタイヤの新たな選択肢

初のブロンプトン用国産タイヤとしてリリースされたアジリストは、ロードバイクで評価の高い性能が16インチに落とし込まれ、他社ハイエンドタイヤに並ぶスペックを備えていた。
長く待った甲斐があるというものだ。

  • パナレーサー アジリスト 225g 6380円
  • コンチネンタル コンタクトアーバン 205g 6600円
  • シュワルベ ワン 170g 9900円

重量や価格を比較すると、コンチネンタルのコンタクトアーバンが最も近いライバルといえる。
ただ、パナレーサーは国産ゆえ、供給が安定していていつでも入手しやすい。セール等で実売価格がさらに安くなることがあるのもポイントだ。

最も軽量なシュワルベ ワンは、軽量ゆえパンクしやすいという報告もあり、レース用タイヤの趣が強い。
その点、アジリストは2社とくらべてやや重いが、その分、普段使いに十分耐える耐久性を備えていると期待できる。
タイヤを扱った感じ、極端に薄く弱い印象も抱かなかったので、本格的なグラベルライドや大量の荷物を積むキャンプツーリングのようなヘビーな使い方でなければ、不満なく使えるはずだ。

小径車の走行性能を底上げできる軽量さと転がりの良さを備えつつ、普段使いできる価格帯のアジリストは、今後「ブロンプトンの定番タイヤ」になるはずだ。


もう昔の話になるが、私は2018年と2019年、イギリス・ロンドンで開催されたブロンプトン世界選手権(BWC:Brompton World Championship)に日本代表として出場した。

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BWCはクリテリウム形式のレースが行われ、バッキンガム宮殿のすぐ近く、セントジェームスパークを周回する。
小径車とはいえ、平均時速は40km/h、ゴールスプリントは50km/hを超える

BWCのレース現場では、軽量で転がりが良いだけではなく、より大径のタイヤが求められている。
ブロンプトンが実現できる最大ギヤ比は58×11Tあたりで、レーススピードではどうしても脚が回りきってしまう。そのため、より直径が大きく、実質的なギヤ比を大きくできる16×1.35(35mm)サイズのタイヤが選ばれることが多い。

軽さと転がりを備えて、タイヤ幅は1.35。乗り心地もグリップも申し分ない。
もし再び世界選手権に出場するなら、アジリストでレースに臨みたい。

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