ポジションを変えたり、パーツ交換を行う時には、変更前のポジションを記録しておかなければ、もとに戻せなくなってしまう。
今回は、サドル位置を微妙に調整してポジションを詰めていく状況で、サドルポジションを正確に記録・再現する方法を紹介する。
サドルポジションの一般的な測り方
一般的には、サドルのポジションは以下のような方法で、クランク軸(BB軸)に対する
- サドルの高さ
- サドルの後退量
- サドルの角度
を測る。
クランク軸を基準としたサドルの位置を記録できるため、違うバイクのポジションを比較したり、揃えたりできるが、測定誤差が大きく合わせにくい。
高さ
サドル高は、BB軸中心からサドルトップまでの距離をメジャーで測る。
メジャーは、コシのある金属製で、端がL字の金具になっているものがおすすめ。
シートチューブ沿いに測ったり、サドルトップの中央部まで測ったり、測定位置は人によって様々。
サドル上面と目線の高さを合わせて、真横から目盛りを読み取る。
後退量
後退量は、サドル先端から錘を付けた糸を垂らし、BB軸との距離を定規で測る。
水平な地面にバイクを置いて測るのはもちろん、振り子の揺れが収まってから静かに測る必要がある。
サドル先端から錘を付けた糸を垂らす クランク軸と糸の距離を測定
角度
角度は、水平な地面にバイクを置き、サドル上に平らな板を置いて角度を測る。
昔は角度計が必要だったが、今どきはスマートフォンのアプリで角度を測ることができる。
問題点
- サドルの高さ
- サドルの後退量
- サドルの角度
を直接測定する方法は単純でわかりやすいが、
- 測定誤差が大きい
- 測定に手間がかかる
という欠点がある。サドル高も後退量も、測定のたびに2~3mmくらいバラつく。
1~2mm刻みでポジションを詰めていくには、もっと正確に、すばやくサドル位置を測れねばならない。
特定のバイクでポジションを再現するための測り方
フレーム・サドル固有の値になってしまうが、固定された2点間を直接測ってやると短時間で正確に測れる。具体的には
- サドル高の代わりに、クランク軸からサドルレールの距離
- サドル後退量の代わりに、サドル先端からフォークコラムの距離
を測る。
サドルレール高
クランク軸からサドルレールまでの距離を測る。
レール上の測定ポイントは予め決めておく(クランプ領域の中央など)。
メジャーを直接当てられるので、サドルと目線の高さを合わせなくても良いのがミソ。
サドルによって座面からレールの距離は異なるので、サドルの種類が変わるとこの値も変わる。
サドル~コラム長
サドル後退量測定は手間がかかる上誤差が出やすいため、サドル先端からフォークコラム中心までの距離を後退量の目安にする。
サドル先端にメジャーの端を当てて、フォークコラムのヘッドキャップ中心までの距離を測る。
サドル先端を基準にする フォークコラム中心までの距離を測る
ただし、この距離は、トップ長やフォークコラム長の影響を受ける。
角度
一般的な測定方法と同様、サドル上面に板を置いて角度計やアプリで測定する。
ポジションの記録と復元
- サドルレール高
- サドル~コラム長
- 角度
をメモ帳なりエクセルなりに記録しておけば、ポジションを変えても、いつでも以前のサドル位置に戻すことができる。
簡単に元に戻せるからこそ、最適なポジションを探って試行錯誤ができる。
複数のバイクでポジションを統一する意味は薄い
サドルポジションを測定する方法を紹介した。
「バイクやサドルが変わったら意味がないじゃないか?」と思うかもしれないけど、
違うフレーム、違うサドルで数値を揃えることにあまり意味はない。
サドルの高さはパッドの沈み具合によって変わるし、腰が落ち着く前後位置も違う。
たとえばショートノーズサドルの場合、同じ後退量でも前乗りになる。
フレームのジオメトリや剛性が違えば、最適なサドルポジションも微妙に変化する。
ドロップハンドルのバイクだけでも数台所有しているが、完全にポジションが一致するのは、フレーム・サドル・ハンドル・ペダルを統一したシクロクロス2台だけ。
他のバイクは、だいたい同じフィーリングにしてもサドル高や後退量が数ミリ違う。
結局のところ、バイクごとに「しっくりくるポジション」を探っていく必要がある。