シマノの初代電動コンポーネントである7970系デュラエースを除き、6770系アルテグラ以降のDi2は同じ規格のケーブルを使用し、相互に接続できる。
しかし、各ユニットには互換性があり、組み合わせによっては動作しない組み合わせがある。
現在、Di2のバイクが3台と、コンポが1台分あるが、毎回調べるのが面倒なので要点をまとめておく。
なおDi2を含むシマノの各コンポーネントの互換性については、以下リンク先で確認できる。
前後ディレイラー(FD,RD)
フロントディレイラー(FD)とリヤディレイラー(RD)の組み合わせには2つのルールがある。
- 変速段数が揃っていること
- ロード用/MTB用で統一されていること
変速段数が揃っていること
2021年3月現在、Di2コンポーネントには10速と11速があるが、RDが10速用の場合、FDも10速用でなければ動作しない。
といっても、10速のDi2コンポは6770系アルテグラDi2だけなので、
RD-6770、RD-6770Aと組み合わせることができるFDは、FD-6770のみとだけ覚えておけば良い。
ロード用/MTB用で統一されていること
ロード用FDにはロード用RD、MTB用FDにはMTB用RDを組み合わせる必要がある。
グラベルコンポのGRX Di2はロードコンポに分類される。
シフターは制限なし
シフターはDi2のシステムでは単なるスイッチとして振る舞うので、10速でも11速でも、ロード用STIでもMTB用シフターでも、あるいはアーバン用コンポでも好きなものを選べる。
所有するロードバイクは右レバーがST-6770で左レバーがST-9070という構成だが、これでも正常に動作する。
ただし、シフトユニットは1台のバイクに合計6個までとなっている(STIの専用ポートに直結するスプリンタースイッチ(SW-R610)はカウント外)。
左右STIで2個+DHバーに2個+サテライトスイッチという組み合わせはもちろん、STI×4個というのも可能。
ちなみにスイッチの割り当ては設定アプリE-tube Projectで自由に編集できる。シクロクロスはフロントシングルなので、右レバーは大ボタン・小ボタン両方シフトアップに、左レバーはシフトダウンに設定している。
ジャンクションA/ディスプレイとバッテリー(マスターユニット)
Di2のシステム構成で一番ややこしい点がジャンクションAとバッテリーの組み合わせ。
新しいユニットだけで組むなら問題は起きないが、旧世代のジャンクションAやバッテリーを使う場合には互換性に注意を払う必要がある。
ジャンクションA/インフォメーションディスプレイ
ジャンクションAは、シフトスイッチからの信号を取りまとめるユニット。変速調整用ボタンや、内蔵バッテリーの充電ポートも備える(SM-EW67-A-Eは充電ポート無し)。
インフォメーションディスプレイはロードバイクにも取り付けできるが本来はMTB用で、ジャンクションAの機能に加えて、現在のギヤ段数やバッテリー残量などを表示する画面がついている。さらに、BluetoothとAnt+の通信機能も内蔵している(SC-M9050はBluetooth・Ant+とも非搭載)。
Bluetoothを内蔵していると、スマホのE-tube Projectアプリから無線でDi2の設定やファームウェアアップデートが可能。
バッテリー(マスターユニット)
バッテリーは「マスターユニット」というDi2のシステムを司る部分になっている。バイクに合わせて、フレームにネジ止めする外装タイプと、シートピラー内などに収納する内蔵バッテリーがある。
外装バッテリー | 内蔵バッテリー | |
旧型 | SM-BMR1 SM-BMR2 | SM-BTR2 |
新型 (BT,シンクロシフト対応) | BM-DN100 | BM-DN110 |
それぞれ旧型と新型があるが、Bluetooth接続機能やシンクロシフトを利用するには、新型マスターユニットが必須※1となっている。
特に、Di2のシステムにBluetoothユニットが存在する場合※2、旧型バッテリーでは変速すらできなくなる。
※1 例外的に、SC-M9050と旧型バッテリー、MTB用ディレイラー前後の組み合わせに限りシンクロシフトを利用できる。
※2 BluetoothユニットEW-WU111を繋ぐ場合、またはBluetooth機能を内蔵するインフォメーションディスプレイを使用する場合。
動作する組み合わせ
ジャンクションAとバッテリーの組み合わせについて、
- Bluetoothユニットが存在する場合、新型マスターユニットBM-DN100/BT-DN110が必須
- ジャンクションAにSM-EW67-A-Eを使う場合、旧型外装バッテリー(SM-BMR1/2)のみ対応
よって、各パーツの互換性をまとめると以下のような対応表となる。
旧型バッテリー SM-BMR1/2 SM-BTR2 | 新型バッテリー BM-DN100 BT-DN110 | ||
① | ジャンクションA EW-RS910 SM-EW90-A/B ディスプレイ SC-M9050 | ○ | ○ |
② | Bluetooth内蔵ディスプレイ SC-M9051 SC-MT800 または ①+Bluetoothユニット(EW-WU111) | × | ○ |
③ MTB用RD非対応 | ジャンクションA SM-EW67-A-E ディスプレイ SC-S705※ | ○ (EW67は外装バッテリーのみ) | × |
※SC-S705はシフト調整ボタンが無いため、E-tube Projectアプリ経由で変速調整が必要
SM-EW67とSC-S705は、ロード系リヤディレイラーと旧型バッテリーのみに対応する。
加えて、6770アルテグラDi2用のSM-EW67-A-Eには充電ポートが無いため、外装バッテリーマウントSM-BMR1/2との組み合わせでしか使えない。
あんまり需要無いと思うけど、SM-EW67だとMTBのdi2は動かない。
— Baalのようなもの@扶養不休 (@E_NxD) March 4, 2021
現行販売されているバッテリー(マスターユニット)とジャンクションAを組み合わせるなら、こんな互換性に注意を払わなくとも、何ら問題なく動作する。
ただ、旧型バッテリーマウントや6770系アルテグラDi2のジャンクションAはヤフオク・メルカリでとにかく安いので、対応表にしたがってうまく取り入れれば低コストでDi2システムを組める。
配線について
シマノDi2では、どこに何が接続されているかは問題ではなく、必要なパーツがケーブルでどこかに繋がってさえいれば動作する。
最低限必要なパーツは以下の4点。
- シフター
- ディレイラー
- ジャンクションA
- バッテリー(マスターユニット)
ジャンクションBは、単なるハブなのでなくても構わない。
フロントシングルのシクロクロスバイクは、長いケーブルを使ってジャンクションAからバッテリーおよびRDに直接配線している。
システム構成例
インフォメーションディスプレイでギヤ位置を表示したい
インフォメーションディスプレイ(SC-M9051,SC-MT800)にはBluetoothが内蔵されているので、新型バッテリー(BM-DN100,BT-DN110)が必要
ただし、廃盤のSC-M9050を使う場合は例外的に旧バッテリー(SM-BMR1/2,SM-BTR2)でも運用可能(Bluetooth非搭載のため)。
MTB用ディレイラーには非対応だが、SC-S705(アルフィーネDi2)も旧バッテリーで使える。
ただし、変速調整ボタンがなかったり、ケーブル接続口が2ポートしかなかったりするので運用が少し面倒ではある。
ポート不足はEW-JC130-SM 分岐ジャンクションで解消できる。
シンクロシフトを使いたい
シンクロシフト(正式にはシマノ・シンクロナイズドシフト)は、前後ディレイラーを連動して変速する機能。
- シンクロナイズドシフト…リヤディレイラーのギヤポジションに合わせて自動的にフロント変速
- セミシンクロナイズドシフト…フロント変速時にリヤも変速し、ギヤ比変化を和らげる
シンクロナイズドシフトモードでも手動でのフロント変速は可能なので、峠のピークなど、急な勾配変化があるときにも対応できる。
シンクロシフトはもともとM9050XTRで採用され、その後ロード系コンポでも使えるようになった機能だが、動作に必要な条件はロード・MTBで異なる。
ロード
ロード系ディレイラーの場合、FD-6770、RD-6770以外のディレイラーと、新型バッテリー(BM-DN100,BM-DN110)が必要。
フロントディレイラー | FD-R9150 FD-R8050 FD-9070 FD-6870 FD-RX815 |
リヤディレイラー | RD-R9150 RD-R8050 RD-9070 RD-6870 RD-RX815 RD-RX805 |
バッテリー(マスターユニット) | BM-DN100 BT-DN110 |
MTB
MTB系ディレイラーの場合は、インフォメーションディスプレイ(SC-M9050,SC-M9051,SC-MT800)が必要となる。
バッテリー(マスターユニット)の制限は無いが、Bluetooth搭載のSC-M9051,SC-MT800を使用する場合はため新型バッテリーと組み合わせる必要がある。
ディスプレイが廃盤のSC-M9050なら、新旧バッテリーどちらでもシンクロシフトが動作する。
フロントディレイラー | FD-M9050 FD-M9070 FD-M8070 | ← |
リヤディレイラー | RD-M9050 RD-M8050 | ← |
インフォメーションディスプレイ | SC-M9050 SC-M9051 SC-MT800 | SC-M9051 SC-MT800 |
バッテリー(マスターユニット) | SM-BMR1 SM-BMR2 SM-BTR2 | BM-DN100 BT-DN110 |
中古でとにかく安くDi2の2×11sコンポを揃える
ジャンクションAはヤフオク・メルカリで3000円程度(2020年5月現在)のSM-EW67-A-Eに確定。
現行パーツだとSM-EW90とケーブル(SD50)2本で新品13000円コース。1万円差はデカい。
※在庫が捌けたのか、2021年7月時点ではもう見かけなくなってしまった。
さて、こいつは旧世代の外装バッテリーしか対応していないので、バッテリーマウントはSM-BMR1,SM-BMR2。
バッテリーマウントとバッテリー(SM-BTR1)、充電器(SM-BCR1)をセットで安く買えると、全体コストをかなり抑えられる。
残りのコンポはあまりコストダウンの余地がない。
レバーは、今となってはST-6770もST-6870も中古相場は大差ない。
6770のケーブル接続口は2ポート、6870は3ポート(1ポートはスプリンタースイッチ用)なので、選べるならST-6870がベター。
前後ディレイラーは、まぁ順当にFD-6870とRD-6870になると思う。
11速が出て間もない頃のファームウェアでは、FD-6770と11速リヤディレイラーを組み合わせて使えたんだけど…
あとは必要数のケーブルとジャンクションBを揃えればOK。