ダブルテンションからシングルテンションへ シマノ11速リアディレイラーの仕様と対応カセットスプロケット

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ロード用コンポーネントはスラムもカンパニョーロも12速。カンパのグラベル用コンポEKARは1×13速になった。
シマノもMTBコンポは12速になったし、いよいよ11速コンポの時代も終わろうとしているが、先代の9000系世代から現行R9100世代まで2世代続く11速リヤディレイラーのスペックと構造を整理する。

目次

ロード用11速ディレイラーのキャパシティと対応カセット

スプロケットのワイドレシオ化の流れに伴い、R9100系デュラエース世代のリアディレイラーは、9000系デュラエース世代よりも大きなカセットスプロケットに対応している。

詳しくは後述するが、9000系の世代とR9100系の世代ではリアディレイラーが少々異なり、

  • 9000系デュラエースの世代(9000,6800,5800)はダブルテンション
  • R9100系デュラエースの世代(R9100,R8000,R7000)はシングルテンション

という構造を採用している。

また、

  • ローギヤが小さく歯数差の小さい(クロスレシオ)カセット用のショートケージ
  • ローギヤが大きく歯数差の大きい(ワイドレシオ)カセット用のロングケージ

2種類がラインナップされている。ただし、レース使用が前提のデュラエースはショートケージのみのラインナップ。

ケージの長さとスラント角について

歯数差が大きいワイドカセットはトップギヤで余るチェーンが長くなるため、ロングケージのリアディレイラーはケージを伸ばしてキャパシティ(チェーンのたるみをとる能力を増している
また、歯数差の大きいカセットの傾斜に沿ってディレイラーが動くように、スラント角(ハブ軸に対するパンタグラフの角度)も変更されている。
ショートケージのディレイラーはクロスレシオのカセットに合わせた小さいスラント角になっているので、ショートケージで大きすぎるカセットを使うと、インナートップでチェーンのたるみを取り切れないだけでなく、ロー付近、トップ付近でディレイラーのガイドプーリーとスプロケットの間隔が適正に保たれず、変速性能にも支障をきたす。

想定スプロケットに合わせてスラント角が設定されている

シマノ11速ディレイラーの対応カセット

シマノ製11速カセットスプロケットに対応するディレイラーを整理すると、以下のようになる。
11-23TはR9100世代では廃盤、逆に、11-34Tが加わった。
ギヤ比制限のある高校生以下のレーサーが使う14-28Tのジュニアカセットは、スラント角が浅いためショートケージRDが指定されている。

ディレイラーと対応カセットスプロケット

各ディレイラーの仕様

各ディレイラーの型番と、最大スプロケット歯数、トータルキャパシティは下表の通り。
トータルキャパシティについては、最大スプロケット歯数が範囲内でシマノのロード用クランクを使う限り、どれを選んでも問題ないよう設計されている。

最大スプロケット歯数トータルキャパシティ
(フロント歯数差+リヤ歯数差)
ダブルテンション ショートケージ(SS)
RD-9000-SS
RD-9070-SS
RD-6800-SS
RD-6870-SS
RD-5800-SS
23~28T33T
ダブルテンション ロングケージ(GS)
RD-6800-GS
RD-6870-GS
RD-5800-GS
28~32T37T
シングルテンション ショートケージ(SS)
RD-R9100-SS
RD-R9150-SS
RD-R8000-SS
RD-R8050-SS
RD-R7000-SS
25~30T35T
シングルテンション ロングケージ(GS)
RD-R8000-GS
RD-R8050-GS
RD-R7000-GS
28~34T39T
ロード用11速ディレイラーとキャパシティ

ダブルテンションとシングルテンション

11速のリヤディレイラーには大きく分けて、9000系世代までのロードコンポや、昔のMTBで使われていたダブルテンションと、現在のMTB用RDに加え、R9100系世代ではロードも同形状となったシングルテンションの2種類存在する。

①ダブルテンション

旧世代のロードコンポであるRD-9000,RD-6800,RD-5800はダブルテンションのディレイラーを採用している。
これ以前のロードコンポと、M970系XTRの世代まではMTBでもダブルテンションのリヤディレイラーが使われていた。

ダブルテンションのRD

ディレイラー取り付けボルトの軸(B軸)とケージの軸(P軸)両方にバネが仕込まれていて、この力でチェーンに張力をかけたるみを取る。

変速性能に影響するガイドプーリーとスプロケットの間隔が

  • パンタグラフの角度(スラント角)
  • B軸を中心とした揺動

の2箇所で調整されるので、変速性能が良くスムーズに動作する。
シングルテンションとダブルテンションを比べると、ダブルテンションのほうが変速も軽く感じる。

逆に欠点は、可動部の多さに起因するチェーンの暴れやすさ。特にMTBやシクロクロスでは、バイクが暴れるとチェーンステーにチェーンがバシバシ当たる。

②シングルテンション

現行ロードコンポ(RD-R9100,RD-R8000,RD-R7000)とMTBコンポはシングルテンションのディレイラーを採用している。

シングルテンションのRD 専用ハンガーでダイレクトマウント

シマノのシングルテンションディレイラーはシャドーディレイラーと呼ばれ、横への張り出しを小さくし、転倒時にディレイラーが地面にヒットしにくくなっている。

シャドーディレイラーは横方向の張り出しが小さい

ダブルテンションと異なり、P軸のスプリングのみでチェーンのたるみを取る
B軸に相当する部分にはバネは入っておらず、ディレイラー単体ではにユラユラ動くが、バイクに取り付けチェーンを張ると固定される。
ここは、フレームやスプロケットに合わせてディレイラーの角度を調整するための部分となっている。

RD-R8050

パンタグラフ式の変速機が登場した頃、ディレイラーはシングルテンションだった。変速性能の追求でダブルテンションになった歴史があり、シャドーディレイラーは、構造的には先祖返りしたことになる。
変速性能については、チェーン・スプロケットの改良で変速性能が良くなったりパンタグラフやプーリーの設計の工夫で、気にするほどではなくなった。

シングルテンションのメリットは、シンプルで可動部が少ないゆえのチェーンの暴れにくさ。デメリットは先述したとおり、変速のスムーズさに劣るという点。

シャドーディレイラーの初登場は2008年、770系XTのモデルライフ途中に追加されたRD-M772に遡る。それまで問題となっていた、チェーン暴れを抑制するのが目的だったように思う。
脱線するが、この頃はディレイラーの種類がやたら多く、ダブルテンションにはトップノーマルとローノーマル(シフトの方向が逆)があり、途中からシャドー(シングルテンション・トップノーマル)が追加されたことで3種類に。
それぞれにケージ長(ミドルケージ GS・ロングケージ SGS)のバリエーションがあったため、全6種類となかなかの数だった。まぁ、一時期10種類以上あったフロントディレイラーよりはマシだけど。

R9100系デュラエースの世代ではロードバイクでもシャドーディレイラーが使われるようになった。
当初は変速操作が重いという声が聞こえたように思うが、今のシマノコンポは強力なサーボモーターで駆動するDi2が前提だろうし、変速が多少重くなるのは許容されたのだろうか。

今後はシングルテンションが主流か

シマノのMTBコンポはXTR,XT,SLX,Deoreに至るまですでに12速になっているが、

  • シングルテンションのシャドーディレイラー
  • ダイレクトマウント廃止(従来のディレイラーハンガーに取り付け)

という構成。次期ロードコンポもおそらくコレに倣うのではないかと予想している。

XTR RD-M9100 MTB用の12速リアディレイラー

→ダイレクトマウントは廃止されませんでした。(R9200/R8100

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シングルテンションはダブルテンションに比べると部品点数が少ないため、コスト面でも軽量化でも有利だろうし、張り出しの少なさは転倒時の保護に加えて、空力的なメリットも強調してきそう。

カンパもSRAMも最新モデルはシングルテンションになったし、今後しばらくはシングルテンションのリヤディレイラーが主流になるのではないだろうか。
見慣れたダブルテンションRDが消えるのは寂しい気もするけど。

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