シクロクロスの2015-16シーズンから5年ほど、オーダーフレームに乗っていた。
スチールだが大口径のチューブを使ったり、当時普及し始めたばかりのディスクブレーキを取り入れたり、さらにはスライダーエンドを採用するなど、実験的な意味合いが強いフレームだった。
Shin・服部製作所のオーダーCXフレームの製作
フレームはShin・服部製作所で製作してもらった。
いわゆるクロモリフレームだけど、最近はクロームやモリブデンだけではなく、ニオブとかバナジウムが添加されているのでスチール(鋼)と呼ぶほうが正確。
打ち合わせと主な仕様の決定
このフレームは、2015年の春先にオーダーした。
ShinさんはTIG溶接を得意とする若手ビルダー。
フレームビルダーは頑固で癖のある人が多い印象だけど、良い意味でこだわりがなく柔軟に対応してくれる。
既製品のフレームと違い、オーダーの場合はフレームサイズから使用するチューブの選定、細かい仕様、フレームカラーに至るまで、自由に決めることができる。
ユーザーの体格や乗り方に合わせて最適なフレームを作るのがビルダーの腕の見せ所だが、
今回は自分なりに作りたいフレームが決まっていたので、どういう仕様が良いかを伝え、それに対してアドバイスしてもらう形で相談した。
こちらからの要望は
- シクロクロスレース専用
- ディスクブレーキ
- トップ長560mm ヘッド角72度に指定
- 大口径ダウンチューブ
- フロントシングル専用
- Di2専用仕様(ジャンクションBレス)
- スライダーエンド
- チェーンキャッチャー用台座
- リプレーサブルチェーンステーブリッジ台座
といったもの。
ジャンクションB無しのDi2運用については、長いケーブルを使ってジャンクションAからバッテリーおよびRDに直接配線している。
そのため、ケーブル内装用の穴をヘッドチューブ付近に2個用意してもらった。
ジオメトリとパイプ選択
オーダーフレームは、細かい仕様もさることながら、ジオメトリや剛性の調整を思い通りにできる事が最大のメリット。
好みのハンドリングや剛性のバイクを作れる。
ジオメトリ
ジオメトリはこちらの希望をベースに、数カ所修正を入れて
- トップ長560mm
- ヘッドアングル72度
- BB下がり65mm
- チェーンステー長415~435mm(可変)
に設定。
チュービング
各部位のパイプ選択は、ほぼShinさんの提案通りにした。
結局、チュービングはほとんどコロンバスのLIFE。
主な構成は
- テーパードヘッドチューブ(上34-下44mm)
- LIFE 38mm 0.45mm厚ダウンチューブ
- LIFE つちのこチェーンステー
薄肉大口径の高剛性ダウンチューブが注目ポイント。
スライダーエンド採用
シングルスピード化のためではなく、関西CXを走るうえで最適なチェーンステー長を探るためにスライダーエンドを採用。
415~435mmの可変長で、回頭性が欲しい時は短く、直進安定性と泥はけ重視の時は長くする。
スライダーエンドはパラゴン製のものが無駄に重い上に高価だったので自作に踏み切った。エンド単品で左右ペア60g。
それでも200gくらいの重量増になってしまうが、ここで取ったデータは次のフレームのジオメトリ検討に活かせる。
塗装
未塗装の状態で納品してもらって、スチールであることがひと目で分かるように、クリアブルーにカスタムペイント。直射日光下では下地が反射して、ガラス瓶のような透明感がある。
ただ、塗装の乗りが悪く、シクロクロスでハードに使うと剥がれやすかった。
ロゴのデザインや配置は、思い切って大胆に、でも数は控えめに。
ヘッドバッジの代わりに「スチール」
フレーム重量は1850g。スライダーエンドを廃したら余裕で1600g台になると思う。
クランクが干渉するトラブル
一品物のフレームで、特殊な仕様を盛り込むと問題は出るもので、
クランクアームとチェーンステーが干渉するというトラブルが発生。
ストレートチェーンステーなうえ、スライダーエンド採用でチェーンステーがハの字にせり出したのが原因。
チェーンステー側面に軽く潰しを入れてもらって対処。
乗車感
バイクはちょっと硬すぎるくらいの仕上がり。舗装路は気持ちよく走るけど、オフロード走行を前提とするなら、φ38mmダウンチューブではなく、一回り細いφ35mmでも良かったかもしれない。
チェーンステーはブリッジレスだけどヨレる感じは皆無。
実戦投入1戦目の関西CXマイアミのリザルトは24位、順位にして41%と例年通り平凡だったけど、良いシェイクダウンになった。
Shin・服部製作所のフレームは、TIG溶接ならではのパイプの豊富な選択肢で自由度が高く、価格も良心的。
今回は特殊工作を諸々お願いして、ふんだんに高級パイプを使ったけど、市販のアルミCXフレームセットよりちょっと高いくらいだった。
レース機材はアクシデントで壊すこともあるので、コストを抑えられるのはありがたい。
もちろんこんな尖ったフレームばかりじゃなくて、要望に応じて、マイルドなのも作ってもらえる。
ただ、僕の場合では注文から半年ちょっとかかったので、来シーズンに間に合わせるならお早めに…
再塗装
クリアブルーの塗装は弱く、3シーズンの仕様でだいぶ剥がれてきたので、2018-19シーズン前に再塗装を行った。
こんどのフレームカラーはキャンディグリーン。シルバーの下地を塗った上からクリアグリーンを塗装している。
塗装ついでに、トップチューブが少し凹んでいる場所も板金してもらった。
乗り換え
フレームに大きな不満はなかったのだけど、強いて言えばディスクブレーキ仕様の金属フレームは重量的にかなり不利。
レースのリザルトを追求するため、2019-20シーズン途中にリドレー X-Nightを2台購入したのに伴って「鉄号」は退役となった。
当初は2~3年で乗り換えるつもりだったが、結局5シーズン弱の付き合いになった。
性能面では大手メーカーのカーボンフレームに及ばないが、自分だけのバイク、という感覚は市販品では得られないので、また機会があったら何かしらオーダーしたいな。
ふるさと納税返礼品でShin 服部製作所のオーダーフレームがもらえる
現在、愛知県大口町にふるさと納税を行うと、返礼品でShin 服部製作所のオーダーフレームがもらえる。
仕様によって、返礼品を受け取るために必要な寄附金額は異なり、
- TIG溶接フレーム…寄附金額86万円
- フィレットブレイジングフレーム…寄附金額97万円
- ラグドフレーム…寄附金額97万円
- TIG溶接アルミフレーム…寄附金額97万円
返礼品は、フレーム・フォークと基本塗装が対象で、特殊加工や特別な塗装を行う場合は別途費用が発生する。
通常の手段で購入する場合、
- TIG溶接のスチールフレーム…16万円+塗装費用
- フィレットブレイジング・ラグド、またはアルミフレーム…19万円+塗装費用
となっている。還元率はおよそ20%くらいだろうか。
ふるさと納税の返礼品は食品から工芸品まで様々なものがあるが、オーダーフレームというのはあまり見かけず、面白い試みだと思う。
かなりの寄附金額なので利用できる人は限られるだろうが、高所得の方がいれば検討してみてほしい。