パワートレーニングZWIFT

「無酸素運動エネルギー貯蓄量」FRCについて

ロードレース、MTBクロスカントリー等、エンデュランス系競技を行うサイクリストの「地脚」の強さは、有酸素運動能力、端的に言うとVO2MAXパワーやFTPで測れるが、
レースに勝てる選手というのは有酸素運動能力に加えて、アタックを掛けたり、急勾配を一気に駆け上がったりといった無酸素運動能力に優れる場合が多い。

無酸素運動能力が高い選手は、高強度の運動を他の選手より長時間行える。
本稿では、無酸素運動のバッテリー容量に相当する指標であるFRC(Function Reserve Capacity)について説明する。

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有酸素運動と無酸素運動のパフォーマンスは別物

ペダルを漕ぐパワーで練習強度を管理し、狙った領域を効率よく刺激するパワートレーニング。
ZWIFTはじめ、古くからのパワートレーニングではFTP基準のパワーゾーンで練習強度を管理している。

しかし実際には、FTPが高いからといって無酸素運動能力が優れているとは限らない
例を挙げると、ヒルクライムレースに特化した純粋なクライマーはスプリントで全然パワーが出ないし、逆に、スプリントのスペシャリストである競輪選手のFTPは意外なほど低かったりする。

少し考えれば当然の話で、マラソン選手と短距離ランナーの脚質は全く異なる。

パワー・トレーニング・バイブル」では、5秒(スプリント)、1分(無酸素運動能力)、5分(VO2MAX)、20分(FTP)のMMPから脚質を評価する方法が紹介されている。

無酸素インターバルを行う際、FTPを基準では人によって最適な負荷を掛けられないため、基準としてMMP(Mean Maximal Power:最大平均パワー)を使う手法もある。

有酸素運動と無酸素運動の割合

有酸素運動では、脂肪を分解して、細胞のミトコンドリア内で筋肉のエネルギー源であるATPを合成する。この機構では長時間にわたって大量のエネルギーを供給できるため、もっぱら持久性の運動で活躍する。

一方、リン酸系や解糖系の働きでパワーを発揮する無酸素運動は、筋肉中のリン酸や糖を使用してATPを合成する。持続時間は短いが、瞬間的に大パワーを発揮できる。

有酸素運動と無酸素運動は並行して行われ、各時間帯で全力走を行った時、パワーと有酸素・無酸素運動の割合を大まかに表すと、以下のグラフのようになる。

有酸素運動と無酸素運動の割合

数秒以内の瞬間的な運動はともかく、20秒ほどのスプリントであっても有酸素系による寄与がある。
およそ1分半~2分以上の運動では有酸素系が十分に働く。

無酸素運動のバッテリー容量「FRC」

無酸素運動においては、筋肉中のリン酸や糖を急速に消費する。
1分500Wで踏める選手と400Wしか出ない選手の違いは、このエネルギー量にあるといえる。

無酸素バッテリー量 FRC

パワートレーニング解析ソフト「WKO」ではFRC(Functional Reserve Capacity)という指標が使われている。
FRCとは、FTP以上のパワーで運動する際のエネルギー貯蓄量のこと。単位はkJ(キロジュール)で表される。

例えるならば、FRCは無酸素モーターを回すためのバッテリー容量にあたる
FRC=バッテリーが大きい選手は、ハイパワーを長時間持続できるというわけ。

個人差は大きいが、標準的なFRCは9~35kJとされ、女性より男性の方が大きい。

例えばFRCが20kJ=20000Jの場合を考える。

数秒~10数秒のスプリントではエネルギーの大半が無酸素系で生み出される。すべてFRCでエネルギーが生み出されたとすると、1000Wを20秒出力できる。

1分半~2分以上の運動では有酸素系も活発に働くため、パワーはFTPとFRCの合計になる。持続的に発揮できるFTPに、貯金(FRC)を切り崩して無酸素パワーを上乗せするイメージ。
たとえばVO2MAXパワーに相当する5分走の場合、FTP+20000J/300秒=FTP+67Wといった具合。

なお、筋力の限界があるので、5秒なら4000W出るというわけではない。
瞬発力を高めたい時は、モーターの消費電力を増やして出力を高める、つまり、筋力トレーニングに近いアプローチをする必要がある。

バッテリー残量 dFRC

FRCの残量をdFRC(Dynamic FRC)と呼ぶ。dFRCはFTPを超える運動中は減少し、FTPを下回る運動中に回復する。

FRCがバッテリー容量としたら、dFRCはバッテリー残量にあたる。

FRCを使い切る、つまりdFRCがゼロになると、いわゆる脚が終わった状態になり、FTP以下で回復する必要がある。
レースでは、上り坂のペースアップやアタックなどに対応しつつも、勝負所までdFRCを温存することが重要になる。

FRCが大きい選手は強烈なアタックを仕掛けることができ、dFRCの回復速度が高い選手は、何度もアタックを掛けられる、というわけ。

dFRCはWKOで表示できるほか、無料で使えるGolden Cheetahでも(こちらはW’balanceという名前だが)調べることができる。
無酸素インターバルトレーニングを行ったとき、dFRCに余裕があるようなら強度や本数を増してみると、より効果的な練習になる。

自分のFRCを計算

FRCの簡易計算

正確なFRCはパワーカーブから計算しているはずだが、
簡易的には、1分MMPと20分MMPから算出することもできる。

1分MMP、20分MMPというたった2点から計算しているうえ、1分走の時、有酸素系が100%稼働していることを前提としているので多少の誤差はあるが、真のFRCから大きく外れた値にはならないと思う。

標準的なFRC

FRCは個人差が大きいものの、一般的にはFTPが高い選手は、FRCも大きな値である傾向がある(と思う)。

20分の全力走のパワーは、FTP+FRC/1200秒 で表される。
一方、FTPは20分平均パワー×0.95で見積もることが多い。

つまり、FTP+FRC/1200=FTP/0.95

これを解くと、

FRC=FTP×63 [kJ]

となる。

FTP値に63を掛けると、ざっくりとしたFRCが出る。

FRCで脚質を調べる

算出したFRCと標準的なFRC(FTP×63)を比べると自分の脚質が大まかにわかる。
自分のFRCのほうが大きければスプリンター・パンチャー系、小さければクライマー・TTスペシャリスト系

自分の特性を知ることは、トレーニングの方針を考える上で非常に役立つはず。