【レビュー】MIZUNO ブレスサーモアンダー 長袖インナーウェア ワイズロードオリジナルモデル ~厳冬期のサイクリングにも対応 ロードバイク専用裁断の発熱インナー~

MIZUNO ( ミズノ ) インナーウェア 長袖 ブレスサーモアンダー ワイズロードオリジナルモデル

ミズノの吸湿発熱素材「ブレスサーモ」を使用した厚手の長袖インナーウェア。
肌に接する部分は撥水素材を採用し、汗をすばやく吸収することで、蒸れにくく汗冷えしにくい特徴も備える。

ワイズロードオリジナルモデルの本品はロードバイクの乗車姿勢に合わせた専用カッティングを採用。
高機能冬用インナー相応の価格だが、(気温や体質にもよるが)高強度な練習やレースで着用するには暑すぎるくらいの保温性で、絶対に寒い思いをしたくない人にはオススメ。

本品はワイズロードを運営するワイ・インターナショナル様より、レビュー用に提供いただきました。

定価6380円(税込)

長所 -Pros-

  • 高い保温性と吸汗速乾性を両立
  • 身体にぴったりフィットするストレッチ性
  • 後ろ丈の長い自転車向けカッティング

短所 -Cons-

  • ハイネックは温度調節しにくい
  • 気温や体質、乗り方によっては真冬でも暑すぎる
  • 小柄な人向けにもう1サイズ下がほしい

吸湿発熱素材「ブレスサーモ」

もう20年くらい昔の話だが、2000年頃から、単純な断熱性だけでなく水分に注目した保温素材「吸湿発熱素材」が登場した。
一般には、2003年発売のユニクロ「ヒートテック」で認知が広がった。

「吸湿発熱素材」と書くと、なんだかすごいハイテク素材のように思えるが、ぶっちゃけると本質的にはただの布だ。

体表面から蒸散した水蒸気がウエアの繊維に吸湿され、凝縮して液体の水に変わる際に「凝縮熱」が発生する。これが「吸湿発熱」のメカニズムだ。
液体が蒸発して気体に変わるとき「気化熱」を奪うことはよく知られているが、その逆の現象が起こっているに過ぎない。

登山で古くから愛用されてきたウールを筆頭に、レーヨン、アクリレート系繊維などは、より多くの水蒸気を吸収し、より多くの凝縮熱を発生させる性質を持っており、これらを吸湿発熱素材と呼んでいる。

しかし、吸湿発熱素材は湿度が飽和してしまうとそれ以上発熱しない。「ヒートテックを登山に使ってはいけない」と言われる理由はここにある。ヒートテックは速乾性が低く、濡れた生地によって汗冷えしてしまうのだ。
発汗量が多いスポーツ・アウトドア用途では、吸湿性だけでなく、溜め込んだ水分を蒸発させる能力も重視される。

ちなみにウールも速乾性が低いが、「繊維内部に水分を閉じ込め、肌が濡れない」という特殊な性質を持っている。天然素材にして超ハイテク素材である。

ミズノ ブレスサーモ

「人工の」吸湿発熱素材としては世界初になるのが、ミズノの「ブレスサーモ」。
ウールよりも高い発熱量を誇り、1993年に開発されて以降、アウトドア用途を中心に様々な分野で商品展開されている。

厳冬期のスポーツに対応する中厚素材

ロードバイクのウィンターウェアは難しい
平地でちょうど良い暖かさでも、運動強度の高い上り坂では発汗し、冷たい風に晒される下り坂で一気に汗冷えする。
また、風でバタつかないタイトフィットでありながら、身体の動きを妨げないストレッチ性も要求される。

こういった使用状況を想定し、今回レビューするロードバイク向けインナーには、「ブレスサーモ」の4種のラインナップ中、2番目に温かい生地が採用されている。

この素材、一見すると1枚の布に見えるが、暖かさと保ちながら汗冷えを防ぐため、複数の繊維で構成されている。

内側には撥水ポリエステルを混紡し、肌をドライに保つように工夫されている。
一方、外側は速乾性に優れたポリエステルで、生地が含んだ水分をどんどん逃がすことで、激しい発汗時でも水分の飽和を防ぐ。
また、厚みのある生地自体に温かい空気を保持する機能も期待できる。

肌触りはメリノウールに近く、引き出しから出してすぐ着ても肌に冷たさを感じない。チクチクしたりベタついたりすることも無く、ストレッチ性も相まって着心地は良好だ。

ミズノ

ロードバイク専用カッティング

ロードバイクのライディングフォームは前傾姿勢で腕を伸ばすため、裁断も工夫されている。
冷たい風が入りやすい首はハイネックで対策、また、後丈を延長することで、背中が出ることも防いでいる。

サイズ展開とフィット感

サイズ展開は、メンズのみ、M,L,LLの4種類。

適合サイズ表
(cm)MLLL
身 長165-175175-185185-195
胸 囲88-9696-104104-112
ウエスト76-8484-9494-104
サイズチャート

私は身長177cm/体重68kgだが、Mサイズがジャストフィットだった。生地はストレッチ性に富むため、腕を伸ばしたりしても突っ張り感は無い。

ハイネックのため、首がキツくないか不安だったが、首周り37cmでちょうど隙間ができないくらい。乗車中も、締めつけ感や息苦しさは感じなかった。

ただ、(細身とはいえ)平均身長より高めの私で最小のMサイズがピッタリ、というのはどうだろうか…
小柄な人や女性のために、もう1サイズ下があると良いと思う。

177cm/68kg Mサイズがジャストフィット

実使用での暖かさ

驚異的な保温性能

このインナー、秋の時点で手元にあったのだが、比較的暖かい地域に住んでいるうえ、2022年の冬は暖かく、いっこうに出番が訪れなかった。

12月下旬に入ってやっと寒くなってきたので、気温5度で冷たい風が吹きさらす12月の琵琶湖岸、しかも小雨がパラつくという環境でテストしてきた。

12月の琵琶湖岸

上はブレスサーモインナー+冬用裏起毛ジャージ、下はビブショーツ+裏起毛タイツで走り出す。
最初は軽くサイクリング程度のペースだが、まったく寒くない。それどころか、10分も走って身体が温まり始めたらすぐに暑く感じるようになり、夏用半袖ジャージに着替えた。
それでも、走行ペースを上げると少し汗ばむくらいの保温性。ただ、汗をかいても生地に素早く吸収されるため、汗冷えはしなかった。
肌に接する面に撥水ポリエステルが使用されているおかげだろうか。

ブレスサーモインナー+夏用半袖ジャージでも余裕

その後も何度か着用して、とにかく暖かさを追求した厳冬期向けのインナーウェアという印象を受けた。
寒さへの耐性は個人差が大きいが、ウィンタージャージと組み合わせると、路面が凍結する温度まではこのインナーで対応できるんじゃないだろうか。

温度調節が苦手

「暖かさ」がは本品の特長である一方、状況によっては暑すぎるというデメリットも併せ持っている。

少し話が逸れるが、私は冬季のウェアを選ぶ際、ある程度の運動強度で走り続けることを前提にしてレイヤリングする
また、暖かさよりも汗をかかないことを最優先にしている。

例えば気温0~5度、曇の日のロードサイクリングなら

  • 長袖インナー(化繊orメリノウール)
  • 長袖裏起毛ジャージ(防風素材なし)
  • 裏起毛ビブタイツ(撥水or防風素材)
  • ウインドブレーカー

といった具合。

高強度運動時に蒸れて汗冷えの原因になるため、防風フィルムなどが入ったウィンタージャケットは使わない
身体から発生した熱をある程度保温し、走行風での冷却とバランスさせる。峠の下りや休憩後など、身体が冷えるときにはウインドブレーカーを羽織る。

走行中の温度調節はジッパーの上げ下げで行うのだが、そういう時に気になるのが本品の襟の形状。ハイネックなのでジッパーを下げても風が入りにくいのだ。
ヒルクライム中など、大量の熱が発生し、かつスピードが遅い時は、ジッパーを大きく開けても十分な冷却が行えず、汗をかくことがあった。
複数の繊維を組み合わせ、汗冷えしにくいよう工夫されているが、汗をかかないに越したことはない。

あくまでも、暑がりな私の個人的な意見だが、インナーはクルーネックのほうが好みだ。首の保温はジャージやネックウォーマーで対応したい。

ところで、中厚タイプの生地でハイネックのインナーは、ミズノ標準ラインナップには存在しない
次項で触れるとおり価格差もほとんど無いので、スキーや登山といった用途で欲しい人もいるんじゃないだろうか…

価格

価格は6380円(税込)。ロードバイク専用設計という数が出ない製品で、コストは相応に掛かっていると予想していたのだが、
ミズノ標準ラインナップの同素材の長袖インナー(ミズノ ブレスサーモ アンダーウエアEX クルーネック長袖シャツ)は6050円(税込)。価格差は300円程度に抑えられている。すごい…

まとめ:絶対に寒い思いをしないインナー

ロードバイク専用設計で、前傾姿勢でも背中が出ない冬用の高機能インナーウェア。

ミズノが開発した吸湿発熱素材「ブレスサーモ」を使用。複数の繊維を組み合わせた生地を採用し、発汗を伴うスポーツ用途で使用しても、汗冷えしにくい特徴を備えている。
暖かさは最強クラスこれを着て寒いほどのシチュエーションでは、おそらく路面が凍結していると思う。

イメージ

ハイネックは好みに合わなかったが、寒がりな人はこちらのほうが気に入るかもしれない。

寒い時期は走りに行くのが嫌になるが、きちんと装備を整えれば、汗だくになる夏場よりも快適だ。

余談だが私の場合、居住地が割と暖かい地域&暑がりのため、このインナーでなければ凍えるような状況は少ないのだが、
(自転車用以外のものも含めて)手持ちのインナーウェアのなかで最も暖かいため、シクロクロス会場でレース前後に着るインナーとして活躍している。

ブレスサーモ、寒い会場でレース運営を行うスタッフさんの定番アイテムでもあるらしい…