Panaracer AGILEST TLR 25cを2000kmほど使用したので、ファーストレビューでは触れられなかった、
- 耐パンク性
- 耐摩耗性
- 運用の手間
といった点を中心にレビューする。
パナレーサー PRパートナーとしてプロモーション活動を行っています。
本品はパナレーサー株式会社様より提供いただいた製品です。
AGILEST TLRについて
AGILEST TLRは、パナレーサーのロードバイク用タイヤ「AGILEST(アジリスト)」シリーズのひとつ。
チューブレスレディ、つまりシーラント併用でのチューブレスシステムに対応している。
特徴は、耐パンクベルトを省略したこと。突き刺しパンクに対してはシーラントで対応するという思い切った判断で、軽さとしなやかさを実現している。
なぜアジリストTLRが耐パンクベルトを備えないのか?パナレーサーに問い合わせたところ「シーラントの使用が前提のチューブレスレディシステムの場合、貫通パンクはシーラントが塞いでくれるから」という回答を得た。
耐パンクベルトがあったほうが安心だが、無い方がタイヤは軽く、しなやかになる。レーシングタイヤとしては、過剰な耐パンク性よりも性能を取るべきと判断されたのだろう。
とはいえ、耐パンク性が十分なのか、正直不安ではある。アジリストTLRではまだ250kmほどしか走っていないが、実走テストを続けて耐パンク性を見極めていきたい。
アジリストTLRレビュー
走行中の性能、すなわち「転がり」「グリップ」「振動吸収性」に関しては文句なし。
特に、荒いアスファルトの路面や、(あまり手入れされていない)峠の下りでは、絶対的な安心感と快適性が得られた。
タイヤと路面が常に設地している感覚。バイクが跳ねないので突然グリップを失う不安を感じない。
クリンチャー版のAGILESTも「跳ねない」印象が強かったが、TLRはさらに上を行く。
とはいえ、上記のような攻めた構造と、チューブレスレディの宿命から、常用するにはそれなりに面倒くさい部分もある。
耐パンク性
2000kmの使用でパンクは1回。走行500kmの時に突き刺しパンクを経験した。トレッドに裂け目があり、どうやら小さなガラス片か金属片のようなものを踏んだ様子だった。
この程度の穴ならシーラントで塞がるが、予想よりシーラントの乾燥が速く、タイヤ内部の液がなくなっていたのが二次的なパンク原因。
なお、ビードを確実に上げてからシーラントを入れたかったので、バルブから注入出来ないパナレーサー シールスマートではなく、カフェラテックスを使用していた。
耐パンクベルトが無いAGILEST TLR。シーラントが乾くとやはり無防備だ。
シーラントを継ぎ足してからはパンクはしていないが、ケーシング自体薄いのか、サイドからシーラント液が滲んでくる。
また、トレッド部の傷からも、同様の滲み跡がいくつか確認できる。
シールスマートは「しなやかで薄いタイヤにつきものの微細な穴を塞げる、特製の天然ラテックスベースシーラント」(Road.ccのシールスマート レビュー記事)らしいので、シールスマートを使うとまた違うのかもしれない。
さて、タイヤサイドはケーシングが透けて見えるほど薄く、どうみても強いとは思えない。(私は経験しなかったが)サイドカットに対しては無防備と考えて良い。
AGILEST TLRはレーシングタイヤ。タイヤの軽さやしなやかさを求めると必然的にサイドは薄くなる。サイドカット耐性が必要なら、AGILEST DUROを選ぶべきだ。
耐摩耗性
AGILESTはハイグリップなタイヤだが、柔らかいコンパウンドから予想していた通り耐摩耗性は並の水準だ。短命ではないが、長寿命でもない。
主にロード練で2000km使用した後輪を見ると、トレッドの摩耗インジケーター(丸穴)のエッジは残っているが、かなり薄くなってきていた。
まだ使用できるものの、トレッド部は若干フラットになってきている。タイヤの美味しいところは使い切った感じだろうか。
もっとも、私は体重が68kg程度あって、インターバルトレーニングやヒルクライムといった乗り方がメイン。タイヤへの負担は相応に大きかったと思われる。体重が軽い人ならもうちょっと長持ちするはずだ。
なお、競合製品に比べると低価格なため、距離あたりのコストは安い。
運用の手間
こまめなシーラント管理が必要
耐パンク性をシーラントに頼り切っているこのタイヤは、シーラント管理が特に重要。タイヤサイドからシーラントが滲んでこなくなったら、継ぎ足しのタイミングだ。
シーラントの種類にもよるが、1.5~2ヶ月おきにはチェックしたい。
なお、Mavic キシリウムプロカーボンとの組み合わせで、空気圧低下は0.2気圧/日程度だった。
乾いたシーラントで重量増加
タイヤを外してみたところ、内部には乾いたシーラントがべったり張り付き、大変なことになっていた。
継ぎ足し分を含めて、累計80mlくらいは入れただろうか(カフェラテックス)。
重量増加も無視できないレベルで、「仕事をしない」シーラント残滓のせいで60gほど増えていた。
なお、タイヤとリムの密着は良好で、ビードの接触面にはほぼシーラントが回っていない、つまり、シーラントに頼らずある程度の気密が取れていたようだ。
まとめ:レーシングタイヤとしての性能と、チューブレスレディの手間と
AGILEST TLRで2000km走って、このタイヤについて改めて考えてみたが、ファーストレビューの時とほぼ同じ印象を抱いた。
アジリストTLRは、乗り心地、グリップ、軽量性においても、クリンチャー版のアジリストを上回っている。
しかし、25cという(今となっては)細いタイヤでは、その差はあまり大きいと思えなかった。
ビード上げ、シーラントの管理、そしてパンク時の対処。チューブレスタイヤは高性能だが面倒だ。
アジリストTLRはかなりビード上げしやすいタイヤだが、チューブレスタイヤとホイールは、相性が良いことのほうが少ない。私も散々泣かされてきた。
さらに、シーラントは乾くので定期的に継ぎ足す必要がある。特に耐パンクベルトを持たないアジリストTLRの場合、突き刺しパンクを塞げる程度のシーラントは常に入れておきたい。
そして、サイクリングにはつきもののパンク。シーラントで塞がればいいが、塞がらなかったら?プラグを入れる手もあるが、最終的にはタイヤを外してチューブを入れるしかない。硬く嵌ったビードにシーラントまみれのタイヤ。路肩ではあまりやりたくない作業だ。
チューブレスタイヤの修理はどれも「応急処置」。短時間で、完璧に修理するという点ではクリンチャーにかなわない。
残念ながら、現在のロードチューブレスシステムは(一昔前よりかなり改善されたが)まだ完全ではない。
サイクリスト個々のスタイルに合わせて、性能を取るか(TL)、運用を取るか(CL)、選択する必要がある。
もしレースで使うのなら、迷わずアジリストTLR。スムーズでハイグリップで軽いチューブレスタイヤは、運用が面倒でも使う価値がある。
でも、ツーリングやサイクリングメインで、整備は苦手だし面倒だ、というのなら、クリンチャー+軽量チューブというのもひとつの正解だと思う。
個人的には、頻繁に乗るバイク(ホイール)はアジリストTLR。たまにしか乗らないバイク(ホイール)はクリンチャー版アジリスト、という組合わせで使うつもり。
乗り心地の良さとグリップ感はAGILEST TLR最大の魅力で、この後クリンチャーのAGILEST(無印25c)に履き替えたら「こんなにゴツゴツしてたっけ?」と思ってしまった。
走ることだけを考えたら、やはりTLRのほうがずっと優れたタイヤだ。もしロードレースに出るなら、絶対にTLRを選びたい。
しかし、性能と引き換えに運用面の問題を抱えているのも事実。
約5ヶ月、2000kmにわたって使ってみると
- シーラントが乾くとパンクに対して無防備
- 乾いたシーラントで重量増加
といったポイントが気になった。
月に1000km走るコアなサイクリストなら、シーラントを継ぎ足さず2000kmを走りきれるかもしれないが、
乗車頻度が少ないほど、シーラントの継ぎ足し回数が増え、重量増もより顕著になる。
私…?月の走行距離は1000km以上あるけど、自転車がいっぱいあるのでな…
なので、あまりロードバイクに乗らない冬場はクリンチャーを使うことにした。
ビード上げの相性で苦労しない、シーラントを床にこぼさない、タイヤ外すたびにホイールを洗わなくていい。乗る時は空気を入れるだけでいい。そんなクリンチャーの扱いの楽さを噛み締めている。
まぁ、代わりにシクロクロスのチューブレスホイール2セットの面倒見なきゃいけないんだけどね…