AGILEST TLR 突き刺しパンク ~チューブレスレディのシーラント管理を怠ってはいけない~

注目の国産チューブレスレディタイヤ「Panaracer AGILEST TLR」。しなやかでハイグリップ、他社のTLRタイヤやクリンチャーと比べても軽量で、おまけに価格も安いのだが、レース志向で耐パンク性がやや低い印象があった。
通勤や練習、ロードサイクリングでハードに使っていたが、今回、異物による突き刺しパンクを喫した。

パナレーサー PRパートナーとしてプロモーション活動を行っています。
本品はパナレーサー株式会社様より提供いただいた製品です。

トレッドの突き刺しパンク

AGILEST TLRに履き替えてから1ヶ月と少し。走行距離500kmほどになったある日、仕事から帰ろうとしたら後輪がベコベコになっていた。

どうやら、ガラス片か金属片を踏んでいたらしく、トレッドには1~2mmほどの裂け目が。空気を入れるとシューッと抜ける音が聞こえる。

パンク時の空気圧低下が緩やかなのはチューブレスの利点のひとつ。峠の下りでパンクしても安全に停車できる猶予がある。

…などと感心していられない。2~3分なら持ちそうだが、帰宅までの10kmは到底耐えられそうにない。

こういう突き刺しパンクに対してはタイヤシーラントが良い仕事をするが、30mlほど入れていたシーラント(カフェラテックス)はすでに乾いてしまっていたようで、シーラント液が出てくる気配は無い。

カフェラテックスのシーラント継ぎ足し周期は1~4ヶ月(チューブレスレディの場合)とされている。AGILEST TLRはケーシングが薄く空気が抜けやすい上、レビューのため頻繁に空気圧調整していたことで、蒸発が進んだのかもしれない。

耐パンクベルトが無いAGILEST TLR

クリンチャー版のAGILESTにはトレッド部分に耐パンクベルト「TF Super Belt」が入っており、突き刺しパンクへの耐性を高めている。
一方で、チューブレスレディのAGILEST TLRはシーラント使用が前提。「突き刺しパンクはシーラントで塞げば良い」という判断で、耐パンクベルトが省略されている。

結果として、25cチューブレスレディとしては軽量な220gという重量、そしてしなやかな特性を実現している。

タイヤというのは薄く貧弱なほど軽くなり、乗り心地もグリップも良くなる。
過剰な耐パンク性よりも軽さとしなやかさを追求すべきという判断はレーシングタイヤとしては正しい。しかし、公道で使うにはやや頼りないというのも事実。

AGILEST TLRのレビューには「耐パンク性が十分なのか、正直不安ではある。」なんて書いていたが、不安が的中した形だ。

アロンアルファで応急処置

さて、家に帰るためには修理しなければならない。シーラントを追加すれば容易に塞がりそうな穴だったが、あいにく手持ちがない。

最も確実なのはチューブを入れること。しかし、シーラントの残骸で汚れたタイヤを外し、チューブを入れるのは面倒だし、帰宅後はまたチューブレス化する作業も待っている。かなり面倒くさい。

そこで今回は横着をして、瞬間接着剤による補修を試みた。

タイヤの空気を1気圧以下まで抜き、トレッドの穴にアロンアルファを1滴垂らして、爪楊枝で裂け目に擦り込む。固まったら、余分をティッシュで拭き取って処置完了。

なお使いかけの瞬間接着剤はチャック袋に入れて密閉し、冷蔵庫に入れておくと長期間保管できる。

5気圧弱まで空気を入れてみたが、音や感触で空気が漏れている様子はない。傷が開かないよう、このまま10km走って帰った。

特にトラブルなく帰宅後、タイヤに水をかけてみると、ごく僅かだが細かい泡を吹いていた。

定期的にシーラントの補充を

穴は小さく、ケーシングへのダメージも無かったので、シーラントを継ぎ足し。乾く分も見越して、多めに50mlほど入れておいた。もちろん前輪にも継ぎ足しておいた。

チューブレスレディタイヤはシーラントが乾いてもある程度の気密を保ってくれるが、パンク修理性を期待するなら液状のシーラントがとどまっている必要がある。

シーラントは乾くので定期的に継ぎ足す必要がある。特に耐パンクベルトを持たないアジリストTLRの場合、突き刺しパンクを塞げる程度のシーラントは常に入れておきたい

AGILEST TLRレビュー

…と自分で書いていたのに、シーラント管理を怠って痛い目にあった。

とはいえ、定期的な継ぎ足しは面倒だし、そもそも、シーラントが残っているかどうかはタイヤを外さないとわからない。

AGILEST TLRのレビューにも書いてあるが、ここはタイヤに求める性能と運用のしやすさを天秤にかけて、チューブレスを使うかどうか選択すべきだ。

チューブレスタイヤの修理はどれも「応急処置」。短時間で、完璧に修理するという点ではクリンチャーにかなわない。

残念ながら、現在のロードチューブレスシステムは(一昔前よりかなり改善されたが)まだ完全ではない。

サイクリスト個々のスタイルに合わせて、性能を取るか(TL)、運用を取るか(CL)、選択する必要がある。

もしレースで使うのなら、迷わずアジリストTLR。スムーズでハイグリップで軽いチューブレスタイヤは、運用が面倒でも使う価値がある。

でも、ツーリングやサイクリングメインで、整備は苦手だし面倒だ、というのなら、クリンチャー+軽量チューブというのもひとつの正解だと思う。

AGILEST TLRレビュー

TLRには一歩届かないが、クリンチャー版のAGILESTも乗り心地とグリップに優れたタイヤ。細い25cタイヤの場合、R’AIRを入れれば性能は肉薄する。

手間を惜しまず性能を追求する「決戦用」にはAGILEST TLRを使うとして、練習やサイクリングでは運用が楽なクリンチャー版を履き、メンテナンスにかける時間と手間をライドに費やすほうが良いかもしれない。

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