上腕に固定する小型軽量な心拍センサー。光学式心拍計の弱点である振動の影響を受けにくく、測定精度が高い。
通信規格はAnt+とBluetooth両方に対応。また、前モデルOH1では12時間だったバッテリーライフが大幅に伸び、30時間になった。
Polar Verity Sense
評価 ★★★★☆
購入価格 14000円
長所 -Pros-
- 光学式心拍計の手軽さと測定精度を両立
- バッテリーライフが伸び、まる1日使える
短所 -Cons-
- バッテリー残量がわかりにくい
- 心拍センサーとしては高価
Polar Verity Sense を購入
心拍計はCATEYE HR-11やGARMIN fenix 6sを使っているが、新たにPolarの光学式心拍計 Verity Senseを購入した。
本品はAnt+/Bluetooth接続の心拍計で、アームバンドで上腕に固定できるのが特徴。
手首に測定するガーミンと比べて振動の影響を受けにくく、激しいライディングでも心拍測定のエラーが出にくい。
満充電で12時間しか持たなかった前モデルOH1に比べ、サイズと重量そのままでバッテリーライフが倍増したことが購入の決め手となった。
光学式心拍計について
測定のしくみ
胸部に巻きつける心拍計(心電式:いわゆる乳バンド)は、心臓の電気信号を読み取り、その間隔から心拍数を計算する。
一方で、光学式心拍計は皮膚にLED光を照射し、反射光の変動から脈拍を測定する。
動脈に緑色のLED光を照射すると、血液中のヘモグロビンに反射して返ってくる。血管が拡張しているときは反射光が少なく、収縮しているときは反射光が多いため、光量の変化を光センサで捉えることで脈拍(≒心拍数)の測定ができるという原理。
光学式心拍計の特徴
光学式心拍計は、動脈が通っている場所ならどこでも測定ができるので、手首や腕などに装着できる。
インナーウェアを脱いで胸に巻き付けなければならない乳バンドに比べると、脱着の手軽さは大きなメリットといえる。
また、乳バンドのように運動中ずれてきたり、逆に締め付けすぎて息が苦しくなることもない。
一方で、測定精度は心電を直接測定する乳バンドには及ばない。特に自転車の場合、腕を動かしたり、ハンドルから伝わってくる振動がノイズとなって誤測定の原因になる。
加えてバッテリーライフの短さも欠点で、コイン電池1個で1年くらい電池交換が不要な乳バンドに対して、数時間~数10時間でのバッテリー充電が必要となる。
上腕に固定する小型の心拍計 Polar Verity Sense
Verity Senseは、心拍計の老舗メーカーPolar(ポラール)の光学式心拍計。前モデルOH1の後継機種として、2021年春に発売された。
小型軽量
センサー本体は直径26.5mm 重量5g。
500円硬貨は直径26.5mmで7g。比較すると、その小ささと軽さが実感できるはず。
本体は50m防水で、汗で汚れても水洗いが可能。
アームバンドで固定
センサーは、付属のアームバンドのバックル部にはめ込み、腕に取り付けて使用する。
バンドはベルクロで固定する。バンドそのものは伸縮する布製で、長さ調整が可能。もちろん洗濯もできる。
隙間があると正常に測定できないため、センサーと皮膚が密着する必要があるが、上腕部であれば締付けはあまり気にならない。
水泳ゴーグルにも使用可能
水泳での使用も想定されていて、ゴーグルのバンドに挟み込むこともできる。
また、センサーと皮膚が密着していれば良いので、ホルダーを使わず、タイトなウエアと皮膚の隙間に挟んで使用することもできる。
アンテナ内蔵のホルダー
驚いたのは、ホルダーに装着するとBluetoothの伝送範囲が20mから150mに伸びること。
アームバンドやゴーグル用ホルダーの取付部を見ると金属リングが仕込まれていて、これがアンテナとして働くようだ。
Bluetooth 伝送範囲: | 最大150m(障害物の無いオープンエリアでホルダー使用時) 最大20m(ホルダー不使用時) |
前モデルOH1から倍増したバッテリーライフ
30時間のバッテリーライフ
前モデルOH1のバッテリーライフは12時間で、丸1日のサイクリングで使うには少々心許なかったが、
新製品のVerity Senseでは、バッテリー容量は据え置きで動作時間が倍増している。
実はバッテリーがネックでOH1の購入を渋っていたので、Verity Senseの発売を知って速攻で注文を入れた。
動作時間: | 継続トレーニング最長30時間 22日間(1日に1時間のトレーニングを実行した場合) |
電池タイプ: | 45 mAh リチウムポリマー充電式電池 |
ただ、スマートフォンアプリとペアリングしないとバッテリーの残量を確認できないのが難点。
一応、バッテリー切れが近くなると本体のLEDが赤点滅、電池切れ寸前になると速く赤点滅するようになっているが、気づいたときにはもう遅いかもしれない…
バッテリーの減りを実測
どのくらいの時間使えるか知るため、バッテリー消費量を実測してみた。
走りに行く前後に時刻とバッテリー残量を確認し、数回のライドを行ってグラフにしたところ以下のようになった。
Ant+接続の心拍計として18時間使用して、バッテリー残量は 100%→30%
厳密に言うと、保管時にも多少放電してるはずだし、Polar Flowアプリで確認できるバッテリー残量は10%刻みなので正確性に欠ける部分はあるが、20時間くらいは安心して使えそう。
付属アダプタでUSB充電
充電は、付属のUSBアダプタを経由する。このアダプタでPCと接続し、データ同期やファームウェアアップデートを行うことも可能。
USBアダプタには取付方向があるのだが、逆に取り付けてしまうと端子が接触しないため充電・通信ができない。使用時は向きに注意。
充電中はバッテリー残量に応じて本体のLEDが点滅する。
- レッド: 0-9%
- オレンジ:10-29%
- イエロー: 30-79%
- グリーン:80-99%
満充電になると、グリーンの点灯状態となる。
本体の操作方法と動作モード
電源投入とモード選択
本体のボタンを長押しすると電源が入る。
6つの心拍測定用LEDがくるくる回った後、モード選択フェーズに入り、
ボタンを押すごとに
- 心拍数モード(青)
- 記録モード(緑)
- スイミングモード(白)
が切り替わる。選択しているモードはセンサーのLEDの発光位置と、サイドのステータスLEDの色で判別できる。
しばらく放置するとモードが確定し、センサーのLEDが6つとも点灯する。
モードを選び直すときは、ボタン長押しで一度電源を切ってから、再び電源を入れる。
心拍数モード
Ant+/Bluetoothの心拍センサーとして使用するモード。
本体起動時はデフォルトで心拍数モードが選択される。
Ant+は何台でも、Bluetoothは同時に2台のデバイスとペアリングが可能。
iPadやスマートフォンでZWIFTをする時はBluetoothのほうがラクなので、Bluetooth対応はありがたい。
ただ、接続の安定性や再接続の容易さから、個人的にはAnt+接続を推奨している。
ちなみに、Ant+/Bluetooth両方のセンサーに対応したGarmin Edge 130 Plusの場合、ペアリング候補としてAnt+のIDとBluetoothのアドレス両方が表示される。
記録モード
フィットネストラッカーとして使用するモード。スマートフォンのPolar Flowアプリを使用してトレーニングを行う。
本体内蔵の加速度センサー、ジャイロセンサー、電子コンパスと、スマートフォンのGPSでログを記録できる。
トレーニングログは本体内に最大600時間分保存することが可能で、Polar Flowアプリ経由でPolarのクラウドにアップロードする。
StravaやTrainingPeaksへの転送もできるらしい。
スイミングモード
ゴーグルにVerity Senseを装着して水泳で使うときのモード。
ターンを検知し、予め設定したプールの長さ(25m/50m)に従って泳いだ距離を計算してくれるらしい。
心拍数の測定精度をテスト
さて、Verity Senseで最も気になるのが心拍数の測定精度。
そこで、心電式の心拍計、CATEYE HR-11を基準として、トレーニング中の心拍数を比較してみた。
ローラートレーニング
まずは、光学式心拍計でも測定エラーが少ないローラー台でテスト。
ZWIFTでJon’s Short Mixを行った。
Verity SenseとHR-11を比較したグラフは以下のようになった。
グラフ中にはワークアウト中のパワー(Saris H3)もプロットしている。
最初のインターバルで心拍の立ち上がりがやや遅いことと、スプリント時に少し暴れている以外は概ねフィットしている。
SST中、1400秒辺りでVerity Senseの心拍数が高くなっているのは、センサーの位置を直していたのが原因。
ロードバイクで実走
実走では路面からの振動の影響を受け、上半身の動きも大きくなるため、心拍数の測定エラーが出やすい。
いつもの練習コースを走ったときのログから、30分間を切り出したグラフを以下に示す。
ローラーのときと同じく、Verity Senseは急激に心拍数が上昇・下降するときに反応が遅れる。
おそらく測定ノイズを除去するため、心拍数の計算にタイムラグがあるのだろう。
3700~3800秒で心拍数が横ばいになっているのは停止時間。
4500~4700秒あたりで少し乖離が見られるが、それでも心拍数の差は5bpm以内に収まっている。
これなら激しいトレーニングライドでも、レースでも使えそうだ。
まとめ:ZWIFTも実走もこれ1個で対応
脱着が手軽で不快感が少ないという光学式心拍計のメリットを活かしながら、心拍バンドと比較しても十分な測定精度を実現した心拍センサー。
バッテリーライフも十分で、朝から夜まで走り続けても電池切れの心配は無い。ただ、使用中にバッテリー残量を簡易にチェックできる機能があればよかった。
心拍センサーとしては高価ではあるが、Ant+とBluetooth両方の接続規格に対応し、実走とZWIFTのインドアトレーニングどちらにも使えることを考えると買って損はない。
少なくとも、購入を検討している人には自信を持って勧められる製品。