Selle SMP EXTRA
坐骨に沿った形状で荷重を分散するSMPサドルの入門モデル。快適性を高めるためママチャリ顔負けの分厚いパッドがついているせいで、せっかくのフィット感が台無しになってしまっている。
評価 ★☆☆☆☆
購入価格 4000円
長所 -Pros-
- 座面が柔らかく、ごく短時間の乗車では快適かもしれない
短所 -Cons-
- いくらなんでも重たすぎる
- SMPの売りであるはずのフィット感に乏しい
坐骨にフィットするSelle SMPサドル
大きくS字にカーブした座面と大きな開口部が特徴的なSMPサドルは、坐骨の形状に沿って荷重を分散するとともに、血管の圧迫を避けることで、坐骨の痛みや痺れを防ぐことができる。
シェルに薄い表皮を貼っただけのサドルや、なかにはカーボンシェルがむき出しのものもあるが、面で接触するため意外と快適らしい…
とはいえ人によって合う合わないがあるのと、着座する位置を前後に調整できず、ポジションが1点で固定されてしまうのが欠点。
(ポジションの自由度を高めたF30というモデルもある)
なお、「100% Handmade in Italy」を謳っており、下位モデルを含め、本社があるイタリアで生産されている。
Selle SMP EXTRA
EXTRAは、高価なSMPサドルの中では比較的リーズナブルなエントリーモデル。
分厚いパッドが設けられ、前傾姿勢のきついロードバイクというより、アップライトなポジションで乗るクロスバイクでの使用が想定されているようだ。
イベント会場で投げ売りされてたのでとりあえず買ってみたのだが、重量は公称365gと、ちょっとした軽量サドル2個分。
流石に重すぎるし、見た目もちょっとアレなのでお蔵入りしていたが、
固定ローラーを回すなら快適では?と思い、ローラー用バイクで使ってみることにした。
上位モデルとは別物
10年近く前、SMP COMPOSITを使っていた事がある。
COMPOSITはクッションが一切無く、シェルに薄い表皮を貼り付けただけの構造。S字を描くサドルに坐骨がスポッとはまったら、ポジションは完全に固定される。
腰を後ろにずらしても座面に沿って滑り落ちてくるし、前乗りすると恥骨が割れそうになる。着座位置を前後に動かせないため同じ筋肉ばかり疲れてくるし、そもそもあんまり尻に合わなかった事もあって、手放してしまった。
その後はFizik アリアンテや、Fabric Scoop Radiusなど、座面がカーブしていてクッションが厚めのサドルを使っている。
SMP EXTRAも、そんなお気に入りサドルに近い座り心地ではないかと思っていたのだが、全然違った。
EXTRAのパッドはママチャリサドルのように分厚く柔らかい。SMP COMPOSITで体験したようなフィット感は皆無で、座布団の上に座っているような感覚。
ブニブニとして腰の位置は安定しないし、座面がカーブしているので滑り落ちてくる。
ローラーで使ってみたが、ペダリングが安定しないうえ、柔らかすぎて坐骨が痛くなった。
やはりサドルというものは、局所的な圧迫を避けつつも適度な硬さで体重を支える必要がある。
ワーキングチェアや車のシートにも言えるが、座面が柔らかければ快適というものではない。
角度を微調整してみたが、体に馴染むポジションは出なかった。
しばらく使ううち、経年劣化で硬化した表皮がパッドの変形に耐えきれずヒビ割れてきたため、使用を中止した。
傷んだSMP EXTRAをバラす
表皮が割れてきたSMP EXTRAを捨てる前に分解してみた。
レールの取り外し
多くのサドルは2本のレールをベースにはめ込んであるが、SMPサドルの場合は、左右レールは一体化しており1本の部材。
レールはネジで固定してあるので、ドライバーで緩めて、レールを引っ張れば抜ける。
なお、ネジは滅多に見かけないポジドライブのプラスネジだった。
レールを外してみてわかったが、シェル単体の状態では容易に変形する。これだけ大きな開口部があれば無理もない。
サドルレールの一部が「ブリッジ」となって左右の座面を繋ぎ、サドルに必要な剛性を確保しているのだろう。
なお、このレールはパイプではなく中実、つまり針金で、めちゃくちゃ重い。
上位モデルでは中空ステンレスレールやカーボンレールを採用しているが、レール形状はどれも同じ。
柔らかいシェルを頑丈なサドルレールから吊り下げるハンモック構造となっている。
この構造で衝撃吸収製を高め、パッドの無いモデルでも乗り心地を確保できるのだろう。
そういえばFizik Kurveも同様のコンセプトだった。
表皮とパッドの除去
さて、レールを外したら、次は傷んだ表皮とパッドを除去する。
パッドはプラスチック製のシェルに直接成形されているようで、接合面は綺麗に剥がれる。
作業しやすいよう、ナイフで分割しながら剥がしていく。
半分剥がしたら以下の通り。どれだけパッドを山盛りにしたかがわかる。
引き続き、パッドを剥がしていく。結構楽しい。
全て剥がし終えたら、ペラペラのシェルだけに。レースモデルっぽくて格好いいい。
このまま乗れるんじゃないだろうか。と思って再びレールを装着。
試しにまたがってみようかなーと思っていると、座面から鋭利な突起が飛び出していることに気づいた。
レールを固定する木ネジがシェルを突き破って顔を出していた。危ない…
木ネジがシェルを貫通しても、パッドが分厚いから問題ないよね?というイタリアンクオリティ。
うーん、イタリアン。
さて、ネジの先は削り落とすとして、表皮でも張り替えてみようかな。かなり難しそうな形だけど…
まとめ:SMPらしさは皆無
だいぶ脱線してしまった…
Selle SMP EXTRAはSMPサドルのエントリーモデルだが、本来の座り心地を味わえない。
重量はともかく、分厚すぎるパッドが骨盤と座面形状のフィット感を台無しにしてしまっている。
柔らかいだけのサドルなら他にもっと安くて品質が良いものがあるし、耐久性もあまりなかったし、いまいち立ち位置がわからないサドルだった。
SMPを試してみたいなら、もっと上位のモデルをおすすめする。