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レビュー

【レビュー】SIGEYI ダイレクトマウントディレイラーハンガー ~SuperSix EVO4用の高品質な社外ハンガー~

SIGEYI Cannondale Disc Brake Direct-Mount Derailleur Hanger for SuperSix EVO4 CND-TH3

シマノのRD-R9100以降のシングルテンション方式のリヤディレイラーを直付けできるハンガー。
高品質な仕上げで、見た目の改善、軽量化とともに、後輪の脱着が行いやすくなるメリットがある。

本稿でレビューする製品は、SIGEYI製品を扱う鈴市商店様から提供されたものです。

長所 -Pros-

  • 純正ハンガーよりも軽量化が可能
  • 後輪を素早く脱着しやすくなる

短所 -Cons-

  • ディレイラーハンガーとしては高価
  • 変速性能への影響は感じられなかった
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SIGEYIのダイレクトマウントディレイラーハンガーをレビュー

SIGEYIは2015年創業の中国のパーツブランドで、高精度なパワーメーターのほか、カスタム向けのディレイラーハンガーやプーリーの製造・販売を行っている。

今回は、Cannondale SuperSix EVO用のダイレクトマウントディレイラーハンガーをレビューする。

シングルテンションとダブルテンション

リヤディレイラーの役割は

  • チェーンを「脱線」させて任意のスプロケットにチェーンを導くこと
  • チェーンのたるみを取り、適正な張力で保持すること

の2つだ。

この「たるみを取る」テンショナーとしての役割に注目すると、現代のほとんどのディレイラーは、プーリーケージに取り付けられた2つのプーリー(テンションプーリーとガイドプーリー)の間をS字に迂回させ、プーリーケージをバネの力でねじることで、余ったチェーンを巻き取っている。
しかし、その構造には大きく分けて2種類の方式がある。

ダブルテンション方式(9000世代以前)

シマノの場合、9000デュラエース世代までのロードバイク用ディレイラーは「ダブルテンション」という構造で、ディレイラー固定軸(B軸)プーリーケージの取り付け軸(P軸)のそれぞれに巻きバネが収められている。

下の写真のように、大きなスプロケットに変速してチェーン長が足りなくなった際、P軸に沿ってケージが反時計回りに回転し、チェーンが引き出されると同時に、B軸を中心にディレイラー自体の角度が変わっているのがわかる。

この構造の場合、変速性能に影響するガイドプーリーとスプロケットの間隔が

  • パンタグラフの角度(スラント角)
  • B軸を中心とした揺動

の2箇所で調整されるため、変速性能が良くスムーズに動作するというメリットがある。

一方、可動部が多いためチェーンが暴れやすいという欠点もあった。
そのため、振動が多い状況で使用されるMTB用リヤディレイラーは先行して次に示すシングルテンション方式に切り替わった。

シングルテンション方式(R9100世代以降)

シマノR9100デュラエース世代以降のロードバイク用ディレイラーとMTB用ディライラーは、シングルテンションという構造を採用している。

こちらは、P軸すなわちプーリーケージの張力のみでチェーンのたるみをとる

下の写真はR9200デュラエースのディレイラーだが、スプロケット位置に関係なく、ディレイラー本体の角度が変わっていないことがわかる。

シマノのシングルテンションRDは「ブラケット」と呼ばれる短いリンクを介して固定されている。
ディレイラーハンガーとブラケットの間は完全に固定されて動かない。B軸に相当する部分は回転するようになっているが、チェーンを張ると一定の位置に固定される。

なお、SRAMのリヤディレイラーもシングルテンションだが、こちらはブラケットを介さず直接ハンガーに取り付けられている。
シマノは何故、こんな回りくどい構造にしたのだろうか。

ダイレクトマウントディレイラーハンガーのメリット

上記のように、シマノR9100以降のリヤディレイラーは

  • フレームのディレイラーハンガー
  • リヤディレイラーのブラケット

という2つのパーツを介して取り付けされている。

ハンガーとブラケットはボルトで完全に固定されるため、2つのパーツに分かれている必要はない。
そこで、従来のディレイラーハンガーとブラケットを一体化したものが「ダイレクトマウントディレイラーハンガー」だ。

この構造には以下のメリットがあるとされている

  • 軽量化:無駄なボルトを減らすことで、全体の重量を軽減。
  • 変速性能向上:パーツを一体化することで変速性能を向上
  • メンテナンスの容易さ:ホイールの脱着が行いやすくなる

ダイレクトマウントハンガーは、シマノと強い関係を持つメーカーでは純正オプションとしてラインナップされることもある。
しかし、多くのメーカーでは用意されていないことのほうが多く、使いたい場合は、社外品に頼る必要がある場合もある。

各社バイクに対応する高品質なハンガー

SIGEYIは、各バイクメーカー用のダイレクトマウントハンガーを幅広くラインナップしており、有名どころなら大抵のロードバイクに対応する。

今回レビューに当たって、2023年発売の第4世代SuperSix EVO用のハンガーを提供いただいた。

このバイクのハンガーは2ピース構造となっているが、ハンガー本体、ナットともに切削加工は丁寧で、仕上げのブラストやアルマイトも綺麗にかかっている。

もちろん、ネジ山も高精度だ。
キャノンデール純正ハンガーは仕上がりが良い部類だが、SIGEYI製ハンガーはそれを上回っている

重量は公称値通り、ボルト込みで19gだった。

取り付け作業

ダイレクトマウントハンガーへの交換にあたって、まずは純正ハンガーを取り外す。

ハンガーは2本の小ネジでフレームに固定されているが、できれば、高トルクで締まっているブラケット側ボルトを先に緩めるほうが良い。

摘出したディレイラーハンガー+ブラケットはこんな感じ。これをダイレクトマウントハンガーに置き換える。

逆の手順で取り付けていくが、ここでひと手間かけて、ネジに緩み止めを塗っておくと良い。バイクによってはここは緩みやすく、変速調整が狂う原因になることが多い。

取り付けるとこんな感じ。Di2のケーブルはハンガーの穴に通したり、必要に応じてタイラップで縛ったりして、チェーンに巻き込まれないようにしておこう

最後に、変速調整をやり直して作業完了だ。

使用感

実走してみたが、変速性能に大きな変化は感じられなかった。まぁ、これは予想できていたことだ。

実は以前、2台のシクロクロスバイク(Ridley X-Night ×2)に従来のハンガーと他社製のダイレクトマウントハンガーを取り付け、2シーズンにわたって比較したのだが、差は感じられなかったのだ。

「剛性が上がる」なんて言われるダイレクトマウントハンガー。しかし、肉抜きが施されたダイレクトマウントハンガーの場合、純正品より剛性が下がることも珍しくない。
ただし、パーツの取付面で平行が狂いやすい純正エンド+ブラケットの構成に比べて精度が出やすい点は変速性能に影響しているかもしれない。

また、ディレイラーは両方ともDi2(GRX RD-RX815)だったが、これが機械式変速ならフィーリングの差が感じ取れた可能性はある。

リヤホイールの脱着は明らかにやりやすくなった
シングルテンションのリヤディレイラーを搭載するロードバイク、特にディスクロードはホイールを取り付けにくいのだが、ハンガーのダイレクトマウント化に伴ってエンド周辺の干渉が減り、ホイールを定位置に差し込みやすくなった

なお、軽量化の効果は17gだった。これを僅かと感じるかどうかは人によるだろう。

…参考までに、SuperSix EVOのHi-MODとLAB71は、フレーム重量40g差で価格差23万円だ。

まぁなんだかんだ言って最大のメリットは、リヤエンド周辺の見た目がクリーンになることかもしれない。

まとめ:カスタマイズの一環として

SIGEYI製ダイレクトマウントハンガーの価格は5150円SuperSix EVO4用ハンガーは部品点数が多いため6780円(どちらも税抜)。

見た目の向上や軽量化、メンテナンスの容易さを提供する一方で、変速性能の差も感じづらいこの製品。正直なところ、コストに見合った性能向上があるとは言い難い。
その金額でショップに行って、ハンガーを修正してもらうほうが変速性能への影響は大きいだろう。

ぶつけなくてもハンガーは意外と曲がってたり、そもそも新品も平行になってなかったりする。

性能向上や大幅な軽量化を期待しているのならおすすめしないが、パーツの製造品質は非常に高く、コストに見合った仕上がりは感じられる。
使い勝手も向上するので、バイクを自分好みにカスタマイズする目的で交換するなら悪い選択肢ではない
例えば、ハンガーを曲げてしまった際、純正品でなくこちらを選ぶ価値は十分にあると思う。

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