ロードバイクタイヤ・ホイールのワイド化と新ETRTO規格(ETRTO STANDARDS 2021)

ロードバイクのタイヤ幅は長らく23c(いや、21cなんてのもあったか…)が標準だったが、この10年ほどで25c、28cとどんどん太くなり、30cも視野に入ってきた。

そして、タイヤがワイド化するのに従ってホイールのリム幅も広がってきており、特にここ数年で一気にワイドリム化が進んだ。

タイヤやホイールの規格を定めた「ETRTO規格」も現状にあわせる形で改定され、今後発売されるタイヤは原則としてワイドリム基準となる。

タイヤ幅のワイド化

タイヤ幅がワイド化した事情はいろいろあるのだろうが、主な理由は

  • 接地面の変形が減り、転がり抵抗が少ない
  • エアボリュームが多くなり、振動吸収性が高い=疲労が少ない
  • 加速・減速・旋回時のグリップが向上する

といったところ。

もちろんメリットばかりではなく、タイヤが太くなることで、前面投影面積増加と重量増というデメリットもある。
それでも、タイヤのワイド化は徐々に進んでいった。

主流は28c、30cへ。25mmはもはや「ナロータイヤ」

ワイドリム化も進行

タイヤのワイド化にあわせて、リムも幅広くなっていく。

ロードバイク用クリンチャーリムは長い間13c、つまり内幅13mmだったが、2010年頃には内幅が2mm広い15cリムに切り替わった。

そして2016年頃、ロードバイクの「標準タイヤ幅」が25cになった頃、マヴィック キシリウムやカンパニョーロ シャマルウルトラが17c化した。

2020年頃には19cリムもメジャーになり、「標準タイヤ幅」は25~28cになった感じだろうか。

ディスクロードの登場でタイヤ・ホイール幅はキャリパーブレーキに制限されなくなり、リム内幅は21c、23cとさらに急速なワイド化が進んでいる。

2010年代後半のワイドリム化の状況については、baruさんの記事【調査】ロードホイール ワイドリム化の進行状況に詳しくまとめられている。
キャリパーブレーキの限界で19cどまりなのに対して、ディスクはまだまだ広がっていきそうだ…

いまや「ナロー」な15cリム(フルクラム レーシング1)

10年前(2010頃)はリム幅に注意を払うサイクリストは相当な変人だったが、今や重量とリムハイトの次くらいにチェックするポイントになっている。

ワイドリムのメリットをいくつか挙げると以下のようになる。

  • リム剛性が高まる
  • コーナーでタイヤがヨレにくくなる
  • (同じタイヤなら)幅が広がり、エアボリュームが多くなる

デメリットはやはり重量増だが、そもそも重量は、上りや加速時にしか影響しない。

それよりも、快適性が高く、運動性能に優れるほうが肉体的・精神的な消耗を抑えられ結果的に速く走れる。

また、ディープリムの場合、リム最大幅をタイヤより僅かに太くすることで空気抵抗が改善される。走行抵抗の殆どを空気抵抗が占める自転車では、空気抵抗の低減が一番効く。

ワイドなタイヤワイドな(カーボン)リムを組み合わせて、快適性とグリップを高め、転がり抵抗と空気抵抗を減らす、というのが現在のトレンドになっている。

ETRTO規格の改定

ETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation エトルト)規格とは、乗用車からオートバイ、農作業用トラクターにいたるまで、乗り物のタイヤ・リムの形状を定めた規格。

自転車のタイヤやホイールもETRTO規格で定められている。タイヤメーカーやホイールメーカーがこの規格に従って製品を製造しているからこそ、(規格さえ合っていれば)好きなホイールに好きなタイヤを装着できるというわけ。

ETRTO規格では、タイヤサイズは

幅[mm]-ビード座直径[mm]

のように表記される。例えばロードバイクの700x25cタイヤは25-622となる。

今までは、25cクリンチャータイヤの基準リム幅を15cと定めた旧ETRTO規格に従って各社のタイヤが製造されていた。

しかし、これらを現在主流のワイドリムに取り付けると、表記サイズより幅が広がってしまう

また、タイヤ断面形状が歪み、本来の性能を発揮できないおそれもある。

そこで、現状にならう形で、2020年にETRTO規格が改定され、「ETRTO STANDARDS MANUAL 2021」より、25,28Cタイヤのリム幅基準が19mmとなった。(以後新ETRTOと記載)

ETRTO STANDARDS MANUAL 2021

新旧ETRTOのタイヤ幅-リム幅対応表

旧ETRTOと新ETRTOそれぞれについて、タイヤ外幅と、設計基準リム幅は以下のように対応している

タイヤ幅 [mm]旧ETRTO(~2020)
リム内幅 [mm]
新ETRTO(2021)
リム内幅 [mm]
201315
231517
251519
281719
301721
321721
351923
新旧ETRTOのタイヤ幅-リム幅対応表

新旧ETRTO規格のタイヤが混在する状況

最近発売されたタイヤ、例えばPanaracer AGILESTは新ETRTO準拠を謳っており、25c,28cタイヤは内幅19mmリムに取り付けた際に規定の幅となり、ベストな性能を発揮するように設計されている。(23cタイヤは17cリム基準)

ただ、現在市場で販売されているタイヤは新旧の規格が混在している。中には独自に17cリムを基準としたものもあるらしい…

同じ「25c」表記のタイヤでも、旧ETRTO準拠のタイヤは15cリムにあわせて、新ETRTO準拠のタイヤは19cリムにあわせて設計されている。

仮にこれらを17cリムに取り付けた場合、前者は25mmより太く、後者は25mmより細くなってしまう。

新ETRTO準拠のタイヤはその旨がパッケージに記載されていることもあるが、古いものは敢えて「旧ETRTO」なんて書かないので、もうしばらくは混乱した状況が続きそうだ。

パナレーサー(Panaracer) AGILEST(アジリスト)
パナレーサー(Panaracer)