北海道で極上グラベルを堪能 ニセコグラベル スプリングライド2022

北海道・ニセコで行われたグラベルライドイベント「ニセコグラベル スプリングライド」に参加。広大な大地で、本州では体験できない極上のグラベルを味わってきた。

北海道の広大なグラベルを走る

衝撃吸収性に優れた太いタイヤを履き、グラベル(未舗装の道路)を快適に走れるグラベルロードバイク。当初は「日本では流行らない」なんて言われたものの、徐々に認知され、定着してきたように思う。

「グラベル」人気の高まりに伴い、2019年頃からはライドイベントも行われるようになってきた。
その後のコロナ禍で中止が相次いでしまったものの、2021年はいくつかのグラベルイベントが開催された。

レース派の私は、こういったライドイベントに興味がなかったのだが、昨年8月に開催された「ニセコグラベル2021」の写真や動画を見て気持ちが変わった。
北海道の広大なグラベルを見て、自分も走りたいと思った。

そして2022年。今年は2回行われるニセコグラベルの1回目「ニセコグラベル スプリングライド(2022年5月15日開催)」のエントリーが始まった。
9月開催予定の「ニセコグラベル2022」に比べると小さめの規模で開催されるこのイベント。北海道は流石に遠いと感じたし、会場までの移動もネックだったので悩んでいたが、TKCプロダクションズのテースケさんに「現地でレンタカー借りるけど一緒に行く?」と誘っていただき、エントリーを決めた。

https://www.nisekogravel.com/

東京よりも近くて安い北海道

地の果てというイメージがある北海道だが、飛行機に乗れば関空から2時間ほど。
昨今のコロナ禍のためか航空券も激安で、ANAで関空から千歳の往復が23000円ほどだった。
新幹線で東京に行くより速いし安いことになる。

LCCだともう少し安くなるが、手荷物を預ける場合は追加料金が必要なので、自転車を持っていくならJALなりANAなり、フルサービスキャリアを使うのがおすすめ。サービスも良いし。

せっかく北海道に行くので、観光も盛り込んで金曜~月曜の3泊4日という日程。久々の国内旅行だ。

ANAで飛行機輪行

飛行機輪行というと、大ぶりな輪行袋やハードケースが必要という印象があるが、今回はタイオガのコクーンを使用。
後輪を外さないことでパッキングが楽になるうえ、チェーン落ちやディレイラー破損のリスクも少ない。

前輪を外してフレームに固定。トップチューブ、シートステー、右クランクの3点でベルト締めする。ブレーキローターは絶妙なクリアランスで前三角に収まった。
また、左ペダルを外し、フォーク破損を防ぐためエンドにダミーのパイプを固定し、前輪ブレーキパッドにはスペーサーを挟んだ。

一番苦労したのが袋詰め。ホイールベースが長くハンドル幅が広いグラベルバイクなのでかなりパツパツになったが、なんとかコクーンに収まった。

薄手の生地1枚なので破損が心配だったが、往復ともベルトコンベアではなく手渡しで、バイクの傷はもちろん、袋の痛みもなかった

ただし、これは国内線だから。国際線では相応の対策が求められる。

輪行袋がかさばらないので、新千歳空港から札幌までは自走した。
距離は50kmほど。そのうち20kmほどは快適なサイクリングロード(札幌恵庭自転車道線)で、クルマの無い道をほぼノンストップで走り続けられる。

空港を出発し、2時間半ほどで札幌のテレビ塔に到着した。
あいにく天気が不安定で、小雨に降られながらのサイクリングになってしまったが、コース自体は最高だったので、自転車を持って千歳に行ったときはぜひ走ってほしい。

ニセコグラベル

北海道グルメを食い尽く…せない

翌日土曜日にテースケさんはじめ「乗る練習」チーム一行と合流し、ニセコに移動しつつクルマで観光。

サンドリアのサンドウィッチにはじまり、小樽で海鮮丼を食べ、きのこ汁を飲み、夜はチームメンバーで前夜祭。海鮮とモツ鍋、その後は余市で買ったウイスキーで乾杯…という、喋ってるか食ってるか、という一日だった。
それにしても、北海道は何を食べてもおいしい。ここの食べ物を堪能するには数日じゃ足りない。

ライドメンバー

今回は「乗る練習」のスタイリッシュなメンバー

に、オタク1匹がくっついて走る。スタイルが台無し。みんなInstagramがメインだけど僕はTwitter。みんなiPhoneだけど、僕はAndroid(しかも海外端末)。
「娘の学校ではiPhone持ってないと仲間ハズレにされる」って話を聞いて泣いちゃった。

直前のコース変更

さて、いよいよ5/15日曜日。朝8時過ぎに会場へ。

金曜から土曜日はずっと天気が悪く、雨が降ったり止んだり。一時は嵐のような天気だった。
当日朝も地面が濡れていたが、天気は一転、青空が見えるライド日和になった。

実は今回、開催直前にコース変更があった。

というのも、例年より雪が多く、当初使用予定だったコースに雪が残っていたため。
しかし、そのコース変更のスケールが凄い。スタート地点は羊蹄山の東側から西側に、直線距離で40kmほど移動。
40kmといえば、京都駅から大阪駅、品川駅から鎌倉駅くらいの距離感。さすが、北の大地はダイナミックだ…

変更後のコースは距離45kmで獲得標高1000m。グラベル率は50%ほど。
ここまでグラベルを盛り込めるのは凄い。グラベル天国だ。

受付

本部には長蛇の列ができていたので、バイクを下ろして準備し、落ち着いてから受付へ。

本部テント付近には、最大手の自転車YouTuber けんたさんの姿と、キャノンデールジャパン関係の方たちが。グラベルライド企画だろうか。

その中にはカズ(山本和弘)さんの姿もあった。レース会場やイベント会場に行くと、いつもカズさんから声を掛けてもらう。今回も例に漏れず…

最初に声を掛けてもらったのは、例の2011年野辺山の「スク水ショック」翌月に開催されたCX全日本選手権(マキノ高原)。ファン第1号と言ってもいい(失礼)。
こういった会場でしか会わないのに、すごく良く周りを見てる人。

2011年 マキノ全日本にて 一瞬だけキャノンデールのCXバイクを持っていた。

なお僕はと言うと、家の近くですれ違った妻に気づかない程度には周りを見ていない。

受付では補給食とステッカー等、あと参加賞のTシャツを貰った。Tシャツはロングスリーブで、半袖だとやや肌寒い北海道滞在中に重宝した。

あと、お世話になっているパナレーサーの中の人(休日出勤中)から前田製菓のWAY TO GO ハイプロテインクッキー(パナレーサー特別パッケージ)を頂いたので、フレームバッグに入れておく。

キャニオン・グレイルとグラベルキングSS

バイクはCANYON GRAIL CF SL。

ホイールはカーボンのReynolds ATRから、アルミのフックレスリムを持つMavic Allroad SLに交換した。アルミホイールだが、重量は1650g→1590gに軽量化。

タイヤは、センタースリックパターンのPanaracer Gravelking SS 700x38cをチューブレス運用。下りは結構速度が出るらしいので、リム打ち対策のため空気圧は高め。
体重68kgで、フロント2.6bar、リヤ2.8barという設定にした。

ただ、タイヤはセンターにもノブがあるグラベルキングSKのほうがベターだった。
舗装路での走りが軽いので、殆ど舗装路+短いグラベルというライドには良いが、未舗装率の高いニセコグラベルのコースではグリップ不足を感じた。

ウエアは(面倒になって)普段の通勤スタイル。下にレーパンすら履いていない。俺がモンベルおじさんだ…!

テースケさんから「ド素人か達人のスタイル」というようなコメントを頂いた。
あぁ、例えるなら富士山にサンダルで登るような…

その他携行品は、補給食、ウインドブレーカー、パンク修理セットと工具類。
これらはApidura エクスペディション・フレームパックに入れておく。

時間ギリギリにスタート

今回のイベントでは一斉スタートではなく、各自が8時~9時の間、好きなタイミングで走り出す。

集合写真を撮ったりして、呑気に過ごしているうちにスタート時間リミットの9時が迫る。
8時57分、本当にギリギリの時間にスタート。

まずは舗装路を登るが、ほどなくグラベル区間が始まる。
未舗装とはいっても、林業や農業のため普段から軽トラが行き来しているような道路で、路面は硬く、砂利が敷かれて整備されている。
普通の乗用車でも難なく走れるような道だった。

落としたInsta360 Go2で偶然良い映像が撮れていた

1本目のグラベルは、山の中をゆるく登って、ゆるく下るコース。

下りきったらいったん舗装路に出る。こういう道路も快走できるのがグラベルロードバイクの魅力。クルマも殆ど通らない道をのんびり走る。

2本目は少しきつめの上り。しかし、インナーローで登りきったら一気に視界が開けて絶景が現れた。みんな停まって写真を撮っていた。

20kmほどでチェックポイント。前回開催時のようなメロン食べ放題はなかったが、休憩して他の参加者と談笑する。

レジェンド 市川

出発して、ここからしばらくは登り基調。主に舗装路で標高を稼いでいく。

と、クラシックなデザインのウエアを着て、TOYOのコミューター系 E-bikeに乗った小柄な方が話しかけてきた。異様にテンションが高い。

一見するとただの変なおじさんだが、サドルは使い込まれたロールス。只者ではない雰囲気が漂っている。

ここで、テースケさんがウエアの「ICHIKAWA」という文字に気づく。
そう、このおじさんの正体は、欧州で6勝、1990年のジロ・デ・イタリアでは臨時エースに昇格し、最高35位、最終的に総合50位で完走した日本ロードレース界のレジェンド、市川雅敏氏だった。

現役引退後はJ-Sportsにてロードレースの解説を行い、その毒舌っぷりで物議を醸した人物。本人曰く「『ロードレースを汚すな』等といったクレームの山が来て、事務所のファックスの紙がなくなった」とか(笑)

最近のサイクリストにとっては、アニメ「茄子 アンダルシアの夏」で解説役を演じた人、というほうがインパクトがあるだろうか。

現役時代の写真(めちゃくちゃ男前)から気難しい人というイメージを持っていたが、実際はよく喋るちょっと変わったおじさんだった。

現役選手への(ほとんど中傷に近い)批判が問題になっていたが、多分、興味無かったんだろうな…

走りながらだいぶ話したが、Wikipediaの内容は概ね正しいようだ。

ハイスピード・グラベル

上り区間を終えて、29km地点からグラベル区間。

スタート後1本目に走ったような、ゆるいアップダウンのあるグラベル。

路肩にはまた雪が残っており、わざわざタイヤで踏んで感触を楽しむ。

ガードレールは除雪でひしゃげていた。

少し舗装路を登り、いよいよフィナーレを飾るグラベル。標高差にして350mほどを駆け下りる。

テースケさんと二人でつるんで下るが、キャニオン グレイルにグラベルキングSS(センタースリック) 38cを履く私に対し、テースケさんはキャニオン グリズルサスペンションにグラベルキングSK(ノブ付き) 50c。50cといえば約2インチ。一昔前のクロスカントリーMTBのタイヤ幅だ。

同じグラベルバイクといっても性格は正反対舗装路ではセンタースリックタイヤを履いたグレイルのほうが速いが、サスペンションを搭載し、グリップとエアボリュームに優れたタイヤを履くグリズルのほうが遥かに高いオフロード性能を持つ。

下りストレートではMAXで45km/hほど。この領域ではほとんど接地感が無く、前輪と後輪が逆の方向に滑ったりする。そんな状態でもテースケさんはまだまだ余裕がある。

さらに如実な差が出るのがコーナー。前輪のグリップが乏しく、砂利で流れてラインが膨らんでしまう。こんなに気持ちいいグラベルなのに、ペースを抑制されるのがもどかしい。次に走るときは絶対にグラベルキングSKを履こう。

下りきったら、舗装路を少し走ってフィニッシュ地点へ。

45km 990mUP。北海道は何を食べても美味しいのと同様に、ニセコグラベルはどこを走っても常に大満足のライドだった。

本物のグラベルを味わえる

まずはメンバー全員、転倒なく無事に完走できて良かった。(「ここで散っても構わない!」と攻めたが、本当に散らなくてよかったと胸をなでおろしている)

メカトラは1件だけ。パンクはなかったが、途中グリズルのスポークが折れるトラブルがあった。こんな事もあろうかと持っていたタイラップで折れたスポークを縛って応急処置した。

コースについて。

直前のコース変更ということで、コースがつまらないのではないか?と不安になったが、実際走ってみると杞憂に終わった。

コース全体を通して、しんどいだけの箇所はなかったし、基本的には舗装路を登って、グラベルを下る構成。最後は一番気持ちいいグラベルを下って、その余韻に浸りながらゴールという、ライドイベントとしてとても良いレイアウトになっていた。

「本物のグラベルは北海道にしかない」なんて話を聞いたが、確かに、これだけのスケールで、スムーズなグラベルが無数にあるのは北海道くらいかもしれない。本州のグラベルはもっと短かったり、荒れていたり、勾配が急で危険だったりする。

9月にも開催されるが、絶対に参加してまた走りたいと思った。

エピローグ:すぱらしい温泉

さて、イベント後は札幌に戻ったが、Googleのナビに従ってハイエースを走らせると、さんざん峠を登った挙げ句、ピークで積雪通行止めになっていた。

通行止めというか、雪で道が閉ざされている。さすが北海道だ…

そしてその道路脇には温泉が。レジェンド市川さんがオススメしていたような気がする「五色温泉」(うるさいので会話中はスルーしていた)を偶然に見つけてしまった。

これはもう、入るしかない。

無愛想なおっさんに入浴券を渡して露天風呂へ行くと桃源郷だった。

雪景色、暖かい日差しと少し肌寒いくらいの気温、そしてヌルっとした泉質。常に喋っていた一行だが、このときばかりは数分間無言で湯に浸かっていた。

夜はすすきの「ポッケ」でジンギスカン。生ラムは全く臭みがないし、ほんのりバターの風味がする。ラム肉に対する認識を改めた。

この日は札幌に泊まり、翌月曜日、しぶしぶ帰阪。北海道旅行のはずがそのまま住み着く人が一定数いるそうだが、気持ちがわかる気がした。

まぁ、また行けばいっか!