IRC SERAC CX シクロクロスチューブレスタイヤの選び方

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シクロクロスのレースを走るにあたって、最も影響の大きい機材がタイヤ。33mm以下の細いタイヤには、転がりの軽さ、サイドのグリップ、トラクションの掛かり、そして振動吸収性が求められる。

性能の面でベストなのは今も昔もチューブラータイヤだが、タイヤ自体が高価だったり、貼り付けにもノウハウが必要。何より、タイヤの数だけホイールが必要になる。欧州プロ選手ともなると、自宅地下室には大量のホイールとタイヤがぶら下がっているとか…

チューブラーは扱いきれないけどクリンチャーでは不満、という人の間で使用者が増えているのがCX用のチューブレスタイヤ。MTBのレースでは随分前からチューブレスタイヤがスタンダードになっている。

僕は現在はチューブラーだが、2014~15と2015~16の2シーズンはIRCのシラクCXチューブレスタイヤを履いてカテゴリー1(C1)で走っていた。

なので少し古い話になるのだけど、シクロクロスにおけるチューブレスタイヤのメリットや使い方について書こうと思う。

目次

チューブラータイヤ

2013年にシラクCXが発売されるまでは、(ユッチンソン等からチューブレスタイヤが発売されていたものの)シクロクロスのレースシーンでは、チューブラーか、クリンチャーか、という状況だった。

チューブラータイヤはリム打ちパンクしにくく、低圧で運用できるため振動吸収性に優れ、柔らかいタイヤが変形して路面の凹凸を掴むような独特のグリップ感がある。

高級なチューブラータイヤは特にしなやかで、前後のタイヤがズルズル滑っているコーナリング中でもバイクの動きをコントロールでき、ペダルを踏み込めば滑りながら前に進む。そういう乗り方ができる。

FMBのチューブラータイヤ。高級チューブラーを使うくらいレースにこだわるなら、路面にあわせて揃える必要があるよね。

いっぽう、圧倒的なパフォーマンスの代償としてタイヤ自体が高価な上、チューブラーリムへの貼り付けもノウハウと時間が必要で、とにかく運用が大変。

その日の気分でタイヤを貼り替えるのは現実的でなく、タイヤの種類だけホイールセットを用意しなければならないし、1セットしかホイールがなくても、パンクに備えて予備のホイールセットを持っていかなければならない。

トレッドパターン3種類×前後で、とりあえず6本。サブバイク用も揃えたら、さらに2倍。

レースは毎週あるので、チューブラーがパンクすると忙しくなる。僕はタイヤ貼りを自分でやるし、予備タイヤもいっぱいストックしているから平日の夜に直すけど、ショップ頼みの場合はレース後ショップに直行してホイールを預け、週末までに取りに行く必要がある。タイヤの在庫がなかったら詰む。

IRC シラクCXについて

シラクCXは2013年に発売されたシクロクロス用チューブレスタイヤ。チューブが必要ないためクリンチャータイヤよりしなやかで、エアボリュームも稼げる。さらに、リム打ちパンクもしにくく空気圧を下げられる。

シラクCXの特長は、タイヤ自体が柔らかく、チューブラーに及ばないながらもしなやかさを意識していたことと、発売当初から路面にあわせたトレッドパターンを揃えていたこと。シラクCXを使っていた頃は無印、MUD、SANDの3種類しかなかったが、現在はSANDにサイドノブを追加したEDGEをラインナップに加わり、4種類の選択肢がある。

他にも以下のような特徴があり、クリンチャー以上チューブラー未満のタイヤとして一気に普及した。

◯運用のしやすさ

最大のメリットであり、僕がチューブレスを導入しようと思った動機。チューブラータイヤだと使うタイヤの数だけホイールが必要になるが、チューブレスはクリンチャーと同じ手順でタイヤ交換を行える。

予備のタイヤを持っていれば、パンクしたタイヤをレース現場で交換したり、コースの路面にあわせて無印、MUD、SAND、そして現在はEDGEを加えた4種類から最適なタイヤを選べる。

◯転がりの良さ

シラクCXは、チューブレスの特性かパターンの設計か、舗装路ではよく走る。

ヤスリ目のSANDはロードタイヤのようにスムーズ。乗り心地も良いので街乗りタイヤとしても最適。

無印は特にパターンの設計が良く、ちゃんとグリップするのに転がりも良い。後輪が減ってくるとさらに軽く進むようになる。

ただし、泥コンディション用のMUDはパドルのように泥を掻くトレッドで抵抗が大きい。

左はノーマル、右は泥用のMUD。あまり変わらないようにも見えるが、転がりは結構違う。

×グリップの過渡特性

レースで使うタイヤは、グリップが限界に近づいた時の滑り出しが穏やかで、対処しやすいものが良い。チューブラータイヤはこの領域が広く、じわじわ滑りながらもコントロールが効くため攻めやすい。

対してシラクCX(無印・MUD)は、グリップ自体は十分あるものの限界がつかみにくく唐突に滑り出す。

滑った時の対処が難しい=転倒につながる

ため、多少セーブする必要があり、性能を発揮しきれない。

SANDについては、砂か、完全に乾いた草地でないと扱いきれない。

×低圧でのヨレとビード浮き

ビード浮きはシクロクロス用チューブレスタイヤ最大の欠点で、僕がチューブラーに完全移行した動機でもある。

クリンチャーに対するチューブレスタイヤのメリットは空気圧を下げられることだが、低圧で運用するとタイヤ自体がヨレて腰砕けになる。リムとの相性によってはビードがリムから僅かに浮き、エアが漏れていくこともある。

コーナリング中にビードが浮いて、そこに小石が挟まっている。

グリップの良い路面でのハイスピードコーナリングや、土手を横切るようなキャンバー区間ではタイヤに強い横力がかかるため、ビードが浮いてエアが漏れやすく、レース後、タイヤとホイールの間に草が挟まっていることもしばしば見かけた。

対策はヨレに強いワイドリムを使うことや、空気圧を上げることと、さらに、タイヤをこじるような乗り方をしないこと。こういった理由で、僕はチューブラーに比べて0.2~0.3気圧高めで運用していた。

×耐久性の低さ

ケーシングが薄くコンパウンドも柔らかいため、トレッド、サイドともに切れやすい。トレッドはともかく、サイドカットにはシーラントが効かないので注意が必要。激しいリム打ちでサイドが切れてお亡くなりになった事は何度もある。

サイドは弱い。重量増になるが、X-Guard版はサイドとトレッドが強化されている。

タイヤサイドのビードに近い部分に穴が空くとお手上げで、シーラントはもちろん、裏からパッチで修理するのも不可能だった。トレッドがまだ残っているものはチューブド運用で街乗り・通勤に使っていた。

また、柔らかいコンパウンドを使っているので後輪はモリモリ減る。先ほどとは逆に、レース用タイヤを通勤に使うと肝心なレースでノブが無くて困る。

そういえば、あえて通勤で使ってノブの山を減らし、レースでの転がりの軽さを狙ったことがあったっけ…

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×リムへの組付けとビード上げ

運用のしやすさがチューブレスタイヤのメリットだが、タイヤとリムの相性によっては脱着が大変に難しい。硬くてリムになかなかはまらなかったり、逆に、緩くて空気が漏れ、ビードが上がらなかったり。

リムへの組付け

固くてリムに嵌まらない場合は、ビードを傷つけないIRCのチューブレス専用タイヤレバーや石鹸水の使用で対処。また、クリンチャータイヤにも言えるけど、ビードをリムセンターに落としタイヤを揉んで寄せると呆気なく嵌まったりする。

ビードの上げ方

ビード上げのコツは、タイヤを揉んでリムになじませ、ビードとリムをなるべく密着させておくこと。空気が抜ける隙間をなるべく減らせれば、フロアポンプで難なく上げられることもある。

それでもタイヤとリムの隙間からエアが漏れてビードが上がらない場合は、リムテープをもう1周多く巻いたり、専用ポンプエアタンクを利用する。エアタンクは、(ビード上げる以外の用途が無いけど)チューブレスタイヤを使うなら持っておいて損はない。ビード上がらないと、本当に心身が疲弊するから…

ビード上げで最強なのは電動コンプレッサーで、普段の空気入れや洗車後の水滴飛ばしにも使えて便利だけど、ある程度大型でないと役に立たないし、住宅環境を選ぶ。

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コンプレッサーもタンクも持ってないけどビードが上がらん!助けて!って人は以下の裏技を試してみてほしい。

ビード上げ裏技その1:CO2インフレーター作戦

金に物を言わせる。CO2インフレーターは勢いよくエアが吹き出すので、これでビードを上げるという作戦。

失敗したらボンベ1本が無駄になる。ビードが上がっても、二酸化炭素は抜けやすいので、エアを全部抜いてフロアポンプで空気の入れ直し。

なお、チューブレスバルブのバルブコアは外したほうがエアの初速が稼げ、ビードが上がりやすい。

ビード上げ裏技その2:チューブ作戦

ビードを両側上げるのは難しいが、片側だと上がりやすい。なので、チューブドタイヤのようにチューブ入りで加圧しビードを上げ、その後、タイヤのビードを片側だけ外し、チューブを抜き取り、チューブレスバルブを取り付け、ビードを戻してからフロアポンプで鬼ポンピング。気合でビードを上げる。

金はかからないが、何度もタイヤを脱着したりチューブ入れたり抜いたり、端的に言ってしんどい。

他に、ホイールをトランクに放り込んでガソリンスタンドまでドライブし、ハイオクとエアを満タンにしてくるという手もあるけど、まぁ、最終手段かな。

シーラント

ビードが上がったらシーラントを入れる。エア漏れを防ぐ程度なら最低限、パンク対策も考えるなら多めの量をシリンジに吸って、バルブから注入する。

ビードを上げる前にタイヤに直接入れる方法もあるけど、ビード上げに成功する確信がなければおすすめしない。なかなか上がらなくて、うっかりシーラントを部屋にぶちまけると心の底から萎える。

エアの保持力を高める目的と、軽微なパンクやビード浮きへの対応を期待してシーラントは20~30ml入れていたと思う。

路面にあわせたシクロクロスタイヤの選び方

シラクCXは「SERAC CX(無印)」「SERAC CX MUD」「SERAC CX SAND」「SERAC CX EDGE」の4種類のパターンでラインナップされている。せっかく(チューブラーよりは)タイヤ交換しやすいチューブレスタイヤなので、路面状況に合わせてこれらを使い分けるのが効果的。タイヤを1種類に絞るのなら対応できる範囲が広いチューブラーのほうが良いかも(スペアホイールが必要だけど)。

僕がチューブレスタイヤを使っていた時期は、チューブラーホイール1セット、チューブレスホイール2セットを2台のバイクで共用していた。

チューブラータイヤはオールラウンド用で、これで対応できない路面をチューブレスで補うイメージ。

さて、そんなシラクCXの選び方について。

SERAC CX(無印)

基本は無印。転がりが良いしグリップもそこそこ。草地、土、硬い砂、舗装路等、大抵の路面にそれなりに対応でき、踏むセクション、曲がるセクションともに、スピードを乗せられる。

コーナーのグリップ感はMTBタイヤのようにザクッとノブが刺さる感じで、滑るとちょっと対処が難しい。

減りは速いが、センターノブはすり減ったシラクCXはサイドノブつきスリックの代用に使えるので、パンクしていないなら捨てずに持っておくと良い。

このパターンとコンパウンドのままチューブラータイヤになったら使いたいな、と密かに思っている。

SERAC CX MUD

水分を多く含むヌタヌタの泥のときは迷わずMUD。

各社マッド用タイヤのパターンにはいろいろ思想があるが、シラクCX MUDの場合はパドル状のノブで泥を掻くタイプ。ノブが少なく間隔が広いのでノブが路面しっかり刺さり、隙間にも泥が詰まりにくい。

横方向のグリップは無印に毛が生えた程度だけど、縦方向のトラクションはしっかり掛かり、ドロドロの路面でもバイクを前に進められる。

EDGE発売以前は、センターノブをニッパーで切り落とし、コーナーも攻められるスリックとして使う人もいたとか。先程も紹介したが、僕もセンターノブをすり減らしたMUDを草地のレースに使ったことがある。

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SERAC CX SAND

SANDは使い所が少なく、そして難しい。

砂地で接地面積を稼ぎ、路面を無駄に掘り起こさないようノブを廃したヤスリ目パターンは、基本的には名前の通り、砂地専用。

ワイルドネイチャープラザのような、全域が砂のコースで有効なタイヤ。

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かなりレアなシチュエーションだが、完全ドライの草地など滑る気がしないようなハイグリップで、かつ路面抵抗の大きい場合もSANDかな。

また、舗装路の転がりが最高で乗り心地も快適なので、ついつい通勤に使ってしまうタイヤでもある。

SERAC CX EDGE

EDGEはちゃんと使ったことがないんだけど、選ぶならSANDよりこちらかな、と思う。

関西CXのマイアミは砂が名物だが、コーナーでは土が露出しているところもあり、ノブなしだとかなり危なっかしい。

低いサイドノブが砂地での走りに与える悪影響と、逆に得られるコーナーでの安心感。

これらを天秤にかけると、EDGEのほうが使える路面が幅広いと感じる。

余談だが、高級チューブラーの定番であるデュガスは、砂用のタイヤにサイドノブの有無で2パターンがある。

CX用の砂地用タイヤを2種類用意しているメーカーは、IRCとデュガス以外知らない。(強いて言えばチャレンジのシケインとデューンだけど、シケインはサイドノブが大きくで、砂向けというよりマッド寄りオールラウンドの性格が強い)

DUGAST Pipistrello

Pipistrello

DUGAST Pipisquallo

Pipisquallo

まとめ:パターンを使い比べるタイヤ

タイヤとしての性能はチューブラーに及ばないし、シクロクロス競技層の立場からはちょっと中途半端な印象があるチューブレスタイヤ。

じゃあ強みは何かというと、1セットのホイールで複数のタイヤを使い分けられることだと思う。上位カテゴリになるほど、路面に合わせたタイヤ選択がリザルトを左右するけど、チューブラーホイールを何セットも用意するのは難しい。でも、シラクCXなら4種類から選べる。

シクロクロスの路面はコースによって千差万別だし、同じ路面でも時間帯によって湿っていたり乾いていたりと全く異なる。

今日の路面にはどのタイヤを使って、どういう走り方をすればいいのか、タイヤ選びというシクロクロスの醍醐味に触れられる機材だと思う。

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