【レビュー】OGK KABUTO AERO-R1 エアロヘルメット

OGK KABUTO AERO-R1

ロードヘルメットながら、タイムトライアルにも使えるシールドつきのエアロヘルメット。通気性の悪さを利用して冬場シクロクロスで活躍。

評価 ★★★★☆

購入価格 17000円(Amazon

長所 -Pros-

  • ロード・TTに共用できるエアロヘルメット
  • ツルッとしてるので掃除しやすい

短所 -Cons-

  • 通気性が悪く、夏場やヒルクライムでは蒸れる
  • 帽体のサイドが薄いのが心配

ロードでも使えるエアロヘルメット

軽量化競争が落ち着いて以降、ロード競技の世界は空力重視の考え方になってきていると思う。
ペダルを踏むパワーの殆どが空気抵抗に費やされるので、ごく自然な流れだとは思うのだけれど。

さて、エアロヘルメットといえば、かつてはタイムトライアル専用の、細長い涙滴形状のものを指したが、AERO-R1はロードヘルメットでありながら空力を重視した製品。

2010年の記事だが、40kmTTを48分前後で走る選手の場合、エアロヘルメットの有無で67秒のタイム差が生まれるという。
風が最初に当たる部分なので、空力効果はフレームよりずっと大きい。
これだけの差があるなら、ロードヘルメットにエアロを取り入れる発想にも納得がいく。

Biggest Bang For Your Buck In Time Trial Equipment

AERO-R1は、競技時間が(TTに比べて)長いロードレースにあわせて、ヘルメット内を換気するベンチレーションホールを設けている。

側頭部の後端には、ウェイクスタビライザーという、細かな出っ張りが設けられている。
これは要するに、車やバイクに採用されているボルテックスジェネレーター。乱流を発生させることで、空気抵抗を生む大きな渦を抑制する。
OGKがバイク用ヘルメットで培ったノウハウが応用されているようだ。

シルバーの部分にある細長い出っ張りがウェイクスタビライザー

そういった工夫もあって、OGKの社内テストではTT用ヘルメットと比べても空気抵抗が低かったらしい。

aeror1_test1.jpg
https://www.ogkkabuto.co.jp/blog/media/2017/12/08/aero-r13.html

AERO-SL、何一ついいことがないな…

実走してみると、ノーマルヘルメットとの違いは僅かに感じるような、感じないような。
下りで速度を出しても風切り音が少ないので、空気が綺麗に流れているような気はする。

体感だとハッキリわからないので、いずれテストしてみたいな。誰か風洞貸してください。

空力を高めるシールド

AERO-R1にはポリカーボネート製のシールドが付属し、マグネットでヘルメットに固定できるようになっている。
シールドを装着することで顔の凹凸で気流が乱されるのを防ぎ、空気抵抗をさらに低くできる。

ただ、顔に風が当たらないということは、すなわち暑いということ。空力の改善と快適性を天秤にかけると、TT以外では積極的に使う気になれない。

それよりも、雨の日はシールドを装着すると顔が濡れないという点をプッシュしたい。
また、アラレが顔に当たってめちゃくちゃ痛いとか、冬場の強風で顔が寒い&目を開けていられないときにも「シールド」としての能力が発揮される。

なお、シールドの掃除には「プレクサス」というケミカルを使っている。
研磨剤を含まないため透明なプラスチックにも使え、撥水加工・防汚・UV保護、静電気防止効果がある保護層を形成する。耐久性は1ヶ月ほど。
戦闘機のキャノピー用に開発されたが、自動車・バイク関係の整備では定番アイテムの一つ。
オートバイのスクリーン、ヘルメットのシールド、車のライト、もちろん車体の艶出しにもよく使われている。ただ、施工直後は石油臭があるので、敏感な人は気になるかも。

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プレクサス(Plexus)
マグネットで装着するシールド

オプションで、薄く軽量なARS-3シールドが販売されている。付属のシールド(インジェクション製法)が42gに対して、薄いポリカ板を曲げて作ったARS-3シールドは22gと、半分程度の重量だという。値段は2.5倍だけど。

付属シールドはクリアーのみだが、ARS-3は何色かのラインナップから選べる。

ベンチレーションは最低限

空力性能を優先するため、ベンチレーションの穴は最低限の数しか開けられていない。

ベンチレーション

内側には空気の通り道になる溝があったり、頭頂部にはエアを抜くダクトがあったり、後頭部には大きめの穴を確保するなど、換気性能を高める工夫は随所にされているが、それでも夏場やヒルクライムでは熱がこもるのを感じる。

内側には、おでこの部分からメット後部までつながる溝が設けられている

シールドを装着するとさらに暑くなる。真夏のシマノ鈴鹿ロード、チームタイムトライアルでは、かなりのスピードが出ているにもかかわらず顔が暑かった。
それでも、TT専用のエアロヘルメットよりはだいぶ涼しくて快適なんだけど。

形状と重量

重量はS/Mサイズで公称205g(実測:シールド無206g/シールド込249g)と、そこらの軽量ヘルメットが裸足で逃げ出すほど軽い。ベンチレーションホールを少なくしたせいで強度を保ちやすくなり、結果的に軽くなったようだ。

帽体は日本人の丸頭に合う形状だが、メットの横幅が狭いので「きのこらない」。
ただ、サイドは少し薄すぎる気もする。強度的には問題ないと思うのだけど、転倒時に顔や耳が直接地面に当たりそう。
空力も、そして見た目も重要だが、ロード競技用であればこういう点にも気を配ってほしい

シクロクロスで愛用

さて、このAERO-R1、本来は高速で走行するロードレースで使うものだと思うのだが、

  • 通気性の悪さのおかげで、冬はむしろ程よく暖かい
  • 開口部が少なく、泥がはねても洗いやすい
  • 重量が200g程度と軽い
  • 形がトゲトゲしてないのでバイクを担いでも引っかからない

という点が気に入って、シクロクロスで愛用している。
速度が遅いので、自慢の空力性能はほとんど期待できないのだけど。

AERO-R1と、通常のロードヘルメットを両方持っていって、天候や気温に応じて選択している。

まとめ:空力か快適性か

自転車用ヘルメットとして重要な通気性を犠牲にすることで、TTヘルメット並みの空力性能を手に入れた製品。

冒頭で述べたようにヘルメットの空気抵抗は馬鹿にならない。通気性はともかく重量やフィット感はノーマルヘルメット基準でも優秀なので、暑さが問題にならない場面であれば積極的に被りたい。

シクロクロスはともかく、頭が冷えすぎない点を活かして冬場のサイクリングや通勤でも被っている。涼しい時期限定で使うのが良いかもしれない。