パワーメーターの精度比較 実走(Assioma Duo・Pioneer PM910・PowerTap G3編)その2 ~パイオニアの測定値をスケーリングする~

ペダル型パワーメーター Assioma Duoと、Pioneer ペダリングモニタPM910、パワータップG3を取り付けたバイクで実走し、測定値を比較した。
以前も同じテストをしたが、今回はペダリングモニタPM910Ant+パワーメーターモードではなく、ペダリングモニタモードで使用している。

なお、PM910ペダリングモニタの設定(Ant+/ペダリングモニタ)は、センサー本体のボタンで変更できるが、
専用サイクルコンピュータSGY-CA500上で行うほうがわかりやすい。

PM910をペダリングモニタモードに設定

左右それぞれを片側測定パワーメーターとして別のバイクで使うこともできる。
以前、左クランクに4iiii、右クランクにペダリングモニタを使用して比較テストしたこともあった。

各パワーメーターの測定結果を比較

さて、比較のため、Garminを2台(fenix6sEdge530)とパイオニアSGY-CA500を用意し、ロードバイクに取り付けたPowerTap G3、Assioma Duo、Pioneer PM910それぞれとペアリングした。

「パワーメーターが3台ついたロードバイク」

その後、バイクを十分外気温に慣らしたうえで各パワーメーターのキャリブレーションを行い、1時間半ほどのトレーニングライドを行った。

帰宅後ログをExcelにまとめると、下のグラフのようになった。

なお、GarminのログはGarmin ConnectからTCX形式でエクスポートすると、XMLデータベースとしてExcelで扱える。
また、AndroidベースであるSGY-CA500の.dbファイルはSQLiteを扱えるソフトで開くことができる。

時間軸は、各サイクルコンピュータの時刻で合わせた上で、グラフの波形を見て微調整を行っている。

全体の平均パワーを見ると、私のPM910はペダリングモニタモードでも、パワータップやAssiomaに比べて低めのパワー測定値になっている

①ターゲット300W 緩い上り

アウターギヤで十分踏める勾配1%ほどの上り区間で、300Wほどをターゲットにして走行した部分を切り出した。なおケイデンスは平均84rpmほど。

  • PM910: 299.5W
  • Assioma: 307.1W
  • PT G3: 301.9W

前回測定時、300W台前半ではAssiomaよりパワータップのほうが5~6Wほど高めの値になっていたが、今回は逆の傾向になっている。

②ターゲット340W 緩い上り

先ほどと同じ勾配1%ほどの上りをターゲットパワー340Wで。平均ケイデンスも変わらず83rpmほど。

  • PM910: 328.8W
  • Assioma: 340.6W
  • PT G3: 341.5W

①ではAssiomaのほうが高い値だったが、今度はパワータップが約1W上回った。
実走だと長時間同じパワーでペダリングできないので、正確な比較がなかなか難しい。

③ターゲット320W 急な上り

次は、勾配10%の坂道をシッティング、重めのギヤで登るシチュエーション。ケイデンスは先程より下がって65rpmほど。

  • PM910: 318.4W
  • Assioma: 326.2W
  • PT G3: 325.5W

④登り返しで無酸素ダッシュ

速度を殺さないよう、短い登り返しを無酸素域で踏むシチュエーション。

  • PM910: 476.8W (最大789W)
  • Assioma: 483.6W (最大799W)
  • PT G3: 502.8W (最大836W)

各GPSサイクルコンピューターでGPS時刻が微妙に違うせいで、グラフが少々ズレている。
目立つときはグラフを重ね合わせる際に微調整しているのだけど、1~2秒のズレは大目に見てほしい。

こういうごく短時間のパワーがちゃんと測定できているかどうかというのは、正直よくわからない。
仮にパワーメーターが高精度かつ反応速度に優れていても記録されるログは1秒毎なので、1秒に満たない区間での瞬間的な最大パワーは確かめようがない

⑤激坂ダンシング

平均勾配10%の坂をダンシングで登った。ギヤは39×23~25Tで、平均ケイデンスは59。

  • PM910: 307.5W
  • Assioma: 321.8W
  • PT G3: 318.5W

前回テスト時と同じく、ダンシング時はAssiomaの測定値がパワータップに比べて高くなっている。
ペダル型とハブ型という測定方式、あるいはメーカーによる特性の違いなのだろう。

⑥高速ペダリング

5%の下りストレートで最高速チャレンジ。ケイデンスは平均124rpm。

  • PM910: 508W (最大808W)
  • Assioma: 549.1W (最大695W)
  • PT G3: 541.7W (最大703W)

前回実験時と同じく、ペダリングモニタがうまくパワーを拾えていない。
もともと低めのパワーになるうえ、ケイデンスが速いと取りこぼしやすいのだろうか。
ただ、ペダリングモニタのピークパワーはAssiomaとパワータップを100Wも上回る800W。スパイクとまでは言えないが、測定エラーの類だと思う。

⑦ターゲット370W

最後に、上り区間でVO2MAX走。平均ケイデンス82rpm。

  • PM910: 362.2W
  • Assioma: 375.4W
  • PT G3: 368.4W

こちらもAssiomaがパワータップより高めになった。
実際のところ、きちんとキャリブレーションを行っても数ワットばらつくことはある。

パイオニアCA500の測定値を調整(スケーリング)する

ペダリングモニタをAnt+モードにして行った前回実験時と同じく、ペダリングモニタモード(パイオニアCA500でロギング)においても、Assioma DuoとPowerTap G3に比べて、ペダリングモニタは常に低いパワー値を示し続けた
つまり、私の持っている個体については、PM910ペダリングモニタはパワー測定値が低めに出るということがはっきりした。

別に故障しているわけでは無いので、この測定値をトレーニングの基準にすれば問題ないのだが、私のように複数のバイクにそれぞれパワーメーターが取り付けられている場合は厄介だ。
他のパワーメーターで測定したFTPを基準にペダリングモニタでトレーニングを行うと負荷が高すぎ、逆にペダリングモニタで測定したFTPを基準にすると他のバイクで練習する時に負荷が低すぎる。

こういうシチュエーションを見越してか、4iiiiQuarqAssiomaには測定値をスケーリングできる機能がついており、各パワーメーター用の管理アプリで設定することで、もとの測定値に倍率を掛け、基準とするパワーメーターにパワーを合わせることができる
ただしすべてのパワーメーターにある機能ではなく、例えばRotor InpowerパワータップSTAGESでは測定値のスケーリングが不可能。

スケーリング機能の有無は、私がパワーメーターを購入する上でかなり重要視している。パワーメーターが10台もあると大変なので…

SGY-CA500でのスケーリング設定

PM910ペダリングモニタの場合、パイオニア製のヘッドユニットを使い、ペダリングモニタモードで使う場合は、センサー詳細からトルク値の調整が可能(SGY-CA500で確認)

メニュ→センサー→ペダリングモニタ

今回のライドでは、全区間の平均パワーはそれぞれ

  • PM910: 196.9W
  • Assioma: 207.6W
  • PT G3: 209.2W

だった。
Assiomaとパワータップの平均値(208.4W)を基準とすると、PM910の測定値を+5.8%すればパワーが揃うことになる。

スケーリング

パワーメーターの癖はパワーゾーンや踏み方によって異なるのでどんなときもピッタリ合うわけではないが、トレーニングの強度や量に一貫性を持たせる程度なら十分だ。

調整したパワー測定値をチェック

翌日、ペダリングモニタの測定値を+5.8%した状態で、再び比較ライドを行ったところ、(当然だが)Assiomaやパワータップに近い値になった。

ペダリングモニタの測定値を+5.8%して再びライドした結果

ほぼ一定パワーで踏んでいる区間を切り出してもパワーが揃っている。

ペダリングモニタの測定値を+5.8% 300~350W巡航
同じく400Wキープ

ただし問題は、この機能が使えるのはペダリングモニタモードに設定した時のみ、ということ。

パイオニアのログ管理サービス「シクロスフィア」は既にサービスを終了している。
事業を引き継いだシマノの「SHIMANO CONNECT Lab」は自動アップロードに対応しておらず、いちいちケーブルを繋いでログをアップロードする必要がある。

また、スケーリングが可能なのはペダリングモニタモードの場合のみ。
PM910ペダリングモニタをAnt+パワーメーターモードで使用し、Garminにペアリングする場合は、残念ながらパワー差を補正することができない

私は現在、トレーニングの記録デバイスをGarminに統一しているが、これだけ下振れしていて、かつスケーリング不可能となると、ペダリングモニタをトレーニングに使うのはなかなか厳しい…