R9200デュラエース R8100アルテグラで待望の12速化
新型デュラエースとアルテグラが同時に発表され、ついに…というか、ようやく12速化された。
多段化の目的
カセットが多段化する目的は次のふたつ。
- 隣り合うギヤ間のクロスレシオ化
- 全体のワイドレンジ化
6速の7400デュラエースでは
- 12-13-14-15-16-17T
- 13-14-15-16-17-18T
- 13-14-15-17-19-21T
- 13-15-17-19-21-23T
- 13-15-17-20-23-26T
この5種類から、平地や山岳など、シチュエーションにあわせて最適なカセットスプロケットを選択していたが、
12速になったR9200デュラエースには2種類しか用意されない。
- 11-12-13-14-15-16-17-19-21-24-27-30T
- 11-12-13-14-15-17-19-21-24-27-30-34T
多段化によって、きめ細かく、かつ幅広い重さのギヤを選べるようになったというわけ。
① ギヤ間のクロスレシオ化
ロードレースは競技が長時間に及ぶため、勝負所まで体力を温存することが重要。
そのためには、路面の勾配や風向きに応じて変速を行い、脚への負担を一定にする必要がある。
よりきめ細やかに調整するため、多段化に伴ってギヤ間の歯数差はどんどん小さくなり、1T刻みで繋がるギヤが増えていった。
9000デュラエースの11速カセットCS-9000(11-23T)では
11-23T: 11-12-13-14-15-16-17-18-19-21-23T
と、11Tから19Tからまで1T刻みとなっている。
なお、流石にここまでする必要はなかったのか、R9100デュラにモデルチェンジする際に11-23Tカセットは消滅した。18T、便利なんだけどな…
トップ11Tが不要なら、12-25Tを選べば18Tが使える。
② 全体のワイドレンジ化
段数が増えた分、より小さい・より大きいスプロケットを追加することで、より重い・より軽いギヤを使えるようになる。
6速デュラでは13-26Tで200%のレンジだったが、12速の11-34Tでは309%に。しかも①のクロスレシオを犠牲にしていない。
一足早く12速化したMTBコンポ M9100XTRでは10-51T(510%)という超ワイドレンジになり、フロントディレイラーを廃したフロントシングルでの運用を可能にしている。
各社12速コンポのギヤ歯数構成を比較
シマノ・カンパ・スラム 3社の12速ロードコンポが揃ったので、各社の
- チェーンリング
- カセットスプロケット
を、歯数構成の観点から比較したい。
各社コンポの比較表
各社の最上位コンポ(R9200デュラエース、スーパーレコード、RED eTap AXS)のチェーンリング・カセットスプロケットをまとめると、下表のようになる。
チェーンリング | カセット | |
シマノ | 50-34 52-36 54-40 | 11-30T: 11-12-13-14-15-16-17-19-21-24-27-30 11-34T: 11-12-13-14-15-17-19-21-24-27-30-34 |
カンパニョーロ | 50-34 52-36 53-39 | 11-29T: 11-12-13-14-15-16-17-19-21-23-26-29 11-32T: 11-12-13-14-15-16-17-19-22-25-28-32 11-34T: 11-12-13-14-15-16-17-19-22-25-29-34 |
スラム | 46-33 48-35 50-37 | 10-26T: 10-11-12-13-14-15-16-17-19-21-23-26 10-28T: 10-11-12-13-14-15-16-17-19-21-24-28 10-33T: 10-11-12-13-14-15-17-19-21-24-28-33 |
シマノ
発表されたばかりのシマノ12sコンポ R9200デュラエースとR8100アルテグラで用意されるのは、チェーンリングが3種類、カセットスプロケットはたった2種類。
チェーンリング | カセット |
50-34 52-36 54-40※ | 11-30T: 11-12-13-14-15-16-17-19-21-24-27-30 11-34T: 11-12-13-14-15-17-19-21-24-27-30-34 |
※デュラエースのみ
11sの頃は、ジュニアカセット(14-28T)を除いても、実に8種類のカセットがあった(11-23T 11-25T 12-25T 11-28T 12-28T 11-30T 11-32T 11-34T)。
しかし、12速では2種類のカセットで全ての使用状況をカバーできるということなのだろう。
11-30Tと11-34Tのギヤ構成を簡単に説明すると、
「11sの11-30Tカセットに、16Tを足すか、34Tを足すか」
巡航時は16Tがあると細かにケイデンスを調整しやすいし、34Tは激坂で役立つ。
たった2種類のカセットだが、このラインナップで平地TTからクラシックレースのヒルクライムまで網羅できていると思う。
ただ、個人的な好みを言うと、ロー28Tくらいで良いので、18Tが入っている(11~19Tまで1T刻み)とベストだった。
一方、チェーンリングはノーマルクランクの定番だった53-39Tがなくなり、1tずつ大きくなった54-40Tが加わった(ただしデュラエースのみ)。
12sカセットのローギヤは十分大きいので、普段ノーマルクランクを使う人なら十分踏める。
レースの下りで踏むシチュエーションでは、1T分トップスピードを稼げる。
参考までに、54×11Tを100rpmで回すと速度は62km/h弱。フロント53Tに対しては1km/hほど速くなる。
カンパニョーロ
カンパニョーロは2018年、いち早く12速化を果たした。
ギヤ構成は3社の中で最も保守的だが、ツボを抑えていると感じている。
チェーンリング | カセット |
50-34 52-36 53-39 | 11-29T: 11-12-13-14-15-16-17-19-21-23-26-29 11-32T: 11-12-13-14-15-16-17-19-22-25-28-32 11-34T: 11-12-13-14-15-16-17-19-22-25-29-34 |
チェーンリングはノーマル(53-39)・ミッドコンパクト(52-36)・コンパクト(50-34)の3種類。
カセットも3種類だが、違いはロー側4枚の構成のみ。
平地なら11-29T、山岳なら11-34T、迷ったら間を取って11-32Tということだろうか。
11-34Tカセットではロー側が4T飛ばしになるが、グラフを見る限りでは自然なギヤステップになっているように思う。
スラム
3社の中では最後発ながら、軽量なダブルタップレバーや、無線操作の電動変速など、独創的な新技術を投入してくるスラム。
2019年リリースの電動専用コンポ RED eTap AXSで12速化した。
チェーンリング | カセット |
46-33 48-35 50-37 | 10-26T: 10-11-12-13-14-15-16-17-19-21-23-26 10-28T: 10-11-12-13-14-15-16-17-19-21-24-28 10-33T: 10-11-12-13-14-15-17-19-21-24-28-33 |
MTB用コンポも含めると最初に12速化したのはスラムで、2016年に12sコンポ(XX1 Eagle)をリリースしている。
スラムがX-RANGEギヤリングと呼ぶギヤ構成は3社中最も尖った設計で、新開発のフリーハブでトップ10Tに対応。これにあわせてフロントギヤをコンパクトにしているのが特徴。
カセットは3種類(10-26T 10-28T 10-33T)で、全て10Tトップ。
ベースとなるのは10-28Tで、
- ロー側2枚をクロスレシオ化→10-26T
- 16Tを抜いてローに33Tを追加→10-33T
と考えると理解しやすい。
10Tトップでチェーンリングが小さくても最高速が稼げるため、フロント側のラインナップは
- 46-33
- 48-35
- 50-37
と、どれもコンパクト。
アウターとインナーの歯数は13T差で、変速性能を高めている(シマノに劣るフロント変速をカバーしているとも…)。
最大のメリットは軽量化。大きなカセットスプロケットも大きなチェーンリングも重量がかさむ。同じギヤ比ならどちらも小さい方が軽い。
しかし、チェーンリングが小さくなると漕ぎ味がスムーズでなくなる。
チェーンは多関節のため、チェーンリングやスプロケットとの位置関係で僅かに速度が変化する。
最も小さい33Tチェーンリングの場合、クランク1回転ごとに33回の脈動があらわれる。
余談だが、フロントトリプル時代のMTBではインナー22Tというものもあり、カクカクした感覚をハッキリ脚で感じられた。
それが理由なのか下りでさらに重いギヤが欲しいからなのか、結局プロツアーでは52Tや54Tのチェーンリングが使われているようだ。
ギヤ比グラフ一覧
フロントをミッドコンパクト(52-36または相当するもの)に統一した際の、各社ギヤ比をまとめて掲載する。
なおタイヤは700x25cあたりを基準として、周長2.1mとして計算した。