山の中の激坂集落 和歌山 串柿の里へ

大阪と和歌山を隔てる和泉山脈の和歌山側、山肌に張り付いた集落「串柿の里」を訪問。
ついでに、いつまでたっても開通しない鍋谷峠の山頂側通行止めゲートも拝んできた。

ライド概要

今回のライドでは和泉山脈を北から南に越える。
とはいってもまっすぐ峠越えするわけではなく、滝畑ダムからr61蔵王峠を登り、串柿の里へ。その後登り返し、鍋谷峠ピークで通行止めゲートを見た後、鍋谷峠(和歌山側)を下るというもの。

標高500m 急斜面に張り付く串柿の特産地

大阪南部と和歌山を隔てる和泉山脈は、東西50kmほどにわたって山が連なっている。
蔵王峠(r61)から鍋谷峠(R480)にかけて700~800mの稜線が続くが、和歌山側では柿の栽培が盛んで、標高500mほどの場所にいくつか集落がある。

毎年秋には軒から大量の干し柿が吊るされる。長い串に刺さった干し柿は「串柿」として、鏡餅と一緒に飾られる縁起物になる。
今回は「串柿の里」として知られたこの集落を(季節外れだけど)訪問する。

集落に繋がる道路は細く、行くも戻るも激坂という、トレーニングにもうってつけのコースである。

かつらぎ観光協会より


鍋谷峠山頂側の通行止めゲート

串柿の里を通った後は鍋谷峠のピークに向かう。

2年ほど前から通行止めになり、開通の再延期が続いている鍋谷峠(大阪側)
登り口側のゲートはもう見飽きたので、山頂側の通行止めゲートを見に行く。

走行ルート

バイク

バイクはCANYON GRAIL CF SL。タイヤはセンタースリックパターンのPanaracer Gravelking SS 38C。

今回のライドではグラベルを走る予定はなかったのだが、勾配が厳しいのでノーマルクランクのロードバイクは辛い。
そういうわけで50-34×11-34Tのグレイルに乗っていくことにした。激坂の下りもあるのでディスクブレーキも心強い。

滝畑ダムから蔵王峠へ

まずはアプローチ。滝畑ダムから、まずは蔵王峠のピークを目指す。

滝畑ダムのダム湖から蔵王峠へ

滝畑ダムは関西サイクルスポーツセンターの先に位置し、南大阪の農業用水・水道水を供給する水源となっている。
ダム湖沿いの走っていくとやがて道は細くなり、蔵王峠へ向けて府道61号線を登っていく。

勾配のきつい場所も何箇所かあるが、全体的にはそこまで厳しい坂ではない。
平地部に比べると気温は低いものの、前日の雨のせいか湿気が多くムシムシしている。

ダム湖から30分ほどで蔵王峠を登りきった。

左手は蔵王峠和歌山側だが通行止め 今回は右へ

なお令和3年8月1日~11月30日まで蔵王峠の和歌山側は工事通行止。r61を和歌山側へ下ることはできない。

通行止め看板(2021年7月撮影)

今回は分岐を右に進み、堀越観音までさらに登る。

堀越観音と串柿の里 中畑地区

堀越観音までさらに登る

蔵王峠からは何もない道を登っていく。谷沿いの道ではあるが視界は開けていて明るい。

再び森の中に入るとすぐにピーク。蔵王峠からの獲得標高は100mほど
ここから道なりに少し下る。

和歌山側の景色が開けるとすぐに堀越観音。奥に見える青みがかった山は、紀の川を隔てた先にある高野山。

正しくは堀越癪観音というこの寺院では、癪(しゃく)の病に効くとかなんとか…
なお道路脇に公衆トイレがある。

紀の川側の視界が開ける

古民家のカレー屋さん

堀越観音のすぐ先には古民家で営業しているカレー屋さん「鳥唄山馨(トリウタイヤマカオル)」が店を構えている。

ちょうど作業していたオーナーさんが出てきてくれたが、営業は11時からで、現在は予約営業のみという。
Googleのクチコミでも人気のお店なので、改めて食べに行ってみたい。

串柿の里 中畑地区

串柿の里 中畑地区

カレー屋さんから下っていくと集落に出る。ここが「串柿の里」にいくつかある集落のひとつ、中畑地区。

道路脇には串柿を吊るすための棚が備え付けられている。秋が過ぎ、冬が近づくとここに柿が吊るされ、一面オレンジ色になるというが…

ここからさらに谷へと下っていく。せっかく稼いだ標高を失うのは悔しいが、こういう道なので仕方ない。
それにしても道路状況が悪い。傾斜は急だし路面も荒れていて、38cのグラベルタイヤなのに振動で腕が痛い。

堀畑の三叉路

手が痛くなってきた頃、分岐に出る。
堀越観音からここまで、3km足らずで300mも下った。平均勾配はなんと11%。

さて、川沿いにそのまま下ると国道480号線、鍋谷トンネルを抜けて紀の川方面に下っていった先と合流する。

今回は鍋谷峠の頂上を目指すので、小さな橋を渡って文蔵の滝方面へ向かう。

串柿の里 大久保地区

文蔵の滝で湧き水を汲む

さて、ここからは上り区間。300m下ったばかりなのに、今からまた400m登ることになる。
しかも橋を渡ってすぐ激坂が現れる。

登り始めて程なく、文蔵の滝への入り口が現れる。
今回は寄らないが、湧き水があるので汲んでいく。

車が止まっていて、大量に水汲みしているおじいちゃんがいた。
ちょっと割り込んで、サイクルボトルに冷たい水を汲ませてもらう。

話を聞くとこのおじいちゃん、今は大阪に住んでいるが生まれはこの先の集落らしい。
先に続く激坂を指して、通学路だったと笑っていた…

くるみ谷もみじ公園

水をくんだ後はひたすら激坂を登る。

キャニオン グレイルのギヤは50-34×11-34Tで、最初はこんな軽いギヤいらないと笑っていたのだが今回は大活躍だった。

コンクリート舗装の道をモリモリ上り、勾配が緩むと分岐が現れる。
くるみ谷もみじ公園という公園があるところの分岐で、コミュニティバスのバス停「くるみ谷」がある。

右に曲がると串柿の里 神野地区に向かうが、今回は大久保地区へ。
分岐を直進後、左に大きく折り返す。

少しだけ平坦路になり、空が見えた。

串柿の里 大久保地区

勾配が緩むとほどなく集落が現れる。
大久保はこの辺りの集落のなかでも、家が密集している地区。

地形図を見ると、周囲の山肌に比べるとこの辺りは傾斜が緩く、それゆえ集落が形成されたようだ。
南向き斜面なので、日の出から日没まで日光が当たり続ける。この日照時間の長さが柿の栽培に適しているのだろうか。

なんというか、奥深い山の中にある集落というのはマチュピチュ感がある。
(ペルー行ったことないけど、山の上に集落があれば、とりあえずマチュピチュって言っておけばいいや…)

串柿の里がある四郷地区(しごう)の高齢化率は47.5%(平成30年)。2人に1人が65歳以上という、いわゆる限界集落にあたる。
こういう集落は若い世代が流入しないため共同体としての機能を失いつつある。名物の串柿が並ぶ景色が見れるのも、そう長くないかもしれない。

道なりに進むと、定福寺、八坂神社の近くに公衆トイレがある。ここから先は一気に勾配が強まり、森の中へと入っていく。

鍋谷峠

再びの激坂区間

集落を抜けると本格的な上り区間が再開。ぐんぐん標高を稼いでいく。

勾配がきつすぎるのでコンクリ舗装。ギヤもロー側2枚しか使っていない。
ロードバイクで来ていたら、39×25Tでひたすらダンシングする羽目になっていただろう…

右手のグローブ上を飛んでいる黒いものがメマトイ

それにしてもメマトイが鬱陶しい。先日のライド時にもだいぶ悩まされたが、今は活動が盛んな時期なのだろうか。どこからともなく現れて、ずっとまとわりついてくる。
頭の周りには何10匹も飛び回っているし、たまに鼻の穴に入るし、気が散って仕方ない。

ピークは標高800m。ここからは下り基調で山肌をトラバース。スピードが出るのでメマトイも振り切れた。
そして、見慣れた景色が現れる。鍋谷峠のピークである。

鍋谷峠のゲート

およそ2年ぶりに来た鍋谷峠。やはり、道路はゲートで封鎖されていた。
工事日程がガムテープで修正されているのも麓側と同じである。

実は道路はすでに直っていて、大人の事情で開通が遅れているという話を聞いたのだが、監視カメラもついているので変な気は起こさないほうが良さそうだ。

和歌山側へ下る

鍋谷峠の和歌山側は普通に走れるので、下っていく。道路は思ったより綺麗で、ちゃんと維持管理されているようだ。

串柿の里 平地区を通過すると、程なく鍋谷トンネル出口と合流。

R480旧道が崩落

鍋谷トンネルから紀の川まで高規格のバイパス道路が走っているが、あえて旧道を進む。
入り口に車止めのようなものがあるが、なんだろう…

少し進んで、車止めの理由が判明。
斜面が崩落して、道路を完全に覆ってしまっている

土砂は均され、土嚢で流出を防いでいるが、乗用車は通れない状態。

とはいえ、自転車ならどうということはない。
この区間は数10m。反対側も同じように土嚢が積まれていた。

ここを過ぎたらあとはR480旧道を道なりに下っていく。紀の川広域農道との交差点に出たら右折。

帰路

帰りは紀の川広域農道経由で、r62犬鳴峠をこえて大阪に戻った。
この広域農道、エンジン付きの乗り物ならまるでジェットコースターのように楽しめるけど、自転車では良いトレーニングになる。

この日の走行距離は80km弱に対して獲得標高1700m。TSSは165に達した。
それにしても今年の夏は涼しいと思っていたが、8月に入っていよいよ本格的な暑さがやってきた。