ロードバイクのタイヤとリムのワイド化に対応する形でETRTO規格が改定された。この規格の中ではタイヤ幅ごとの設計基準リム幅を定めているが、改正に伴って今後発売される25~28cタイヤは内幅19mmのリムを基準に設計されるようになる。
ワイドリム基準で設計された新ETRTO準拠タイヤは、ナローリムで使用すると本来の性能を発揮できず、乗り心地やグリップ感を損なったり、ハンドリングに違和感を覚える場合もある。
そのため、今後もリムブレーキのバイクに乗り続けるなら、最低限リム内幅17mm以上、できれば19mm以上のホイールを用意しておきたい。
しかし、ワイドリムの完組リムブレーキホイールは高価格帯の製品が中心。
比較的安価で取り扱いしやすいアルミホイールともなると選択肢は少なく、その中では定価77000円のMavic キシリウムSが最安値となっている。
「終わった」規格であるリムブレーキバイクにあまり追加投資したくない、でもホイールは更新しておきたい…
そこで、手組みホイールなら5万円くらいでなんとかならないか…とリムを探してみた。
5万円ホイール リムに掛けられるコストは?
自転車用のスポークホイールは
- リム
- ハブ
- スポーク+ニップル
で構成されている。
これらの合計を5万円以下とする場合、リムにかけられるコストを計算してみる。
ハブは、シマノの下位グレード(Claris 2400シリーズ)で前後4300円程度。上を見ればキリがない。
スポークは1本30円スタートで、バテッドスポークが100円ほど、CX-RAYが400円程度というコスト感。ニップルはブラス(真鍮)で100個1000円、アルミだと3000円くらいだ。
最底辺ハブで組む場合
限られたコストをどう割り振るかは個々人の考え次第だが、仮にハブとスポークを限界までケチった場合は、
- ハブ Claris 4300円
- スポーク プレーン 30円×64本=1920円
- ニップル 真鍮 1000円
合計すると、約7300円。
リムにかけられるコストの上限は、2本で40000円少々ということになる。
現実的な構成
持っても走っても軽いホイールを組むなら、それなりのハブ(TNIのエボリューションライトハブとか…)とバテッドスポークで組みたい。
フロント20H、リヤ24Hで組むなら
- ハブ TNI エボリューションライトハブ 22000円
- スポーク プレーン 150円×44本=6600円
- ニップル 真鍮 1000円
アルミニップルは扱いにくいので敢えて真鍮。これで合計3万円程度。
つまり、リムの予算は2本2万円といったところ。
ホイールを手組するなら
今回の記事では自分で組むことを前提としている。ニップル回しや振れ取り台やセンターゲージは…みんな普通に持ってるよね?
持ってない人は用意する必要があるが、あんまり安いのは使いにくいので注意。
ミノウラのやつは手頃だけど、ちょっと剛性不足で台がたわむため、振れを追い込めない。
完組ホイールのちょっとした振れ取りにも使えるので、買うなら全金属製のしっかりしたものが良い。
パー○ツールのパチモン、なんか悔しいけど割と作りが良い
あと、スポークテンションメーターは安価なもので良いので、絶対にあったほうがいい。
各スポークのテンションを揃えると仮組み時のフレが少ないのでその後の作業が圧倒的にラク。そもそも、素人はこういう道具を駆使しないとマトモなホイールが組めない。
…もしもショップにホイール組を依頼する場合は、工賃も考慮する必要がある。前後で1万円くらいかな。
そうそう、完組ホイールのような変な組み方はしないほうがいい。走らないから。
アルミワイドリム(リムブレーキ用)
今回の目的に沿った、ワイドでチューブレス対応のアルミリムを探してみる。
- リムブレーキ対応であること
- アルミ製であること
- 内幅19mm以上のワイドリムであること
- チューブレス対応であること
- 価格は1本2万円程度まで
- 2022年4月現在 製品ラインナップに存在すること
という条件を満たす、単品販売されているリムを調べたところ、(漏れがあるかもしれないが)以下の製品がヒットした。
メーカー | 製品名 | リム内幅 | リム外幅 | リムハイト | リム穴 | 重量 | 価格 |
Mavic | Open Pro UST | 19 | – | – | 24H, 28H, 32H | 430 | 13200 |
EASTON | R90 SL TL-Ready | 19.5 | 24.5 | 27 | 24H, 28H, 32H | 455 | 18700 |
TNI | AL22W | 19 | 24 | 22 | 20H, 24H, 28H, 32H オフセットリム有 | 445 | 5390 |
TNI | AL31W | 19 | 24 | 31 | 20H, 24H, 28H, 32H オフセットリム有 | 490 | 7040 |
Velocity | Quill | 21 | 24.5 | 25.5 | 20H, 24H, 28H, 32H, 36H | 465 | 20350 |
HED | Belgium R | 21 | 24 | 24.5 | 24H, 28H, 32H | 419 | 25516 |
MavicとEaston
Mavic Open Pro USTはKsyrium SLの、Easton R90 SLはEA90SLのリム単品販売に相当する。
※厳密には異なり、キシリウムS/SLはリムに直接ねじ込む専用ニップルだが、Open Pro USTは通常のニップルを使用する。
これらを選ぶくらいなら素直に完組を買うほうが良い気もするが、安価なハブとスポークを選べば予算内で組めないこともない。
TNI(キンリンOEM)
我らがTNIのAL22W/AL31W。コストパフォーマンスは圧勝だろう。
というか、それなりのハブとバテッドスポークで組もうと思ったら、リムの選択肢は実質TNIしかない。
最近のハイエンドロードタイヤは5000円では買えず、定価1万円ほどの製品も存在するため、TNIのAL22Wはタイヤより安いことになる…
メリットは価格だけではない。豊富なリム穴数バリエーションも魅力的であるし、若干の重量増になるがオフセットリム仕様もあり、後輪の左右スポークテンションバランスを是正できる点も良い。
リムの製造元はキンリンで、本家にはXR-22TとXR-31Tのほか、TNIからは販売されていない26mmハイトのXR-26Tもある。
Kinlin | リム内幅 | リム外幅 | リムハイト | 重量 | 備考 |
XR-22T | 19 | 24 | 22 | 445 | TNI AL22W |
XR-22RT | 19 | 24 | 22 | 450 | TNI AL22W 3mmオフセットリム |
XR-26T | 19 | 23.8 | 26 | 455 | |
XR-26RT | 19 | 23.8 | 26 | 455 | 3mmオフセットリム |
XR-31T | 19 | 24 | 31 | 490 | TNI AL31W |
XR-31RT | 19 | 24 | 31 | 490 | TNI AL31W 3mmオフセットリム |
VelocityとHED
そもそも予算オーバーなうえ入手性も悪いが、一応見つけたので…
QuillもBelgium Rも、内幅21mmとワイドなことがウリ。
Belgium Rが本当に419gなら凄いのだが。
まとめ
新ETRTO準拠タイヤに適合する、内幅が19mm以上のアルミリムを調査した。
仮にホイール予算5万円とすると、リムに割けるコストは1万円ほど。上で挙げた中だと、TNIのAL22WかAL31W、あるいはMavic Open Pro USTあたりが現実的な選択肢だろうか。
選択肢が少ないのが残念ではあるが、リムブレーキロードバイクでももう少し走り続けられそうだ。
ところで、チューブレス運用する場合は、チューブレスリムテープとチューブレスバルブ、あとタイヤシーラントも必要なので、お忘れなく。