【レビュー】パナレーサー チューブレスバルブ TLV-44-B ~シーラントやインサートにも対応 バルブコア回しつきのチューブレスバルブ~

Panaracer Tubeless Valve TLV-44-B

チューブレスタイヤと一緒に使用するチューブレスバルブ。リムに隠れる台座部分の形状が工夫されており、シーラントが詰まりにくく、MTBで使われるタイヤインサートにも対応する。
付属のアルミ製バルブキャップはバルブコア回しとしても使える。バルブ長は44mmで、およそ30mmハイト以下のリムに対応する。

パナレーサー PRパートナーとしてプロモーション活動を行っています。
本品は、パナレーサー株式会社様より提供いただいた製品です。

長所 -Pros-

  • バルブ基部にはサイドに空気孔があり、シーラントが詰まりにくい
  • アルミ製バルブキャップはバルブコア回しとして使える

短所 -Cons-

  • バルブ長44mmのみでディープリム非対応→60mm,80mmが追加された(2022/05)
  • アルミバルブキャップは1個しか付属しない

チューブレスタイヤとバルブ

自転車のタイヤは、クリンチャータイヤであれ、チューブラータイヤであれ、内部に筒状のチューブを入れるチューブドタイヤが主流だが、
チューブレスタイヤはクルマやバイクのように、タイヤとリムで気密をとった空間に直接空気を入れる。

チューブがなくなることでタイヤ内側の容積が大きくなる、つまりエアボリュームが増す上、チューブとタイヤの摩擦によるロスもなくなる。
結果として、乗り心地の向上や転がり抵抗の改善など、数多くのメリットを得られる。

MTBではチューブレスが当たり前になっているし、シクロクロスでもチューブレスタイヤが普及してきている。
最近ブームのグラベルバイクも、多くのタイヤがチューブレスに対応している。

ロードバイク用チューブレスタイヤはかつてはマニアックな存在だったが、最近は各社からチューブレス対応のロードタイヤがラインナップされてきている。
2021年10月に開催されたパリルーベではチューブレスタイヤを使う選手もおり、悪天候のレースを制したソンニ・コルブレッリもチューブレスタイヤを使用していた。

チューブレスタイヤの場合、リムに直接バルブを取り付ける必要がある。

パナレーサーは2021年9月末、チューブレスバルブ「TLV-44-B」を(ようやく※)発売した。

※チューブレス製品を展開するタイヤメーカーは大抵チューブレスバルブをラインナップしている。

チューブレス対応ホイールを購入するとバルブが付属することも多いが、本品は後発ゆえ工夫されておりパンクを防止するタイヤシーラントや、近年普及し始めているタイヤインサートの使用を想定した構造となっている。

Panaracer チューブレスバルブ TLV-44-B

シーラントやタイヤインサートにも対応

圧力変化で固まるパンク防止剤「タイヤシーラント」は、パンク時に注入したり、予防としてあらかじめタイヤに入れて使用する。

タイヤを軽くしなやかにできるため昨今主流になってきているチューブレスレディタイヤの場合は、気密性を保つためシーラントの使用が必須となっており、もはやシーラントはチューブレスシステムの一部と言える。

パンク時には周囲に飛び散るし、注入時にうっかりこぼして部屋の床にぶちまけたりと、タイヤシーラントはしばしば惨劇を引き起こす。シーラントは特有のアンモニア臭を持つため部屋もバイクも小便臭くなってしまうのだが、パナレーサーの製品は臭くなく、ほんのりミントの香りがする(宣伝)

しかしこのシーラントが曲者。パンクした時には傷口から吹き出しつつ穴を塞いでくれる一方、バルブで詰まってしまうことがある。
長年使ったチューブレスバルブは内部にシーラントが入り込んで固まり、空気の通りが悪くなっていることも多い。

そこで、本品TLV-44-Bはバルブ基部のサイドにも空気穴を設け空気の通り道を拡大、シーラントが詰まりにくいよう工夫されている。

バルブ基部にはサイドにも空気穴があいている ※製品版に付属するバルブキャップは1個のみ

また、チューブレスタイヤの世界で最近ポピュラーになってきたものが「タイヤインサート」。
これは、弾力のあるドーナツ状の発泡フォームをタイヤ内に仕込むことで、タイヤが潰れきった時にクッションとして働き、リム打ちパンクを防ぐというもの。

インサートを使用することで、リム打ちパンクのリスクを抑えつつ空気圧を下げ、路面追従性や振動吸収性を高められる
また、タイヤのヨレを防いだり、パンクしてもある程度なら自走できるといったメリットもある。

もともと下り系のMTBで使われ始めたインサートだが、グラベルバイクやロードバイクにも徐々に浸透し始めている。
タイヤを極端な低圧にするシクロクロスでも注目されており、今後CXチューブレスタイヤには必須になるのではないかと考えている。

このように、ジャンルを問わず使われるようになってきたタイヤインサートだが、スポンジ状の発泡フォームがバルブの空気穴を塞いでしまうことがある。
そういったケースに対しても、バルブ基部のサイドに空気穴が設けられたTLV-44-Bはトラブルを起こしにくい

チューブレスレディ対応リム向けの形状

リムホールとの気密を保つパッキンは円錐形で、リムテープでニップルホールを塞ぐチューブレスレディ対応リムに適した形状。
バルブ基部の段差にパッキンが引っかかる構造になっているため、長期間使ってもパッキンが変形して空気漏れの原因になりにくいように思う。

アルミ製のバルブナットはスパナを掛けられる形状

バルブナットはアルミ製で、緩みどめのOリングつき。
通常は手締めのトルクで十分だが、固くて緩められない際に工具を掛けられるよう、2面がカットされている。
バルブ基部も四角い断面になっているので、もしネジ山が固着してしまってもスパナで緩めることができる。

バルブコア回しとして使えるキャップ付属

本品にはアルミ製のバルブキャップが1個付属するが、これがちょっとした便利グッズになっている。

アルミ製バルブキャップが1個付属する

キャップには長円形の穴があいているが、この部分はバルブコアに差し込み、バルブコア回しとして使用できる
バルブステムからシーラントを入れる際や、ねじ込み式ポンプヘッドでコアが緩んでしまったときなどに便利。

バルブコア回しとして使えるバルブキャップ

何年か前、練習中にパンクしたとき、チューブ交換してCO2インフレーターでエアを入れたはいいものの、インフレーターを外すときにバルブコアも一緒に緩んでしまった経験がある。
その時はたまたま一緒にいた友人に携帯ポンプを借りて事なきを得たが、一人だったら身動きがとれなくなっていた。

まとめ:イマドキのチューブレスシステムに

チューブレスタイヤを数多くラインナップするパナレーサーが満を持してリリースしたチューブレスバルブ。
最後発だけあって、タイヤシーラントやインサートを使用する「イマドキの」チューブレスシステムに対応した製品だと感じた。

バルブコア回しとして使えるバルブキャップも嬉しい。出先でのパンク修理時、バルブコアが緩んで絶望した人はきっと多いんじゃなかろうか。
私も過去にそういう経験をして以来、携帯工具セットには必ずバルブコア回しを入れている。

ただ、(バイク1台に2個も必要無いとはいえ)バルブキャップが1個しか付属しない点は残念。
せっかくカッコいいキャップなんだから、前後輪あわせて揃えたい。

もうひとつ気になった点を挙げるなら、バルブコア長。44mmのバルブ長で対応できるリムハイトは30mm程度まで
40~50mmハイトのカーボンディープリムではもっと長いバルブが必要となる。ロングバルブ版の追加にも期待したい。

(2022/05)ロングバルブ仕様が追加

待望のロングバルブ仕様が追加された。

  • 60mm:TLV-60-B(2800円税別)
  • 80mm:TLV-80-B(3200円税別)

従来のラインナップも合わせると、ローハイトリムからディープリムまで対応できるようになった。

バルブ長さ型番対応リムハイト(概算値)価格(税別)
44mmTLV-44-B~30mm1900円
60mmTLV-60-B~45mm2800円
80mmTLV-80-B~65mm3200円