【レビュー】Saris H3 ダイレクトドライブ スマートトレーナー

2020年5月。新型コロナウイルス感染症の流行で、日本でもレースはすべて中止・延期。
不要不急の外出は避けるべし、という状況になって、普段のトレーニングをローラーに切り替えた。
練習は実走派だったが、久々にZWIFTを契約して環境を整えたところ、他にやることもないので毎日ワークアウトを行うようになった。

当初はタイヤドライブ式の固定ローラーを使っていたが、毎日乗るならやっぱりスマートローラーで練習したい。
といわけで、Saris H3でスマートローラーデビューとなった。

スマートトレーナーに必要な機能を一通り備えたローラー台。買ってすぐZwiftを楽しめる。

評価 ★★★★☆

購入価格 11万円

長所 -Pros-

  • スマートトレーナーに必要な機能を網羅
  • 頑丈な筐体と高い安定感

短所 -Cons-

  • ケイデンス測定は誤差が大きく不安定
  • スピードによってパワー測定値が若干変わる
  • ディレイラーケージとトレーナー本体の干渉

パワーメーターの老舗が販売するスマートトレーナー Saris H3

車載用サイクルキャリアで有名なSarisは、傘下にパワータップでお馴染みのCycleOpsブランドを抱えていた。
先代のスマートローラー、HammerはCycleOpsブランドで販売されていたが、CycleOpsブランドをSRAMに売却したことに伴い、今回のH3からはSarisブランドとして販売することになったというわけ。

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サイズ感は平均的。本体の出っ張りは少ないが、張り出した脚に足の小指をぶつけると痛い。

そんなSaris H3は、後輪を外して取り付けるダイレクトドライブ本式で、Ant+/Bluetooth通信、パワー測定、Zwift等のアプリと連動した自動負荷調整と、現代のスマートローラーに求められる機能は一通り搭載している。また、Salis Utilityというスマートフォンアプリでファームウェアアップデートやキャリブレーションも可能。

キャリブレーションは月に1回程度の実施が推奨されている。先程のSaris Utililyアプリ以外に、ZWIFTの設定画面でもキャリブレーションを行える。

セットアップと収納

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頑丈な段ボール箱に梱包されている

Saris H3の全体的なサイズ感は、大型のパソコン本体くらい。折りたたみ式の脚は畳むと本体に完全に隠れ、幅20cmほどになる。実際はこれにスプロケの突き出しが加わるものの、ローラーを使わない時には部屋の隅とかちょっとした隙間に収納できる。

本体にはハンドルがついていて持ち上げやすいが、重量が20kg以上あるので持ち運ぶのは辛い。あくまでもハンドルは、少し位置を動かすときに掴むものという感じ。ボディはアルミ鋳造、脚はグラスファイバー入りプラスチックで頑丈そのもの。

リヤエンドの規格は、付属のエンドキャップを交換することで

  • 130mm クイックリリース
  • 135mm クイックリリース
  • 142x12mm スルーアクスル
  • 148x12mm BOOST スルーアクスル

に対応。

繊維入りプラスチック製の頑丈な脚。アジャスターを回すことでガタツキや傾きの微調整が可能。

我が家では、本体は定位置に置きっぱなし、トレーニング前にPCデスクの椅子を退けて、空いたスペースにバイクを取りつけてトレーニング、という運用を行っている。

トレーナーの車軸位置はタイヤ径700x25cのホイールに比べて1cmほど低い。さらに前輪の下にも台を挟むので、実走に比べて若干前上がりになるが、前傾姿勢を保ちにくいローラートレーニングではこのほうがむしろ具合が良い。

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若干前上がりにセットされるが、むしろ具合が良い。

負荷装置

スマートローラーはSaris H3が初めてだが、ZWIFT内の道路勾配に合わせて負荷が変動するのはなかなか面白い。9kgのフライホイールを内蔵しているだけあって負荷の脈動も感じないし、実走感はかなり高い。もっとも、程なくしてギヤチェンジが面倒になったため、現在はZwiftの設定で負荷変動幅を少なめに設定している。

再現できる最大勾配は20%、最大負荷は2000W。これに不満を覚えるのはトラックレースのナショナルチームくらいではなかろうか。

最大負荷2000Wまで設定可能(画面はSaris UtilityアプリのERGモード)

ワークアウトでは、指定されたパワーになるよう負荷を自動調整するERGモードに対応。通常の固定ローラーで一定のパワーゾーンを維持するのは結構難しいが、ERGモードだと、ケイデンスに合わせてリアルタイムに負荷が調整され、目標パワーにピタリと揃う

ただし、H3のケイデンス測定機能はペダリングの変動を検知して計算する仕組みで、レスポンスが悪く誤差も大きいので、特にON-OFFの激しいインターバルを行う際には別途ケイデンスセンサーを用意したほうが快適。なお僕は、ケイデンスセンサー代わりにGarmin Vectorパワーメーターを使っている。無駄…

ERGモード対応で、激しいパワー変動があるワークアウトもこなせる。

騒音と振動

チェーンで直接負荷装置を回すダイレクトドライブ式なので、タイヤドライブ式のローラーと比べて騒音・振動は少ないとされており、実際、低速ではチェーンの駆動音や変速時の音のほうが目立つ
ただ、高負荷をかけるトレーニングでスピードが上がってくると、フライホイールが唸る音が聞こえてくる。

こういった音は壁や床で反射するので、騒音のない部屋ではそれなりの音量に聞こえる。
フロアマットを敷いたフローリングに直接おいているので、振動が気になるならミノウラの防振パッドのような振動吸収材を挟むと改善されるかもしれない。

個人的には、スピーカーで音楽を聞きながら回せる程度の音なのでそこまで気にしていない。
なお、フリーは爆音なので、足を止めるとバチバチと賑やかな音がする。

Saris H3使用中の動画

すくみずログのYoutubeチャンネルでSaris H3使用中の動画を公開中。

パワー測定値の比較

Saris H3のパワー測定値の傾向を知りたかったため、手持ちのパワーメーターと比較した。
手持ちのPioneer ペダリングモニタ PM910とGarmin Vector(第1世代)を取り付けたバイクをSaris H3に取り付け、以下のテストを実施した。

  1. 15分程度のフリーライドで暖気
  2. PM910とVectorをゼロ点リセット
  3. ケイデンスを80~85rpmに保ちながら、ギヤを39x24Tにセットして160W 3分→240W 3分→320W 3分
  4. 39x17Tにギヤチェンジして、160W 3分→240W 3分→320W 3分
  5. 同様に、39x13T160W 3分→240W 3分→320W 3分

1秒毎に記録した生のログは荒れてるので、30秒ごとに平均をとって見やすくしたのが以下のグラフ。ご覧の通り、パワーメーターの個体差は結構大きい。

30秒平均のパワーログ。パワーメーターはいっぱい持ってるけど、ご覧のように個体差が大きいので他人のFTPで一喜一憂するのはナンセンス。

これだけだとわかりにくいので、各Setの各パワーゾーンの平均をとって整理したのが以下の棒グラフ。パワーメーターごとに、160W、240W、320Wの平均値を重ねた棒グラフに示している。今回のテストではSaris H3のERGモードを利用しているので、基準になるH3の測定値はぴったり160W、240W、320Wに揃っている。

ケイデンスはテストを通じて80~85rpmになるよう揃えているので、Set2、Set3とギヤが重くなるにつれて車軸の回転数が速くなるが、それに従ってPM910やVectorのパワーが低く測定されている。つまり、高回転になるほどSaris H3は高めの測定値を出力する傾向がある。
回転数で測定値が変わる現象については海外サイトでも指摘されている。なお、不確かさの排除のため同じテストを20回以上繰り返したが同じ結果だった。毎日やってたらFTPが上がった。

どのパワーメーターの精度が良い悪いという話ではなく、測定原理が違うパワーメーター間で測定値がピッタリ揃うほうが珍しい。
Saris H3を使ったトレーニングではH3で測定したFTPを基準にしてワークアウトを行っているので実用上の問題はあまりない。

各区間の平均値。高回転になるほどSaris H3は高めの測定値を出力する傾向がある。

気になるポイント

気になった点は、(スマートローラー共通の問題だと思うけれど)手動で負荷調整できないこと。固定ローラーを使っていたときは負荷を最大にして、インナーロー付近で回すことでチェーン駆動音とタイヤの騒音をできる限り抑えていたが、スマートローラー接続時はZWIFT側で負荷装置が制御される。そのため、53x14Tとかでブンブン回すことになり駆動音も相応の大きさになるし、デュラエースの高価なアウターギヤが減るのも気になる(貧乏性なので…)。
もう一点、本体とリヤディレイラーのケージのクリアランスがギリギリで、ローギヤだとケージと本体が軽く接触することもある。これはもうちょっと余裕を持ってほしかったところ。

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本体とディレイラーのケージのクリアランスがギリギリ

まとめ

Saris H3はスマートローラーに必要な機能を一通り押さえた製品。

狭い部屋に設置しても本体があまり嵩張らないのに安定感があり、ハードなトレーニングでもがいても不安な感じはしない
ケイデンス測定の不安定さや、ディレイラーケージとのクリアランス不足、そしてフライホイール回転数でパワー測定値がズレるなど、不満な点もいくつかあるのは確かだが、
本体の造りは良く、ERGモードのレスポンスも良い。インドアトレーニングを本格的にやる上で間違いのないスマートローラーだと感じた。

スマートローラーはここ最近急速に進歩してきた発展途上の分野。実走を完全に代替するものにはならないけれど、新型コロナウイルスでインドアトレーニングの有効性に気づいた人は僕の他にも大勢いるだろうし、今後はもっと市場が拡大していくんじゃないだろうか。