シマノDi2を無線化してワイヤレスで変速する 回路製作とディレイラー動作確認

出る出ると言われつつまだ発表されていないが、新型デュラエース(R9200系?)は無線化するという噂がある。

時代を先取りするため、先日余り物パーツで組んだDi2システムを利用して、無線化のテストをしてみた。

自作ワイヤレスDi2の概要

今回はテストということで、ローラー台専用バイクでの使用を前提とする。
というのも、実走するとなると振動への対策や防水処理が面倒なうえ、ノイズ対策も大変そうだ。
吹っ飛んで壊れるくらいならまだしも、スプリント中に突然ローギヤに変速されたりしたら落車不可避なので、今回はあくまでも室内専用として製作する。

ざっくりとした仕様は以下の通り。

  • フロントシングル 11段変速
  • ハンドルに送信機を設置
  • リヤディレイラー・バッテリー・受信機をリヤエンド付近に設置

フォトカプラでスイッチを操作

今回は、Di2のシステム自体には手を出さない。
シフトスイッチの接点を電気的に開閉する部分だけを自作する。

Di2と受信機は電気的に絶縁しておきたいので、フォトカプラという電子部品を使う。

フォトカプラは、LEDと受光素子が一体化された部品。LEDに電流を流すと受光素子が導通する。
つまり、入力端子に電流を流したり止めたりすることで、出力端子をスイッチングできる。

フォトカプラーとはなんですか? 東芝東芝デバイス&ストレージ

おもちゃのラジコンカーを購入

無線といっても方式はいろいろあるが、今回は手っ取り早く、おもちゃのラジコンカーを使うことにした。
安くて回路が単純そうなやつを探し、京商の40sc Mini Truck レーサー TU001Rという製品を購入。

前後と左右の操作ができる2チャンネルのラジコンで、送信機、本体ともに単3電池を2本使用する。

15年ぶりくらいにラジコン買ってちょっとテンションが上がったが、こいつはバラされる運命にある…

パーツ取りする前にちょっと遊ぼうかと思ったら、ステアリングは左右に切れるのに後輪が動かない。
…結局、走らせる前に分解することになった。

ばらしてみたら後輪モーターの配線が外れていた(緑の配線)。このラジコン、半田付けのクオリティがものすごく低い。

緑の線のハンダが外れて動かなかったというわけ

半田付けしたら動くようになったので、一度組み立て直して、ちゃんと走ることを確認。

それにしても、ステアリングをマブチモーターで直接動かすのは驚いた。
コストは安くつくが、あまりにも乱暴すぎる。操舵力が左右で違うし、操舵力そのものも足りず小回りが効かない。

乱暴なステアリング機構

また、ハイギヤードでトルクが足りない。もっと凸凹した道をモリモリ走る感じかと思っていたんだけど…

ひとしきり遊んで飽きたので、想像通りコンパクトな基板を摘出。

ほしかったもの

20×40mmの基板には、ラジコンの受信機とモーター駆動回路が一体化されている。パターンが太く配線の半田付けもしやすそう。
既設配線のアサインは以下の通り

  • 電源…赤・黒(3V入力)
  • 前後…緑・白(±3V出力)
  • 左右…黄・青(±3V出力)
  • アンテナ…赤(結んである)

ST-6770 アルテグラDi2のSTIレバー(の残骸)を加工

ST-6770の変速ユニットからスイッチに向かう配線をちょん切って、コネクタを取り付ける。

スイッチ部の配線は3本

  • 灰…GND(0V)
  • 紫…ボタンX(3.3V)
  • 黄…ボタンY(3.3V)

紫を灰を導通させるとボタンX(大レバー)黄と灰でボタンY(小レバー)を押したことになる

なお、Di2のスイッチ端子間の電圧・電流を測定したが、電圧は3.3V程度、電流は0.033mAだった。
この程度なら、フォトカプラの出力側を直結しても問題あるまい。

コネクタは、PCのマザーボードとかに刺さってるアレ。それにしても配線が細くて難儀した。

ブレッドボード上でフォトカプラの配線

続いてフォトカプラ回路。
雑な回路図を書いて、ブレッドボードでちゃちゃっと組む。

…嘘をついた。回路組んでから回路図書いた。

とりあえず動けばいいのですごい雑

フォトカプラは東芝のTLP785を使用。一応データシートを見て、壊れないであろうことは確認した。

有線で動作テスト

組めたら、まずは動作確認のため、タクトスイッチを繋いでチェック。
ブレッドボード左側のタクトスイッチを押すと

フォトカプラ入力端子が導通 → 17mA程度の電流が流れる → フォトカプラ出力端子が導通 → Di2のシフトスイッチが導通

という動作をして、シフトアップ・シフトダウンが行えることを確認した。

まずはタクトスイッチで回路の動作確認

ラジコン受信機を組み込み

フォトカプラの回路は問題ないようなので、いよいよ受信機を組み込む。

タクトスイッチの代わりにラジコンの受信機を接続

何度もチェックして動くのは確信してるんだけど、やはり最初は緊張する。
電源を入れて、送信機のスイッチをポチポチすると…ディレイラーが動いた。

最難関はバイクへの実装

思いの外すんなり動いたが、大変なのはここから。

リヤエンド付近にはリヤディレイラーに加えて、ジャンクションA、シフトユニット、受信基板、そしてDi2と受信機それぞれのバッテリーがひしめきあう。
レイアウトを考えたり、アルミ板を曲げてブラケットを作ったり、面倒な工作がたくさん残っている。

受信機の電源は別途用意している(単3電池×2本)が、できればDi2のバッテリーから電力を供給したい。
電池ボックスが無くなる代わりに電圧変換基板が必要になるので、いずれアップデート…くらいに考えておこう。

送信機もこのままというわけにはいかない。ハンドルを握ったまま操作しやすいようなスイッチにしないと。
一応、送信機もバラしてチェック済みだが、「使いやすい形に作る」っていうのは結構難しい…

これまた低コストでシンプルな送信機 すき

ところで、同じ周波数のラジコンで遊んでいる子供とかが近くにいると、僕のバイクのギヤがガチャガチャ変わることになるが、これについては今の所どうしようもない。