GARMIN fenix 7S Sapphire Dual Power Ti Carbon Gray DLC / Black
ガーミン製スマートウォッチのフラッグシップモデル。
堅牢なボディに最新スペックが盛り込まれており、
スマートウォッチとして、ライフロガーとして、そしてGPSサイクルコンピュータとして申し分ない性能を持つ。
今作からタッチパネルを搭載。物理ボタンも併用し操作感に優れるが、バイブレーションとビープ音の弱さがネック。
評価 ★★★☆☆
購入価格 90000円
長所 -Pros-
- 濡れた手でも操作しやすいタッチパネル
- 高級感のあるボディ(実際高価だが)
短所 -Cons-
- バッテリードレイン問題等、ソフトウェア完成度に疑問
- バイブレーションとビープ音が弱く、気づかない
通算5本目のガーミンウォッチ
私は、Garmin Connectでライフログやトレーニングステータスを一元管理している。
そのため、GPSサイクルコンピューターはGarmin製品で統一。
スマートウォッチも、Vivosmart HR J → Vivoactive 3 → ForeAthlete 935 → fenix 6Sと乗り継いできた。
fenix 6Sには不満は無かったが、2年ほど使ったので、そろそろ新機種を…と思い、後継機であるfenix 7Sを購入した。
第7世代 fenix
ガーミンウォッチのフラッグシップモデル
ガーミンウォッチのフラッグシップモデルである「fenix」シリーズ。
堅牢なボディは、MIL規格[MIL-STD-810]準拠の「衝撃落下」「高温/冷凍」「防水」「腐食」試験をクリア。アウトドアの過酷な環境にも耐える。
機能面でも、最新スペックがすべて盛り込まれている。
また、ベゼルやバックカバーには金属パーツが奢られ、(ガーミン製品にしては)高級感のある外観を備えている。
ランニング向けウォッチの最上位機種 Forerunner 955もfenix 7同等の機能を備えるが、
「軽さ重視のForerunner」「強度と質感重視のFenix」という棲み分けが行われている。
2023年1月現在の最新モデルは「fenix 7」シリーズ。スペック的には
- タッチパネル
- ソーラー充電(一部モデル)
- 第4世代Elevate光学式心拍計
- GNSSマルチバンド(高精度GPS)対応(一部モデル)
が目玉だ。
バッテリー管理も進歩したのか、稼働時間も伸びた一方で、6Sから若干重量が増した。
fenix 7 シリーズラインナップ
fenix 7シリーズは、3種類のサイズがラインナップされている。
ケースサイズが大きくなるほど、大画面で高解像度、バッテリーライフも長くなるが、一方で重く嵩張る。
fenix 7 シリーズ ラインナップ
- fenix 7:47mmケースの標準モデル
- fenix 7S:42mmケースの小型モデル
- fenix 7X:51mmケースの大型モデル
私はライフログ記録のため、充電時以外は常にガーミンウォッチを身に着けている。そのため、この中で最もコンパクトな7Sを選択した。
コンパクトモデル fenix 7S
日本国内では、fenix 7Sは2グレードで展開される。
- fenix 7S Saphhire Dual Power Ti
- fenix 7S
「Saphhire Dual Power Ti」は上位モデルで、以下の点で差別化されている。
- サファイアガラス風防
- ソーラー充電搭載
- DLCコーティングチタン製ベゼル・バックカバー
なお、ベースモデルとの価格差は27500円。差額で安いガーミンウォッチが買える。
ソーラー充電はバッテリーライフが多少伸びるという程度だし、重量差はたった5g。コストパフォーマンスはハッキリ言って悪い。
fenix 7S Saphhire Dual Power Ti | fenix 7S | fenix 6S | |
直径×厚み | 42×14.1mm | 42×14.1mm | 42×13.8mm |
ディスプレイ | 1.2インチ 240×240ピクセル タッチパネル搭載 | 1.2インチ 240×240ピクセル タッチパネル搭載 | 1.2インチ 240×240ピクセル |
重量 | 58g ケースのみ 42g | 63g ケースのみ 47g | 61g ケースのみ 41g |
スマートウォッチモード | 11日間+3日間※ | 11日間 | 9日間 |
GPSモード | 27時間+9時間※※ | 27時間 | 25時間 |
バッテリー最長モード | 90時間+72時間※※ | 90時間 | 50時間 |
エクスペディションモード | 26日間+17日間※ | 26日間 | 20日間 |
バッテリー節約ウォッチモード | 38日間+49日間※ | 38日間 | 34日間 |
価格(税込) | \121,000 | \93,500 | \71,500 |
*ソーラー充電、50,000ルクスの条件で1日3時間の屋外での終日着用を想定
**ソーラー充電、50,000ルクスの条件での使用を想定
…上位モデルを購入した。DLCコーティングのチタン。最高。
タッチパネル+物理ボタン
スマートウォッチの多くは、タッチパネルで操作を行うようになっている。指先で触れて操作するのは直感的だし、ボタンが減って見た目もスッキリする。
ライフスタイル寄りのガーミンウォッチでも、現在タッチ操作が主流となっている。
一方で、静電式タッチパネルは手袋をしていると操作しにくいし、水に濡れると誤作動する。水中では使い物にならない。
また、タッチパネルは「画面を見て、狙いを定めて、指先で触れる」というステップが必要だ。
ランニングやサイクリングの最中、揺れる画面をタッチするのは難しいし、危険でもある。タッチパネルは「ながら操作」との相性が極めて悪い。
そのため、今までのfenixシリーズは、雨の中、激しい振動にさらされていても、手探りで確実に操作できる物理ボタンインターフェースが採用されていた。
ところが、fenix 7シリーズではタッチパネルが搭載された。ただし、物理ボタンも搭載され、どちらでも操作できるようにデザインされている。
タッチパネルの操作感は良好で、流石に水中では操作できないが、指先が濡れている程度であれば、画面スクロールやメニュー操作が可能だ。
誤タッチ防止機能も搭載され、広い面積で触れると作動しないようになっている。なお、手のひらで画面を覆うとバックライトが消灯する。
タッチパネルのON/OFFは簡単に切り替えられる。
メニューからの操作も可能だが、私はDOWN+STARTボタンの同時押しに割り当てている(ボタン長押しor同時押しに割り当て可能)。
このタッチパネル、地図機能を使うときはかなり便利だ。
従来はボタンで「ズーム」「縦移動」「横移動」を切り替えて操作する必要があり、正直かなりストレスだった。
ソーラー充電システム Dual Power
fenix 7シリーズの上位モデル「Dual Power」はソーラー充電機能を備えており、画面とベゼルの隙間に実装されたリング状のソーラーパネルを確認できる。
7Sの場合、スマートウォッチモードで使用したら11日間のバッテリーライフだが、1日3時間、50000ルクス(晴れた日の屋外)の光を浴びると、さらに3日間使用できる。
計算上ではあるが、8時間光を浴びるとバッテリー残量にして5%くらいは発電できる。
ただし、この8時間で3%ほどバッテリーを消費するので、充電量は差し引き2%程度。
積極的に充電するというよりは、屋外では動作電力を賄える、くらいに認識したほうが良い。
なお、直射日光が当たると、ソーラーパネル部があずき色に光り、若干目障りだ。
ソーラー充電機能があればバッテリーライフを延長できるが、ガーミンウォッチはもともと電池持ちが良く、あまり有り難みを感じない。
もちろん無いよりあったほうが良い機能だが、個人的には、追加コストを支払うほどの必要性は感じなかった。
第4世代に進化した光学式心拍計
LEDの光で心拍数を測定する光学式心拍計。
Garminの光学式心拍センサーは反射型という形式で、皮膚にLED光を照射し、反射光の変動から脈拍を測定する。
動脈に緑色のLED光を照射すると、血液中のヘモグロビンに反射して返ってくる。脈拍にあわせて血管が拡張しているときは反射光が少なく、収縮しているときは反射光が多いため、光量の変化を光センサで捉えることで心拍数の測定ができるという原理。
この方式の心拍計の欠点は振動に弱いことで、ローラー台やランニングでは十分な精度を持つものの、サイクリングではハンドルからの振動が直接伝わるため、測定エラーが頻繁に発生する。
fenix 7SのElevate光学式心拍計は第4世代に進化し、LED・センサー数も増え、測定精度が向上した。もちろん、血中酸素飽和度(SpO2)測定にも対応する。
試しにサイクリングした感じでは、ログに不自然なノイズは現れなかった。
光学式心拍計はまだ新しい技術なので、世代ごとの性能差が大きい。第1世代から使ってきたが、世代が変わるごとに如実に性能向上している。
改めて、旧モデルのfenix 6Sや、振動に強いアームバンド型光学式のPolar Verity Sense、信頼性の高い心電測定センサー(乳バンド)との比較実験を行いたい。
ライフロガー機能
ガーミンの腕時計型デバイスはライフロガーとしての機能が充実しており、常に腕につけておくことで、スポーツ中だけではなく日常生活の健康状態を把握できる。
加速度センサーで歩数を計測するほか、裏蓋に内蔵された光学式心拍計で常に心拍数をモニタリングできる。
例を挙げると
- 歩数
- 心拍数
- ストレス・疲労
- 睡眠時間(レム睡眠・ノンレム睡眠)
といった内容を記録でき、デバイスの画面やGarmin Connectアプリで確認できる。
起床時の心拍数を見るとその日の体調を確認できるので、充電時以外は就寝中も常に身につけている。
GPSサイクルコンピュータ Edgeシリーズの機能をほぼ網羅
fenixシリーズの本質はスマートウォッチというよりもGPSサイクルコンピュータだ(自転車に限らないので、GPSウォッチとでも呼ぶべきなのか)。
ランニング、サイクリング、水泳、その他様々なスポーツに対応する。
サイクルコンピュータとしては、Edgeシリーズの機能をほぼ網羅している。
パワーメーター対応はもちろん、Garmin VectorやRallyシリーズのトルク分析(ペダリングダイナミクス)も利用可能だ。
他に、MTBダイナミクス機能でのジャンプ検知や、ルートナビゲーションも行える
コンパクトで高機能、身につけているのでバイクを乗り換えてもGPSログが途切れないため、
シクロクロスワールドカップの中継ではガーミンウォッチでログを取っている選手を良く見かける。
マルチGNSSマルチバンド対応
また、fenix 7シリーズの上位モデル(Sapphire Dual Power)は、マルチGNSSマルチバンドに対応している。
これは、2周波数帯の測位信号を同時受信することで、ビルの影などの電波干渉が多い状況においても、位置精度が向上する技術。
消費電力は増えるものの、より正確なGPSログを記録することが可能だ。
GNSSマルチバンド機能があるデバイスを他のモデルと比べてどのようなメリットがありますか?:
Garminデバイス:GNSSマルチバンド機能を利用するメリット
- 2周波数帯を受信できるマルチバンド機能で、より安全で連続的な軌跡を記録できます。干渉が多い環境(例えばビルが乱立する都市部など)でデバイスを使用する際に、位置情報の精度が向上します。
- 2周波数帯を受信することにより障害物に反射した信号を検出(および除去)するので、1周波数帯受信機種よりも位置情報の精度が向上します。(※下図参照)
- 大気の影響(電離層エラーなど)によって生じる誤差を考慮し、修正します。
- 理想的な条件でデバイスを使用した場合、他の機種の位置情報の精度は約±3m以内ですが、2周波数帯を受信できる本機能を活用することで、約±2m以内の精度を実現します。
バッテリードレイン(電池の異常消費)
fenix 7シリーズの発売当初より、バッテリードレイン、つまり電池が異常消費する問題がフォーラムに報告されていた。
本来は10日以上のバッテリーライフがある製品だが、1晩で20%以上減ることもあるという。
2023年1月現在のソフトウェア(10.44)では修正されているはずだが、私の個体もバッテリードレインに見舞われた。
調べてみると、気圧変化を検知して通知するストームアラート機能が原因らしく、これを無効に設定することで改善された。
バイブレーションとビープ音
fenix 6Sのときも感じていたが、7Sも依然としてバイブレーションが弱く、ビープ音も小さい。
バイブレーションの強度は6Sと7Sで同じくらい。安静時はともかく、運動中に気づくのはまず無理だ。
スポーツアクティビティ中にもハッキリ分かるように、手首が脱臼するくらいの勢いで震えてほしい。
ビープ音については、音量は6Sと変わらないが、やや低音になっており、知覚しにくい。
仕事の日は、スマホのアラームを2回鳴らし、最後にガーミンウォッチのアラームで起きる、というルーチンにしているのだが、
fenix 7Sに変えてからの出勤日、耳元で鳴ってるのに気づかず、寝過ごした。
なお、バイブレーションには強弱がついており、
- タッチでメニュー操作時:きわめて微弱
- ボタンでメニュー操作時:微弱
- 通知・アラーム時:弱
と3段階に制御されている。それぞれオン/オフは可能だが、強度設定はできない。
バイブレーションとビープ音はfenix 7S最大の不満点だ。もっと強く震え、大きく鳴ってほしい。バイブレーション強度や音量、継続時間の設定ができれば満点だ。
なお、店頭デモ機を比較した印象では、バイブレーション強度は
fenix 7X > fenix 7/Epix > fenix 7S
また、Forerunnerシリーズはそこそこしっかり震える。
fenix 7とForerunner 955を比べると、Forerunnerのほうが明確にバイブレーションが強い。
裏蓋が金属製のfenixに対し、樹脂ケースのForerunnerのほうが共振しやすいせいかもしれない。
Forerunnerシリーズのバイブレーション強度も本体サイズに依存し
Forerunner 955/255 > Forerunner 255S
だった。
…この点はどうにも耐え難く、その後1ヶ月足らずでForerunner 955 Dual Powerを追加購入した。
まとめ:フラッグシップモデルに相応しい外観と機能
ガーミンウォッチのフラッグシップに相応しい外観と機能を備えた製品。
「ビジネスアスリート」向けと言うだけあって、「オン」「オフ」どちらにも対応できる。
なお、仕事とスポーツどちらが「オン」かは人による。
定価121,000円(税込)と非常に高額だが、それに見合う満足感が得られた。それに、ずっと身につけているものなので、ここはコストを掛ける値打ちがある。
しかし、バイブレーションの弱さと音の小ささはいただけない。スポーツ時でもハッキリ認識できるように、改善を希望する。