Panaracer GravelKing 700x26C F726-GK
パナレーサーのグラベル向けタイヤ「グラベルキング」シリーズの中では最も転がりが軽い、スリックパターンのタイヤ。
26mm幅のタイヤはキャリパーブレーキに収まるため、古いロードバイクでも乗り心地の良さや高いグリップを享受できる。
未舗装路への対応力は限定されるが、荒れた舗装路を走るにはもってこい。ロードタイヤの軽快さはそのまま、走れる路面を拡張してくれるタイヤ。
評価 ★★★★☆
購入価格 3900円
長所 -Pros-
- キャリパーブレーキに収まる26mm幅
- 荒れた舗装にも対応できる路面追従性の良さと高いグリップ力
短所 -Cons-
- 耐久性は一般的なレースタイヤ並
- 未舗装路でのグリップは期待できない
グラベル用タイヤ「グラベルキング」シリーズ
「グラベルキング」は、パナレーサーのグラベル向けタイヤブランド。オンロードとオフロード両方の要素に対応できるというコンセプトで、どんな路面にも踏み込んでいける。
グラベルブーム
数年前、北米で注目されはじめた「グラベル」。
舗装された道路(ターマック)ではなく、山の中の登山道(トレイル)でもない。
グラベルは、ダブルトラックというかダートというか、「地道」というべきか、とにかく、乗用車でも走れるくらいには平坦だが、舗装されていない道路を指す。
正直、道路状況の良い日本では流行らないと思っていたが、ロードバイク向けディスクブレーキの普及にも後押しされ、「グラベルロードバイク」は数年のうちにすっかり1ジャンルを築いてしまった。
グラベルロードは、純粋なロードバイクでは履けない32c以上、実際は38cや40cといったタイヤを履き、オンロードもオフロードも走れる。バイクパッキングスタイルでのツーリングにも対応し、車種によってはシングルトラックにも踏み込める、そんな多用途さが人気なんだろうか。
あるいは、ロードバイクで舗装路をサイクリングする事に、みんな飽きてきたのかもしれない。
さて、そんなグラベルライド向けのタイヤがグラベルキングで、グラベルロードバイクの用途に合わせ、オンロードでの軽快さとオフロードでのグリップ、さらには衝撃吸収性も重視されている。
走行性能と耐久性の両立
基本的に、タイヤは薄くて弱いほど性能が良い。極薄のケーシングにペラペラのトレッドを貼り付けたタイヤは、路面の凹凸に沿って変形するため乗り心地がよく、跳ねにくくグリップも良い。また、トレッドゴムのヒステリシスロスも少ないため転がりが軽い。
ハンドメイドの高級チューブラータイヤは、コットンや絹のケーシングに薄いトレッドを貼り付けた構造をしている。
しかし、そういうタイヤは突き刺しパンクやサイドカットに対して無力なため、耐久性を高めるためにサイドをゴムで覆ったり、パンク防止レイヤーを挟んだりする。そうするうちにタイヤは硬く、重くなっていく。
この辺りがタイヤ設計のジレンマになっている…はず。
実際の製品では取捨選択を行っており、ヒルクライム用タイヤは軽さを最優先する一方でロードレース向けタイヤはトレッド面のみパンク防止ベルトが設けられていたりする。
ツーリングや街乗り向けタイヤはトラブルを減らすため、サイドまで保護層を回り込ませている。
グラベルキングは、サイドカットのリスクもあるオフロード走行に備えて、サイドまで耐パンクケーシングに覆われている。
また、さらにシビアな使用状況にあわせて、トレッドを中心に耐パンク性能を高めた「グラベルキング プラス」もラインナップされている。
用途に合わせた3種類のトレッド
多様なグラベルライドのスタイルに合わせて、グラベルキングは3種類のトレッドパターンが用意されている。
- GravelKing(無印)…スリック
- GravelKing SK…細かいブロック
- GravelKing SS…センタースリック
オンロードでの転がりを重視したGravelKing、オフロードでのグリップを重視したGravelKing SK、
そして、両者の中間的な性格を持ったGravelKing SSといったところか。
タイヤ幅のバリエーションは豊富で、無印とSKは耐パンク性を高めた「PLUS」モデルもあるし、カラーも黒と茶の2種類あってバイクに合わせやすい。
こうやって表にまとめると、種類の多さに目眩がする。ユーザーとしては選択肢が豊富なのは良いことだが…
なお、32C以上はチューブレスに対応している。
Panaracer GravelKing 700×26C
リムブレーキロードバイクに入る26mm幅のタイヤ
さて、購入したのはGravelKing(無印)の700×26Cモデル。これをロードバイクで使用する。
トレッドパターンは、センター付近がヤスリ目で、サイドは杉目。この手のパターンにはあまり意味はなく、性能はスリックと大差ないらしいが、なんとなくグリップしそうな雰囲気はある。
ディスクロードの場合、レースを意識した車種であっても30cや32cのタイヤが入るが、ショートアーチのキャリパーブレーキだと28cが限界。
また、23cが主流だった時代のフレームは25cまでしか想定しておらず、28cタイヤはフォークやチェーンステーに干渉する。
26cというのは、(一部のコンフォートロードを除いて)旧来のロードバイクで履けるギリギリの太さで、古いバイクに乗っているけど、できるだけ太いタイヤを履きたい、という人にはピッタリ。
なお、内幅15mmのリムでタイヤ幅26mmになるよう設計されており、リム内幅13.5mmのホイールでは、実測25.4mm幅だった。
逆に、17mmや19mmといったワイドリムに履かせるとタイヤ幅は26mmを上回ると思われる。
実測重量は公称値を下回る
実測重量は235gと238gで、公証重量240gを下回る。大幅にサバを読むメーカーが多い中、好感が持てる。
荒れた舗装路を走るなら
本格的グラベルライドには向かないが…
グラベル向けタイヤとはいえ、26mm幅は本格的なグラベルライドには不十分。硬いフラットダートはとにかく、タイヤが沈むため砂利は厳しいし、大きな衝撃は吸収しきれない。
凸凹したグラベルを思い切り走るなら、せめて32mm以上の幅が欲しい。
ただ、アスファルトがひび割れたような、荒れた舗装路には十分。若干のエアボリュームが乗り心地と安心感をもたらしてくれる。
「酷道」「険道」「腐道」なんて呼ばれる荒廃した道や、鬱蒼とした山の中の舗装林道を走るにはもってこいだと思う。
乗り心地が良く、ハイグリップ
タイヤは結構柔らかく、路面の凹凸に追従し、衝撃をいなしてくれる。
乗り心地もさることながら、コンパウンドの柔らかさと路面追従性の良さが相まって、グリップはかなり高いレベルにある。
限界ニュータウン探訪ライドのときにはグラベルキングを履いていったが、通常のロードタイヤではバイクが暴れて不安定になるような荒れたダウンヒルも安心して下れた。
これには飛ばし屋さんもニッコリ。
耐久性は通常のロードタイヤ並
グラベルキングは、想像に反して柔らかめのトレッドで、触るとモチモチしている。
荒れた道路でも安定したグリップを発揮し、ダウンヒルでも安心できるのだが、それなりに摩耗する。
1200kmほどで後輪のトレッド中央が減ってきたので、1回目のローテーションを行った。
ローテーションしながら使って、美味しいのが2000kmほど、限界まで使って3000kmくらいだろうか。
コンチネンタルのGP4000やGP5000みたいな規格外の耐久性を持つタイヤもあるが、個人的にはこれくらい持てば十分。
1200kmの走行でパンクは1回。工場地帯を通ったときに、金属の切り屑を踏んで突き刺しパンクした。ただ、これはどんなタイヤでも起こりうると思う。
少し脱線するが、タイヤはそれなりのグレードのものを使うべきと考えている。
コストを優先したタイヤはグリップが心もとないし乗り心地も悪い。それに、寿命を考えると距離辺りのコストはあまり変わらないこともある。
同社のローエンド製品 カテゴリーS2は同じ1200kmで丸坊主になった(ただし、ずっと後輪で使用)。
個人的な印象だが、安いタイヤはとにかく減りやすいか、あるいは、減らないけどトレッドが硬くて滑りやすい。
まとめ:キレイな舗装路を外れて、ちょっとした探検へ
スリックパターンでロードタイヤと遜色ない走りをするが、26mm幅で荒れた路面にも対応できる。
乗り心地も良いしグリップにも優れるので、快適かつ安全なタイヤと言える。
キレイな舗装路を外れて、純粋なロードタイヤでは躊躇するような荒廃した道や、ちょっとしたグラベルに踏み込んでいける。
ロードバイクの軽快さを損なわないまま、走れる場所を拡張してくれるタイヤと感じた。
ただ、ひとつ気になるのは、同じ26c幅のロードタイヤ Race C Evo4(220g)との違い。
製品紹介を見る限りは、トレッドパターンも幅も同一。違いといえば耐パンクレイヤーがサイドにあるか無いかだけだが、実際に乗ってみて差は感じられるのだろうか。これは改めて比較してみたいと思う。