SHIMANO CS-HG800-11 11-34T
激坂対応の11sカセットスプロケット。8~10sフリーに取付可能、つまり10速時代のホイールを11sコンポで使用できる。
コンパクトクランクとの組み合わせでギヤ比1を実現できる点は魅力だが、隣り合うギヤの落差が大きく、一定のケイデンスで巡航しにくい。
評価 ★★★☆☆
購入価格 完成車付属
長所 -Pros-
- 激坂対応のロー34T
- 8,9,10sフリーにも取付可能
短所 -Cons-
- トップ付近の歯数が2T刻みで、一定ペースでの巡航が難しい
- フロントシングルで使うにはギヤレンジが足りない。
グラベルバイク キャニオン グレイルには11-34Tの11sカセットスプロケットがセットされていた。
クランクはR8000アルテグラで50-34T。インナーローで1:1のギヤ比を実現している。
激坂対応の11-34Tカセット
シマノのロード用11sカセットスプロケットで最もワイドな11-34T。
アルテグラと105の2グレードで販売されているが、通常ラインナップとは別型番となっている。
- CS-HG800-11 (アルテグラグレード)
- CS-HG700-11 (105グレード)
ギヤ構成は同じだが、素材や表面仕上、重量が異なる。
50-34Tのコンパクトクランクと組み合わせた場合、インナーローではギヤ比1:1となる。
急斜面でもスローペースで登ることができるので、激坂サイクリングでは非常に心強い。
8,9,10sフリーボディに取付可能
シマノのロード用11sカセットは通常11s用フリーボディにしか適合しないが、
11-34Tに限っては8,9,10sフリーに適合する。
他のロード用カセットに比べるとローギヤが十分大きく、スポークとディレイラーケージが干渉するおそれがないからだと思われる。
11sフリーに取り付け時は、1.85mm厚のロースペーサーを併用する。
10速時代のホイールを11速コンポーネントで使用できるというのは魅力。
対応ディレイラーが必要
11-34Tカセットを使用するためには、より大きなキャパシティ(チェーンのたるみを取る能力)が要求されるため、シングルテンション構造になった世代のロングケージ(GS)のディレイラーが必要。
現在は、R7000系105もしくはR8000アルテグラシリーズの、ロングケージ(GS)のディレイラーが対応している。
- RD-R8000-GS アルテグラ
- RD-R8050-GS アルテグラDi2
- RD-R7000-GS 105
同世代のR9100デュラエースにはショートケージ(SS)しかラインナップされていない。
SSの場合、仮にトータルキャパシティが範囲内に収まっていても、スラント角が30T以下のカセットにあわせて調整されているので、本来の変速性能を発揮できない。
ロードサイクリングでは使いにくいギヤ構成
ロー34Tで登坂能力を手に入れたが、その代償は大きい。11-34Tのギヤ構成は以下の通り。
11-34T: 11-13-15-17-19-21-23-25-27-30-34T
11枚のスプロケットで11-34Tのワイドレンジをカバーするため、トップ側も2T刻みで11-13-15T…と間引かれている。
ロードバイクの多段カセットスプロケットは、勾配や風向きに起因する微妙な速度変化に合わせてギヤチェンジを行い、脚にかかる負担を一定に保つためにある。
そのため、現代のロードコンポーネントではカセットのトップ側は1T刻みのスプロケットが並び、きめ細かい調整が行えるようになっている(クロスレシオ: close ratio)。
ところが、11-34Tは2T刻み。ギヤを1段変えるだけでケイデンスが大きく変わってしまい、一定ペースでの巡航が難しい。
地形変化が大きく、適切な重さのギヤに素早く入れることが優先されるMTBであればこれくらいワイドなほうが使いやすいが、舗装路の巡航においてはこの上なく使いにくい。
ロードバイクで使う前提で、大きいローギヤが欲しい場合、2Tぶん頑張れるなら11-32Tのほうがずっと使いやすい。
11-32T: 11-12-13-14-16-18-20-22-25-28-32T
激坂の上に住んでいるのでもなければ、15Tまで1T刻みで繋がる11-30Tを選択すると平地でも不満なく使えると思う。
11-30T: 11-12-13-14-15-17-19-21-24-27-30T
11-30Tと11-34Tを比較
しばらく11-34Tを使っていたが、34Tを使う機会はめったに無いうえ上記の理由で使いにくかったため、11-30Tに交換した。
11-30Tカセットは、34Tを失う代わりに11~15Tが1T刻みになっており、舗装路の巡航時など、速度を出して走る時にきめ細かいギヤ選択ができる。
11-30Tと11-34Tを比較すると、11-30Tが一定の傾斜でリニアに重くなっていくのに対して、11-34Tは二次曲線的なカーブを描いている。
カセットの下から上までまんべんなく使い、下り区間も踏むサイクリストなら絶対に11-30T。
ただ、11-34Tはロー側の傾斜がなだらかで、ヒルクライムなど低速時に細かいギヤ選択ができる。
普段常用するのは15Tまで、11Tや13Tを下りでしか使わないのであれば、11-34Tのほうが使いやすい。
まとめると
- 11-30T…中高速でのギヤの繋がりを重視
- 11-34T…低速での細かなギヤ選択を重視
というわけ。激坂ヒルクライムや林道サイクリングなどスピードレンジが低く、軽いギヤを多用するなら、11-34Tを選ぶのが正解。
まとめ:ロードバイクには向かない。グラベルロードならばアリ
ロードコンポでも使用可能だが、MTB用に近い性格を持つカセットスプロケット。
オンロード使用を前提とした場合、34Tはたしかに魅力的な場面もあるだろうが、巡航時のきめ細かな変速ができない。11-32Tや11-30Tのほうが遥かに使い勝手が良い。
11-34Tカセットは、シマノGRX組み・フロントダブルのグラベルロードに採用されることが多い。
オフロード走行では一定のリズムでペダルを回し続けることよりも、勾配や路面の変化に応じて最適なギヤを選ぶことが優先される。
実際、グラベルライド中は不満を感じることはないし、ちょっとした登り返しもアウターのまま対処できてしまう。
グラベルライドを中心に据えるなら悪くない選択かもしれない。
ちなみにGRXのフロントシングル組みの場合、フロントは40Tか42T、
カセットはMTB用の11-42T:(11-13-15-17-19-21-24-28-32-37-42)あたりを使用することになるが、
42×11-42Tの場合でも舗装路ではトップ側が足りない。ちょっとした下り坂ですぐに回しきってしまうはず。
いや…でも…グラフに書いて比較してみると、11-34T使うくらいなら11-42Tフロントシングルで良い気がしてきたな。軽いし。