キャニオンジャパン主催の「「グリズル」「グレイル」グラベルじっくり試乗会 in 京都(2022/2/23開催)」に参加。キャニオンサービスセンターを起点とした約30kmのライドで、京都のローカルグラベルを楽しんできた。
すっかり定着したグラベルバイク
一過性のブームにとどまらず、自転車の1ジャンルとしてすっかり定着しつつあるグラベルロード/グラベルバイク。
その名の通り、舗装されていない砂利道を走るためのバイクで、エアボリュームに富んだ太いタイヤを履き、振動吸収性を高めている。
マウンテンバイクと違い、舗装路も未舗装路も快適に走れるのがグラベルバイクの特徴。
ロードバイクが競技志向の尖った存在になるのに伴い、舗装路のサイクリングや通勤通学に使える「ちょっとイイ自転車」にグラベルバイクが選ばれている。
グラベルの魅力を味わう試乗会
舗装路も未舗装路も快適に走れるグラベルバイクだが、その魅力を味わうなら、やはりグラベルに足を踏み入れるべき。
とはいえ、我が国は(残念ながら)非常に道路状況がよく、山間部から細い路地に至るまで、ほとんどの道路は舗装されている。
したがって皮肉なことに「どこでも走れるグラベルバイク」で遊ぼうと思ったら、わざわざ未舗装路を探さなければならない。
グラベルライド未経験者にとってこれはハードルが高い。雑誌やインターネットで興味を持っても、グラベルライドの魅力に触れる機会が乏しいため、グラベルバイク購入に踏み切れない人も多そうだ。
また、乗り換えを考えている人にとっても、グラベルバイクの乗り味はグラベルを走ってみなければわからない。決して安くない買い物なので、実際に乗って、試してみてから買いたい。(これはロードバイクやMTBにも言えることだけど…)
そこで、CANYONの日本法人 キャニオンジャパンは、グラベルライドを体験できる試乗会を企画した。
キャニオンジャパンが拠点を構える京都は三方を山に囲まれ、走るフィールドには事欠かない。
試乗会は、初級・中級の2クラス、それぞれ3時間程度のライドで、グラベルライドの楽しさ、そしてCANYONのグラベルバイク「グレイル」「グリズル」をじっくり味わえる内容となっている。
キャニオンのグラベルロードバイク『グリズル』、そして『グレイル』にじっくり体験試乗してみましょう!
最近ではたくさんの選択肢が増えてきましたが、グラベルロードバイクと一口にいってもそのキャラクターや味付けはブランドやモデルによって様々です。そこで今回は『グリズル』、『グレイル』の乗り味を体感していただける、「じっくりグラベル体験試乗会」を企画しました。京都のキャニオンジャパンサービスセンターを起点に、舗装路とグラベル(砂利道)の両方を含む試乗コースを3時間前後かけてグループライド形式で走り、途中休憩を挟みながらグラベルの楽しさやちょっとしたスリルを体験いただける機会となります。
今回の試乗会は、2つのコースから選んでご参加いただけます。8:00 集合の中級コース(30km、獲得標高400m)はグラベルを走ったことがある方が対象で、この地域の特色を味わえる多彩な路面、アップダウンを含みます。13:00集合の初級コース(25km、獲得標高100m)はグラベル(砂利道)を未経験の方でもOK。ゆっくりペースの方も無理なく走りきれるよう、適宜休憩をとりながら全員(最大10名)グループで最後まで走ります。またキャニオンジャパンのメカニックが帯同しますので、メカトラやパンクのご心配は無用です。
参加費用は2000円で、乗りたいバイクをWeb予約する形式。もちろん試乗前にはペダル交換やサドルポジション調整を行ってもらえる。
予約枠は午前、午後それぞれ10人程なので、予約はすぐに埋まってしまった。
CANYONのグラベルバイク「グレイル」と「グリズル」
試乗会で用意されるバイクは、「GRAIL CF(グレイル)」と「GRIZL CF(グリズル)」「GRIZL AL」。
この2車種はどちらもグラベルバイクというジャンルにカテゴライズされるが、性格が異なる。
一般に、タイヤが細いほどスピードに優れ、太いほど走破性が高まる。
35~40c程度のタイヤを履くグレイルは、舗装路から平坦なダートを高速走行するのに適している。一方、最大50cのタイヤを履けるグリズルは、荒れたグラベルや、軽いトレイルライドにも対応する。
また、それぞれのフィールドに合わせてバイクのジオメトリも調整されている。
スピード重視の「グレイル」
35~40cのタイヤを履くグレイルは、舗装路~整備されたスムーズなグラベルを想定している。
ジオメトリはオールロード的で、Mサイズの場合はヘッド角72.5度、チェーンステー長425mm、ホイールベース1029mm、BB下がりは75mm。
2XS | XS | S | M | L | XL | 2XL | |
参考適正身長 | < 166 | 166 – 172 | 172 – 178 | 178 – 184 | 184 – 190 | 190 – 196 | > 196 |
シートチューブ長 | 432 | 462 | 492 | 522 | 552 | 582 | 612 |
トップチューブ長 | 513 | 523 | 547 | 569 | 580 | 604 | 615 |
ヘッドチューブ長 | 70 | 88 | 78 | 97 | 125 | 146 | 167 |
ヘッド角 | 70,25° | 71,25° | 71° | 72,5° | 72,5° | 72,75° | 72,75° |
シート角 | 73,5° | 73,5° | 73,5° | 73,5° | 73,5° | 73,5° | 73,5° |
チェーンステー長 | 415 | 415 | 425 | 425 | 425 | 425 | 425 |
ホイールベース | 988 | 990 | 1.020 | 1.029 | 1.040 | 1.063 | 1.073 |
BB下がり | 60 | 60 | 75 | 75 | 75 | 75 | 75 |
ホイールベースが多少長いほかはロードバイクに近いハンドリングで、転がりの軽いタイヤを選べば舗装路のツーリングも快適にこなせる。
特徴的な2階建てハンドル「ホバーバー」は、振動吸収性を高める効果がある。
また、ハンドルのドロップ部を握る際、ステムから真横に伸びる「1階部分」に親指を引っ掛けることで、荒れた路面のダウンヒルでバイクが暴れても、しっかりとハンドルを保持できる。
トレイルライドやバイクパッキングにも対応する「グリズル」
最大50mm幅のタイヤを飲み込むグリズルは、グレイルよりもオフロード性能を重視し、ちょっとしたトレイルライドも視野に入れたバイク。
トップチューブやフォークにはダボ穴を備え、バイクパッキングスタイルでのツーリングにも対応する。
ジオメトリを見ると、トップチューブを長く、ヘッドを寝かせて下りの安定感を増している。
3XS | 2XS | XS | S | M | L | XL | 2XL | |
参考適正身長 | < 158 | 158 – 166 | 166 – 172 | 172 – 178 | 178 – 184 | 184 – 189 | 189 – 194 | > 194 |
シートチューブ長 | 402 | 432 | 462 | 492 | 522 | 552 | 582 | 612 |
トップチューブ長 | 524 | 532 | 541 | 562 | 574 | 588 | 612 | 627 |
ヘッドチューブ長 | 115 | 122 | 135 | 121 | 141 | 166 | 186 | 205 |
ヘッド角 | 69° | 69,75° | 70,5° | 70,25° | 71,5° | 72° | 72,5° | 72,5° |
シート角 | 73,5° | 73,5° | 73,5° | 73,5° | 73,5° | 73,5° | 73,5° | 73,5° |
チェーンステー長 | 420 | 420 | 420 | 435 | 435 | 435 | 435 | 435 |
ホイールベース | 1.007 | 1.009 | 1.012 | 1.044 | 1.045 | 1.055 | 1.074 | 1.089 |
BB下がり | 60 | 60 | 60 | 75 | 75 | 75 | 75 | 75 |
また、グラベル向けサスペンションフォーク「RockShox Rudy」を装備した「グリズル サスペンション」もラインナップ。
トラベル量はわずか30mmだが、荒れた路面で衝撃を吸収したり、フロントタイヤの接地性を高めるには十分な効果がある。
これにドロッパーポストを装着すると、ほとんどMTBような走破性が得られる(もちろん、舗装路のスピードが犠牲になるが)。
多少のグラベルもイケるエンデュランスロード「エンデュレース」
試乗車にはなかったが、引率スタッフのバイクとして、エンデュランス系のディスクロード「エンデュレース」が参加していた。
広いタイヤクリアランスを活かし、35cのパナレーサー グラベルキングを履いていた。
舗装路寄りのグラベルバイクと、(レース志向ではない)ロードバイクの境界は曖昧になってきた。
コンフォートロード、エンデュランスロード、グラベルロード…太めのタイヤを履き、ロードサイクリングからちょっとした未舗装路にも対応するバイクは、そのうち「オールロード」として統合されるのはないだろうか。
ジャンルの細分化と統合を繰り返すオフロード系ロードバイクジャンル。シクロクロスとグラベルバイクが統合される例も出てきて、ちょっと不安なんだけど…
京都西山でグラベルライド
今回の試乗会、「グリズル サスペンション」に乗って、自分のグレイルとの違いをレビューする…というのが目的だったのだけど、すぐに予約が埋まってしまった。
…ので、(無理を言って)ゲスト枠として自分のグレイルで参加させて頂くことに。
朝8時、集合場所のキャニオンジャパン サービスセンターに行くと、各参加者に合わせて試乗車のポジション調整を行っているところだった。
参加者には見知った顔も…もしかして、つむりさんですか?
先週の北摂サイクリングでちょうど7年ぶりに会ったというのに、今度は3日ぶりの再会。
Twitterで相互フォローしている程度の関係で、特に親密というわけではないし、自転車の楽しみ方も全然違うのだけど、不思議と波長が合う。
ある種の自転車乗り同士はこうやってゆるく繋がっている。
さて、午前中に行われる中級ライドは、西山エリアの河川敷や林道をいくつか繋ぐ、距離30km 獲得標高400mの行程。
サービスセンターを出発し、1列で市街地を進む。交通量が少なく安全なルートを選んでくれているので走りやすい。
ほどなく、竹林を通過する「竹の経(みち)」に入る。キャニオンジャパンがサービス拠点を置く向日市はタケノコの産地として有名で、自然と竹林も多い。道路脇に並ぶ特徴的な竹垣は、全部で8種類あるらしい。
ここは舗装されているが、竹林の近くの道は、竹の根がアスファルトを盛り上げている場合があるので注意。
竹林を抜けると洛西ニュータウン。ここからいよいよ未舗装路に。
砂利が敷き詰められて整備されたフラットなグラベルだが、ジャリジャリという走行音が聞こえると、団地が見えるような街中でも気分が盛り上がる。
こういう道はグレイル向き。多少の腕があれば、ロードバイクでも問題なく走れてしまう。
オフロードの感触を軽く味見したら、桂坂のコンビニでいったん休憩。
ここからがメインディッシュ。未舗装作業道に分け入って、本格的なグラベル区間の始まり。
ここはずっと下り坂。路面が荒れで凸凹した場所もあるので、ライン取りとスピードコントロールが重要。
こういう道でバイクを操るのもグラベルバイクの醍醐味のひとつ。ただし、自分の腕を過信すると転ぶ(危なかった)。
グラベル用のタイヤは転がり重視で、シクロクロスタイヤに比べるとグリップに乏しい。自制心が大事…
ただ、タイヤが太く、MTBに近いジオメトリを持つグリズルならもうちょっとアグレッシブに走れたはず。
安全が保証されていないジェットコースターを楽しんで一息。
バイクを見ると、飛び散った泥で汚れている。でも、これはこれで格好いい。
いったん住宅地に出て、少し舗装路を移動。次の林道へ。
川沿いの緩い上り坂を進む。真冬の森林浴は寒いけど気持ちがいい。虫もいないし…
走りながらお喋りして、ライドリーダーの体力をジワジワ削っているうちに休憩ポイントに到着。
グレイル・グリズルを前にキャニオンジャパンの方に話を聞いたり、集合写真を撮ったり。
林道はこの先も続いているが、道がどんどん険しくなる上にスタート地点から離れていってしまうので、今回はUターンして下っていく。
下りは爽快そのもの。ただし、ガードレールとかは無いので十分マージンを取るように…
各自バラバラに、自分のペースで下る。メカニックスタッフがしんがりを守ってくれているのでパンクしても安心。
ライド中の写真はInsta360 Go2で撮影したもの動画のキャプチャ。画質が特別良いわけじゃないけど、こういう絵が手軽に撮れるのは良い。
林道ダウンヒルを楽しんだら、お酒の神様を祀る「松尾大社」で最後の休憩。
いい感じに疲れたので、甘いものを補給。こんがり焼けたみたらし団子をもぐもぐ。
ここからは、桂川沿いの平坦なグラベルを走ってキャニオンジャパンまで。
対岸にはそれなりに走りやすいサイクリングロードがあるのだが、少しでもグラベルがあればルートに組み込む。
日本でグラベルを楽しむには、わざわざ水たまりに飛び込むちびっことか、歩道の縁石の上を歩く小学生みたいなメンタリティが必要。
縁石歩きはまだ卒業できてない…
出発から3時間と少し。
あっという間に思えたが、距離27km 獲得標高370mのライドを終えてスタート地点に戻ってきた。
地図を見ると市街地から殆ど出ていないのだけど、竹林や林道を盛り込み、ちょっとした冒険気分を味わえる良いコースだった。
しかし、こんな試乗会に参加したら、グラベルバイク、欲しくなるよね…
ライド体験のプロモーション
自転車趣味というのは、重量が、剛性が、などとハードウェア面ばかり注目されがちだが、本当に大事なのは「どういう楽しみ方をするか」。
特に、グラベルバイクのような新ジャンルではソフト面のほうが重要になる。
…カスタムし尽くしたバイクを部屋で眺めるのを否定するわけじゃないけど。
直販ブランドのキャニオンはどうしてもモノを売るだけになりがちだからこそ、こういう試乗会に力を入れているのだろうか。
今回の試乗会は、キャニオンにとってはライド体験を提供する機会になったし、ユーザーにとっては実車に触れる機会になった。こういうイベントは、メーカー・ユーザー双方にとってとても意味のあるプロモーション活動だと思った。
次回開催があれば、目当てのサスペンションつきグリズルに乗ってみたいな。