パワートレーニングのため…というより、パワーメーター比較検証用にGarmin Vector Jを使用しているが、クランクに取り付けてからしばらくは測定値が安定せず、うまくパワーメーターの測定値比較を行えずにいた。そこで、誤差を減らす組み付け方を考え、その効果を確かめた。
Garmin Vectorの測定値が不安定
Garmin Vectorは取り付け後しばらくは測定値が不安定な印象があり、なにかの不具合かとも思ったのだが、どうやら取り付けに注意点があるらしい。
トラブルシューティング:Vectorパワーメーター数値の対処によると、パワーの測定値が異常と思われるときに確認する点は次の通り。
- クランク長設定を確認(デフォルト172.5mm)
- ペダルインストールアングルを確認
- ゼロ点校正を実施
- ペダルポッド(Vector,Vector 2)がクランクに当たってないことを確認
- ペダルの締め付けトルクを確認(34-40Nm:トルクレンチ使用)
トラブルの一番の原因は締め付けトルクで、きちんと締まっていない場合が多い。ペダル軸にパワーメーターを内蔵するVectorは六角レンチでの締め付けができないので、取り付けには40Nmに対応するトルクレンチに加え、15mm幅で薄型のクローフットレンチが必要。
こんな工具持ってる人のほうが珍しいので、Vector発売時はそこらじゅうでペダル締め付け不足問題が起こった。測定値がおかしいというクレームが相当数入ったのか、後継モデルのVector 2ではパークツール製の安っぽい工具が付属するようになった。
自転車のペダルに使える薄型15mmとなると、現実的な選択肢は先程挙げたKTCのCP1-15かパークツールのTWB-15に絞られる。
こんな感じで、マニュアル通りに取り付けるだけでもたいへん面倒くさいのだが、いろいろ試行錯誤するうちに、これだけでは不十分であることがわかった。
結論から言うと、以下の手順を行ってようやく測定値が安定する。
- 規定トルク(34-40Nm)でペダルを締め付ける
- 何度か全力スプリントを行い、ペダルの座りを安定させる
- トルクレンチでペダルの増締めを行う
パワーメーター組付けと測定パワー値の関係
この効果を確かめるため、通常の手順でペダルを組み付けた直後、ローラー台で測定テストを行ってみた。
例によってSaris H3のERGモードを使い、205Wで1分ほどのペダリングを行って
- Garmin Vector
- ペダリングモニタ PM910
- Saris H3
の平均値を記録した。この測定の合間に、スプリントをしたり、増締めを行ったりして、測定値への影響を検証した。
測定結果を以下に示す。
グラフが4組並んでいるが、左から順に
- ペダル組付け直後(40Nm)
- 数回のスプリント後
- さらに数回のスプリント+PM910のゼロ点校正後
- さらに数回のスプリント+Vectorのペダル増締め
の平均パワーを示している。
まず、1.ではVectorの測定値が明らかに大きいが、ダンシングで全力スプリントを数回挟んだ後の2.では他のパワーメーターと近い値に落ち着いている。
組み付け直後はペダル軸、ポッド、ペダルワッシャーの座りが悪く、きちんと測定できていなかったのが、スプリントで大きな力を入力することで、お互いぴったりと密着するようになったのではないかと予想している。
2.の後、PM910のゼロ点校正を実施(忘れていた…)。同時に、さらに数回のスプリントを行った。すると、Vectorの測定値も少し下がってしまった。ペダルの座りが出た結果、微妙に緩んだのではないかと思い、トルクレンチで再度増締めしたところ、僅かに締まった。
増締め後の4.では、またVectorの測定値が高くなっている。増締めとスプリントを何度か繰り返すことで測定値は一定値に安定していくはず。
改めて実験してみて、ペダルの締付け状況でこれだけ測定値が変わるのかと驚いた。
まとめ
Garmin Vectorを正しく組み付ける方法は以下の通り。
- トルクレンチと15mmのクローフットレンチを用意する
- 規定トルク(34-40Nm)でペダルを締め付ける
- 何度か全力スプリントを行い、ペダルの座りを安定させる
- トルクレンチでペダルの増締めを行う
- 初期設定(クランク長・アングル設定)を実施する
- ライドのたびにゼロ点をキャリブレーションする
「ペダル型パワーメーターは複数バイク間で使い回せるので便利」なんて売り文句を聞いた事があるが、とんでもない。こんなにめんどくさいパワーメーターは他にない。
Garmin Vectorは両足の独立測定タイプで、トルク分析も可能と高機能だが、パワートレーニングに使う時には組付けが正しくできているかどうか、十分に気をつけたい。