ガーミンウォッチの魅力のひとつがバッテリーライフの長さ。ライフログを記録したり、スマートフォンの通知を表示するスマートウォッチモードでは(モデルによるが)数日~2週間程度の駆動時間を誇る。
そんなガーミンウォッチが現在力を入れているのがソーラー充電機能「Dual Power」だ。太陽光で発電し、ただでさえ長い駆動時間をさらに延長することができる。
高価格帯の製品を中心にラインナップされるDual Power。
fenix 7S Sapphire Dual Power、Forerunner 955 Dual Powerと、ハイエンド機種を立て続けに購入した愚か者が、ソーラー充電にアップチャージを支払うに値するか考える。
画面に内蔵された2種類のソーラーパネル
Dual Powerモデルは、ディスプレイに2種類のソーラーパネルが内蔵されている。
Dual Powerのアイコンともいえるのが、ベゼルとディスプレイの隙間を埋めるように配置されたリング状のソーラーパネルだ。デッドスペースをうまく利用して発電システムを組み込んでいる。
ただ、直射日光が当たると、ソーラーパネル部があずき色に光って若干目障りだ。
また、肉眼ではわからないが、ディスプレイ面にも透明なソーラーパネル「Power Glass」が配置されている。発電効率は低いものの、ディスプレイ全面を覆うため、合計の発電量はリング状ソーラーパネルに匹敵するという。
なお視覚的に判断するポイントは画面端の「GARMIN」ロゴだ。(おそらくここに電極があるのだろう)
Power Glassは透明なソーラーパネルです。
Garmin
これまでは「ソーラーパネルは不透明である」ことが常識でしたが、小さなウォッチで集光面積を最大化するためには、全面にソーラーパネルを敷き詰める必要があります。
そこでGarminは、厚さ0.5mm未満のガラスパネルに太陽光伝導セルを組み込み、革新的な透明なソーラーパネルを開発しました。
見た目には透明で通常のガラスと見分けがつきませんが、太陽光で発電することができます。
Dual Power対応モデル一覧
2023年3月現在において、Dual Power対応の現行製品は以下の通り。全体的に高価格帯のモデルに採用されている。
fenix, Instinct, Forerunner, Descentについては、Dual Powerの有無を選択できる。
なお、AMOLED(有機EL)とDual Powerは同時に実装できないようで、EPIXや、春に発売予定のForerunner 965はソーラー充電非搭載となっている。
製品名 | 駆動時間 | 価格(税込) | 備考 | ||
fenix 7 | スマートウォッチモード:約18日間+約4日間* バッテリー節約モード:約57日間+約116日間* GPSモード:約57時間+約16時間** マルチGNSSモード:約40時間+約8時間* マルチGNSSマルチバンドモード:約23時間+約3時間** バッテリー最長モード:約136時間+約153時間** Expeditionモード:約40日間+約34日間* | \121,000 | 標準モデル(47mm) | ||
fenix 7S | スマートウォッチモード:約11日間+約3日間* バッテリー節約モード:約38日間+約49日間* GPSモード:約37時間+約9時間** マルチGNSSモード:約26時間+約4時間* マルチGNSSマルチバンドモード:約15時間+約1時間** バッテリー最長モード:約90時間+約72時間** Expeditionモード:約26日間+約17日間* | \121,000 | 小型モデル(42mm) 実機レビュー | ||
fenix 7X | スマートウォッチモード:約28日間+約9日間* バッテリー節約モード:約90日間+約1年間* GPSモード:約89時間+約33時間** マルチGNSSモード:約63時間+約14時間* マルチGNSSマルチバンドモード:約36時間+約5時間** バッテリー最長モード:約213時間+約365時間** Expeditionモード:約62日間+約77日間* | \137,500 | 大型モデル(51mm) | ||
Forerunner 955 | スマートウォッチモード: 約 15 日間+5 日間* GPSモード: 約 42 時間+7 時間** マルチGNSSマルチバンドモード: 約 20 時間+2 時間** Ultratracモード: 約 80 時間+30 時間 ** | \84,800 | 47mmケース | ||
Instinct 2 | スマートウォッチモード: 約28日間+無制限* バッテリー節約ウォッチモード: 約65日間+無制限* GPS+光学心拍計モード: 約30時間+18時間** バッテリー最長 GPS モード: 約70時間+300時間** Expedition モード: 約32日間+無制限 | \62,700 | モノクロ液晶 標準モデル(45mm) | ||
Instinct 2S | スマートウォッチモード: 約21日間+30日間* バッテリー節約ウォッチモード: 約50日間+無制限* GPS+光学心拍計モード: 約22時間+6時間** バッテリー最長 GPS モード: 約54時間+60時間** Expedition モード: 約25日間+80日間* | \59.400 | モノクロ液晶 小型モデル(40mm) | ||
Descent G1 | ダイビングモード: 約25 時間 スマートウォッチモード: 約21 日間+4ヵ月 * バッテリー節約ウォッチモード: 約48 日間+無制限* GPS: 約26 時間+13時間** バッテリー最長 GPS モード: 約56 時間+205時間** Expedition モード: 約27 日間+無制限* | \99,000 | ダイビング用 モノクロ液晶 | ||
Enduro 2 | スマートウォッチモード: 約34日間 + 約12日間* バッテリー節約ウォッチモード:約111日間 +約1年間* GPSモード: 約110時間 +約40時間** マルチGNSSモード: 約78時間 + 約18時間** マルチGNSSマルチバンドモード: 約68時間 + 約13時間** バッテリー最長モード: 約264時間 +約450時間** Expeditionモード: 約77日間 +約95日間* | \165,000 | fenix 7Xベース | ||
tactix 7 Pro | スマートウォッチモード: 約 28 日間+9 日間* バッテリー節約ウォッチモード: 約 90 日間+1年間* GPSモード: 約 89 時間+33 時間 ** マルチGNSSモード: 約 63 時間+14 時間* バッテリー最長モード: 約 213 時間+365 時間** Expeditionモード: 約 62 日間+77日間* | \170,500 | fenix 7Xベース |
*ソーラー充電は50,000ルクスの条件で1日3時間の屋外での終日着用を想定
**ソーラー充電は50,000ルクスの条件での使用を想定
ソーラー充電システム「Dual Power」の発電量
この記事を書いている時点で、fenix 7S Sapphire Dual Power、Forerunner 955 Dual Powerと、ソーラー充電対応機種を続けて購入し、あわせて3ヶ月ほど使用している。
「ソーラー充電」と聞いて、日光に照らすとモリモリバッテリーが回復するイメージを抱いていたが、何時間か屋外に出る程度ではバッテリー残量が増えている感覚はない。
そこで、「Dual Power」システムの発電量はどれほどか、スマートウォッチモードの駆動時間から計算してみた。
Forerunner 955 Dual Powerを例に、以下のスペック表を参考にしてバッテリー消費量と発電量を考察する。
スマートウォッチモード | 15日間+5日間* |
GPSモード | 42時間+7時間** |
マルチGNSSマルチバンドモード(高精度) | 20時間+2時間** |
UltraTracモード | 80時間+30時間** |
*ソーラー充電、50,000ルクスの条件で1日3時間の屋外での終日着用を想定
**ソーラー充電、50,000ルクスの条件での使用を想定
まず、バッテリー残量100%を駆動時間15日間で割って1日あたりのバッテリー消費量を計算する。
100÷15=6.67 [%/day]
ソーラー充電を毎日3時間行った場合、駆動時間は15+5=20日になるという。20日分のバッテリー消費量は
6.67×20=133.33 [%/day]
と計算される。つまり、33.33%分はソーラー発電で賄われたことになる。1時間あたりの発電量は
33.33÷(3×20)=0.56 [%/h]
となる。
単位を1時間あたりに揃えて、スマートウォッチモードでの消費量・発電量・充電量をまとめると次のようになる。
- バッテリー消費:-0.28 [%/h]
- ソーラ発電:0.56 [%/h]
- 明るい屋外での充電:0.56-0.28=0.28 [%/h]
同様の手順でGPS/マルチGNSSマルチバンド/UltraTracモードから発電量を計算すると、発電量は0.34~0.45 [%/h]となる。
以上より、机上の計算ではあるが、十分に明るい環境(50,000ルクス)では0.34~0.56 [%/h]ほどの発電量が見込める。
なお「照度50000ルクス」の目安として、晴れた日の屋外が40000~100000ルクス。曇りの屋外だと30000ルクス程度らしい。50000ルクス以上の明るさの場合、グラフ上では100%と表示されるが、実際は照度に応じて発電量が増えるそうだ。
屋内は明るい照明下でもせいぜい1000ルクス未満で、殆ど発電は行えない。
消費電力の少ないスマートウォッチモードでは僅かに充電することもできるが、基本的には「Dual Power」ソーラー充電は積極的に充電するというより、給電することでバッテリー消費を抑え、ガーミンウォッチの駆動時間を伸ばすシステムと捉えるべきだ。
ただし、例外的にInstinct 2 Dual Powerは、スマートウォッチモードの場合1日3時間のソーラー充電で無制限に稼動できる。
この機種はソーラーパネルの面積が広く発電量が多いことに加えて、消費電力が少ないモノクロ液晶を採用していることが理由だ。
パワーメーターにも対応しているため、
Dual Powerは「買い」か?
スマートウォッチモードはそもそも駆動時間が長く、1~4週間程度のバッテリーライフがある。そのため、数日おきの充電サイクルがソーラー充電で多少伸びた所で、使い勝手にはほとんど影響しない。
一方GPSモード(EdgeみたいなGPSサイコンとしての使い方)では、Forerunner 955の場合、42時間の駆動時間がプラス7時間されるが、曇りで発電量が半減したり、夜間は発電できないことを考えると、せいぜい2~3時間の延長だろう。
「バッテリー残量を心配する必要はありません」は流石に盛りすぎだ。
価格に目を向けるとForerunner 955のソーラー非搭載モデルが74800円(税込)に対して「Dual Power」は84800円(税込)。
あくまでも個人的な意見だが、fenix 7S Sapphire Dual Power、Forerunner 955 Dual Powerと2機種買った上で、ソーラー充電のために1万円アップチャージする値打ちはないと感じている。
ただし充電無しで運用できるInstinct2はDual Power推奨
もちろん、最上位モデルの所有感を楽しみたかったり、ディスプレイを囲むソーラーリングに魅力を感じるならば、Dual Powerを選ぶことに何ら問題はない。
ただし、このリング状ソーラーパネル、日光や照明を反射して割と目障りだ。