【レビュー】マキタ 10.8V 充電式空気入れ MP100DZ ~自宅でもレース会場でも。継ぎ足し充填に便利な高圧対応の電動ポンプ~

MAKITA MP100DSH / MP100DZ

電動工具メーカー マキタの電動空気入れ。最大圧力8.3barで、指定した空気圧で自動停止する。
動作音の大きさが難点だが、コンパクトで軽量(1.1kg)なので、継ぎ足し充填やレース会場での空気入れに便利。

評価 ★★★★☆

購入価格 6900円(バッテリー・充電器無しのモデル)

長所 -Pros-

  • 軽くコンパクト、収納も持ち運びもしやすい
  • 不安定な姿勢でも空気を入れられる
  • フロアポンプと違って連続作業でも疲れない

短所 -Cons-

  • 動作音が大きい
  • 空気圧設定時のボタン連打が面倒
  • 付属のポンプヘッドは交換前提

軽量コンパクトな電動空気入れ

マキタの電動空気入れ MP100Dを一言で表すと、バッテリー駆動の小型のコンプレッサー。
重量1.1kgで片手で楽に持て、大きさもコンパクトだが最高圧力は830kPa(8.3bar)と、ロードバイクの高圧タイヤも対応する。
自転車に限らず、自動車、バイク、浮き輪やボールへの使用が想定されている。

MAKITA MP100D

MP100DSHは10.8Vのリチウムイオンバッテリーと充電器付きMP100DZはバッテリーが付属しない

コンパクトで軽量

本体サイズは235×74×173mmで、重量はBL1015バッテリー込みで1.1kg
片手で持てるし、本体も四角いので収納しやすい。

長いフロアポンプと違って、車に積みやすいのもポイント。
私の車はトランクが狭く、フロアポンプを積むと他の物が入らなくなるので、このコンパクトさはかなり重宝する。

ホース長は650mmと短いので、大抵の場合本体は手に持って作業する形になるが、本体が軽いので苦にならない。
なお、本体側面には保管時にホースが遊ばないよう固定しておけるクリップがついているが、挟んでいるだけなので外れやすい。

ホースを挟んで固定するクリップ

今までは玄関の隅にフロアポンプを置いており、時折家族の目が気になっていたが、マキタMP100Dは下駄箱に入るので玄関がスッキリした。
結果として、現在自分の部屋にはフロアポンプが2つ鎮座しているが…

設定空気圧で自動停止

本体上面の液晶画面で充填空気圧の設定が可能(単位はPsi/bar/kPa)で、指定した空気圧になると自動停止する。

空気圧の設定範囲は0.2~8.3barで、ロードバイクのタイヤにも十分対応できる。

ただし、自動停止はあくまでも目安と思ったほうが良い。チューブレスタイヤ等で、バルブコアがシーラントで詰まりかけている時などは、表示より低い空気圧で自動停止してしまうことがある。
正確な空気圧にするなら、高めに入れてからエアゲージで合わせるべき。

使用方法

電源オン

本体側面の電源ボタンを押すと正面のLEDライトと液晶のバックライトが点灯し、電源オン。

充填空気圧の設定

液晶画面脇の+-ボタンで充填空気圧を設定する。ここで設定した数値に達するとコンプレッサーが停止するようになっている。

ボタンで数値を変更し、数秒間放置すると確定されるが、barの場合0.05bar単位での調整で、長押ししても早送り出来ない
2気圧前後のシクロクロスやMTBと7気圧付近のロードバイクを言ったり来たりするときは操作が面倒くさい。

液晶画面脇のPSI/bar/kPaボタンで表示単位を変更できる。

空気入れ

バルブヘッドをバルブに取り付け、MP100Dの引き金を引くとコンプレッサーが作動し空気が充填される。
引き金には(安全のためか)ロック機構は無いが、軽いので長時間握っていても指が疲れない。

充填中は現在の空気圧が液晶画面に表示され、指定した空気圧になればコンプレッサーが自動停止する。

なお、メーカーが定める連続使用時間は5分となっているほか、保護機構が組み込まれており本体温度が高温になると自動停止するらしいが、ホイール1本では温度上昇は感じられなかった。
小型のBL1015バッテリーで、ロードタイヤ20本分の空気入れが可能らしい。

作動音が大きい

本品の欠点は作動音の大きさ。電動コンプレッサーを回しているので、結構大きな音がする。

体感ではハイパワーな掃除機くらい。夜間の集合住宅で使うのはアウトだと思う。

音量や音質は動画を参考にしてほしい。

電動工具用のバッテリーを使用

マキタ製品で使い回せるバッテリー

マキタの充電式工具は、カートリッジ式のバッテリーを取り付けて使用するようになっているが、同じ電圧のシリーズ同士では互換性をもたせてある。
既に10.8Vの電動ドリルや掃除機を持っている人は、MP100Dの本体のみ(MP100DZ)を購入するだけで良い。

ハイパワーな18Vバッテリーでマキタ製品を揃えている人向けに、姉妹モデルのMP180Dもある。

バッテリーが高価

バッテリーを使いまわしてコストを抑えられそうに感じるのだが、バッテリー自体が高価なことがネック。

電動ドリル・ドライバーのパワーに対応した高性能なバッテリーなので、コストも相応にかかっている。

瞬発力の高さが必要な電動工具では、リチウムイオンセルの限界ギリギリの高電流で放電され、一方、充電も非常に高い電流で行われる。
そのため、純正バッテリーは高品質なセルを使用するだけではなく、セルごとの電圧管理やバッテリーの温度管理を行っている

そのため、本体のみのMP100DZが7000円程度なのに対して、バッテリー・充電器が付属するMP100DSHは14000円もする。

互換バッテリーには注意

マキタ純正バッテリーは高価だが、Amazonを見ると半額~数分の1 の価格で互換バッテリーが売られている。

しかし互換バッテリーはコストダウンのためセルの性能が低く、安全対策も十分に行われていない場合がある。
公称容量より少ないだとか、パワーが低いというくらいならまだマシで、充電中に発火して工場が全焼…というニュースも見かけた。

10.8V 1.5AhのBL1015バッテリー6000円弱するので互換バッテリーに手を出したくなるのはわかるが、家を燃やすリスクを考えて判断したい。

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マキタ(Makita)

バルブヘッドは交換前提

付属のバルブヘッドは米式しか対応しておらず、スポーツバイクで一般的な仏式(フレンチ)バルブで使用するにはバルブアダプタ(付属)をいちいちねじ込む必要がある。

付属のポンプヘッドは速攻でクビに…

そのため、自転車用に購入した人がまず最初にすべきことは、ポンプヘッドの交換

ホース外装は保護のため編まれているが、ニッパーで切ると内部には外径10mmのゴムホースが通っている。
ほつれ止めのため軽くライターで炙ってから、適当なポンプヘッドを装着する。

オススメはなんといってもヒラメだが、米式バルブのブロンプトンやチューブレスタンクでも使うため、今回は米仏対応のパナレーサーのポンプヘッドを移植した。

米式・仏式バルブに対応するポンプヘッドを移植

フロアポンプのほうが速い

完全に空気を抜いた状態のロードタイヤに空気を入れ、タイムを測定してみた。

ホイールはフルクラム レーシング1(C15)、タイヤは700x26CのPanaracer Race C Evo4で、チューブはRAirを使用。
バルブコアを押して、空気の抜ける音がしなくなったところからスタート、6.5barを目標にする。

MP100Dでは、引き金を引いてから6.5barで自動停止するまで41秒だった。

一方、フロアポンプ(TOPEAK JoeBlow SPORT III)の場合、ポンピング28回、約30秒で6.5barになった。
1秒1回ペースでポンピングしたが、急げばもっと短時間で入ると思う。

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トピーク(TOPEAK)
使用ポンプ0→6.5barまでの所要時間
フロアポンプ(TOPEAK製)約30秒(28回)
電動ポンプ(MP100D)約41秒

つまり、スピードで言えば、フロアポンプのほうが速い

継ぎ足し充填に便利

空気を入れるスピードこそフロアポンプより遅いが、改めて思い返すとゼロから空気を入れるシチュエーションというのは少ない。

ロードバイクのエア継ぎ足しに

7気圧程度の高圧を入れる(…というのも過去の話になりつつあるが)ロードバイク。ブチルチューブでも、タイヤの空気圧は1週間で1~1.5barくらいは下がる。
通勤・通学などで毎日乗っている場合は気づきにくいが、数日おきに空気を継ぎ足す必要がある。

空気を「継ぎ足す」場合、加圧する量はせいぜい1~2気圧くらい。ポンピングの動作自体は2~3回で済む。

こういう時はMP100Dが便利で、フロアポンプと違い無理な姿勢でも作業できるので、例えば、バイクラックに引っ掛けたまま空気を入れることもできる。

この状態で空気を入れられる

シクロクロスのレース会場で

シクロクロスのチューブラータイヤに使われるラテックスチューブは、スローパンクしてるんじゃないか?と思うほどエア抜けが速い。
一晩で空気圧が下がってしまうため、前日の試走でベストな空気圧に合わせても、レース当日は改めて空気圧を調整しなければならない。

そしてシクロクロスは機材が多い。私の場合はバイクが2台+スペアホイールでタイヤは合計6本。空気入れだけでひと仕事だ。

シクロクロスバイク2台とスペアホイールの空気圧調整

レース会場で6本のホイールに空気をちょっとずつ継ぎ足す時などは、フロアポンプよりずっと効率的。
車のトランクからMP100Dをサッと出して、適当に立て掛けたホイールに順番に空気を入れられる。

なお、シーラントが詰まりかけたバルブでは本体の空気圧設定がうまく機能しないため、使用空気圧より少し高めに設定し、エアゲージで調整している。

チューブレスタンクとの相性抜群

チューブレスタイヤのビードを上げる時、一気にエアを流し込むためにエアタンクを使用することがある。
高圧タンクに予め空気を溜め、バルブ操作でタイヤに流し込む仕組みだが、この加圧作業をフロアポンプで行うととても疲れる。

しかも、タイヤとリムの相性によっては一発で上がらないこともあり、何度も繰り返しているとポンピングだけでヘトヘトになる。

こういう重労働こそ機械に任せよう
MP100Dをつないで、タンクの圧力が十分上がったらチューブレスタイヤと接続。
もしビード上げに失敗しても、やり直しが苦にならない。

まとめ:あると楽になるアイテム

正直、ここまで便利だと思っていなかった。
MP100Dを買ってから、フロアポンプを使ってロードバイクに空気を継ぎ足したり、シクロクロスのレースホイールに空気入れするのが面倒だと思うようになった。
高価な空気入れだが、頻繁に乗る人にとってはあると便利な、空気入れの手間が楽になるアイテムといえる。

ただ、作動音の大きさだけは気になる。もっと静かなら使いやすいのだが…