パナレーサー ニセコグラベル2023 オータムライド ~昨年から大幅にブラッシュアップ 極上のグラベルを走り尽くす国内最高のグラベルライドイベント~

北海道 ニセコエリアで行われる日本最大のグラベルイベント「Panaracer Niseko Gravel Autumn Ride 2023」に参加。 秋の北海道で、最高の天気のもと、最高のグラベルを満喫してきた。
運営も昨年から大幅にブラッシュアップされ、文句の付け所のないコース設計とホスピタリティあふれるエイドで、スタートからゴールまでライドを楽しめるイベントに育ったと感じた。

日本最大のグラベルライドイベント Panaracer Niseko Gravel

グラベルバイクが入ってきたばかりの頃は「舗装路ばかりなのに、どこを走るんだ」なんて言われていたが、オフロード系のサイクリストはもちろん、ロード系の人の間でもグラベルライドはじわじわ定着しつつある。
グラベルを走るライドイベントや、レースも開催されるようになってきた。

そして、現在国内を代表するグラベルライドイベントといえるのが、パナレーサー ニセコグラベルだ。
北海道のスキーリゾート地、ニセコ町を中心に行われるこのイベントでは、広大な景色のなか、極上のグラベルを楽しむことができる。

パナレーサー ニセコグラベル

大規模イベントとして開催されるようになった2021年秋以降は、

  • スプリングライド(5月)
  • オータムライド(9月)

と、年2回開催されている。

プレイベント的に行われるスプリングライドは距離が短く獲得標高も少なめ

オータムライドは、土日を跨いだ大規模イベントとして開催される。会場には物販・展示ブースが立ち並び、当日は100km以上のビッグライドが楽しめる。

2023年のオータムライドは、実力や楽しみ方に合わせて3種類のコースから選択できる。

ニセコグラベル オータムライド 2023

  • ミドルコース:距離60km 獲得標高1083m グラベル率42%
  • ロングコース:距離89.9km 獲得標高1557m グラベル率51%
  • エクストラロングコース:距離122.5km 獲得標高2366m グラベル率58%

どのコースも半分ほどグラベルで、一般公道で行われるイベントとしては屈指のグラベル率だ。

北海道には、日々の暮らしに使われ、きちんと維持管理されている生きたグラベル=クルマが通れる未舗装路 がそこらじゅうにある。というのも、北海道の冬は厳しく、冬季は積雪・凍結するため、アスファルトで舗装するよりも、未舗装の道として維持するほうがコストや手間的に有利なのだそうだ。
林道はもちろん、農道や作業道など、交通量が多い道から少し逸れれば、そこには極上のグラベルが走っている。

そんな土地で、特に厳選されたグラベルを走る3コース、どれを選んでも最高のグラベルライドが約束されている。

なお、距離だけ見ると大したことないが、路面抵抗の大きいグラベルは体力を使うロードサイクリングと比べると、グラベルライドの疲労感は距離あたり1.5~2倍くらいだ。
おそらく、大多数のサイクリストはロングコースで十分満足できると思う。

エクストラロングコースは、週末はもちろん平日もトレーニングするような、コアなサイクリスト向けだ。
別にトレーニングしに行くわけじゃないので、基本はロングコース。脚に自信が無いならミドルコース、くらいのほうが、余裕を持ってライドを楽しめると思う。

さて、私は今年も「せっかくだから大盛り」理論でエクストラロングコースにエントリーした。
昨年(2022秋)はエクストラロングでだいぶ辛い思いをしたのだが、今年は最後まで楽しんで走れるだろうか。

関西シクロクロス 総合ランカー選抜メンバー

今回は、関西シクロクロスで総合ランキングを競っているレース仲間3名で走る。
これは偶然なのだが、全員が2022-23シーズンの関西シクロクロス 総合表彰対象者だ。

フィジカル・テクニックともに文句なし。レースで争う中で、お互いの走り方も熟知しているこの上ないチームだ。
ただし、調子に乗って崖から飛び出さないかだけが心配だ。

すくみず

2022-23年 関西CXシーズンランキング5位

すくみずログ管理人。夜型で朝弱い(:3[___]
今回スタート時刻が6時半だが、果たして起きれるのか。

YouTubeチャンネルの登録者数の割には「見てます!」と声を掛けられることが増えた。
今回、キャノンデール・ジャパンの社長に言われたのは流石に恐縮した。

バイクはCannondale Topstone Carbon Lefty。タイヤはPanaracer Gravelking SK 45c/SS 45c
前後サスペンションにワイドなタイヤ。グラベルをブッ飛ばして楽しむためのバイクだ。

村田さん

2022-23年 関西CXシーズンランキング2位

レースでは大体先頭パックにいる人。
普段は穏やかな雰囲気だが、バイクに乗ると豹変する。

今年のスプリングライドにも参加したが、雨で寒いからといってペースを上げるものだから、大変辛い思いをした。

バイクはFocusのシクロクロス Mares CX。タイヤはPanaracer Gravelking 38cスリック。
前回は32cスリックでパンクしていたので、太くしたようだ。スリックはどうかしてると思うけど。

笛木くん

2022-23年 関西CXシーズンランキング6位

大学の後輩。在学期間は被っていないのだが、彼を見ていると伝統が受け継がれていることを実感する。
シクロクロスレースではまだ私が優勢…と思っているが、たまに負ける。もう少し経験を積んだらヤバいかもしれない。

バイクはSalsaのスチールバイク。タイヤはWTBのNano/Raddler。
格安パーツと拾い物で組まれているらしい。

なお奥様はミドルコースにソロ参加して完走していた。

3泊4日で満喫

本州からニセコグラベルに参加するなら、土日に前泊と後泊をプラスした3泊4日の行程を強くオススメしたい。

コースにもよるが、ライドを走り終えると夕方。不慮のトラブルで遅くなる可能性もある。
ここから時間に追われつつ新千歳空港に移動(クルマで2時間)して、慌ただしく飛行機に乗るのは相当なストレスだ。

昨年のニセコグラベルオータムライドでは、チームのひとりが仕事の都合で日曜の飛行機で帰る必要があり、そういう状況になったのだが、フライトの時間を気にしながらグラベルライドする経験は、できればもうしたくないw

最低限、後泊は組み込むべきと思う。

休みを取るのが厳しくなってくるが、個人的には前泊もしたい。
現地の滞在時間が増えることで、道中の観光スポットに立ち寄ったり、軽くサイクリングを楽しむこともできるし、なにより安くて美味しい北海道の食べ物をより口にできる。
これはレース遠征ではなく旅行だ。せっかく北海道まで行くのだから、めいっぱい楽しみたい。

実はコスト的にも悪くない選択で、平日は航空券が安い分、差額で宿代が出たりする。…ついつい食べ過ぎるので食費は掛かるけど。

そんなわけで、今回も金曜日に北海道へ。
ANAを利用し、バイクはいつものようにコクーン輪行

午後に新千歳空港に着いて、そこから札幌まで自走。大阪が35度の熱気に包まれる中、北海道は昼でも20度少々で快適そのもの。
飛行機の時間が遅かったので途中からナイトランになってしまったが、道中で海鮮丼を食べつつ、あっという間に50kmを走りきった。

ゲストハウスに一泊して、翌朝他のメンバーと合流し、レンタカーでニセコへ。
会場のニセコアンヌプリ国際スキー場まで、札幌から2時間ほどドライブした。

前日から盛り上がる会場

オータムライドは土日をまたいだイベントとして開催される。ライド前日の土曜日も会場は賑わっていた。物販や展示、出展メーカー主催の軽いライドイベントが行われる。飲食ブースもいくつか並び、ちょっとしたお祭り状態だ。

メインスポンサーであるパナレーサーブースでは、タイヤやチューブはもちろん、グッズも販売。

キャニオンブースには、未発表の「新型」も。アンバウンドグラベルで優勝したニューバイクを間近で見ることができた。

キャノンデールでは無料でコーヒーが振る舞われるなど、出展者も一緒になって楽しんでいる印象だった。

ところで、前日最大の問題は夕飯だ。ホテルに食事がついている場合は良いが、そうでないなら外食し行くことになると思う。
近隣で最も大きい町は倶知安(くっちゃん)で、ここには飲食店が一通り揃っているのだが、
スキーリゾートの近くとはいえ、イベントで人が集まると、飲食店のキャパシティは簡単にオーバーする

飛び込みで入るのは難しいので、できるだけ早いうちに予約しておくのがオススメだ。

今回は何件か電話して、居酒屋を確保した。
「満席なので食事の提供が遅れるかもしれない」と言われ、電話口でそのまま料理を注文するという斬新なオペレーションだったが、
おかげで入店後それほど待たずに食事にありつけた。追加注文する頃にはピークを過ぎていてそれほど待たずとも料理が来たし。

安い多い美味いの3点が揃っていたので、またお世話になるかもしれない。(もっとも、北海道の飯はだいたい安いし、だいたい多いし、だいたい美味い)

120kmの極上グラベルライド

120kmを走るエクストラロングコースのスタートは6時30分。
昨年は8時スタートだったが、タイムオーバーで大量のDNFを出した反省か、今年のスタート時刻は大幅に繰り上げられた。
朝が弱い私にとってはここが最大の峠だ。

5時頃にもぞもぞと起きて、朝食代わりのエナジージェルを吸い、会場へ。

この日の予想最低気温は6度。寒さに慣れていないのでどうなることかと震えていたが、太陽が出ていたおかげで思ったほど寒くはなかった。それでも気温8度。
ほぼ亜熱帯気候で暮らしていた体にとっては久々の感覚だ。

バイクを下ろして、補給食を持って…と準備していたらもうスタート直前。間に合ったのか、間に合ってないのか定かではないタイミングで走り出した。

今年のエクストラロングコースは、8つのグラベル区間を舗装路でつなぐ、全長122.5km 獲得標高2366mの行程。
こういうグラベルツーリング自体は一般的だが、そこは北海道、スケールが違う。全長に対するグラベル率はなんと58%で、半分以上が未舗装路だ。

スタートから5kmも走ると、最初のグラベルに入る。
去年も1本目になっていたこのコースは高低差が少ない平坦なグラベル。よく整備された路面を踏みながらウォーミングアップ。

しかし、いいペースで走るグループに追いついたと思ったら村田さんが猛然とペースアップ。終盤はほとんどVO2MAXトレーニングだった。体は十分に温まった。

一瞬舗装路に出て、すぐに2本目のグラベルに突入。

ここは後半区間が急勾配の下りで、タイトなコーナーが続く。
スリックタイヤの村田さんが速くて、時折離されそうになる。今回のチーム、上りよりもむしろ下りに要注意だ。

最後のほうは握力が無くなってきたが、どうにか無事に下り終えると川沿いの舗装路。
さっきの感想を話し合いながら走っていると、程なく最初のエイドへ。

第1エイドのせせらぎ公園には一番乗り。走行距離は18kmほどでまだまだ元気だが、先を急ぐわけでもないのでゆっくり休んでいく。
補給していると続々と参加者が到着し、賑わってくる。

スタート後に築いたリードを帳消しにして、借金まで背負ってから出発。

ほどなく路面がアスファルトから砂利に変わる。2本目のグラベルは、台地状のプロフィール。キャノンデール・ジャパン御一行様にジョインし、話しながら登っていく。

勾配がなくなると、社内のツートップ、カズさん・成海さんがペースアップ。すかさず追随し、しばしのセッションを楽しむ。2人とも速い!
6kmのグラベルをあっという間に走りきった。

舗装路に出て、上がりきったテンションと心拍数を落ち着ける。次に待ち受けるのは今回最長の21km 獲得標高は650mに達するロンググラベル。

グラベルに入った時には走りにくいくらいの人数が密集していたが、勾配が増すにつれて人が少なくなっていく。
しかし、脚が揃った我々関クロチームはグラベルをゴリゴリ登っていく。

アスファルトが土に還りかけている、ひときわ厳しい急坂を登りきったら視界が開けた。キャノンデールの私設エイドだ。
コーラやあんパンを振る舞っており、一休みする参加者で賑わっている。

そして、奥には黄色い「グラベルソファ」が鎮座している。

もともとはアメリカのグラベルレースで始まった、Salsaのプロモーションだったというが、今ではグラベルレースの自由な雰囲気を体現するアイコンになっている。

そんなグラベルソファをニセコに再現するため、前日こんな山奥にソファーを運び、設置していた姿を想像すると笑えてくる。

もちろん記念撮影。いつも夕飯後寝落ちしてる姿勢でパシャリ。(¦3[▓▓]

長い上り坂で曇ってきたメンタルをリフレッシュしたら、再びバイクに跨る。
ここからは山肌に沿って上り下りしながらトラバース。途中、遠くに海が見えた。

下り切ったら第2エイドのらんこし・ふるさとの丘。ここまでの走行距離は56km。ちょうど全行程の半分くらいだ。

ポイント通過のチェックを済ませると、後半戦に備えて大休止。いやエイドのためにがっつり休んでいるんだけれど。
このエイドのご当地補給食は、ホクホクのじゃがバターとプチトマト。今年は食べ物が充実していて満足度が高い。

エイドを出ると19kmのロンググラベル。距離こそ長いが、先程のグラベルに比べるとアップダウンが多少マシ。

前半はアップダウンを繰り返しつつ標高を稼ぐ。こういうインターバルトレーニング的なプロフィールだと、ついペダルに力が入る。
後半は下り基調。ペダリングしつつ駆け下りる。

下り切って、5kmほど舗装路を走るとメロンが待つ第3エイド。
一刻も早くたどり着くべく、先頭に出て全引き。エアロポジションに追い風も相まって、40km/hオーバーの弾丸列車だ。
リヤにセミスリックのグラベルキングSSを履いてきて正解だった。駆動輪もSKだとこうはいかないだろう。
「もうギヤが無い」という弱音が聞こえた気がしたが、42×10Tをブン回して第3エイドに着弾した。

広い駐車場を利用した第3エイドは、3コースすべての通過ポイントになっているため人が多い。
特に、エクストラロングコース参加者にとっては疲れが溜まってくる頃。ここでゆっくり休憩するグループも多いのだろう。
我々も(また)大休止を取ることにする。

道中ブッ飛ばしてエイドでダベる、ウサギとカメの寓話で言うところのウサギさんだが、
我々はただスピードを出したいだけで、早くゴールしたいわけではない。なので、これでいいのだ。

地元蘭越町産の赤肉メロンは絶品だった。糖分が染み渡る。
腹も減ってきたので、でっかいおにぎりもいただく。繰り返すが、今年のニセコグラベルは、エイドの食べ物が充実しているので幸せ度が高い。

ここからゴールまで40kmほど残っているが、難所はすでにやっつけたので気分的には楽だ。

再び走り出して、まずは短い河川敷グラベルで腹ごなし。

次のグラベルはぐるっとループするような形だ。

山を登っていくと突然森がなくなり、視界が開ける。
ここは荒れた森の再生のためいったん樹木を伐採しており、苗が植えられている。50年ほど後には森の姿を取り戻すという。

最後はまっすぐに直滑降で、今まで稼いだ高度を一気に消化する。ブレーキを離すとどんどんスピードが乗る。
フルサスペンションに45cタイヤを履いたバイクはまだ余裕を持っていたが、人間の限界が先に来た。目が追いつかない。実にスリリングだった。

クールダウンしながら舗装路を進むとすぐに第4エイドの富岡克雪センター。今回のライドで最後の休憩だ。
ここではぶどうを頂く。疲れた体に甘味と酸味が染みる。
どうぞどうぞと勧められるのでなんどもおかわりしてしまった。

ここでは、パナレーサーブースが出ていてメカニックサポートを行っていた。参加者と同様、ここまでのライドでダメージを負ったバイクも少なくない。
ゴールまであと20kmを走り切るため、整備や調整をしている人の姿もあった。

さて、残る行程は舗装路主体。グラベルばかりに注目しがちだが、舗装路のサイクリングも実に気持ちがいい。
昨年のライドでは、だいぶ参っていた頃だが、今年は全然余裕が違う。
コース設計が良くなり、後半ハードな上りがなくなったのと、エイドの間隔が狭くなり、しかもホスピタリティが向上していたことによるものだろう。

そして最後のグラベルへアプローチ。
ここはスタート直後、最初に走った始まりのグラベル。ライドの最後ではここを逆走するのだ。

平坦なコースプロフィールのため、どちら向きに走っても楽しめるのだ。
チャレンジングな上りもスリリングな下りも無いが、心地よい。ジャリジャリというロードノイズに名残惜しさを感じながら走りきった。

最後は会場のニセコアンヌプリ国際スキー場まで舗装路を上る。
上りゴールは体力的には辛いが、やりきった感がある。

ちょっとだけもがいてゲートをくぐった。今日は良いライドだった。

今回の走行データは以下の通り。

ニセコグラベル オータムライド 2023

  • 走行距離 122km
  • 走行時間 5時間26分
  • コースタイム 7時間59分
  • 獲得標高 2561m
  • 平均時速 22.4km/h
  • NP 232W
  • 295TSS
  • 平均気温 18度

会場に戻った時刻は14時30分。スタートが6時半だったので、ちょうど8時間。ただし走行時間は5時間30分だ。
誰一人パンクしていないのに、2時間半も止まっていたのか…

そのかわり、走行ペースは異常に速い。多分このデータ、ほとんどの人の参考にならない。

動画

走るたびに良くなっていくニセコグラベル

私は昨年(2022)もニセコグラベル オータムライドに参加し、エクストラロングコースを完走している。昨年はコース設定も時間関門もハードで、完走率は20%程度だった。
シクロクロスのC1・C2選手でのチームで、関門ギリギリゴールだったくらいだ。

その時のライドレポートで、そこで私はこう書いている。

ロケーションについては文句の付け所がなかった。広大な景色、スムーズなグラベル、どれをとっても本州で経験することは難しい。そんな極上のコースだった。

グラベルロードを楽しむフィールドとして、これ以上のものは無いと思う。

その上で、エクストラロングコースは距離が長過ぎると感じた。
わざわざ長いコースを選んでおいて「長すぎる」とは何事か、となるのだが、ニセコグラベルは耐久レースではなくファンライドイベントだ。
おいしい料理も、食べきれない量を無理に食べたらつらい思い出に変わってしまう。第3チェックポイントを過ぎてからは、景色にも飽きてしまい、疲労も手伝って修行感が漂っていた。

(中略)

コース設計やチェックポイント配置には制約も多いとは思うが、後半にハードな上りがあること、チェックポイント間が35kmもあった点も要改善だと思う。

まだ発展途上のニセコグラベル。他にもコースタイムの設定など、気になる点はいくつかあった。しかし「せっかく北海道まで来たのだから、グラベルをたくさん走らせてあげたい」という主催者の思いは伝わってきた

ニセコグラベル2022 オータムライド ③ライド当日編

実は今年は、ニセコグラベル前にはあまりワクワク感が無かった。

「楽しいのは最初だけ。去年と同じ場所で、同じグラベルを走るんだろう」とか、「後半は淡々と距離を消化するんだろう」とか。結構冷めていたといっても良い。

スタート時刻が早朝6時半だったのもテンションが上がらなかった一因だが。

だが、ニセコグラベルは昨年の問題点をしっかり認識し、ブラッシュアップしてきた。
昨年と今年。確かに同じような場所で、同じようなグラベルを走っているのだが、受けた印象は大きく異なった。

ライドレポート中でも少し触れたが、改善点は次の2点だ。

  • コース設計とエイドの配置
  • エイドのホスピタリティ

昨年のコースは、115kmで獲得標高2300m。距離と獲得標高は今年よりやや少ない。
だが、疲労が溜まってくるライド後半にグラベルの長い登り区間があり、一気に体力を奪われた。
しかも、ここではエイド間隔が35kmも離れていたため、身体的、精神的に折れてしまい、残る行程が修行じみたものになってしまった。

エイド自体はコースに4箇所あったがチェックポイントとしての側面が強く、1stエイドこそメロンを口にできたが、あとは水分と栄養を補給する場所、といった雰囲気で味気なかった。

一方今年は、20km級のロンググラベルが2つあったものの、いずれもコース前~中盤に配置疲れてくる後半ほどイージーになるようなコース設計だ。
122kmに対してエイドは5箇所(キャノンデールエイド含む)。しかも、これらはほぼ等間隔、20kmごとに配置されている。

いくら「グラベル天国」の北海道であっても、走りやすいグラベルを繋ぎつつ、エイドステーションとして使用できる施設をルートに組み込むのは並大抵のことではない
とにかくコース設計とエイドの配置については、非の打ち所がない完成度だった。

エイドステーションのホスピタリティも大幅に向上して、メロンをはじめ、じゃがバターやぶどう等、ご当地グルメを味わいながら走ることができた。
ニセコグラベルはレースでも修行でもなく、ファンライドイベントだ。地元の美味しいものを食べながら楽しく走りたい。

エイドの食べ物は種類、量ともに十分だったため、(昨年の経験から)多めに持参した補給食にはあまり手を付けなかった。

ライドイベントというのは、「ハード」と「ソフト」どちらも欠けてはならない

広大な土地、極上のグラベル、(夏場は)快適な気候といった、優れた「ハード」を持つニセコの地ではあるが、正直イベント運営という「ソフト」面では、少々荒削りな面も感じていた。
しかし、スプリングライド・オータムライドという年2回のイベントを行いながら急速にブラッシュアップされたことで、ニセコグラベルは万人に勧められる、魅力的なイベントに育ったと実感した。

グラベルライドに少しでも興味があるなら、一度はニセコグラベルに行ってみてほしい。絶対に後悔しないことを保証する。