ニセコグラベル2022 オータムライド ①準備編 ~遠征計画とバイクのセットアップ、レンタカー手配など~

北海道には、生活に使われている「生きた」グラベルが沢山ある。「ニセコグラベル2022 オータムライド」は、そんな北海道の極上グラベルを走るライドイベント。
最長コースでは距離115km 獲得標高2200mに及ぶが、その半分がグラベル。本州ではなかなか味わえない、ホンモノのグラベルライドを味わってきた。

3泊4日で満喫した、少し遅めの夏休み。全3回で収まらなかったので全4回でお送りするライドレポート第1回は、参加メンバーと遠征計画、バイクのセットアップ、現地レンタカーの手配といった準備についてお話しする。

グラベル天国で極上のグラベルライドを

太いタイヤを履いたグラベルロードバイクで未舗装路を走る「グラベルライド」の熱は年々高まっている。
北米でグラベルブームが始まった頃は「道路状況が良い日本でグラベルライドは流行らない」なんて言われたけど、今ではすっかり、自転車遊びのひとつのジャンルとして定着しつつある。

私も、昨年(2021年)夏にキャニオン グレイルを購入し、大阪南部の林道を中心に、日常的にグラベルライドを楽しんでいる。

とはいえ、都市近郊でアクセスできるグラベルは距離が短く、堆積物や降雨で荒れているところも多い。
それこそ首都圏では、身近な未舗装路は川沿いの遊歩道くらいだったりする。

そんなグラベル難民はもちろん、普段からグラベルを走り回っている人も大満足できるライドイベントが、「ニセコグラベル」。

広大な北海道には、日々の暮らしに使われ、きちんと維持管理されている「生きた」グラベルがそこらじゅうにある。

プレイベント的に5月に開催されたニセコグラベル スプリングライドに参加し、すっかり北海道グラベルの虜になってしまった私。
より大規模に行われるオータムライドのエントリーが始まると、すぐに参加を決めた。

Panaracer Niseko Gravel 2022 Autumn Ride

2022年9月4日に行われるパナレーサー ニセコグラベル2022 オータムライド

冠スポンサーの自転車タイヤメーカー パナレーサーはグラベルライド向けタイヤ「グラベルキング」シリーズを幅広いサイズで展開しており、「タイヤはとりあえずグラベルキング」と言われるほどのスタンダードになっている。

走行エリアはニセコ町と隣の蘭越町。「ニセコ」はスキーリゾートとして再開発されているが、その他大部分は農村部。
周囲を山に囲まれた盆地では大規模な稲作・畑作が行われ「これぞ北海道」という広大な景色が広がっている。
そして「山」には極上のグラベルが無数に走っている。

今回、コースは4種類用意され、初心者から熱心なグラベルフリークまで楽しめるようになっている。
ロング・エクストラロングコースは半分がグラベルというところに、北海道のスケールを感じる。

コース距離獲得標高グラベル率スタート時刻
ショートコース41km780m22%10:00
ミドルコース63km1200m43%9:30
ロングコース94km1800m48%8:30
エクストラロングコース115km2200m49%8:00

なお私は、言うまでもなくエクストラロングコースを走る。

最長のエクストラロングコース

参加メンバー

人里離れた山奥での単独走行はリスクが高い。そのため、ニセコグラベルでは安全管理上、原則として3名以上でのチームで参加することになっている。
5月のスプリングライドの時は、友達がいないのを見かねたTKC Productionsに拾われ、「乗る練習」チームに混ぜてもらったのだが、
今回はTwitterに入り浸る自転車乗り3名でチームを結成し、ニセコグラベル エクストラロングコースに挑む。

ゲン

シクロクロスC1選手。大阪に住んでいた時期はよく一緒に遠征に行った。
今は住まいが離れてしまったが、今でも頻繁に連絡を取り合っているし、最近はコミケで同人誌を共著した。

テクノロジーを駆使して身の回りの最適化を進めるタイプ。

ソフトウェア担当でUSB-C原理主義者。
使用端末はGoogle Pixel6

GIANT REVOLT ADVANCED

  • F:グラベルキングSK 43c
  • R:グラベルキングSK 43c

ジャイアントのカーボングラベルロード。最新の2022年モデル。ロングディスタンスのグラベルレースをターゲットに設計されており、先代モデルより大幅に軽量化された。
一方で、フォークやトップチューブにアクセサリー台座を備えるなど、アドベンチャーライドに対応する汎用性も備えている。
リヤエンドのパーツを組み替えることでリヤセンターを430mmから440mmに切り替えられる点がユニーク。

フロントシングル46Tで、ロードバイクとしても使えるグラベルバイクを目指してセットアップされていたが、これが彼を苦しめることになる…

さきぷ

お互いに存在は知っていたが、面識は無かったので今回が初対面。パンツズボンとスク水の邂逅。
参加を決めた後、体力づくりのために走り込んだらしい。

準備の時も遠征中も、諸々の調整を引き受けてくれたお陰で良い旅になった。
手先も人付き合いも器用なタイプ。

ケミカル&コミュニケーション担当。
使用端末はGoogle Pixel6

LEMOND POPRAD

  • F:グラベルキングSK 38c
  • R:グラベルキングSK 38c

いにしえのツーリング・シクロクロスバイク。このバイクのお世話になった大学サイクリング部やシクロクロス選手は多いのでは。

フレームはスチール製。こんなカラーあったっけ?と思ったら、自ら塗装したらしい。こういうのイイね!

ところで、リムブレーキでエクストラロングコースを走った参加者は他にいただろうか。少なくともリムブレーキ最速ゴールだったはず。

そして最後に私

すくみずさん

改めて自己紹介するまでもないが、すくみずログ管理人。シクロクロスC1選手。
自転車にスキルポイント極振りした結果、大事なものをたくさん失った気がしてならない。

人の顔が覚えられないタイプ。家の近所で嫁とすれ違ったのに気づかなかった。

メカ担当。パワーメーターコレクター。
使用端末はXiaomi Mi11Pro。サブにOPPO Reno5A、あとSharp R6とかXiaomi Mi9とか…

CANYON GRAIL CF SL

  • F:グラベルキングSK 43c
  • R:グラベルキングSK 43c

キャニオンのグラベルロード。同社グリズルに比べるとロード寄りのキャラクターで、比較的スムーズなグラベルを高速で走り抜けるような使い方が想定されている。最大タイヤ幅は42mm。振動吸収性を高めた二階建てハンドル「ホバーバー」が特徴。

詳細なセットアップについては後述。

全員がTwitterアカウントを12年以上保持しており、フォロワー数は4桁。3名ともAndroidスマホを愛用する。

Android最高!

3泊4日で北海道を満喫

ニセコグラベルはその名の通り、北海道のスキーリゾートとして有名なニセコ町、そして隣の蘭越町を中心に行われる。
新千歳空港からのアクセスは車で2時間ほど。土日で行って帰ってくることも不可能ではないだろうが、かなり慌ただしい
朝の飛行機で新千歳に飛び、すぐさまレンタカーを借りてニセコまでドライブ。会場で受付をして、夕飯を食べたらもうクタクタだろう。
当日も、極上グラベルをゆっくり楽しんでいる余裕はない。特にロング・エクストラロングコースはハードで、残り時間を気にしながらペダルを踏み続けなければならない。
イベント当日の想定ゴール時間は16時頃。パンクや転倒など、トラブルがあれば遅れることも十分あり得るし、そこから着替えて積み込みをして、疲れた体で空港まで運転してレンタカーを返却して…風呂はおろか食事する暇もなく、最終便の飛行機に飛び乗ることになる。

改めて見るとやっぱりデケェな北海道…

…時間的にも体力的にも、あまりにも余裕がなさすぎる。ワンミスで帰れなくなるリスクを孕んでいる。
しかも、深夜に帰宅して片付けして、翌日は出勤だ。まともに仕事できるわけがない。

したがって、社会人としての自覚を持った我々は、週末の前後に休暇を入れ、9/2(金)~9/5(月) 3泊4日の旅程を組んだ。
万全な状態でニセコグラベルを走り、北海道を堪能し、余裕を持って帰るにはこれくらい必要だ。

LINEグループを作りメンバー3名で話し合った結果、以下のような計画に決まった。
さきぷさんが舵取りしてくれたお陰もあって、レンタカー選び、宿の確保とスムーズに決まり、さらに、前日サイクリングとか、北海道を食い尽くすグルメ計画とかを組み込み、ほぼ完璧に計画がまとまった。

9/2(金)夕方に新千歳空港でメンバー合流、レンタカーで札幌市内へ移動して1泊。
9/3(土)午前中は石狩エリアでグラベルを含むモーニングライド。午後はニセコに移動し、会場付近で宿泊。
9/4(日)ニセコグラベル当日。ライド後はすぐに撤収し、ゲンくんを新千歳空港に送り届ける。私とさきぷさんは苫小牧に宿泊。
9/5(月)苫小牧エリアを適当に観光し、午後にレンタカー返却。空港内をぶらついたあと夜の飛行機で各自帰宅。

ただひとつ残念だったのは、ゲンくんだけはスケジュールの都合がつかず、日曜に帰ることになってしまったこと。
そのため、ニセコグラベルのライド後はなかなかに慌ただしかった。結果的には、空港近くで温泉に入る程度の時間的余裕はあったのだが、それは3名とも走れるメンバーで、遠征慣れしていて、天候が良く、メカトラや転倒も無かったからこそ。
やはり、最低でも後泊は入れるべきだ。

バイクのセットアップ

キャニオンのグラベルロード グレイルでニセコグラベルを走る。

コンポは機械式のR8000系アルテグラ。クランクはInfocrankパワーメーターを使用する。
先日のシマノバイカーズでの落車時にクランクアームを曲げてしまったのだが、鉄パイプを駆使してなんとか修正した。その後しばらく乗っているが、幸いパワーメーター部にも異常はなさそう。

ホイールはMavicのAllroad SL。内幅22mmのアルミリムホイールでフックレス構造。ニップルホールレスのためリムテープ不要でチューブレス運用できる。
リム重量が軽く(440g)、チューブレスの装着性およびエア保持性が高いことが選定の理由。

フレームやホイールより重要なのはタイヤのチョイス。5月のスプリングライドではセミスリックのグラベルキングSS 38cを履いていたが、グラベルでのグリップに物足りなさがあった。
今回は115km中半分がグラベルなので、グラベルライド体験を最優先として前後ともグラベルキングSK 43cを選択。重量や転がりのハンデはパワーで解決する。

なお、ALLROAD SLにSK 43cを履いた実測幅は44mm。一方、グレイルの対応タイヤ幅は42mmまでとされている。
実際に履かせてみると、フロントは十分な余裕があったのに対して、リヤはチェーンステーとのクリアランスにほとんど余裕がなかった。
コーナーでホイールがたわんだり、振れたりすることを考えると、リヤタイヤ幅はもうワンサイズ下の38cが限界かもしれない。

左チェーンステーとのクリアランスに余裕なし

バッグ類は、サドルバッグ(Apidura ツールパック)と、フレームバッグ(Apidura エクスペディションフレームバッグ)を使用。ボトルはショートボトルを2本。
サドルバッグには予備チューブと工具類を収め、フレームバッグには携帯ポンプ、補給食、財布等を入れる。財布やポンプや補給食をバックポケットに詰め込む運用も可能だったが、乗車時の快適性を優先した。

激しい振動にさらされるグラベルライドでは重量物を中心にまとめたほうがストレスがないので、サドルバッグの工具類をフレームバッグに入れても良かったかもしれない。

服装についてもここで触れておく。
本州に比べると気温が低いのでウエアに悩んだが、最低気温こそ10度近くまで冷え込むものの、日中は25度くらいまで気温が上がるということなので夏装備。汗冷え対策にミレーのメッシュインナーを着た上に半袖ジャージ、あとは日除けに薄手のUVカットアームカバーを着けた。

スプリングライドは距離が短かったので普段着で走ったが、ロングコース以上を走るのであれば、やはりレーパン・ジャージが一番機能的だと思う。

ヘルメットはOGK KABUTO FM-X。GoProを装着し、走行中の動画を撮影する。

おでこ付近にカメラを取り付けると首が疲れるので、重量バランスを崩さない頭頂部にマウントを貼り付けている。
なお、ヘルメットマウントは、転倒時に首を持っていかれたり、カメラが頭に突き刺さったりするリスクがあるので、覚悟しておくこと。

コクーンで飛行機輪行

今回もタイオガ コクーンで前輪外し輪行をする。

前後輪を外す輪行では、ディレイラーハンガーを曲げないように変速機を外したり、スプロケットやチェーンを養生したり…とあれこれ気を使う。
それに対してこの方法は作業がラクで、ドライブトレインにも気を使わなくていいというのがメリット。

タイヤが38c→43cへと太くなったため、前回使用したロードバイク用コクーンには入らなくなった。
そこで、29インチのMTBにも対応するコクーン29erを新たに購入した。ロード用に比べると生地が分厚く安心感がある。

現地レンタカー:日産NV200に3名+3台

計画の序盤で悩んだのがレンタカー選び。2名+2台なら後席を倒せばコンパクトカーでも載るが、3名+3台となるとハードルが上がる。ハイエースを選べば絶対積めるのはわかっているのだが、なるべくコストを抑えたい。

レンタカー屋さんの価格比較、さらに車種ごとの車内寸法を調べ、最終的には日産 NV200バネットに決定。トヨタで言うとタウンエースに相当するライトバンだ。
荷台は鉄板むき出しの商用車グレード。荷室長が少し短いのだが、私はコクーン輪行、他2名はPEKOさんの超軽量輪行袋なので、なんとか収まると判断した。

日産 NV200バネット

荷室の対角線上にコクーン輪行のグレイルを置き、その両脇に残るバイク2台を配置。隙間をバックパックで埋めると綺麗に収まった。

この状態でバイク2台だが、もう1台も難なく収まった。前後輪を外したバイクなら4人+4台もなんとかいけそう。

なおNV200のドライブについても少し触れておく。
商用車ということで装備は最小限。運転支援システムの類もついていないが、重量物の積載を前提としたカックン気味のブレーキに慣れてしまえば、見切りがよく運転しやすかった。ただ、上り坂はちょっと辛かったので、パワーはもっと欲しい…

乗る方としては、助手席は見晴らしがよく快適。しかし後席はせんべい布団みたいなペラペラのベンチシートで、長時間はキツい。

費用について、4日間のレンタルで32000円ちょっと、1日あたり8000円だった。

次回、前日ライド編

ニセコグラベルレポート第1回は準備編として、イベント概要やバイクのセットアップ、レンタカー選び等を紹介した。
第2回では、北海道への移動とメンバー合流、前日のライドなど、イベントまでの過ごし方についてレポートする。