日本全国でここだけ雨 パナレーサー ニセコグラベル 2023 スプリングライド

日本を代表するグラベルライドイベントとして年々成長しているパナレーサー ニセコグラベル。北海道ならではの広大な景色と極上のグラベルが魅力だ。
今回は、年2回開催されるうち春のイベントである「スプリングライド」に参加。雨と寒さで少々タフなコンディションだったが、コース設計もよく、終わってみればなかなかに楽しいライドとなった。

グラベルライドを「楽しめる」スプリングライド

北海道のニセコ周辺を走るグラベルライドイベント「パナレーサー ニセコグラベル」は年に2回行われる。
9月のオータムライドは大規模なグラベルイベントとして開催され、コースも長くハード(短い距離のクラスもあるけれど)。一方5月のスプリングライドはプレイベント的な立ち位置で、規模もコースもコンパクトに開催される。

2023年のスプリングライドは、倶知安(くっちゃん)町公民館を起点とする距離62km、獲得標高860mのコース。アップダウンは控えめで、最もハードなヒルクライムでも200アップ未満。北海道でのグラベルライドを「楽しめる」コース設定となっている。
グラベル率は40%とのことだが、体感ではもっと舗装路比率が高いように思えた。

参考までに、昨年オータムライドのエクストラロングコースは距離115km 獲得標高2200m。しかも疲れてくる後半に上りが集中していたため、かなりキツかった。

3度目のニセコグラベル参加

2022年のスプリングライドオータムライドに続き、今回3度目の参加となるニセコグラベル。

ライドは日曜日だが、せっかく北海道まで行くのだから観光しないともったいない。できるだけ滞在期間を伸ばして北海道グルメを味わおう。
ということで、例によって金曜~月曜の旅程を組んだ。タイミングよくANAのセールがあったので、飛行機代は往復14000円。安い…

バイクの飛行機輪行はタイオガ コクーンを使う。これが一番手軽だし、バイクの損傷も少ない。
自分の記事を参考にしながら出発前日の深夜にパッキングした。

今回のメンバーは、私とさきぷさん、あとは関西CXでおなじみの村田さんの計3名。
私とさきぷさんは金曜入りして合流。土曜朝に村田さんを新千歳空港でピックアップし、レンタカーでニセコに向かうプラン。
なお、新千歳空港からニセコまでクルマだと2時間ほどだが、電車で行くと3時間半、4000円以上かかる。現地までの移動はレンタカーがおすすめだ。

トヨタ タウンエース

車種はコストと積載性を勘案してトヨタ タウンエースにした。前回借りた日産 NV200と同じ車格だが、心持ちバイクを積みやすかったように思う。
ただ、運転支援機能が口うるさいのと、ウィンカーレバーの操作感が悪い点はマイナス。

全国的に快晴、ここだけ雨

北海道に上陸した金曜日、翌日の土曜日は快晴で、サイクリングを大いに楽しんだ。特に、羊蹄山を眺めながら入る露天風呂は格別だった。

しかし、夜が明けてニセコグラベル当日。ホテルを出ると雨。1週間ほど前から天気予報とにらめっこしていたが、予報は覆らなかった。
この週末は全国的に快晴で、各地のサイクリングイベントは暑すぎて熱中症の不安があるくらいだったが、北海道の道央部だけが分厚い雨雲に覆われていた。気温も約7度と低く、かなり寒い。

レースならまだしも、サイクリングイベントで悪天候は本当にツラい。しかもライド中の午前中はしっかり降って、昼から雨が上がるという。
昨夜、宿のキッチンで名産品のアスパラガスを食べていた時はあんなにはしゃいでいたのに、今は3名ともうなだれている。気持ちは沈むが、準備をして会場に向かった。

受付と準備

朝8時頃、会場の倶知安町公民館に到着。すぐ近くの役場内駐車場にクルマを停め、バイクを下ろして準備する。幸い雨は殆ど降っていないタイミングだったのでスムーズに作業できた。
受付は公民館の建物内。雨風をしのげてありがたい。参加賞でジェルや補給食をもらったので、いくつかライドに持っていこう。

今回の参加者数は160名ほどらしい。昨年オータムライドと比べて少ないものの、スプリングライド比では大幅増。順調に規模を拡大している。

装備

北海道で、しかも雨ということでだいぶ悩んだが、最終的に以下のようなバイクと服装で走った。

バイク

バイクはキャニオン グレイル CF SL。マスプロダクションのグラベルバイクとしては初期の製品ということもあり、設計の古さを感じさせる部分もあるが、オンロードも快走できる、オールロード寄りの特性で普段のライドでも使いやすい。

ホイールはマヴィックのオールロードSL。チューブレス、テープレス、フックレスの軽量アルミホイールだ。
ビードベッドがタイト気味なので、緩めのグラベルキングと相性が良い。

タイヤはグラベルキングSK 38cにした。昨年のオータムライドではSK 43cだったが、チェーンステーとのクリアランスがほとんどなかったためワンサイズダウン。
バイクと色を合わせて、2023年限定色のサンセットオレンジにしてみた。

2022限定色ジンジャーと2023限定色サンセットオレンジ

アクセサリ類は、まずApiduraのフレームバッグ(Apidura エクスペディションフレームバッグ)。この中に予備チューブ2本と工具類、補給食などをすべて収納する。
気温が低く距離も短いので、ボトルはショートボトルを1本のみ。

サイクルコンピュータはEdge 840 Solarを使用するが、残念ながら今日はソーラー発電に期待出来なさそうだ。

最後に、忘れてはいけない泥除け。雨天ライドでは尻が水浸し&泥だらけにならないだけで不快感がかなり軽減される
リヤフェンダーはお気に入りのゼファール スワンロード。ノブでシートポストに締め付けるので固定力が高く、角度調整も可能。さらに、柔軟で割れにくい。簡易フェンダーの中ではベストな使い心地の製品だ。
フェンダー幅は45mmなので太いグラベルタイヤだと跳ね上げをカバーしきれないこともあるが、多少の泥跳ねは許容しよう。

ウエア

最も悩んだのが服装。予報では気温12度くらいと中途半端に寒い。
気温が低いならレインウェアフル装備が基本だが、10度前後では走行中は蒸れて汗だくになり、停車すると冷える。かといって、真夏のような、濡れるに任せるスタイルでは低体温になってしまう。

そこで今回は、濡れるが体温を逃さないウエアを選定。

インナーはミレーのメッシュインナー。これで濡れて冷えたウェアを体から離す。その上にはモンベルのジオラインクールメッシュ半袖インナーを重ねる。

アウターはカステリの撥水ウェア、ナノフレックスのジャージ、アームカバー、裏起毛のロングタイツで固めた。

完全に水を防ぐわけではないが、撥水性に優れるので冷たい水が染みるのを最小限に抑えられる。
保温性はあるが、運動強度が高くなってもレインウェアのように熱と湿気がこもらないというのもメリット。
ただ、休憩すると一気に冷えていくので、常に運動し続けるサイクリング向けの装備といえる。

ヘルメットはOGKカブトのFM-X。短いバイザーがついており、目の周りが雨に濡れることを防げる。

手がかじかむほどではないので、グローブは薄手のロングフィンガー。流石に寒かったのでモンベルのウインドブレーカーを上に羽織り、本降りになってきた雨の中、スタート地点に並んだ。

スタート~第1エイド

9時にスタート。何かを諦めたような顔つきの参加者たちが一斉に走り出す。

レースじゃないので飛び出す必要はないが、遅い人に詰まるのはストレスだし、集団内は落車するリスクもある。なにより前走者の跳ね上げた水が冷たいので、前の方に上がる。
ここから第1エイドまでの15kmはフラットな舗装路。交通量の少ない快走路でペースも上がる。
走り始めは寒かったが、だんだん体が暖まってきた。雨の中、真っ直ぐな道路を淡々と走るのもたまには悪くない。昨日あれだけ存在感のあった羊蹄山が雨雲に隠れ、全く見えないのが残念であるが。

平坦区間は速めのサイクリングペースだったが、丘陵地に入った途端に村田さんが踏むもんだから、後続がひとりまたひとりと脱落。気づけば4~5人に。

スタートから30分ほどで15kmを走りきり、川西集会所に到着した。今回のコースでは、ここが第1エイド兼第2エイドとなっている。

第1エイド~第2エイド

張り出されたボードで自分の名前を探し、チェックを入れたら一休み。3名ほど先行しているようだ。

自分の名前の横にチェックを入れる

心拍数が落ち着くと体がどんどん冷えていくので、補給食をつまみ、温かい麦茶を頂いたら程なく出発した。

エイドを出た後、すぐに川沿いのグラベル区間へ。水たまりだらけで足が冷たい。3kmほどで再び舗装路に戻り、ここから上り区間がスタート。ガツンと登る感じではないが、山間の舗装路で標高を稼いでいく。

ピークからの下りはグラベル。路面はスムーズで勾配はほどほど、カーブも緩くハードなブレーキングは必要ない。スリリングではないが気持ちよく走れる。

下ったら再び舗装路の上りに転じる。
今回のコースデザインは、上り区間が可能な限り舗装路となっており、逆に下りはなるべくグラベルを組み込むようにしている。そのため、最小限の疲労でグラベルダウンヒルを楽しめる。

2本目の下りは少しテクニカルだが、1本目で体がほぐれているのでリラックスして走れる。
依然として雨は降り続けているが、だんだんテンションが上ってきた。
気分はWRC。わざと水たまりに突っ込んで水しぶきを上げ、存分に楽しんだ。

第2エイド~フィニッシュ

30kmほど走り、川西集会所に戻ってきた。
名前欄にチェックを入れて補給所のほうに行くと温かい豚汁が。強くなってきた風で冷えた体に沁みる。

あとで聞いた話だが、イベント当日の雨が濃厚になった1週間前に急遽決めたらしい。地元の食堂の豚汁らしく、具材も美味しい。お陰で気力と体力を回復できた。

トイレを済ませ、アクションカメラのバッテリーを交換し、補給のジェルを吸って出発。
残る距離は15kmほど。羊蹄山の裾野のグラベルに立ち入る。

スタート後すぐにガツンと標高差200mほどの上り。登り切る頃には雨がほぼ上がり、視界も晴れてきた。

最後のグラベル区間は、山の裾野らしい、上り下りが繰り返すプロフィール。
森の中をまっすぐに伸びるダブルトラックを走る。

森を抜けると下界の景色が開けた。気温も上がってきて、気持ちの良いダウンヒルだ。

ここまでノートラブルで来たが、グラベルの出口付近で村田さんがパンク。
今回のコースは路面状況が良いとはいえ、32cのグラベルキング(スリック)では少々厳しかったようだ。トレッドパターンはともかく、もう少し太さがほしい。

復帰したらゴールまで残り4km。フラットな舗装路だ。
12時34分、スタートから3時間半ほどで倶知安町公民館に到着。GPSサイコン読みで62kmのライドであった。

ゴールした途端に晴れ間も見え、雲に隠れていた羊蹄山の姿も浮かび上がってきた。なかなか思うようにいかないものだ。
だが、抽選会でくじを引いたら大当たりで、会場近くにある「京極温泉」のチケット12枚綴りをゲット。ひとっ風呂浴びていったのは言うまでもない。

その後札幌に移動。夕飯にハイエンドジンギスカンを食べたり、北大キャンパス内のセイコーマートまで買い物に行ったり、翌日は朝からサンドリアのサンドイッチを食べた後ボリューム満点の海鮮丼を平らげたりと、暴飲暴食の限りを尽くしたのだが、そのへんについては割愛。

まとめ:雨のグラベルライド

プライベートなライドではまずやらない「雨のグラベルライド」。
濡れて不快だし視界は悪いし、泥はねで後片付けも大変だが、霧というか雲の中を走る雰囲気を味わったり、水溜りに突っ込んだりと、雨ならではの楽しみもあった

雨のシクロクロスレースに比べたらだいぶマシというのが、クロッサー3名の共通見解

持って行ってよかった装備は、リヤフェンダーとカステリの撥水タイツ。尻にかかる水や泥をガードできると不快感がだいぶ軽減される。

携行品をフレームバッグにまとめたのも正解だった。バッグをいくつも取り付けると、後で洗うのが大変だ。
なおライド後はバッグごと洗車したが、流石アピデュラ、浸水は全くなかった。

逆に、欲しかった装備はフロントフェンダー。あと、シューズカバーもあればよかったかもしれない。

晴れなら楽勝だったはずの60kmコースだが、天候のせいでお腹いっぱいになった。
オータムライドは絶対に晴れてほしい。昨年は晴れでも修行じみていた(距離115km 獲得標高2200m)し、雨が降ると走りきれる気がしない…