ZWIFTのワークアウトの強度は、FTPを基準としたパワーゾーンで管理されている。
ここでは、パワーゾーンとも深く関係している、運動強度に応じた筋肉へのエネルギー供給機構について解説する。
有酸素運動・無酸素運動での筋肉へのエネルギー供給
筋トレやダイエット関連の書籍やウェブサイトで、無酸素運動と有酸素運動、速筋と遅筋といった単語は耳にしたことがあると思う。
筋肉には、筋収縮が速く瞬発力がある速筋と持久力に優れた遅筋があるが、どちらもATPという物質をエネルギーにして収縮する。
ATPは筋肉中に殆ど貯蔵できないため、運動中はATPを合成して筋肉に供給し続けなければならない。
速筋を使う無酸素運動ではリン酸系または解糖系、遅筋を使う有酸素運動では有酸素系というメカニズムでATPを合成している。
- 無酸素運動…速筋
- リン酸系…リン酸を分解してエネルギーとする。(10秒以内のスプリント)
- 解糖系…グリコーゲンを分解してエネルギーとする。このとき乳酸を生成。(1分程度の運動)
- 有酸素運動…遅筋
- 有酸素系…糖、脂肪、そして乳酸を原料にエネルギーを得る。(長時間継続できる)
有酸素運動と無酸素運動は同時並行で行われ、その割合を大まかに表すと以下のグラフのようになる。
FTPテスト時、20分間の平均パワーに0.95を掛けてFTPとするのは、無酸素運動によって上乗せされたパワーを取り除くためだ。
無酸素系
リン酸系
リン酸系はATP-PCr系とも言われ、筋肉中のクレアチンリン酸を分解してATPを合成する。最大限の運動を維持できるのは10秒程度だが、30秒の休憩で70%に、3~5分でほぼ完全に回復するという。
自転車競技では短いアタックやスプリントをする時に働く。
解糖系
解糖系ではグリコーゲンを分解し、ATPと乳酸を生成する。急激に筋肉が疲労するため、持続時間は30秒~1分程度。
副産物である乳酸はかつて疲労物質と言われていたが、それ自身は疲労物質ではない(乳酸濃度から筋肉疲労の具合がわかるので、指標としては有効)。
乳酸は、有酸素運動のエネルギー源として再利用される。
フルマラソンやロードレースなど、長時間の持久性運動で体内のグリコーゲンが枯渇した場合は、運動後10時間で60%程度回復するが、完全回復には48時間かかるとされる。
有酸素系
有酸素系では、脂肪を分解して、細胞のミトコンドリア内でATPを合成する。反応が複雑でエネルギー供給が遅いが、長時間にわたって大量のエネルギーを供給できるため、もっぱら持久性の運動で活躍する。
反応には酸素が必要なため、最大酸素摂取量(VO2MAX)が有酸素運動能力を決定する。
低強度であっても解糖系は働いているが、生成された乳酸は有酸素系によって分解されている。
有酸素運動能力を高めることで乳酸の処理能力も向上するため、高強度インターバル耐性も向上する。
エネルギー供給機構とZWIFTパワーゾーンの対応
ZWIFTのパワーゾーンとエネルギー供給機構を対応させると、下表のようになる。
パワーゾーンとエネルギー供給機構の対応を参考にワークアウトを選ぶことで、自分の伸ばしたい能力を伸ばすことができる。
パワーゾーン | 内容 | FTP比 | 主なエネルギー供給機構 | 備考 |
L1 (Z1) | アクティブリカバリー | ~59% | 有酸素系 | 血行を促進し回復 |
L2 (Z2) | エンデュランス | 60~75% | 有酸素系 | – |
L3 (Z3) | テンポ | 76~89% | 有酸素系 | 乳酸の生成速度<分解速度 |
L4 (Z4) | LT:乳酸閾値 | 90~104% | 有酸素系+乳酸系 | 乳酸の生成速度≒分解速度 |
L5 (Z5) | VO2MAX | 105~118% | 有酸素系+乳酸系 | 有酸素系がフル回転 乳酸の生成速度>分解速度 |
L6 (Z6) | AC:無酸素運動能力 | 119%~ | 乳酸系+リン酸系 | 大量に乳酸生成 無酸素運動能力の限界 |
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SARISサポートライダー活動について
2020年12月よりSARIS JAPANサポートライダーとなり、
インドアトレーニングやバーチャルライドを盛り上げる活動を行っています。
トレーニングにはSaris H3を使用しています。