宇都宮で開催されたCX全日本選手権に出場。
道の駅 うつのみやろまんちっく村に設営されたコースはハイスピードなレイアウト。しかし、速度を増すほど難しくなるコーナーや激坂の直登、泥のキャンバー区間ではシクロクロス特有の技術が試される。
レースは2列目でスタートし、一時は8位パックで展開するが、レース後半にはジワジワと順位を落とす。 先頭の織田聖が異常なハイペースを刻み、ほとんどの選手が足切りされるなか、ギリギリ最終周回へ。
転倒や機材トラブルもあったが実力を出し切り、過去最高位の12位でフルラップ完走した。
1/14 第29回 全日本自転車競技選手権大会 シクロクロス 男子エリート
天候:晴れ 9度
コースコンディション:草地、ドライ時々泥
リザルト:12位/50名(9周回 +5:48 順位24% フルラップ完走13名)
機材
Ridley X-Night Disc 1号車
- 前輪: Yoeleo SAT C45 DB PRO / Panaracer ALBIT + Insert / 1.6bar
- 後輪: Yoeleo SAT C45 DB PRO / Panaracer CGCX + Insert / 1.7bar
※空気圧はPanaracer デュアルヘッド デジタルゲージ基準
動画
すくみずログ YouTubeチャンネルでレース動画を公開中
宇都宮でCX全日本選手権開催
シクロクロスの日本一を決める大会、全日本選手権。
今シーズンは2年ぶりに男子エリートに参戦する。
会場は「餃子と自転車の街」栃木県宇都宮市にある「道の駅うつのみや ろまんちっく村」。2016年12月の第22回大会以来、7年ぶり2回目の全日本開催だ。
広場を中心にレイアウトされたコースは全体的に平坦で、長い直線が多くスピードに乗るレイアウト。
だが、逆バンクや高低差があるコーナーでは、高速になるほど攻略が難しくなる。
また、コントロールライン直後のサンドセクション、続く激坂直登とシングルトラック、ドッグランエリア周辺の泥キャンバーなど、シクロクロス特有のテクニックが試される。
ただ周回するだけならイージーだが、速く走ろうと思うと
- コーナー出口でダッシュを繰り返すインターバル耐性
- 平坦な直線でも脚を緩めず踏む精神力
- テクニカルな区間をスムーズかつ安定して捌くテクニック
が必要になってくる。脚だけ、腕だけの選手が勝てるコースではない。
レースの目標
今回の全日本、目標は3段階に設定した。
- フルラップ完走
- 自己ベスト更新 13位以内
- UCIポイント圏内 10位以内
まずはフルラップ完走。
シクロクロスでは「80%ルール」というレギュレーションがあり、先頭の選手より一定以上遅れるとレース途中で降ろされる(足切り)。
具体的には、「トップの周回タイムの80%」がリミットとなる。これは、周回遅れの選手が優勝争いの選手と絡まないようにするためだ。
コース設定やコンディションにもよるが、エリートカテゴリをフルラップ、すなわちトップと同一周回で完走できる選手はそれなりの実力者と言える。
今年の優勝候補の筆頭、織田聖選手は国内レース全戦全勝、頭一つ抜けた速さだ。なお私は今期、聖と同じレースを2回走っている。わたりJCXではフルラップしたものの、琵琶湖グランプリでは足切りを食らっている。
第2目標は自己ベストリザルト更新だ。過去のベストは、2019年12月 愛媛県内子町で開催された第25回大会での14位。
2020年、21年は20位。今年はこれを上回る成績を残したい。
最終目標は10位以内。全日本選手権で、プロ選手に混じってトップ10入りというのは、ホビーレーサーの目標として十分なものだ。
しかも、UCIポイントも付与され、翌年度大会の前方スタートも約束される。(全日本のスタート位置はUCIポイント保持者が最優先)
ただ、エントリーリストを見ると、逆立ちしても勝てない選手が6~7名。格上の選手が数名。実力が拮抗する選手も数名。
同クラスのライバルを蹴散らし、格上の選手と渡り合う必要がある。正直、結構ハードだ。
レースの準備と試走・セッティング
全日本に備えて、2台のレースバイクをオーバーホール。
毎週レースだとメンテナンスをサボりがちだが、全日本くらいはフレッシュな状態で走りたい。
チェーン周りを洗浄し、BBとディレイラープーリーのベアリングもメンテナンス。
ちょっと挙動が怪しいブレーキもブリーディングしておいた。
今回は金曜夜に宇都宮入りする計画。
大阪から宇都宮までは650km。一人で運転していくのはキツすぎるので、途中まで移動し、チームメイトのクルマに同乗。機材ともども運んでもらう。
金曜日、現地には17時頃到着。14:00-16:00試走時間は終わっているので、会場は下見だけ。
先週の関西CX希望が丘のレース後、小坂光選手に直接聞いた「おすすめの餃子屋」に行ったり、ホテルでチーム員と駄弁ったり、リラックスして過ごす。
翌日の土曜日。朝試走で初めてコースイン。だが、朝方気温が氷点下に冷え込み、路面の一部が凍結している。
特に、キャンバー区間はガチガチで、乗車はもちろん、押して歩くのも難しい状態。
3周ほど流して、コースの雰囲気を確かめるのにとどまった。
土曜日の日中はマスターズのレースがあり、応援したりピットに入ったり。
午前中は日差しが暖かかったが、午後から天気が崩れる予報。まさか…と思っていたが、昼頃から気温が下がり始める。どんどん雲も増えてきて、最終レースのM40-49では、ついに雪が降り始めた。途中は吹雪くほどで、コースコンディションも激変。
レンガ敷きの部分は濡れてスリップする選手が続出。
15時から試走するつもりだったが、天候と路面状況を見て走らないことにした。
レース本番の日曜日は晴れ予報。こんな状況で走っても試走にならないし、身体や機材に対するリスクが高すぎる。
「怪我をしない、体調を崩さない、バイクを壊さない」
レースに臨むうえで大切な「3ない運動」だ
そしてレース当日。この日も朝はマイナス5度まで冷え込み、サドルも凍る。
ロクにコース攻略出来ていない状態なので朝試走から真面目に走る。昨日より凍結はマシというか、それとも寒すぎるせいで滑らないのだろうか。
試走時間をフルに使って走り、大体の走行ラインを決定。
午前はレース観戦。U15,U17
U23では、たつーみが独走して悲願の優勝。シクロクロスとして初タイトルを獲得。熱いレースで良い刺激を貰った。
そして昼試走。12:10~12:50の40分間しかないが、レース直前のコンディションで路面コンディションをチェックし、タイヤを決める最後のチャンスだ。
選択肢は2つ。前後CGCXか、前Albit/後CGCXか。
まずは前後CGCXの2号車でコースイン。走ることはできるが、路面が掘れて緩んだ部分では滑る。フロントが食いついてほしい。
そこで、フロントにAlbitを履く1号車に乗り換えて再び周回。しっかりノブが刺さるので安心感がある。転がりは多少重くなるかもしれないが、しっかり攻められるしミスもしにくい。こっちにしよう。
空気圧は前1.6、後ろはリム打ち対策+舗装路の転がりを重視して1.7に設定。
いつものウォーミングアップを行い、心拍数とテンションを高めた後に招集へ。
レースレポート
東北CXわたりJCXでポイントを荒稼ぎしたため、ゼッケンは15番。2列目のグリッドに並ぶ。
スタート直後の順位が最重要なシクロクロスにおいて、この位置から出走できるのは大きなアドバンテージだ。
最前列の8名は逆立ちしても勝てない選手ばかりなので、前に詰まることも無いだろう。
シーズン最大の大舞台、緊張はしているが、これは優勝が掛かったレースではないと思うと、関西CXより気は楽だ。
14時30分にスタート。スムーズにペダルをキャッチしてスタートループの舗装路を加速。最初のコーナーを10番手あたりで通過する。
途中、後方では落車音が聞こえたりしたが、この位置は密度が低く、変な動きをする選手もいないため極めて安全。
ただし、コーナーの立ち上がり加速では強烈なインターバルが掛かる。一列棒状に伸びる車列から振り落とされないよう、必死でついていく。
コントロールラインを通過し、砂セクション、そして直後の激坂直登。密集した集団で入るとミスがミスを呼び、大渋滞の地獄絵図になることが容易に想像できるが、いま前を走るのは国内トップクラスの選手。安心して後ろを走れる。
この中でUCIポイントを持っていないのはきっと私くらいだ。人様の邪魔だけはしないように集中する。
幸い渋滞の原因になることもなく、シングルトラックを抜けて芝のスピード区間に。既に国内トップレーサーの数名が先頭パックを形成し。後続をどんどん引き離していく。
私は数名から成る第2パックに位置。正直キツいスピード域だが、そのうち落ち着くと信じて食らいつく。
宇都宮のコースは単独でペースを保つのが難しく、脚が緩みがちだ。なるべくパックで走りたい。
落ち着いてからは、滉太、マツケン選手、丸山選手とパック。順位は10位前後だ。
その後、滉太が遅れ、レース中盤は前にマツケン選手、後ろに丸山選手という位置で9位。
追いついたり離されたり、たまに順位が入れ替わったりもするが、前後に選手がいることで良い意味でプレッシャーが掛かり、スピードを保ったまま周回を重ねていく。
だが、立ち上がり加速のたびにダッシュする宇都宮のコースに、じわじわと脚が削られていく。
7周目、砂セクション後の激坂直登、なんとか乗車のまま登りきったものの、加速にもたついてマツケン選手から遅れる。
9位単独という状況だが、数秒後方には丸山さんが迫る。
8周目、シングルトラックを抜けた先、平坦エリアと接続する右コーナーでスリップダウン。柔らかい草地のためバイクも体も無事だったが、すぐ後方にいた丸山さんに追い抜かれ、遅れてしまう。
その後、復路ピット前で脅威の追い上げを見せたマコリンが抜き去っていく。…琵琶湖GPでもこのパターンだったような。
ポジションを11位に落とし、残り1周のコントロールラインが近づいてくるが、ここでもうひとつのピンチが。
先頭を独走する聖が圧倒的なペースを刻んでいるため、80%ルールの足切りラインがどんどん迫ってきているのだ。
最終周回に入ることが許されるタイム差は約5分。かなり際どい状況だ。
80%ラインのゲートが眼前に迫る、コーステープを持つオフィシャルの手が動き、コース外に誘導されるのではないかとヒヤヒヤした。
4分50秒遅れ、ギリギリのタイミングでファイナルラップに突入。
高強度インターバルを繰り返し、脚は消耗しスカスカだがこれが最後の1周。力を振り絞る。
しかし、シングルトラックを抜けた辺りで、右のビンディングペダルが突然はまらなくなってしまう。
泥づまりかと思い、ペダルを蹴飛ばしてもダメ。
この間スピードが落ち、振り切ったはずの滉太がどんどん近づいてくるが、クリートがはまらないペダルを踏みつつ考える。
ピットに入るべきか、このまま行くべきか。
もしペダルの泥づまりが原因なら、ピットインし、バイクを交換することでトラブルは解決する。
泥以外に、小石が噛み込んでビンディングが動作不良を起こすこともあるし、シューズ側の泥詰まりに対しても一定の効果はある。
だが、泥のキャンバー区間ならともかく、こんな場所で突然泥づまりするのはおかしい。
そもそも、何度ペダルを蹴っても、クリートの先端が引っかかる感覚が無い。
こういった状況から、クリートのネジが緩み、脱落したと結論づけた。
それなら、ピットに入っても時間を無駄にするだけだ。このまま行く。
ピット前で滉太に追い抜かれ、ポジションを12位に落としたが、仕方ない。
後方にはもう1名いる。これ以上順位を落とさないよう、できる限りのスピードを維持する。
長いグラベル区間を抜けてメイン会場へ戻り、ピット前を通過。
フルラップ完走を祝う声援のなか最終コーナーを立ち上がる。
10位目標には届かなかったものの、自己ベストを更新する12位で全日本選手権を完走した。
レースを振り返って
「シクロクロスの選手として、いま自分はどれだけ速いのか」実力を確かめるベンチマークといえる全日本選手権。
今年は12位/50人というリザルトでトップ10入りは叶わなかったが、フルラップ完走、そして自己ベスト更新を果たした。
レースを振り返るうえでまず最初に。
クリートの脱落に関しては、本当に反省すべきだ。
最終周だからまだ良かったものの、序盤に緩んでたらレースが台無しだった。
今期下ろしたばかりのシューズだったので、ベースプレートが凹んで初期緩みが出たのだろう。
六角穴に泥が詰まっているからと面倒臭がらず、定期的に増し締めせねばならない。
…合いマークでもつけておくか
次に走行ペースについて。
ラップタイムを見ると、レース前半は6分50秒台前半で走行。
5周目は階段脇の登りで足をついてタイムを失っているが、6周目まではほぼ一定ペースと言って良い。
体感的にも、よく集中し、よく踏めていたと思う。
だが7周目、脚がいよいよ厳しくなってきて、マツケン選手から切れて単独9位となったことで、ミスをしていないのにタイムが10秒落ちている。
転倒した8周目でほぼ同タイムなことから、ペースを持ち直してはいるが、マツケン選手や丸山選手と戦うには、中盤のペースを最後まで維持するフィジカルが必要なのだろう。
LAP | タイム |
0 | 1:25 |
1 | 6:53 |
2 | 6:55 |
3 | 6:50 |
4 | 6:46 |
5 | 7:03 |
6 | 6:53 |
7 | 7:04 |
8 | 7:06 |
9 | 7:26 |
すべてが上手く行ったわけではない。転倒もしたし、メカトラブルもあった。
コースのライン取りや乗り方は改善点だらけだし、中盤競り合った選手に対してはフィジカルの不足も感じた。
それでも、今の実力は十分に出し切ったし、私のためにサポートしてくれたチーム員と応援の声に対して、恥ずかしくない走りはできたと思っている。
それにしても、やっぱり全日本は特別なレースだ。
最高のチーム体制とコース脇から絶えず聞こえてくる歓声。そしてレースに向けて準備してきたライバルたち。
この上なくキツくて、この上なく楽しい1時間だった。
次回、第30回を迎える全日本選手権は、12月に同じ宇都宮で開催されることが決定。
今回の「宿題」を済ませて、また年末、スタートラインに立ちたいと思う。
次戦は関西シクロクロス第8戦 富田林。
関西CX総合優勝目指し、しっかりコンディションを整えていきます。
応援・撮影・サポートありがとうございました。