ガーミン製スマートウォッチで血中酸素濃度が測定可能に
2021年4月のソフトウェアアップデートで「血中酸素トラッキング」機能が追加された。
日本国内向けガーミンウォッチで血中酸素飽和度の測定機能が解禁された。
ハードウェア的にはすでに実装されており、海外版デバイスでは使用できた機能だが、ようやく日本でも使えるようになった。
コロナウイルスの重症度判断にも用いられる血中酸素飽和度。ガーミンの測定機能は医療用パルスオキシメーターより精度で劣るが、健康状態の目安として利用することができる。
Garmin Fenix 6シリーズやForeAthlete 945,745など、対応デバイスのユーザーは、Garmin Connect MobileやGarmin Express(PC)経由で本体のソフトウェアアップデートを行えば本機能が有効化される。
血中酸素飽和度とパルスオキシメーター
血液中の酸素濃度は血中酸素飽和度(SpO2)という指標で表され、健康な状態では95~100%ほどが正常値とされている。
呼吸器に疾患があったり体調が悪い時は、血中酸素飽和度が下がるため、血中酸素飽和度を測定することで健康状態を客観的に判断することができる。
一派的にはパルスオキシメーターという機器を指先に挟み、動脈中を流れる血液に測定光を透過させることで測定を行う。
パルスオキシメーターは医療機器で、医療機関において患者の体調管理に用いられている。
最近では、コロナウイルス感染症の重症化の目安になるとして注目されており、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」でも、血中酸素飽和度を利用して重症度の分類を行っている。
感染初期においては、病状悪化は多くの場合低酸素血症の進行として表れるうえ、自覚症状がない症例があるため、パルスオキシメーターによる血中酸素飽和度測定が有効と記載されている。
血中酸素トラッキング機能
ガーミンの「血中酸素トラッキング機能」とは、血液中に取り込まれている酸素レベル、すなわち血中酸素飽和度(SpO2)を測定する機能。
光学式心拍計で測定
ガーミンウォッチでは、光学式心拍計に組み込まれた赤色LEDと赤外線LEDを利用して、血中ヘモグロビンの酸素レベルを測定している。
心拍測定では赤血球のヘモグロビンに反射する緑色のLEDを使用するが、血中酸素レベル測定では赤外線・赤色LEDの吸収率の違いを利用しているようだ。
測定精度は低い
GarminやApple Watchなどの腕時計型デバイスはパルスオキシメーターと違い反射光を利用しており、精度は低い。
また医療機器としての認可も取っていないため、測定値はあくまでも目安ということになる。
ただし、24時間腕につけて血中酸素飽和度の推移を記録できるという点は大きなメリット。
血中酸素飽和度を、体調の変化を記録できる。
フィットネス用途としては、95%以下になっている場合は疲労や病気などで健康状態が悪化しているのでトレーニングを控えるといった判断が行える。
また、空気の薄い高地における順応状態の目安としても使える。
対応機種
ガーミンジャパンのニュースリリースによると、対応機種は以下の通り。
・ForeAthlete 945/745/245シリーズ
・VENU/VENU SQシリーズ
・vivoactive 4/4Sシリーズ
・Legacyシリーズ
・vivomove 3/3Sシリーズ
・vivomove Style/Luxeシリーズ
・vivosmart 4
・Approach S62
・MARQ
・fenix 6シリーズ
・Quatix 6X
・Enduroシリーズ
・fenix 5X Plus
・Instinct Dual Powerシリーズ
・Descent Mk2/Mk2i
・Lilyシリーズ
順次配信されるソフトウェアアップデートを行うことで、血中酸素濃度測定機能が有効化される。
ソフトウェアアップデートの方法
所有するGarmin fenix 6s用のソフトウェアが配信されたので、さっそくアップデートを行った。
ガーミンコネクト(Garmin Connect Mobile)
スマートフォンと連携して使用していれば、自動的にソフトウェアアップデートがダウンロードされ、ガーミンウォッチにアップデートの通知が出る。
ファイルサイズが大きいのでアップデートファイル転送時はいつもより時間がかかるが、同期がコケるときは以下の記事を参考に対処してみてほしい。
手動でダウンロードすることはできないので、今すぐアップデートしたい場合は次に紹介する方法で強制的にアップデートをかける。
Garmin Express
Garmin ExpressはPC用のソフトで、スマホ連携できないBluetooth非対応のガーミンデバイスで主に使用する。
インストールが完了したら、充電ケーブルでPCとガーミンデバイスを接続する。
アップデートがある場合はGarmin Express上で通知される。
「インストール」を押すとファイルがダウンロードされ、充電ケーブル経由でガーミンウォッチにソフトウェアが転送される。
転送後、ガーミンデバイス上からアップデート操作
Garmin Connect Mobile、Garmin Expressどちらの場合であっても、転送が終了したらガーミンウォッチの画面上にアップデート通知のメッセージが出る。
インストール操作を行うとアップデートが適用されるし、走りに行く直前など、時間がない場合は後で行うこともできる。
「血中酸素ウィジェット」で血中酸素レベルを確認
ソフトウェアアップデートが終わると、自動的に血中酸素ウィジェットが追加される。
時計画面からページを送って、ウィジェット画面にすると自動的に現在の血中酸素レベルが測定される。この時は、手首を動かさず安静にしている必要がある。
画面の下半分には、過去24時間の血中酸素レベル推移がグラフで表示される。
血中酸素トラッキングの設定
血中酸素ウィジェットを表示した状態でメニューボタンを長押しすると設定が行なえる。
「メニューボタン長押し」→「血中酸素設定」→「血中酸素モード」
で、ログを記録する時間帯を
- オフ
- 睡眠中
- 終日
から選択できる。
オフ…スポット測定のみ
「オフ」の場合はウィジェットを表示したときのみ測定が行われる。
画面上部の赤いアイコンの周りをプログレスバーがぐるっと一周するまでの数10秒間、腕を動かさず安静にする必要がある。
睡眠中…就寝時のみトラッキング
「睡眠中」の場合は、就寝時のみ測定が行われる。
測定する時間帯は、Garmin Connect Mobileより
「Garminデバイス」→「デバイス名(fenix 6S ASIA等)」→「ユーザー設定」の
- 就寝時刻
- 起床時刻
で設定した時刻の間となる。
終日…24時間体制で血中酸素トラッキング
「終日」の場合は、ガーミンウォッチを身につけている間ずっと血中酸素トラッキングが行われ、Garmin Connectに同期される。
終日モードに設定しようとすると、「バッテリーを消費します」というメッセージが表示される。
バッテリー消費については以下の記事で解説しているが、結論から言うと「終日」トラッキングはバッテリーライフが半減してしまう。
ガーミンコネクトでログを確認
血中酸素トラッキングのログはガーミンコネクトに同期され、Garmin Connect Mobile上で確認することができる。
「メニュー」 → 「健康情報の統計」 → 「血中酸素」
を選択すると、ログを見ることができる。
「睡眠中」「終日」ともに、測定頻度は不明だが、Garmin Connectへの記録は1時間毎に行われている。
Garmin Connect Mobile上では、トラッキングしたログは緑色の矩形、スポット測定は緑色の点で表示される。
まとめ:ガーミンを身に着けるだけで健康状態の目安が得られる
バッテリーライフが長いガーミンのウエアラブルデバイスは、サイクリングやランニングといったアクティビティ時だけでなく、日常生活や就寝中もつけっぱなしにでき、24時間ライフログを記録することができる。
今までは安静時心拍数を疲労度の目安にしていたが、血中酸素トラッキング機能の追加で、健康状態をより客観的に判断できるようになった。
前述したとおり、測定誤差は大きく医療用のパルスオキシメーターの代替にはなりえないが、ガーミンは身につけているだけで測定を行えるメリットがある。
急激に血中酸素レベルが下がり、その状態が続いているなら、自覚症状がなくても体調不良を疑うべきかもしれない。
もしもコロナウイルスに罹患したら、主観的な体調とあわせて血中酸素飽和度を記録してやろうと思う。