GARMIN Forerunner 955 Dual Power
ランニング・マルチスポーツ向けガーミンウォッチ「Forerunner」シリーズの最上位モデル。
軽量な樹脂製ボディで長時間着用していても負担にならない。機能面ではフラッグシップモデルのFenixに並び、ソーラー充電やタッチ操作対応の液晶を搭載。地図機能も内蔵している。
しかし、充実した機能に比例して多くのソフトウェアバグも実装されており、公式フォーラムは常に盛り上がっている。
評価 ★★★☆☆
購入価格 74000円
長所 -Pros-
- 軽量なボディ
- 使いやすいタッチインターフェース
短所 -Cons-
- 発売後9ヶ月で未だにソフトウェアの不具合を抱えている
- ソーラー充電はオマケ
1ヶ月ぶりのガーミンウォッチ購入
2022年末にフラッグシップモデルのFenix 7s Sapphire Dual Power Tiを購入した私。
タッチパネルの操作感やチタンボディの所有感、最新モデルならではの多機能さには満足していたのだが、ひとつだけ不満だったのがバイブレーションの弱さ。
サイクリング中はともかく、歩いていたり、椅子に座っているときですらLINEのメッセージやTwitterのリプライを見逃すことがあり、流石に嫌気が差したのでバイブレーションが強力なモデルを買い直すことにした。
どうやら、末尾にSがつく小型モデルはバイブレーションが弱いようだ
そして1ヶ月ぶりに我が家にやってきたのが、ランニング・マルチスポーツ向けの最上位モデル、Forerunner 955 Dual Powerであった。
軽量なForerunnerシリーズ
Forerunner(フォアランナー)シリーズは、ガーミンウォッチのなかでもランニングやトライアスロンといったスポーツ中の使用が想定された製品。以前は商標の関係で日本国内でのみ「ForeAthlete」シリーズとして販売されていたが、955/255シリーズからは「Forerunner」として販売されている。
Forerunnerシリーズの特徴は、激しい運動中でも操作しやすいボタンインターフェースと、樹脂製で軽量なボディ。
最上位モデルのForerunner 955はタッチ操作にも対応し、より直感的な操作が行える(タッチON/OFFはワンタッチで切替可能)。
機能面では、Forerunner 955とFenix 7シリーズは細かい違いこそあれ(fenixのほうが微妙に充実している)ほぼ同等だ。
ハード面では、fenix 7シリーズは金属パーツを多用し、MIL規格[MIL-STD-810]準拠の「衝撃落下」「高温/冷凍」「防水」「腐食」試験をクリアしている。
対して、Forerunner 955は軽さを優先しており、金属製のボタンを除いて外装はすべてプラスチック(繊維強化ポリマー)製。成型のクオリティは高く安っぽくはないが、実用品という印象だ。
腕に巻き付けるバンドは(例によって)シリコン製。柔らかい質感ではあるが、ライフロガーとして一日中つけていると汗で蒸れたりかぶれることがある。
そのため、私はすぐ、通気性が良く蒸れにくい社外ナイロンバンドに交換した。
バンドはバネ棒で固定されており、バネ棒外し(あるいは精密マイナスドライバー)を引っ掛けて外すことができる。
バネ棒の寸法は、端部φ1.6mm、中央部はφ2.3mm、バンド幅は22mm。
タッチパネル+物理ボタン
激しいアウトドアアクティビティを想定したガーミンウォッチの上位機種では、あえてタッチパネル搭載が見送られてきた。
というのも、静電式タッチパネルは手袋をしていると操作しにくいし、水に濡れると誤作動するため、汗や雨が避けられないアウトドア用途と相性が悪いのだ。
また、タッチパネルは「画面を見て、狙いを定めて、指先で触れる」というステップが必要だ。
ランニングやサイクリングの最中、揺れる画面をタッチするのは難しいし、危険でもある。
しかし、Forerunner 955とFenix 7ではシリーズ全モデルがタッチパネル化された。
ただし、物理ボタンも搭載され、どちらでも操作できるようにデザインされており、タッチパネルはON/OFFを切り替えられるようになっている。
私はタッチON/OFFを「DOWNボタン」+「STARTボタン」の同時押しに割り当てている(ボタン長押しor同時押しに割り当て可能)。
普段はONで、アクティビティ中(GPSロガーとして使用している最中)のみオフにするといった、細かい設定も可能だ。
タッチパネルの操作感は良好で、流石に水中では操作できないが、指先が濡れている程度であれば、画面スクロールやメニュー操作が行える。
誤タッチ防止機能も搭載され、広い面積で触れると作動しないようになっている。なお、手のひらで画面を覆うとバックライトが消灯する。
このタッチパネル、地図機能を使うときはかなり便利で、直感的にスクロールが行える。
従来はボタンで「ズーム」「縦移動」「横移動」を切り替えて操作する必要があり、正直かなりストレスだった。
地図機能つきのモデルではタッチパネルが必須と思える。
第4世代の光学式心拍計
Forerunner 955には、Fenix 7と同じ最新型の光学式心拍計が搭載されている。
第4世代Elevate光学式心拍計はLED・センサー数も増え、測定精度が向上した。もちろん、血中酸素飽和度(SpO2)測定にも対応している。
とはいえ、自転車乗車中はハンドルからの振動が直に伝わるため、上腕に取り付けるPolar Verity Senseや心電測定センサー(乳バンド)に比べるとどうしても測定エラーが発生しやすい。
光学式心拍計の実走テスト
心拍計の精度チェックのため、普段の練習コースで実走テストを行った。下のグラフは、左手首にForerunner 955、左上腕にPolar Verity Senseを装着してロードバイクで実走した時の心拍ログを示している。
乳バンドと殆ど誤差がなく、シクロクロスレースでも常用しているVerity Senseと比較すると、Forerunner 955は数か所で測定エラーが発生している。
- 1500~1600秒:心拍上昇の遅れ
- 1980秒:177BPMのスパイク(パワーを見てわかる通り、スプリントをしたわけではない)
- 2200秒:心拍数のドロップ
サイクリング時の測定精度については、fenix 6Sに搭載されていた第3世代センサーとあまり変わらない印象。
ローラー台でのインドアトレーニングではおおむね正確に測定できるが、実走時はあまりアテにしないほうが良さそうだ。
ソーラー充電システム「Dual Power」
Forerunner 955には「無印」のモデルと「Dual Power」があり、後者はソーラー充電機能を備えている。
ディスプレイをリング状に囲むソーラーパネルに加えディスプレイ面にも(低効率だが)透明なソーラーパネルが配置されており、ただでさえ長いガーミンウォッチの駆動時間を伸ばすことができる。
スマートウォッチモード | 15日間+5日間* |
GPSモード | 42時間+7時間** |
マルチGNSSマルチバンドモード(高精度) | 20時間+2時間** |
UltraTracモード | 80時間+30時間** |
*ソーラー充電、50,000ルクスの条件で1日3時間の屋外での終日着用を想定
**ソーラー充電、50,000ルクスの条件での使用を想定
消費電力の少ないスマートウォッチモードではわずかだが充電することもできるが、基本的には「Dual Power」ソーラー充電は積極的に充電するというより、給電することでバッテリー消費を抑え、ガーミンウォッチの駆動時間を伸ばすシステムと捉えるべきだ。
なおForerunner 955の場合、ソーラー非搭載モデルが74800円(税込)に対して「Dual Power」は84800円(税込)。その差額は1万円だ。
バッテリーライフを実測
フル充電後のバッテリーライフを実測してみた。
常時着用し、スマートウォッチモードで使用。ただし、合計1時間程度、サイクルコンピュータがわりにGPSモードを使用。ソーラー充電に関しては、平均して毎日1時間程度は日光に当たっていたと思う。
以上のような使い方で、まる8日経過時に残量20%になった。つまり、10日ほどの使用で電池切れになる計算。
これは「ソーラー充電無しで15日間」というカタログスペックに対して、かなり物足りないバッテリーライフだ。以前使用していたfenix 6Sは公称通り保ったのに。
なお、BluetoothやWiFiがバッテリーを異常消費するという不具合がフォーラムで報告されている。
ライフロガー機能
ガーミンウォッチを24時間身につけておくことで、健康状態をロギングして体調管理やトレーニングに役立てることができる。
心拍数、歩数、睡眠時間といった情報に加え、疲労状態を数値化したBody Battery、ストレスレベル、さらには、現在のトレーニング度合いの指標であるトレーニングステータス、今日トレーニングすべきかどうかをアドバイスしてくれるトレーニングレディネスなど、盛りだくさんの機能を備えている。
個人的には、Body Batteryの増減と起床時の心拍数を疲労度のバロメーターにしつつ、参考程度にトレーニングステータスやトレーニングレディネスを見ている。
なお、トレーニングレディネスはForerunner 955、fenix 7シリーズ等のハイエンド機種でしか利用できない。
GPSサイクルコンピュータ機能
GPSサイクルコンピュータとしては、Garmin Edgeの上位モデルとほぼ同じ機能を持ち、パワーメーターとのペアリングはもちろん、ペダリングダイナミクス表示やルートナビゲーションも可能。
特筆すべきは駆動時間で、通常のGPSモードならソーラー充電無しで42時間稼働する。
マルチGNSSマルチバンドモードは「みちびき」等の人工衛星も利用して位置精度が向上するがバッテリー消費量が増える。それでもバッテリーライフは20時間、ワンデーサイクリングなら十分に持つ。
画面は1~6項目を表示でき、数値だけでなく、グラフやゲージを表示することも可能。
ただ、6項目詰め込むと文字が小さくなるため、走りながら確認するのは厳しい。
物理的に画面サイズが小さいので、欲張らずに3~4項目くらいにとどめておくのが実用的と感じる。
サイクリングでの使用が中心になるなら、正直Edgeシリーズのほうがずっと使いやすい。
画面は大きいし、バイクのハンドル周りに固定できるため、目線を落とすだけでデータを確認できる。
例外的に、レース中に何度もバイク交換を行うシクロクロス選手は腕時計型のデバイスを愛用しているようだ。シクロクロスワールドカップの中継では、ゴール後腕時計を操作し、(おそらく)計測をストップしている選手を見かける。
なお私は、2台のバイクそれぞれにEdgeを装着している。レース中は時計しか見ていないが。
Suica内蔵
今やほとんどのガーミンウォッチが対応しているが、955もSuicaを内蔵しており、駅の改札やコンビニ、自販機で非接触決済を行える。
ランニングする人にとっては、財布もスマホも持たず手ぶらで走りに行けるので便利なようだ。
サイクリストはそこまで荷物を減らす必要は無いが、輪行時に改札を通るときには重宝する。
左手首に時計を着けている場合、ちょっと不自然に体をひねらなければならないが…
なお、SuicaはGarmin専用に新規に発行されるため、既に持っているSuicaを移行することはできない。
チャージはGarmin Connectアプリ上にてGoogle Payで行う。
ガーミンウォッチの機種変更や売却時は引き継ぎを行えないため、払い戻しの手続きが必要だが、手数料を200円ほど取られるため、コンビニで使い切ってから無効化するのがおすすめだ。
ソフトウェアの不具合
「ガーミンの新製品は買ってはいけない」という言葉がある。ガーミン製品は伝統的にソフトウェアがお粗末で、リリース直後はとんでもない不具合が山盛りだからだ。
幸いソフトウェアアップデートは頻繁に行われるため、半年くらい経って致命的なバグが解消された頃が「買い時」となる。
…まぁ、不具合があることを知った上で、進んでガーミン新製品の人柱になるマゾヒストも一定数いるんだけど
955シリーズの発売は2022年6月、私が購入したのが2023年1月。まぁ半年経ったし大丈夫だろう…と、そう思っていたが、あまり大丈夫ではなかった。
ガーミンフォーラムを覗くと、新鮮なバグ報告が常に飛び交っている。
突然フリーズする、再起動を繰り返す、といったガーミンデバイスにありがちなものから、心拍数がおかしい、バッテリー消費が激しい、ルートナビゲーションが行えないといったものまで。
どうしてこうなるのか。
スレッドをいくつか流し読みしていると、
- 機種ごとに開発チームが異なるのでリソースが分散し完成度が低くなるうえ、不具合も共有されない
- ソフトウェアエンジニアの雇用確保のためあえてバグを残している
なんて書き込みもあった。どうやら私だけではなく、全世界のユーザーがイラついているようだ。
なお私のForerunner 955の場合、スマートフォンへのプッシュ通知がガーミンウォッチに届かないことがある。
正直、完成度はfenix 6Sのほうがずっと高く、動作も安定している。
ガーミンは登山用GPSのほか、船舶や航空機用機器も手掛けているんだが、こいつらも似たような品質なんだろうか…
まとめ:ソフトウェアの完成度が足を引っ張っている
ガーミンウォッチを5~6台使ってきたが、現行モデルのfenix 7SやForerunner 955ともなると、一昔前のモデルから大幅な進化を遂げている。
数年前の機種と比べると光学式心拍計の精度はだいぶ良くなったし、画面は見やすく、駆動時間も長くなった。ライフログ機能も充実して、「ちょっと高級な万歩計」からトレーニングコーチに変貌した。
使い勝手の面でも、タッチパネルは良い意味で予想を裏切る出来だったし、スマートフォンアプリのGarmin Connectからデバイスの設定が行えるなど、細かい改善も図られている。
…それだけに、くだらないバグでユーザー体験を損ねているのが惜しい。
不具合修正のアップデートで新たな不具合を実装するのはもうやめよう。
ところで、2023年3月現在、既に新型のForerunner 965が発表されている(発売時期は未定)。
今まではおよそ2年ペースでモデルチェンジしてきたことを考えるとややイレギュラーなタイミング。今回のアップデートはディスプレイがタッチ対応AMOLED(有機EL)になり、筐体デザインが変更された程度で、機能面は955と変わらないようだが…
えぇ…また増えるの…