パナレーサーのロードバイク用タイヤ アジリストシリーズに、耐パンク性を高めた新モデル 「AGILEST DURO TLR」が追加された。チューブレスレディ対応で 700×25~32c 2カラーで展開される。
すくみずログはパナレーサー PRパートナーとして活動を行っています。
ちょっと「攻めすぎた」AGILEST TLR
2022年2月にデビューしたロードバイク用タイヤ「アジリスト」シリーズは、コンパウンドに新開発の「ZSG AGILE Compound」、ケーシング素材には「AX-Alpha Cord」を採用し、
- 高いグリップ力
- 低い転がり抵抗
- 振動吸収・路面追従性
を実現している。
特に路面追従性の高さは特筆すべきポイントで、体への負担が少ないことはもちろん、タイヤが跳ねないためトラクションが掛かるし、グリップも安定する。
チューブレスレディのAGILEST TLRは、この特性がさらに顕著になっており、チューブレスの恩恵が少ない25cであっても、同サイズのクリンチャー版と比べてハッキリと性能向上している。
適切な空気圧にセッティングすれば、傷んだ舗装でスプリントを掛けても、テクニカルなダウンヒルをハイペースで下っても、常にタイヤが地面に吸い付いているように感じられる。
AGILEST TLRは、タイヤとしての性能、すなわち重量の軽さとしなやかさを追求するため、攻めた設計がなされている。
タイヤ内側の空気保持層が最低限の厚さで、シーラントによってはうっすら滲んでくるほど。
さらにこのタイヤ、トレッド部に耐パンクレイヤーが存在しない。まるで、ヒルクライムやタイムトライアル、あるいはトラックレース用の決戦タイヤのようだ。
なぜアジリストTLRが耐パンクベルトを備えないのか?パナレーサーに問い合わせたところ「シーラントの使用が前提のチューブレスレディシステムの場合、貫通パンクはシーラントが塞いでくれるから」という回答を得た。
耐パンクベルトがあったほうが安心だが、無い方がタイヤは軽く、しなやかになる。レーシングタイヤとしては、過剰な耐パンク性よりも性能を取るべきと判断されたのだろう。
アジリストTLRレビュー
自転車のタイヤは、薄くしなやかであるほど路面追従性が高まり、転がり抵抗も減る。このアイデアは一見合理的に思える。
しかしシーラントは使用に伴って乾くため、定期的(2ヶ月ほど)な継ぎ足しが必要である。
特にタイヤが細いと頻繁に空気を入れる必要があり、シーラントの蒸発も早いように感じる。
実際に使ってみて、耐パンク性をシーラントだけに頼ったAGILEST TLRは、「ユーザーを選ぶ、少々攻めすぎたスペック」という感想を抱いた。
AGILEST TLR 25cの2000km使用後レビューでは、
「乗り心地とグリップ感は抜群で、レース用タイヤとしては最高だが、シーラント管理が必要なため運用が面倒」
とまとめている。
「運用がめんどくさいからクリンチャー使う」とか言ってる…
乗り心地の良さとグリップ感はAGILEST TLR最大の魅力で、この後クリンチャーのAGILEST(無印25c)に履き替えたら「こんなにゴツゴツしてたっけ?」と思ってしまった。
走ることだけを考えたら、やはりTLRのほうがずっと優れたタイヤだ。もしロードレースに出るなら、絶対にTLRを選びたい。しかし、性能と引き換えに運用面の問題を抱えているのも事実。
約5ヶ月、2000kmにわたって使ってみると
- シーラントが乾くとパンクに対して無防備
- 乾いたシーラントで重量増加
といったポイントが気になった。
https://skmzlog.com/panaracer-agilest-tlr-2000km/
SNSでも「パンクが不安なので買いづらい」という声はちらほら耳にしており、そんな声が届いたのか、あるいは流石にやりすぎた…と反省したのか、耐パンク性を高めた新モデル「AGILEST DURO TLR」が発表された。
僅かな重量増で耐パンク性能を強化
新モデル「AGILEST DURO TLR」の構造はAGILEST TLRに準ずるが、トレッド部に耐パンク性を高める「Pro Tite Belt」が追加されている。
パナレーサー社内のテストでは、AGILEST TLRと比べて耐貫通パンク性が2倍に向上しているという。
テストの結果、AGILESTシリーズで主に使用される「TF Super Belt」ではなく、DUROクリンチャーや旧Evo4シリーズの「Pro Tite Belt」が採用されている。
「DURO」という名がついているが、耐パンクレイヤーがサイドウォールを覆っているAGILEST DUROよりもむしろAGILEST(無印)に近い構造だ。
サイドウォールを補強するとタイヤのしなやかさが失われる上、重量も増加する。チューブレスタイヤの取り付け作業も難しくなるため、DURO TLRの耐パンクレイヤーはトレッド部のみとなっている。
そのためサイドカット耐性は無印TLRと同等だが、空気保持層があるため、クリンチャーに比べてTLRタイヤは(気休め程度には)サイドの強度が高い。
単純にDUROに空気保持層を設けるのではなく、バランスが取れた設計がなされていると思う。
参考情報だが、AGILEST DUROクリンチャーを基準とするとDURO TLRは
- グリップ力 20%向上
- 転がり抵抗 15%低減
を達成している。
タイヤの重量は700x25cで240g。28cでは270g。耐パンクレイヤー追加に伴う重量増加は20gに留められている。
ブラック/スキン 700×25~32cを展開
AGILEST DURO TLRは、サイドカラーが
- ブラック
- スキン(タンカラー)
の2色で展開。
サイズはAGILEST TLRと同じく25c~32cが用意される。
サイズ | AGILEST DURO TLR | AGILEST TLR |
700x25c | 240g | 220g |
700x28c | 270g | 250g |
700x30c | 290g | 270g |
700x32c | 330g | 310g |
今年追加された32cもラインナップされる。ワイドなチューブレスタイヤはめちゃくちゃ快適なので、履けるバイクを持ってるなら一度試してみてほしい。
これこそが「アジリストのチューブレス」標準モデル
モデル名にはDUROとついているが、むしろこちらが「アジリストのチューブレス」の標準モデルといえる。
基本的にはDURO TLRを選択し、耐パンク性を犠牲にしても軽さとしなやかさを追求する一部のサイクリストが「決戦用タイヤ」として無印TLRを選ぶようなスタイルになるんじゃなかろうか。
AGILEST DURO TLRの2023年6月に発売予定。価格は8,800円(税込)とされている。
サイクルモード東京2023(4月15日~16日 東京ビッグサイト)のパナレーサーブースで展示されるので、会場に足を運ばれる方はぜひご覧いただきたい。
私はパナレーサーのアンバサダーということで今回も先行して提供頂いているので、一足先に使い倒してまた実走レビューを行いたい。
それにしても、チューブレスレディのアジリストだけで、2種類×4サイズ×2色。タイヤメーカーは大変だ…