関西のシクロクロッサーの間で「マイアミ」と言えば、フロリダ州ではなくて滋賀県の琵琶湖岸を指す。
関西CX第10戦は、長い砂浜区間が選手を苦しめる名物会場、ビワコマイアミランド。
腕も脚もパンパンになるまで追い込んだが4位フィニッシュ。年末からの連続表彰台記録が途絶えてしまった。
1/30 関西シクロクロス第10戦 マイアミ
コースコンディション:砂 ドライ
リザルト:4位/57名(8周回 +1:34 順位7% フルラップ完走30名)
機材
Ridley X-Night Disc 1号車
- 前輪: ITLAB CX / Panaracer CGCX + Insert / 1.45bar
- 後輪: ITLAB CX / Panaracer CGCX + Insert / 1.45bar
※空気圧はPanaracer デュアルヘッド デジタルゲージ基準
動画
すくみずログ YouTubeチャンネルでレース動画を公開中
砂のマイアミ
同人誌「Cyclocross Deep Dive」のコース紹介にも取り上げた「マイアミ」。
マイアミと言ってもフロリダ半島ではなく、滋賀県のキャンプ場「ビワコマイアミランド」を指す。
琵琶湖岸の砂浜とヤシの木は、たしかにマイアミビーチを連想させる。
関西シクロクロスでは定番の会場で、希望が丘や堺浜と同じく、過去に全日本選手権も開催されている。
私がC1に昇格して初めて出場した全日本選手権が2010年のマイアミ(第16回大会)だったが、タイヤを取られる深い砂浜を飛ぶように走るトップレーサーに驚いた(そしてあっさり足切りされた)のを覚えている。
そう、マイアミの特徴は「砂」
細長い会場には長い砂浜を走る区間が設定され、すべての選手を苦しめる。
草地のコーナーセクションや、スピードの乗る舗装路もあるが、これらは砂区間のオマケ、脚を休める区間と言っても良い。
深く柔らかい砂はタイヤが沈み込み、大きな走行抵抗を生む。
砂区間を速く走り抜けるためには、この抵抗に打ち勝つパワーはもちろん、砂の硬い路面を選んだり、轍にタイヤを入れ、精密にトレースするテクニックが重要になる。
それができないなら、バイクを降りてひたすらランニングするだけだ。
シクロクロスのテクニックの中でも、砂区間ひとつで10秒の差がつくことも珍しくない。
砂の乗車テクニックについては、上で紹介した「Cyclocross Deep Dive」にて解説しているので、うまくなりたい人は読んでみてね!(宣伝)
試走とセッティング
関西CX第9戦 堺から2週間。砂浜のコツを掴んでおきたいので、前日試走は早めに行って反復練習…するつもりが、起きたら昼過ぎ。慌ててバイクを積み込んで会場に向かう。
1周下見して、急いで試走動画を撮って、アップロードは後回しにしてプラクティス。
コースレイアウトは昨年と概ね同様で、コーナーの作り方が多少変わっているくらい。
草地のヘアピンコーナーや松林のコーナーセクション、そして速度の乗る直線でも差はつくだろうが、やはり砂区間が最重要ポイント。
砂浜を制したものがレースを制すると言っても良い。
しかし、砂浜のコンディションは非常に変わりやすい。
轍ができれば走りやすくなるが、乗車率が低い下位カテゴリのレース後は踏み荒らされて難易度が上がる。
レース中もコンディションは刻々と変わるので、結局、レースを走りながら轍に合わせたり、路面の良好なポイントを探したりと、状況に応じた判断力が求められる。
前日試走・当日試走で、チューブラータイヤ含めいろいろ試してみたが、
最終的にはITさんからレンタル中のITLAB CXホイールとPanaracer CGCXチューブレス(タイヤインサート使用)を使用することにした。
砂コンディションでは空気圧を下げるのがセオリーとされている。それは、タイヤを潰して接地面積を広げるため。
柔らかい砂では、広い面積で荷重を支えることで、タイヤが沈みにくくなる。新雪の上をを歩くときに「かんじき」(あるいはスノーシュー)を履くのと同じ理屈だ。
そこで空気圧を下げるのだが、「どこまで下げるのか」がいつも悩みどころになる。
今回、チューブラーとチューブレス+インサートを乗り比べてみたが、砂レースでは今後チューブレス+インサートがベストになるかもしれないと思った。
私がチューブラータイヤで常用する空気圧は1.6〜1.7bar。これより下げると砂は走りやすくなるが、コーナーやストレートでタイヤがヨレてズルズルと滑ってしまう。
一方、チューブレス+インサートの場合、砂浜では低圧タイヤの恩恵に預かりながらも、コーナーや直線の加速、あるいはギャップを踏んだときはタイヤに掛かる荷重をインサートが支えてくれる。
今日のタイヤ空気圧は今季最低の1.45bar。通常であればヨレたりリム打ちしたりビードが落ちたりと、マトモに走れる空気圧ではないが、タイヤインサートを使用することで、この空気圧でもガンガン攻めていける。
リムによってはインサートを入れててもタイヤをこじったらエアが漏れる(ゲップ)が、ITLABホイールはビード保持性が良く、もともとエアが抜けにくいというのもポイント。
レースレポート
AJOCCランキング1位に返り咲いたのでゼッケンは1番、最初にコールアップされてグリッドへ。
時刻通りにスタート。1周目は達海に続く2番手。しかしタイム差がじわじわと開いていく。
希望が丘、堺と調子が悪そうだったが、すっかりコンディションを戻したようだ。
後続にも差をつけ、単独2位といった感じだったが、脚も集中力もフレッシュな1周目は砂浜区間でうまく乗車でき、達海との間についた10秒ほどの差を一気に詰めて、パックと言って良い距離感で2周目へ。
「このままパックでいけるかも」ってちょっとだけ思ったが、そんなに甘くなかった。
砂浜以外の区間、たとえばコーナーひとつ、直線ひとつ抜けるごとにジワジワと車間が開いていく。テクニックでもパワーでも敵わないので、当然なんだけど…
ここからしばらくは単独走。パワーと集中力が必要な砂区間は頑張って、他のセクションでは脚を休めながら走る。
ラップタイムは7分20秒前後に揃っている。
8周回のレースの半分、4周回を消化して、5周目。後列スタートのテッキ(梶 鉄輝)が追い上げてきて、砂浜から上陸するところで順位が入れ替わる。
直後に6周回目に突入。いったん開いた差を松林区間で取り戻したが、砂浜区間で再び引き離されてしまった。後ろから見ていても砂の乗りこなしがスムーズで上手い。
7周目に入って、現在3位。このまま表彰台を守りたいところだが、脚が終わってきた。瞬発力が出ないので、砂区間での「もうひと踏ん張り」が効かない。無理そうなところはランに切り替えていく。
毎周回数秒ずつ差を縮めてきたコータがついに追いついてきて、メインの砂浜で後ろに張り付かれる。かろうじて前を抑えたが、パックで最終周回へ。
湖岸道路側のコーナーセクションや松林内でパックの頭を取り合ったが、私が前でメインの砂区間へ。ここを守りきれれば3位。最後の頑張り。
砂区間では、序盤は杭側の轍をトレースし、途中からは水際の締まったラインを走るようにしていた。
集中力は必要だが、轍に合わせられればパワーをかなり節約できる。
しかし轍はだんだん荒れてきており、体力消耗もあってミス。失速してパタンと倒れてしまう。
この間にコータに先行を許し、一気に差をつけられてしまった。
風が出てきており、水際の路面が締まっていることに気づいたがすでに時は遅し。失意の4位フィニッシュでレースを終えた。
レースを振り返って
ほぼ限界まで追い込んで、レース後は酸欠で頭クラクラ、腕も脚もパンパン。帰宅後も不意に脚を攣るような始末で、今シーズン最もダメージが多いレースだった。
硬い路面を見極められていれば、あるいは轍のトレースがもっと上手かったら…とも思うが、体力的には出し切ったレース。
改めてラップタイムを見ると、順当な結果と言えるのではないだろうか。
信太山、くろんど池、希望が丘、堺と、4レース連続で表彰台に乗っていたが、ついに連続記録が途絶えてしまった。
あわせて、関西CXシリーズ総合優勝の可能性も(もともとかなり厳しかったけど)潰えた。
現在ランキング3位。2位の達海とは15ポイント差、4位の村田さんには48ポイント差となっていて、大きなトラブルがなければ総合3位となりそう。
一方で、ここに来て総合優勝の行方がわからなくなってきた。1位のコータと2位の達海の総合点は14ポイント差で、最終戦で達海が優勝、コータが3位以下なら逆転する。
そんな総合争いも気になるが、私には私のレースがある。
関西シクロクロス最終戦 桂川では、再び表彰台に乗れるようにコンディションを整えていきたい。
応援・撮影・サポートありがとうございました。