GARMIN Edge 840 Solar ソーラー充電とバッテリー駆動時間を検証

2023年4月に発売されたガーミンのGPSサイクルコンピュータ Edge 540/840シリーズ

タッチパネルとソーラー充電を搭載したEdge 840 Solarを購入したので、バッテリーのランタイム、特にソーラー充電について検証を行った。

Edge 540/840のバッテリー駆動時間

バッテリーライフが1.5倍に

Edge 530/830から数えて4年ぶりのモデルチェンジとあって、Edge 540/840では、高精度GPS搭載やパワーメーター連携など、様々な機能がアップデートされている。

GPSサイクルコンピュータとして重要な性能指標であるバッテリー駆動時間も従来モデルより大幅に伸びた
Edge 530の駆動時間は通常のGPSモードで20時間だったが、Edge 540/840は、高精度だが消費電力の多いGNSSマルチバンドモードで26時間使用可能。さらに、ソーラー充電を加えると最大32時間のバッテリーライフとなる。

※75000ルクス(晴天)下において

 Edge 540Edge 540 SolarEdge 840Edge 840 SolarEdge 530Edge 830
ソーラー –
本体サイズ57.8 x 85.1 x 19.6 mm50 x 82 x 20 mm(公称)
51.8 x 85.8 x 20.2(実測)
画面サイズ2.6インチ
246 x 322
2.6インチ
246 x 322
重量80.3g84.9g84.8g88.9g75.8g79.1g
稼働時間26時間32時間26時間32時間20時間20時間
バッテリーセーブモード42時間60時間42時間60時間データなしデータなし
メモリ16GB32GBデータなしデータなし
価格(本体のみ)¥54,800¥69,800¥74,800¥52,800
価格(セット)¥69,800¥74,800¥64,780¥74,800
Edgeシリーズ スペック比較表

ただし、Edge 540/840の駆動時間は、GPSモードやバックライト輝度その他設定の影響を受ける。

GPSモード

Edge 540/840のGPSモードは、以下の4種類から選択でき、それぞれ位置精度と消費電力が異なる。

  • マルチGNSSマルチバンド…高精度
  • マルチGNSS…バランス
  • GPS…節電
  • 自動選択

マルチGNSSマルチバンド

GPS(米国)に加えて、GLONASS(ロシア)、Galileo(欧州)、BeiDou(中国)、QZSS(みちびき:日本)といった複数の衛星測位システムを利用し、さらに2つの周波数帯の信号を用いることで、山間部や高層建築が並ぶ都市部といった、電波干渉の多い状況でも、高い位置精度を実現できる。一方で消費電力が大きく、バッテリー駆動時間が短くなってしまうというデメリットがある。

マルチGNSS

GPS(米国)に加えて、GLONASS(ロシア)、Galileo(欧州)、BeiDou(中国)、QZSS(みちびき:日本)といった複数の衛星測位システムを利用することで、位置精度を高めるモード。

GPS

GPS衛星の信号のみを利用する。最も消費電力が少なく長時間の使用が可能だが、位置精度が良くない。

バックライト輝度の影響

Edge 540/840のバッテリー駆動時間は、バックライト輝度に影響される。

特にバックライト輝度80%以上だと、駆動時間は大幅に減少する。

GPSモード・バックライト輝度とランタイム対応表

バッテリー節約の設定画面で、推定駆動時間を確認することができる。

この推定駆動時間はバッテリー残量、GPSモード、バックライト輝度によって変動する。

バッテリー満充電時の推定駆動時間一覧をまとめると下表のようになった。

なお、バックライト点灯時間の設定(15秒~常時点灯)は、推定駆動時間に影響しなかった。

GPSモード/バックライト輝度自動0%10%50%100%
マルチGNSSマルチバンド24時間41時間32時間19時間5時間
マルチGNSS28時間52時間38時間21時間5時間
GPS29時間58時間42時間22時間5時間
自動選択29時間58時間42時間24時間5時間
Edge 840 Solarのランタイム

表からは、GPSモードよりバックライト輝度の影響が大きいことが読み取れる。
ブルベなどの長丁場では、なるべく輝度を下げると良いだろう。

カタログ値の「26時間」がどこにも出てこない点が少々気になる。

ソーラー充電

Edge 540 Solar / Edge 840 Solarは、ディスプレイ周辺部にソーラーパネルが埋め込まれている。また、ディスプレイ表示部にも透明なソーラーパネルが内蔵されている。

基本的な仕組みは、ForerunnerやFenixシリーズに採用されている「Dual Power」と同等と思われる。

Edge 540/840の駆動時間はカタログ値で26時間だが、晴天下に相当する75000ルクスの環境下では6時間延長され、合計32時間の使用が可能となる。

計算すると、1時間あたりのバッテリー消費量は

100÷26=3.85 [%/h]

ソーラー発電時は

100÷32=3.13 [%/h]

となる。つまり1時間あたりの発電量

3.85-3.13=0.72 [%/h]

となる。

言い換えると、理想的な日射条件下で1時間使用すると、11分30秒ぶんの電力を得られる

ソーラー充電というよりは、消費電力の一部をソーラー発電で賄っているという表現が適切だ。

ソーラー発電の状況は、トレーニングページの「ソーラー」で確認できる。
太陽光の平均強度と、ソーラー充電で得た駆動時間も表示される。

1時間42分59分の使用で、太陽光の平均強度79%。21分40秒ぶんの電力を得た。

Edge本体がスリープ中、あるいは電源オフの状態でもソーラー発電は行われる

先の計算を踏まえると、3時間放置すれば2%程度の充電が見込めるが、太陽光によるバッテリー過熱を考えるとあまりおすすめできない。素直にUSB充電するほうが良いだろう。
なおUSB充電中はソーラー充電が行われない仕様となっている。

バッテリー消費量を実測

アワイチ(淡路島一周) 約160kmのライドでバッテリー消費量を実測した。
テストを行ったのは4月。天気は快晴で、常に日が差している状況だった。

Edge 840 Solarの設定

  • GPSモード:マルチGNSS
  • バックライト輝度:自動
  • バックライト点灯時間:1分
  • Ant+センサー:パワーメーター(Infocrank)、心拍計(Polar Verity Sense)

8時間22分(走行時間は5時間34分)のライドで、

  • 太陽光の平均強度:74%
  • 獲得バッテリー:1時間44分2秒
  • バッテリー残量:99%→78%(-21%)

となった。

発電量

計算すると、1時間あたり、12.6分ぶんの発電量となっている。

ソーラー発電量はGarmin Connect上でも確認できる。

グラフ中央付近、フラットになっている部分は昼食休憩中

バッテリー消費量

次に、推定バッテリーライフを計算する。前述の通り、バッテリー残量は99%→78%、21%の減少だった。

今回は8時間22分のライドだったが、昼食休憩で50分ほどスリープにしていたので、電源オンの時間は7時間30分ほど。

すなわち計算上は、100%→0%のランタイムは35時間40分となる。

※常に日光があたっていれば

ちなみにソーラー発電を除外した場合は、推定値だが約29時間となる。

99%→78%

まとめ:内蔵バッテリーで29時間、ソーラーで+2割のバッテリーライフ

Edge 840 Solarは、GPSやバックライトの設定で駆動時間が大きく変動するが、標準的な設定(マルチGNSS+バックライト自動)の場合は7時間30分(走行時間5時間34分)のサイクリングで約21%のバッテリー消費であった。

ここから、十分な日照がある際はおよそ36時間のバッテリーライフ。ソーラー充電が行えない状況でも、29時間程度は持つ計算となる。

GPSサイクルコンピュータの駆動時間というのはサイクリストにとってかなり重要な要素なのだが、製品によっては少々無理のある値を記載している事がある(バックライトオフ、外部センサー接続無し等)。
そういったなか、ガーミン製品のカタログ値は実用値に近いことが改めて実証できた。