Panaracer GravelKing SS 700x38C F738-GK-SS
センタースリックパターンにサイドノブを組み合わせた構成で、転がりの軽さとオフロードグリップの両立を目指したグラベルタイヤ。
「長い舗装路アプローチと少しのグラベル」という日本のグラベルシーンにマッチするのはもちろん、ロードタイヤでは躊躇するような、アスファルトがひび割れ、堆積物が積もった荒れた舗装路でも安全かつ快適に走れる。
パナレーサー PRパートナーとしてプロモーション活動を行っています。
本品はパナレーサー株式会社様より提供いただいた製品です。
長所 -Pros-
- 舗装路ではロードタイヤのように転がる
- エアボリュームに富み、乗り心地が良い
短所 -Cons-
- ビードが緩めでリムとの相性を選ぶ
- オフロードでのグリップは控えめ
グラベル用タイヤ「グラベルキング」シリーズ
「グラベルキング」は、パナレーサーのグラベル向けタイヤブランド。オンロードとオフロード両方の要素に対応できるというコンセプトで、どんな路面にも踏み込んでいける。
グラベルブーム
数年前、北米で注目されはじめた「グラベル」。
舗装された道路(ターマック)ではなく、山の中の登山道(トレイル)でもない。
グラベルは、ダブルトラックというかダートというか、「地道」というべきか、とにかく、乗用車でも走れるくらいには平坦だが、舗装されていない道路を指す。
正直、道路状況の良い日本では流行らないと思っていたが、ロードバイク向けディスクブレーキの普及にも後押しされ、「グラベルロードバイク」は数年のうちにすっかり1ジャンルを築いてしまった。
グラベルロードは、純粋なロードバイクでは履けない32c以上、実際は38cや40cといったタイヤを履き、オンロードもオフロードも走れる。バイクパッキングスタイルでのツーリングにも対応し、車種によってはシングルトラックにも踏み込める、そんな多用途さが人気なんだろうか。
あるいは、ロードバイクで舗装路をサイクリングする事に、みんな飽きてきたのかもしれない。
さて、そんなグラベルライド向けのタイヤがグラベルキングで、グラベルロードバイクの用途に合わせ、オンロードでの軽快さとオフロードでのグリップ、さらには衝撃吸収性も重視されている。
走行性能と耐久性の両立
基本的に、タイヤは薄くて弱いほど性能が良い。極薄のケーシングにペラペラのトレッドを貼り付けたタイヤは、路面の凹凸に沿って変形するため乗り心地がよく、跳ねにくくグリップも良い。また、トレッドゴムのヒステリシスロスも少ないため転がりが軽い。
ハンドメイドの高級チューブラータイヤは、コットンや絹のケーシングに薄いトレッドを貼り付けた構造をしている。
しかし、そういうタイヤは突き刺しパンクやサイドカットに対して無力なため、耐久性を高めるためにサイドをゴムで覆ったり、パンク防止レイヤーを挟んだりする。そうするうちにタイヤは硬く、重くなっていく。
この辺りがタイヤ設計のジレンマになっている…はず。
実際の製品では取捨選択を行っており、ヒルクライム用タイヤは軽さを最優先する一方でロードレース向けタイヤはトレッド面のみパンク防止ベルトが設けられていたりする。
ツーリングや街乗り向けタイヤはトラブルを減らすため、サイドまで保護層を回り込ませている。
グラベルキングは、サイドカットのリスクもあるオフロード走行に備えて、サイドまで耐パンクケーシングに覆われている。
また、さらにシビアな使用状況にあわせて、トレッドを中心に耐パンク性能を高めた「グラベルキング プラス」もラインナップされている。
用途に合わせた3種類のトレッド
多様なグラベルライドのスタイルに合わせて、グラベルキングは3種類のトレッドパターンが用意されている。
- GravelKing(無印)…スリック
- GravelKing SK…細かいブロック
- GravelKing SS…センタースリック
オンロードでの転がりを重視したGravelKing、オフロードでのグリップを重視したGravelKing SK、
そして、両者の中間的な性格を持ったGravelKing SSといったところか。
タイヤ幅のバリエーションは豊富で、無印とSKは耐パンク性を高めた「PLUS」モデルもあるし、カラーも黒と茶の2種類あってバイクに合わせやすい。
こうやって表にまとめると、種類の多さに目眩がする。ユーザーとしては選択肢が豊富なのは良いことだが…
なお、32C以上はチューブレスに対応している。
Panaracer GravelKing SS
グラベルキング「SS」は、スリックパターンのグラベルキング(無印)と、ブロックパターンのグラベルキング「SK」の中間的な性格を持つセミスリックタイヤ。
トレッドパターン
転がりの軽さとコーナリングのグリップを両立するため、トレッドパターンは部位によって異なる。
センター部分は「杉目」のような雰囲気のジグザグに走る筋状のパターンで、実質的にスリックといえる。
一方で、バイクを倒し込んだ時に接地するサイドは、グラベルキングSK譲りの、進行方向に長い長方形のブロック。
そしてその間には、ダイヤ状の細かいノブが敷き詰められている。
この細かいダイヤノブは「SS」独自のものだが、転がり優先のセンター、グリップ優先のサイドの間の緩衝材となることで、急激なグリップ変化を抑えているのだろうか。
タイヤ幅
サイズラインナップは、700c用がクリンチャー仕様の28cと、チューブレスレディの32c,35c,38c,43c。
650Bサイズは48のみ用意されている。
サイズ | 重量 |
---|---|
700x28c | 310g |
700x32c | 330g |
700x35c | 380g |
700x38c | 410g |
700x43c | 480g |
650Bx48 | 540g |
グラベルライドで使うなら、(700cの場合)35c,38c,43cあたりが適正だろうか。
タイヤ幅が細いほど軽量になり、加速しやすくなる一方、空気圧をあまり下げられないのでオフロードでの乗り心地が悪くなり、リム打ちパンクするリスクも上がる。接地面積が少ないのでグリップも低く、不安定になる。
逆に、太いタイヤは重たく加速しにくいが、タイヤの「高さ」があるため、低圧で運用してもリム打ちしにくい。ボヨンボヨンと変形して路面の凹凸を吸収するため、安定してペダリングを続けられるし、体へのダメージも抑えられる。
グリップの面でも有利だ。跳ねにくくグリップが安定するうえ、接地面積が稼げるので挙動も穏やかでコントロールしやすい。
まとめると、舗装路での軽快な加速が欲しいなら細いサイズ、グラベルでの衝撃吸収とグリップを重視するなら太いサイズ、ということになる。
今回は、スタンダードといえる38cを選択。キャニオン グレイル購入から1年間、約4000kmにわたって、舗装路にグラベルに、様々なシチュエーションで使用した。
使用空気圧
タイヤ空気圧が高いほうが転がりが良いと思われがちだが、タイヤが跳ねると転がり抵抗は急激に増加する。そのため、荒れた道では、太いタイヤを低圧で使うほうが転がりも良い。(細いタイヤはリム打ちしやすいため、空気圧を下げられる限界がある)
最適な空気圧は、ライダーの体重のほか、タイヤ幅・リム幅はもちろん、乗り方や好みによっても変動する。
基準となる空気圧の算出にはSRAMの空気圧ガイドが便利だ。
体重やタイヤ幅などを入力すると、最適空気圧を算出してくれる。
この空気圧を基準として、舗装路でヨレるのが気になるなら高め、グラベルで弾かれるなら低めにする。
エアゲージで空気圧管理しておくと、好みの乗車感をいつでも再現できる。
体重68kgの私の場合、700x38cで2.5~2.8bar程度が適正だった。
取り付けとビード上げ
レイノルズATRとの相性は×
まずは、グレイルに付属したカーボンホイール、レイノルズ ATRに取り付け。
リムハイト40mmでリム内幅は23mm。「All Terrain Road」の名の通り、太いタイヤにも対応するグラベル向けカーボンチューブレスホイールだ。
さっそくグラベルキングSS 38cを取り付けてみると、新品タイヤが素手で簡単に嵌まって不安がよぎる。
…悪い予感は当たり、何度やってもビードが上がらない。
ビードに石鹸水を塗り、バルブコアを外し、チューブレスタンクを使って高圧エアを一気に送り込んでもエアが漏れてしまう。
リムに貼るチューブレステープの巻数を変えたりしてみたが根本的な解決にはならず、諦めてチューブを入れてクリンチャー運用することに。
ビードの上がりやすさはチューブレスタイヤとチューブレスリムの相性で決まるのだが、レイノルズATRとの相性は今までの経験上最悪の部類だった。
MavicのUSTリムでチューブレス化
そんなこんなで長期間クリンチャー運用していたのだが、ニセコグラベル スプリングライド出場にあたって、ホイールをMavic Allroad SLに交換した。
Allroad SLは内幅22mmのグラベル用アルミホイール。切削加工で軽量化されたフックレスリムはニップルホールレスで、USTチューブレスに対応。ビード外れを防ぐ「ハンプ」もしっかり盛り上がっている。
グラベルキングSS 38cは少しビード径が大きいのか、嵌め合いが緩めではあるものの、エアタンクで空気を送り込んだらあっさりとビードが上がった。
リムテープ不要のニップルホールレスリムなのでテープがズレてくる心配もなく、安定してチューブレス運用できている。
なお、その後履き替えたグラベルキングSK 43cはSS 38cよりもきつめで、ビードも上がりやすかった。同じグラベルキングシリーズでも、種類や幅によって違いがあるようだ。
良好な転がり性能
道路事情の良い日本。「グラベルライド」といえど、舗装路走行は避けられない。
北海道のニセコグラベルですらグラベル率は半分。残り半分は舗装路だ。
家から自走でグラベルライドに行く場合など、9割以上が舗装路走行。となると、舗装路での転がりの軽さは極めて重要になってくる。
グラベルキングSSのセンターはスリックパターン。グラベルタイヤではあるが、舗装路をロードバイクのように(とまでは言いすぎかもしれないが)軽快に走ることができる。直進時はほとんどロードノイズが聞こえない。
エアボリュームに富むため、荒れた舗装ではロードタイヤよりずっと快適で、バイクが跳ねない分むしろ速いくらいだ。
もちろん、グラベルでも転がりの軽さは健在。ハードパックの路面を走り続けるような状況ではセンタースリックが活きる。
だだっ広い平地を走り続けるような長距離グラベルレース(ガーミン・アンバウンドとか)だと、こういうタイヤが好まれるようだ。
オフロードグリップは控えめ
前述のように、グラベルキングSSは3種類のトレッドパターンで構成されている。
- センター:スリック(筋状)
- センター両脇:ダイヤノブ
- サイド:長方形ブロック
バイクが直立した直進時はセンタースリックとダイヤノブが接地しており、ほとんどスリックタイヤのようにふるまう。
転がりの軽さを実現しつつも、ハンドルで修正舵を与える時はダイヤノブがグリップするため、土の上でもハンドリングの不安感は少ない。
バイクが傾くと、長方形のサイドノブが接地し始める。
未舗装路のコーナリングでは、ダイヤノブに加えて、このサイドノブが路面に食いついてグリップを稼ぐ。
とはいえ過信は禁物。タイヤ全体がノブに覆われ、接地面全体で路面を掴むグラベルキングSKと比べるとグリップは低い。
グラベルの下りコーナーでは特に前輪グリップに不安を感じる。ガッツリグラベルを走るなら、フロントだけでもSKを履きたいと思った。
とはいえ、私はMTBやシクロクロスをやっているため、ハイグリップなオフロードタイヤに慣れているだけかもしれない(SKでもグリップ不足を感じるし…)。
一方、舗装路のコーナリングにおいては、グラベルキングSKのようなノブがヨレる感触がなく、安定している。
このタイヤを様々な路面で使って、最も好印象だったのは山奥の舗装路。アスファルトが痛み、砂利が浮いていたり、水が流れていたり、葉っぱが堆積していたりする道路は、ほとんどグラベルのようなもの。
ロードタイヤだと慎重な走りを要求されるような状況だが、タイヤの太さとノブに助けられて、安全かつスムーズに下ることができた。
耐久性と耐パンク性
グラベルキングのコンパウンドは柔らかめだが、幅が太く接地面が広いため、耐久性は悪くない。
約4000kmの使用で後輪の筋状パターンはほぼ消えたが、前輪はまだ模様がわかる程度。完全に摩耗するまで使うのであれば、まだまだ走れそうだ。
ただ、舗装路の峠の下りでかっ飛ばした結果サイドノブが負けて、付け根にひび割れが出始めていた。
パンクは1度も経験しなかった。これほどタイヤが太いと、(しっかり空気圧管理していれば)不意にリム打ちパンクするリスクはかなり低い。
貫通パンクに対しては運だろう。尖ったものを踏んだらパンクすると思う。
ハイスピードでグラベルを走るとそれなりにダメージはあり、ニセコグラベル・スプリングライド後にタイヤを確認すると、サイドカット寸前の状態だった。
ハードなグラベルライドではやや不安を感じるが、サイドを強化するとタイヤが硬くなり、路面追従性やグリップ、乗り心地が犠牲になる。
タイヤの性能と耐パンク性のバランスを取った結果が現在のグラベルキングSSなのだろう。
なお、グラベルキング(無印)とSKに関してはサイドを強化した「Plus」モデルがラインナップされているが、SSには存在しない。
まとめ:グラベルライドから秘境ツーリングまで
舗装路の平地、峠越え、グラベルも川沿いの平坦路から林道、天気も晴れ、雨、雪の日まで、様々な状況で乗ってみたが、グラベルキングSSは、舗装路向けのタイヤにグラベル対策をした、というような印象を感じた。
(もっとも、グラベルタイヤというジャンルはグリップより巡航性能を重視しているのだが)
ハイスピードで巡航できて、グラベルにも対応できるグラベルキングSS。舗装路8~9割、グラベルが1~2割、というようなライドではベストな選択肢になると思う。
もちろん、その僅かなグラベルを最大限楽しむためためのタイヤを履く、というスタイルを否定するわけではない。特に日本のグラベルは曲がりくねった未舗装林道が大半だし…
また、舗装路であっても、交通量の少ない山奥の道路は荒れていることが多い。アスファルトが剥がれ、堆積物が積もった路面はほとんどグラベル。
こういう状況では、太いタイヤの衝撃吸収性と、ノブによるグリップが活きる。
人里離れた山奥をライドするなら、舗装路を快走できて、荒れた路面にも対応できるグラベルキングSSは有力な選択肢の一つになると思う。
ところで、日本のグラベルイベントは未舗装林道をメインにルートを組まれることが多い。
曲がりくねった未舗装ダウンヒルがつきものなこういうライドでは、バイクの安定感に影響が大きい前輪にSK、転がり抵抗が影響する後輪にSSを履いて、グリップと転がりを両立するというのもアリだと思う。
ニセコグラベルでは、パナレーサーの中の人がそういうセットアップで走っていた。