茨城県土浦市、霞ヶ浦のほとりで開催されたシクロクロス全日本選手権。
土浦駅からほど近い都市型レースは平坦基調のスピードコース。天候にも恵まれ、暖かい中でのレースとなった。
スタートは5列目だったがうまく上がれて10位台で展開。脚を削られ後半はタイムが落ちたが、10周回のハイスピードレースを20位で完走した。
12/12 第27回全日本自転車競技大会 シクロクロス in 土浦
コースコンディション:晴れ、ドライ草地+硬めの泥、舗装路
リザルト:20位/81名(10周回 +3:48 順位24% フルラップ完走30名)
機材
Ridley X-Night Disc 2号車
- 前輪: Prime RP-38 / TUFO PRIMUS 33 SG / 1.4bar
- 後輪: Mavic Allroad SL / Panaracer CGCX / 1.8bar
※空気圧はPanaracer デュアルヘッド デジタルゲージ基準
動画
すくみずログ YouTubeチャンネルでレース動画を公開中
12回目の全日本参戦
27回目を迎える全日本自転車競技選手権大会シクロクロス。
私にとっては12回目の全日本参戦となる。
シクロクロスのレースには、公式戦であるAJOCCレースだけでも地方ローカル戦、JCXレース、UCIレースなどがあるが、全日本選手権は国内レースでは最も格式ある大会。
プロ選手、あるいはプロを志す若者にとって、有力チームに入り、より良い環境で走るためには、全日本タイトルは極めて大きな意味を持つ。
プロレーサーの就職活動において、日本一の称号であるナショナルチャンピオンジャージはこれ以上ないアピールポイントだ。
一方で、趣味として自転車競技に取り組むホビーライダーにとっても全日本はやっぱり特別なレース。
私にとっては、いま自分はどれくらい速いのか、実力を確かめる年に一度の全国模試だ。
大事なレースなので、選手もスタッフもみんな緊張しているし、優勝候補たちは特にピリピリしている。
そんな雰囲気なので、もう10回以上経験しているが、どうしても体が強張ってしまう。普段どおりリラックスしてレースに臨むのは難しい。
レース後半のパワー不足を実感している今シーズン。納得の行くリザルトを残せるのか。そもそも完走できるのか。実は、前週のマキノが終わってからずっと気持ちが落ち着かなかった。
後方スタートなので渋滞に引っかかって早々に足切りされたらどうしようとか、柄にもなくネガティブなことを考えていたが、
結局レース前夜、風呂に浸かりながら「目的は成績を残すことじゃなくて、今の実力を出し切ることだ」と思い至って少し気が楽になった。
600kmの遠征
今年の会場は茨城県土浦市。関西からはかなりの距離があるので、金曜日を移動日とした。
大阪の自宅を朝に出発し、途中36隊の松井夫妻の車に同乗。車内は至って快適だったが遠いものは遠い。
自宅からの所要時間はおよそ10時間。会場付近に到着した頃にはすでに日が沈んでいた。
36隊は土曜・日曜両日参戦するメンバーがいるので、土曜日の朝に設営。
土日とも確保した有料の優先駐車場にタープを張って、テーブル置いて、椅子を並べて、ほぼデイキャンプ状態に。36隊の組織力すごい。
駐車場は1日5000円となかなかのお値段だったが、コース脇にあり、招集地点や本部へのアクセスも良く、参戦、観戦、サポート何をするにも便利だった。
人数が多いなら、土浦駅前コインパーキングの10倍の料金を払う値打ちはある(…と思いたい)。
コース試走
今年の全日本選手権は土浦駅から1kmほどという都市型大会。会場は霞ヶ浦のサイクリングロードに隣接したサイクルステーション「りんりんポート土浦」
草地と、隣接する陸上競技場に設営されたコースは基本的にフラットだが、土手を利用して高低差が作られている。
コース試走は土日とも朝と昼に時間が設けられたが、私は土曜の朝昼と、日曜昼に試走。
土曜日の朝は全体的なコースの確認(と試走動画撮影)、土曜日の午後は2時間ほどあったので、じっくりとコース攻略をした。
前のセクションからのつながりを見つつ、しっくりこない場所は何度も反復。
そのせいでライセンスコントロールが割とギリギリになってしまい、関係者には心配を掛けてしまった…すみません。
日曜昼は路面コンディションの最終チェック。このタイミングで使用タイヤと空気圧を決定した。
さて、試走では、スピードが重要なコースという印象を受けた。
高いアベレージスピードを保つためのパワーはもちろん、路面の起伏やグリップ変化に対応するテクニックが成績を左右する。
コースの大半を占めるのは平坦な草地だが、路面の起伏をうまく活かしてあり、スピードレンジが上がると途端にコーナーがキツくなる。
例えば、少し傾斜のついた連続コーナーでは、オーバースピードでラインが乱れると次の進入で大幅な減速を強いられるため、うまくスピードをコントロールしてやらないと気持ちよく曲がれない。
また、路面コンディションの変化も厄介。
草地は安定して高いグリップが得られる一方で、地形が低い場所は水はけが悪く、泥になっている。
そして、舗装路に出たらすぐさまトップスピードに乗せなければならない。
レースを観戦していると、草地から舗装路に出る直角コーナーでは落車が頻発していた。ハイグリップな草地の感覚で舗装路を曲がろうとして、泥の乗ったタイヤが滑る。
転倒自体が大幅なタイムロスになるうえ、舗装路での転倒は身体・機材ともにダメージが大きい。
一番の難所は、急勾配の土手下りと登り返し。
スピードをつけて進入すれば乗車はそこまで難しくないが、ラインを外したり前に詰まってしまったりするとタイムロスになる。
このセクションはコントロールライン500m手前という絶妙な位置にあり、ここで遅れるとゴールスプリントへの参加権を失う。
先行する選手には大きなプレッシャーがかかるし、追う選手にとってはチャンスになるポイント。実際、ここではいくつものドラマがあった。
他カテゴリのレース
それぞれの選手が、それぞれの思いを持って参戦する全日本選手権。
どのカテゴリでも見どころのあるレースが展開される。
じっとしているのも落ち着かないし、どんなラインで走っているのかも気になるので、時間に余裕があるときはなるべく観戦した。
シングルスピード(エキシビジョン)
土曜日のオープニングレースとなったシングルスピードでは、普段からシングルスピードバイクでシクロクロスに参戦するコッシーが悲願の初優勝。
過去4回の全日本でタイトルを取れていないコッシーだが、今年は例年になくパフォーマンスを上げ、野辺山のシングルスピードで優勝。誰もが全日本優勝に期待していた。
レースでは先頭パックを守りつつも最終周回で転倒。しかし、土手の上りで失ったタイムを取り返した。
ホームストレートに先頭で帰ってきてそのままフィニッシュ。普段のシクロクロスレースでも一貫してSSCXで参戦する「フルタイムシングルスピーダー」の意地を見せた。
マスターズ
その後の年齢別カテゴリでは、盤石のレース運びをした村田さんの2連覇を見たり、(知らなかったとはいえ)40代の部に参戦していたつくば市長にガヤを飛ばしてしまったり。
U23
大会2日目の日曜日はホテルでゆっくりしてから遅めに会場入り。
11時スタートのU23は、普段関西クロスで一緒に走る若者たちが何人か走る。
ライバルを心から応援できる数少ない機会だし、実力が近い選手の走り方を観察できる場でもある。
個人的な推しは、今シーズン急速に力をつけている岸君。加古川シクロクロスでは私と村田さんを破り優勝している。しかもめっちゃ素直ないい子。
さて、関西CX勢の結果は、今季C1で暴れまわっているたつーみが4位、欧州ロードレースで結果を出している津田くんが5位、テクニックが光る堀川コータが7位。
岸君はバイクの変速トラブルもあって沈んだが、後半は走りが安定してきて持ち直し、18位完走だった。
一方その頃僕は、岸君の妹さん(美人)の観戦アテンドでめちゃくちゃ緊張していた。
あれに比べると、自分のレース直前はずいぶんリラックスできていたと思う。
レース準備
昔はロクにアップもせず走っていたが、12回も全日本CXに出ると相応に経験を積み、良い走りをするにはどうすればいいか、だんだんわかってくる。
同時に歳もとって無理が効かなくなってきているし、予め準備できることはなるべくやっておく。
まずはバイク。遠征に先立ち、バイクの駆動系オーバーホールとフレームにコーティングを済ませてある。
タイヤは、舗装路が多いのでフロントFMB SLALOM、リヤFMB SPRINT…のつもりだったが、当日昼試走でリヤの落ち着きがなかったので急遽変更。
フロントは安心と信頼のTUFO PRIMUS、リヤはPanaracer CGCX TLCに。空気圧はいつもどおり。
CGCXはとにかく舗装路の転がりが軽い。欠点は泥はけが悪いことだが、泥区間はそこまで長くないので問題なくイケると判断した。
なお、FMBのSLALOM(リヤ)はトレッドが剥離していた。これは出発後に気づいた。ちゃんとチェックしとけ僕。
身体のほうは、いつものルーチンをちょっとリッチに。
朝ごはんは8時頃にしっかり食べて、あとはジェルを吸って食いつなぐ。
昼試走を終えた13時頃からは、36隊のブースでお通夜。レース前の憂鬱な時間を仲間と共有する。
スタート1時間前あたりになると、一人また一人と、全てを諦めた顔でレースの準備をしはじめる。
今回、アップオイルを塗ってもらうためだけに専属マッサーを召喚。イナーメのCX用アップオイルを塗ってやる気を高める。
スタート40分前にプレワークアウトジェルを吸い、周囲のエリート選手たちがローラー台を降りた頃合いに、ぼちぼちアップ開始。
今回はゲン君のFEEDBACK Portable Bike Trainerを拝借。ミノウラFG220に比べて高い負荷を掛けられるので、強めのインターバルができる。
ウォーミングアップは、まずはジワジワを負荷を上げて、ある程度息が上がってきたら、スタートダッシュを想定したインターバルを数セット。
身体が十分に暖まって、レース中の心拍数まで上がれば良しとする。
一息ついてトイレに行ったら、いよいよ招集へ…
レースレポート
JCXレースにマトモに遠征していないうえ、UCIポイントも取りそこねたので、ゼッケンは38番。5列目からのスタート。
シクロクロスでは、スタート位置が非常に重要。多少リスクをとってでも前に上がらないと、先行する選手にどんどん差をつけられてしまう。
14時30分に号砲。陸上競技場のトラックから81名の選手が一斉に走り出す。
スタートは絡んで落車することも多いので緊張するが、今回は路面が良いおかげもあって危ない場面はなかった。
前に並んでいたチームメイトの岩田さんが綺麗に飛び出してくれたので、後ろについていって一気にジャンプアップ。ホームストレートでさらに踏み足し、20番手以内でホームストレートを抜ける。
ピットエリアを抜けると、1列に隊列が伸びる連続コーナー。序盤前の方に上がれて本当に良かった。
レース周回数は、近年の全日本では最多の10周回。前半はパックに入り、15位前後をキープ。一時は11位パックに入り、10位の選手が数秒前に見える場面もあった。
コースコンディションはだいぶ良くなってきており、泥セクションは綺麗にラインができている。逆バンク気味のコーナーも、轍が成長してバームのようになっていた。
長い舗装路のある今回のコースでは、一度ちぎれると復帰は難しい。
しかしレース後半に差し掛かると、いよいよ脚が限界に近づいてきて、復路ピット前、泥セクションからの舗装路、ホームストレートなど、「踏むべき場所」でジワジワ遅れ始める。
一度離れると復帰のため余計に踏まなければならず、さらに脚が削れていく。
6周目ではまだ11~13位パックが見えていたが、7周目にラップタイムが崩れる。
後続に立て続けに抜かれ、一気にポジションを落として20位に。
ここからは我慢の単独走。ペースが緩んでしまったが、踏み直す。
最終周回に入る直前、単独で追い上げてきた…というより、私のペースが落ちた結果追いついた選手にパスされる。
ファイナルラップでは、逆に前から落ちてきた選手をパスし、20位。
そのままフィニッシュラインを通過した。
レースを振り返って
20位でフルラップ完走できたとはいえ、後半もペースを維持できていれば15位前後が見えていた。なので、結果には満足していない。
とはいえ、できる限りのことはやったし、ミスもしなかった。今の実力は出し切ったと思う。
先週のマキノにしろ今回の全日本にしろ、レース終盤には脚が売り切れてペースダウンしてしまっている。
それでも、序盤抑えるくらいならオーバーペースであってもパックについていったほうが速いはずだが…
パワー不足に悩む一方、今年はレース中の転倒など、大きなポカをやらかしていない。テクニック的には走りが安定していると言える。
今の安定感のまま、終盤まで高出力を維持できれば良いのだけど。
さてここで、参加者の顔ぶれもコースも違うので、比較することに意味はないと思いつつも、過去のリザルトを眺めてみる。
2010マイアミ、2011マキノ、2012富士、2013マキノの頃はレースレポートを書いてないので割愛する。
過去最高順位と順位%は、14位(20%)を収めた2019年の第25回内子大会。レース内容の点でも会心の走りができた。
今年の第27回土浦大会は、順位こそ20位だが、優勝者からのタイム差は過去最少。ちなみに、優勝者のレースタイムは内子大会より4分ほど長い。
リザルトを見る限り、内子や土浦のようなコースは私のスタイルに合っているようだ。
開催年 | 会場 | 順位/出走者(順位%) | 周回数 | タイム差 | フルラップ完走者 |
2014 | 菅生 | 23位/53名(43%) | 7周回 | -4Laps | 7名 |
2015 | 飯山 | 25位/96名(26%) | 8周回 | -3Laps | 15名 |
2016 | 宇都宮 | 30位/64名(47%) | 8周回 | -2Laps | 22名 |
2017 | 野辺山 | 25位/69名(36%) | 8周回 | -1Lap | 20名 |
2018 | マキノ | 46位/78名(58%) | 5周回 | +9:45 | 62名 |
2019 | 内子 | 14位/69名(20%) | 9周回 | +4:09 | 30名 |
2020 | 飯山 | 20位/67名(29%) | 7周回 | -3Laps | 10名 |
2021 | 土浦 | 20位/81名(24%) | 10周回 | +3:48 | 30名 |
今年の全日本は手放しで喜べる内容では無かったが、実力を発揮でき、それなりのリザルトを残せた。
課題もはっきりしたので、まだまだ続くシクロクロスシーズン後半で改善に取り組んでいきたい。
今回、関西方面からもたくさんの方に足を運んでいただき、リラックスしてレースに臨めました。
レース中もあちこちで声援が聞こえ、手を抜けなかった頑張れました。
応援・撮影・サポートありがとうございました。
全日本からの帰宅は深夜2時半頃でしたが、来週は自宅から自走で10分、関西CX信太山です。